FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
マケドニアのクーデターを鎮圧。
その後、ラングの要請をはねのけ、ハーディン皇帝に親書を送る。
ラングの行状を書き綴り、民たちの塗炭の苦しみを記したもの。グルニアの遺児たちの扱いを任せて欲しい旨。
僕たちの絆をなめるな。
ニーナ王女を守り抜き、あの戦火を駆け抜けた『草原の狼』。
彼への尊敬は、薄れてなどいない。その信頼も。
ファルシオンを扱える、勇者アンリの子孫、掲げるのには恰好の旗印であるとはいえ、自分を差し置いて『紋章の盾』と『アカネイア同盟の長』をその若者が手にしたことを不満に思っても良いはずだった。
だが彼はそんなことはおくびにも出さず、ニーナ王女のために力を合わせようと、そう言ってくれた。
そんな彼が傍らにいた戦であったからこそ、マルスはこの戦争を自分一人で戦っているのではないと、勇気を持てたし、思い上がる愚も犯さなかった。
戦のあとも、何を望むこともなく、取り戻した平和を珠玉のものと素直に感じ、ハーディンとニーナ王女が結ばれたことを心から祝福し、臣下となることに誇りを持てた。
親書は必ず、思う通りの結果をもたらしてくれる。
その結果と、アイシャの探らせた情報が結実するのは、しばらく後の事になる。
ほんの、しばらくの事。
・
「マケドニアを海岸線に沿って北上すれば、アリティアに近道になる。一刻も早く戻りたい」
マルスの決定である。並行してオグマとの連絡を取り、ウェンデル司祭に相談。
グルニアの今後をともに話し合うのだ。
「ひとつ、よろしいですかな」
発言を求めたのはジェイガンである。
「マケドニアですが、ラングを追い返した以上、治めるものがいない状態です。
クーデターを起こした連中やラングに任せるよりマシですが、放置というわけには」
「うん、そうだね。みんなの意見は?」
促され、ざわざわと思い思いの発言が出る。
「当然ちゃ当然だな。しかし、誰でもいいわけじゃねえだろ」
「意外に慧眼だなルーク。その通りだ。我らのような若造がやるわけにも行かない。
ただでさえこの軍は本国の半分ほどの戦力の遠征軍だ。後は帰るだけとは言え、戦力を削りすぎて、海賊あたりに殲滅されましたではお話にならない。
国をまとめるだけの才覚をも持つ先達、しかしこちらの戦力を削らないだけの少人数。かと言って、治安維持の指針となる精鋭を残しておかねば意味がない」
「む、難しいですね。マケドニアの方たちにも残ってもらったほうがいいでしょうか」
「あら、いいこと言ったわねライアン。あたしもそう思う。地元の人の機微がわかったほうがいいわ。ほら、『老いては子に従え』って言うし」
「・・・・・・セシル、それは『郷に入りては郷に従え』だ」
まとまらないうちに、アイシャが発言を求めた。
「それに伴って、私からも一つ。
暗殺団の足取りがつかめました。一部隊ですが。
どうやら、暗黒戦争の英雄達の暗殺、誘拐が任務らしく、レナさんを攫ったのもその別働隊のようなのです。
この部隊を追うために人員を貸していただきたいのです。敵も軍の形をとっているので、盗賊ギルドの人間だけでは交戦が出来ません」
「わかった、それも含めよう。そちらは結果が出次第合流してもらうよ」
部隊を三つに分けての行軍、戦後処理となった。
・・・その頃。
「・・・囲まれてしまいましたか。
残念。ここまでのようです」
砦に腰を下ろして、リフは目を閉じる。
人の命など、いつ終わるかわからない。
誰よりも自分がわからぬだろう。
覚悟を決め、目の前に迫る重戦士部隊に身構えた。
しかし、一度下ろした腰が持ち上がらない。
・
「既に狩りが始まっている!?」
「姿を見せていることと、囲むような動きから十中八九」
アイシャの報告に、マルスもルオも青ざめる。
パオラやカチュアを連れてこなかった事を後悔した。山向こうにいるとしたら、本当に間に合わないかもしれないのだ。
「全速で突破する!!」
「はい!!」
しかし、道を塞ぐのはまさに壁、重戦士の群れだ。
「「「うおおおおおおっ!!!」」」
ライアン、ロディ、セシル、マリーシア。
それぞれが協力して突破口を切り開く。
・
「ふん。あんたの言ったとおりね。アリティア軍は仲間を見捨てない」
「ルオは強いです。アイシャさんの情報網、参謀としての才覚も加味すれば、さらに・・・・・・」
「そこまで褒めてるとムカつくわね。まさかあんた、情が移ったんじゃないでしょうね」
彼女の言葉は額面通りではない。そしてわかりやすい。
彼女が隠密としては力量を持っていても、潜入の任務を割り振られないのはここに原因がある。
「どうとでもとってください。どのみち私は裏切るなんてことは考えてません。
それより、アリティア軍は、少ない戦力をさらに小分けています。
チャンスなのでは?」
「ええ。あたしの『ムジーク』を全員出すわ」
クライネ率いる重戦士とハンターの複合部隊で、壁と遠距離の二段攻撃のフォーメーションで迫る殲滅部隊である。
「・・・・・・それで足りるとは思えません。
ムジークはあくまで商隊規模の包囲に使う部隊です。
全員出しても数で互角くらい。無駄死にさせてしまいます」
「うるさいわねえ。あたしの部隊をどう使おうとあたしの勝手でしょ。
クズのくせにでしゃばんな。ウザい」
「・・・・・・分かりました。もう言いません」
「ふん。
じゃあアンタ達、ここは任せるわよ。
・・・・・・あの程度の連中にやられて帰ってくるようなら、あたしがゴミ捨て場に叩き込むからね?
」
そう言って、クライネはアイネ・・・・・・カタリナとともに戦場を離れた。
クライネは、私兵の力を信じ、疑っていなかった。
・
「リフさん!?」
「おお、これはこれは。数ヶ月ぶりというところですか」
囲みを外から破り、そこにいたのはリフであった。
「ルークがいたら、ちょっとしたトラウマを呼び覚ましたかもね」
「そうですね・・・・・・」
癒し手に可愛いシスターを夢見ていて、来たのがこのリフであった時の青ざめ方は、どう声をかけたものかと立ちつくすほどであった。
「お世話になってもよろしいですかね。勿論出来る限りのことはいたします」
「勿論です。癒し手がいて困ることはない」
マルスが歓待している間に、ルオらが敵を殲滅。
一行は、本体との合流を目指した。
「しかし、なんでマルス王子が別働隊に・・・」
「『こんなところにいるわけがない』っていう部分で目くらましなんでしょ。
野盗くらいなら何とでもなるし、組織から名指しで狙われてるとこういうのも必要よ」
「なるほど」
アイシャの説明に、それなりに納得したルオであった。
・
「全滅・・・・・・ですって?」
クライネの私兵、『ムジーク』は、マルス率いる分隊に殲滅させられた。
「言わないことではありません」
「うるっさいわねえ! ・・・ふん。役に立たないこと。まあいいわ。またエレミヤ様に貰えばいいのよ」
言葉とは裏腹に、クライネは苛立っていた。
それは、アイネには感じられることであった。
だから、アイネは・・・・・・カタリナはもう何も言わなかった。
3章外伝 暗躍する影たち 終