FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第4章 喜びと悲しみと

「おお、マルス王子。ご無事でしたか!!」

 

ジェイガンの安堵の声が響く。

 

リフを仲間に加えた後、滞りなく合流を果たした。

 

現在のメンバーは、

マルス。

アリティア軍、ゴードン、ドーガ。

近衛隊、ルオ、ルーク、ロディ、セシル、ライアン。

マケドニアの方々、ジュリアン、パオラ、カチュア。

その他、マリーシア、リンダ、リフだ。

 

 

マケドニアの統治には、アランを中心に、貴族連中をマチス、民衆をウォレン、サジやマジに自警団を取り仕切ってもらっている。

後顧の憂いはないと言っていいだろう。

 

しかし、時は刻一刻と過ぎていく。

近道を通るとはいえ、遠征先から帰ろうというのだ。どうしても週単位、月単位かかる。

 

「心配をかけたね。でも、僕は平気だ。

一刻も早くアリティアに戻ろう」

 

「わかりました。今夜はここで休息がてら軍議を行いましょう」

「軍議? ここはもうクーデター残党の支配域ではないと思うけど」

 

怪訝な顔をするマルスに、アイシャが語りかける。

 

「だからこそ、君臨する勢力もあるのです。

ここは、マケドニア・ヴァイキングの勢力下なの」

「海賊・・・・・・」

「ま、帰りがけの駄賃ってことで、海賊の一団くらい片付けていきましょうぜ」

 

前回しんがりを務めたルークは、実質戦っていないので元気いっぱいである。

 

「そうだね。ここを抜ければ、アリティアは目の前のはず。

この遠征、最後の戦いになるだろう。しっかりと準備をしておこう」

「では、早速アイシャ殿、情報をお聞かせ願いたい」

「はい。ええとですね・・・・・・」

 

地図を広げ、戦場盤駒で、大まかに勢力図を示してゆく。

 

軍正面に若干の兵力と、東の山の裾野にかなりの大部隊がある。

増援部隊を送り込んでありそうな砦も見受けられる。

 

「まず、ちょうど南に位置するのが、第一の目的地であった、ウェンデル司祭のおられる村です。

ここは王子に向かっていただくことになるのですが、その間に、本隊は海賊の先遣部隊と交戦し、時間短縮を行いたいのですが、いかがでしょう」

「うん。そうしてくれ。

兵は神速を尊ぶというのは常識だ。賊軍相手ならなおさらだ」

「では、僕達近衛隊が」

「そうだね。ルオ達はこの戦いでずいぶん成長した。海賊に遅れをとるとは思わないよ」

「ここには砦も多いわ。増援に囲まれることのないよう注意しなさいよ」

「分かってる」

 

軍議は順調に進み、夜明けを待って敵の先遣隊に攻撃をかけることになった。

輸送隊の護衛や待機部隊も決まってゆく。

 

 

 ・

 

 

その頃。

オグマはアリティア軍から見て北東の方角にある村に潜伏していた。

隙を見て、雨の降る日にでも脱出する予定だった。

しかし、昨日急に海賊どもが警戒態勢を敷き始めたのである。

 

このままではいずれ見つかる。

 

「ユミナ王女、ユベロ王子。

俺が突破口を開く。協力してくれ」

「わかったわ」

「そんな・・・ ぼ、僕、怖いよぉ・・・」

 

ユベロ王子のぐずりに耳を傾けている暇などない。

今すぐに体制を整えねば手遅れになる。

 

ユミナはシスターで、ユベロは魔道の才を持つ。

確かに戦場に出すのは危なっかしいが、戦いようでは十分な戦力だ。

 

勿論死なれては元も子もないが、力を借りずに荷物として抱えていては、さすがのオグマも厳しいものがある。

 

(さて、どこまでやってもらうか・・・

どこまでやれると見積もって戦うか)

 

村をこっそり抜け出すオグマ、ユミナ、ユベロ三人。

 

そこに。

 

仮面をつけた一人の聖騎士が佇んでいた。

 

 

「!!!」

 

聖騎士ということは、かなりの力量を持つ者のはずである。仮面を深くかぶり、その顔は見えない。

 

何より、目をつけられていたのは間違いがない。

 

 

「何者だ・・・!!

俺たちに何の用だ!」

 

男は何も言わずに、手槍を投げつけた。

 

すぐ後ろの、茂みに。

 

「うぎゃあああああっ!!」

 

「!!?」

 

そこには、盗賊が潜んでいた。

 

(馬鹿な、警戒が甘かった!?)

 

ともあれ、助けられた。

どうやら、敵対するものではなさそうだ。

勿論そうやって安心させる手もあるが、海賊どもと関係なさそうなのは確かだ。

 

「私は、シリウス。

あてのない旅をする放浪の身だ。

 

償えぬ罪から逃げながら、この力を振るう寄る辺を探している」

 

「・・・・・・」

 

オグマは、琴線に触れるものがあった。

金色の髪の聖騎士、罪という言葉、そして。

 

自分達に目をつけていたこと。

 

 

もし、当たっていれば。

絶対に断らない。

 

 

「ならば、この子らを守ってこの包囲を脱出するのを手伝ってくれないか?

戦う場所を探しているというなら、この子らの周りはこれからも苦難の連続となるだろう。

そして、この子らを安全な場所に預けた後は、俺はラングという男を殺しに行く。

 

ロレンスという男の仇をうちに行く。

 

奴の噂を聞いたことがあるなら、振り下ろす場所を求めるだけのその鋼の穂先を向けるのには足る相手ではないか?」

 

「っ・・・・・・

 

わかった。手を貸そう。

もとより、身の置き場の他、何を望むものでもない」

 

語りたくないというのなら、それでいい。

身に覚えのないことでもない。よくわかる。

 

「ねえ、ユミナ。あの騎士は・・・・・・」

「言わないの。私もそう思ったから」

 

ユベロはぱあっと顔をほころばせる。

 

「じゃあ!」

「でも、言っちゃダメ。仮面をかぶっているのよ。彼が、そうしたいのよ」

 

こそこそと二人は話した後、その騎士に語りかけた。

 

「シリウスと言いましたね」

「そうだ」

「寄る辺を求め、ほかに何も望まぬと言いましたね。なれば、暫くの間でもいい。私達の騎士であることを誓いなさい」

 

「ユミナ?」

 

「オグマ、お願い。

 

シリウス。

私達はグルニアの王位継承権保持者一位二位、ユベロとユミナ。

 

・・・・・・私達は幼くしてドルーアの人質とされ、無為な時を過ごしました。

滅亡の憂き目にあったグルニアを再建する力もなく、支えとなってくれたロレンスを死なせてしまう未熟者です。

放浪の騎士なれど、聖騎士ほどのものなら、何も知らぬ者になら語る事も有りましょう」

 

「・・・・・・」

 

聖騎士は、沈黙した。

 

 

 

オグマにはわかった。泣いているのが。

 

 

 

「拝命いたしました。誓いの儀式は後ほど。

この命を賭してグルニアの未来を守護致します。

 

ユベロ様。よろしいですか?」

 

「な、何?カm・・・ シ、シリウス」

 

「貴方は、戦を忌み、恐怖しておられますね?」

 

くしゃりと顔を歪めるユベロ。

その事はユミナに散々言われたのだ。もっとしっかりしろと。もう自分たちは二人きりなのに、私も怖いのにと。

 

「だ、だって・・・・・・」

「いえ、良いのです。それは大切なことなのです。

怖さを知っているということは、強さとなるのです」

「え・・・・・・?」

 

ユベロはわけがわからなかった。

だが、その言葉には心惹かれた。

強く、なれると。

 

「戦うことが怖くないものは、怖いものの気持ちが分かりません。そして、たいていの人間は、怖いのです。

それは、民の心を一つ知っているということです。

死ぬのは、戦うのは、怖い。

それを知っているから、殺すのはかわいそう。

戦争は、したくない。

平和がいい。

好きな人には、家族には、生きていて欲しい。

誰もが思うことを心から思えるからこそ、誰かの為に何かをしようと思える。

それは、大切なことです」

「シリウス・・・・・・」

「ユベロ王子。あなたの隣には、双子のお姉様がいます。

あなた共々、命を狙われています。

あなたのそばから、彼女がいなくなることを、仕方ないと思えますか」

「! イヤだ! いやだよ、そんなの・・・・・・」

「戦うことは怖いことです。でもそれは、ユミナ王女がいなくなるよりも怖いことですか?」

「・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

ユミナが、いなくなる方が、きっと、怖い。と思う」

 

「ならば貴方は守れます。我らもお手伝いします。

我らから離れぬこと、周りを警戒して、何か不審なものを見かけたら知らせること。

ユミナ姫と自分を守るために、何をしたらよいのか考えてみてください。

怖いことから逃げずにいられたら、貴方は怖くない者共などよりもずっと強くなる。

 

私はそうして、怖くないまま戦い続け、最後には逃げ出してしまった。

貴方は、私などより既に強い」

 

心に、火が付いた。

怖いのを、恥ずかしいと思っていた。

でも、彼が言った。

他でもない、あの彼が言っているのだ。

 

だれよりも強かった、グルニアの英雄。黒騎士と呼ばれた、最強の騎馬騎士。

 

怖いと思えることが大事だと。

だからこそ強くなれると。

彼よりも。

 

あの、彼よりも。

 

 

「ユミナ」

「ユベロ?」

「グルニアを、平和な国にしようね」

「!」

 

それは、今言うことだろうか。

自国を滅ぼされ、再建に失敗し、その身さえ己で守れぬ、10になったばかりの子供が。

鼻で笑われてもおかしくはない。

 

しかし。

 

ユミナには、この上なく頼もしく見えた。

絵空事のようなそれを、ただの確認のように聞く彼が。

 

 

 

オグマも、確信した。

彼以外であるはずがない。

 

 

 ・

 

 

「お、御頭っ!!

は、話が違いすぎる!! 奴ら鬼だ、バケモンだ!!」

「ぐうううううう・・・・・・!!

あ、あの女、何が新兵や雑魚ばかりの・・・・・・!」

 

矢や手槍は次々に刺さり、一閃される剣で次々に刻まれていく。

いくらの被害も与えられずに、仲間がバタバタやられていく。

 

先遣隊とその増援は、出れば出ただけ切り捨てられた。

 

マケドニア・ヴァイキングは、半日でその兵の半数を失ったのだった。

 

 

 ・

 

「マルス様、海賊どもは殲滅しました!!」

「ご苦労さま。移動しながらになってしまうが、休息をとろう」

 

オグマらもこの近くにいるはずだ。

早く合流したい。

 

結局ウェンデル司祭はいなかった。ラングが連れ去ったのではないかということだが、詳しくはわからない。

そこでシェイバーと呼ばれる魔導書をもらった。

飛兵に有効らしいが、とりあえず今は本人が肝心である。

それ以上にオグマたちが。

 

アイシャは近衛隊の皆を見まわす。

 

「みんな、強くなったわね。

今回はセシルさんやルークが強かったわね・・・・・・」

「ルークは調子に乗らせると強いね」

 

ルオとしてはしきり易い。

特にルークは、素早さや技はまだルオが上な自負があるが、剣の重さや受け方(力と守備)は互角なのが見て取れる。機動力があることを考えれば、まさに主力だ。

 

ジュリアンも盗賊ながら頑張っていた。

彼はレナを助けるための研鑽を兼ねての参加なので、その能力を限界以上に上げている。

 

「応援したくなる人ね」

「うん。やりたいことはやらせてあげようと思ってる」

 

アリティアに帰ったら、皆の特性を整理して、アイシャに聞きつつメニューを組もう。

実践を経て近衛隊はより強力になる。

その後は、お暇をいただこう。

そろそろ、元の世界に戻るための行動も始めないといけない。

カタリナのことは、同時に進めないといけないが、待ちの姿勢は良くないとも思う。

 

全ては、帰ってからだ。

 

 

 ・

 

 

「・・・・・・ふんっ!!」

「ぐああっ!!」

 

賊があおむけに倒れる。

 

オグマとシリウスの剣さばきで、村の近くに展開していた兵力はほとんど片付いた。

 

ユベロ王子に関しては、心構えが変わっただけで、何が出来るようになったわけでもない。

それでも、自分で警戒し、後ろの目になってくれるだけで十分助かる。

 

ユミナも気を張っていたようだが、今はユベロの後ろに隠れるようにしている。

ユベロの変化はユミナの気持ちも和らげたようだ。

 

ユミナが、近くに味方が来ているなら、『レスキュー』という杖で応援を呼んではどうかと提案があったが、特に必要とは感じなかった。

どんな場面で必要になるか知れぬことを考えれば、今でなくてもと思えた。

 

何より。

 

「あれは・・・・・・!」

 

 

南西から近づいてくる騎馬の群れは、間違いなくアリティア軍であった。

 

残った海賊どもを蹴散らし、村の方角に向かってくるその雄姿は頼もしかった。

 

 

 ・

 

その姿を見つけた時のマルスの喜びは大きかった。

 

「オグマ! 良かった。無事だったんだね。

すまなかった、僕が決断できていれば、君に危ない橋を渡らせることもなかったのに」

「いえ、ロレンス殿も、いまわのきわとはいえ無茶を言ったと思います。

アリティアの運命を変えてしまうかも知れぬことをあの場で即決出来るとは思いません」

「何を言っても言い訳にしかならない。本当にすまなかった。遺児たちも無事のようでなによりだ」

「はっ。

・・・・・・彼らを近衛隊として正式に使われているのですね」

「皆、頼りになるよ」

「・・・・・・そうですか。

 

おい、ルオ」

 

名指しで声をかけられ、背筋が伸びる。

 

「は、はい」

「ラングに楯突いたそうだな」

 

なぜ知っているのか。

 

「心情としてはよくやったと言ってやりたいが、判断としては軽率と言うしかないな」

「も、申し訳ありません!!」

「この件については、単身王子らを奪還して、マルス様との関係に疑いを持たれた俺がとやかくはいえん。

だが、お前の行動がアリティアの未来を決めることもあるのだ。

あの男に噛み付くなとは言わん。

だが、そうしたらどうなるかは一度想像しろ。

まあ、今回は・・・・・・

いや、よそう。

良いようにも悪いようにも、こんな話は良くない」

 

そう言うと、オグマは別の人間に話しかけに行ってしまった。

 

「ま、言われるのはしょうがないわ。

気にすることないわよ。あの人も人のことは言えないしね」

「アイシャ・・・・・・」

「それより、あの村でカシムって人を見つけたわ」

「?」

 

ルオはカシムを知らない。

 

「『母の薬代のために傭兵をしている』って言ってるハンターなんだけど、サジさんに聞いたことがあったのよね、この人の話」

「へえ、大変だなあ」

「母親は大食らいで典型的なおばはん。殺しても死なないタイプで、病気になんか一度もかかったことないんですって」

「は?」

「・・・・・・ようは、サギ師なの。

で、めんどくさいので身柄ごとギルドで預かるから」

 

盗賊ギルドは、国家間の陰謀察知や、不正取引を行う商人に警告を与える義賊、『まともに生きれる職業盗賊』を管理する。

優秀なスパイや、あくどい稼ぎ方をする商人に『お前、国から目をつけられてるぜ』という意味のそれとわかる盗難、冒険者のサポートや、細かいところでは、降りられなくなった子猫の救出までやる。

 

そんな組織が一番嫌うものは何か。

実は、盗賊の評判そのものを落とす、本来の意味での盗人や、ケチなサギ師だったりする。

 

「・・・・・・ああ、そうなんだ」

「入隊時にキラーボウを徴発したから元は取ってるわ。あとはこき使ってやる」

「お手柔らかに」

 

向こうではマルスと遺児達が会っていた。

 

「すまない、あの時・・・

僕は君たちを守れなかった」

 

それを受けて、ユミナも謝罪する。

 

「いえ、私も、混乱していたとはいえ、非道い事を言ってしまいました・・・・・・

あの言葉はラングにこそ浴びせるべきだったのに。

オグマからあなたのことは聞いたわ。

私たちこそ、今は助けを乞うことしか出来ない」

「いや、君達は亡きロレンスにかけて今度こそ守る。グルニアの希望を絶やす事は絶対にしない」

 

少しだけ頼もしく見えるようになったユベロが、嬉しそうに言う。

 

「大丈夫だよ。僕らにはシリウスがついてる。僕もきっと強くなってみせる。

僕には、戦う事が怖い気持ちよりも、ずうっと怖いことがあるから」

 

マルスには、わかった。

 

「・・・・・・大切な誰かを、失うかも知れない事」

「! マルス王子も、そうなんだね!?」

「うん。自分が弱いままでいた事で、なくしたものがある。僕はもう誰もこの手から取りこぼさないために強くあろうとした。

暗黒竜メディウスを倒せても足らない。

だから、ユベロ王子。力を貸して」

「うん!!」

 

戦う怖さより、ずっと怖いことがある。

 

未来のグルニア王との、消えぬ縁の結ばれた瞬間であった。

 

 ・

 

 

海賊の親玉とは、ひと騒動あった。

ルオが銀の斧の一撃をくらい、少々深い傷を負ったのだ。

幸いマリーシアのリライブが早く、全く大事はなかった。

 

「・・・馬鹿じゃないの? 

海賊相手に降伏勧告って・・・・・・

あいつらは捕まったら例外なく縛り首なのよ。のこのこ下るアホウがいるもんですか」

「え、そうなの?」

「隊長~・・・・・・」

(うわあルークに可哀想な子を見る目で見られた・・・・・・)

 

他のメンバーもさすがに呆れている。

 

「奴らは強盗殺人をするような輩だぞ。情けをかける相手を間違ってどうする」

「す、すいません・・・・・・!」

 

オグマの一言は厳しい。

 

「でも、彼らもやり直せるなら・・・・・・」

「殺されてしまった罪なき者がやり直せぬのにか?」

「・・・・・・」

 

言葉もない。

 

「剣を抜け」

「え?」

「一つ、稽古をつけてやる」

 

たじろいだが、チャンスとも思った。

あの、『英雄オグマ』の剣を受けるのだ、と。

 

しかし、

 

 

「!!?」

 

キィン! と、剣が乾いた音を立てて宙を舞った。

 

「がっ!!?」

 

構えた瞬間の隙をつかれて、剣を叩き落とされ、蹴り上げた目潰しをくらい、こかされて転がったところを踏みつけられて、喉元に切っ先を突きつけられた。

 

跳ね飛ばされた剣が地面に刺さる音がするまで、誰も動けなかった。

 

流れるような動作と、邪道と反則の連続であった。

 

「・・・腹を立てるようなら、貴様は遅かれ早かれ犬死にするぞ」

「・・・・・・」

 

怒りより、呆然とした。

何を示したかったのかわからなかった。

 

だが、

オグマが行ってしまってから、ふと気づいた。

 

 

死んでしまったら、終わりだ。

 

相手が反則をした、邪道な技を使った、卑怯な真似をした。

『そこはどうでもいい』のだ。

それで、殺されたら。

自分の命に取り返しなどつかない。

 

(そうか・・・・・・)

 

オグマは、カタリナの時もそうだった。

殺してしまったら、やり直すことはできない。

仲間だから、諦めたくなかった。

でも。

それは自分が生き残ってこそ言えることだ。

 

なんのことはない、オグマも同じなのだ。

 

ルオを『手遅れ』にしたくないだけなのだ。

 

 

「ちょっとは、私の気持ち、わかってくれた?」

「アイシャ・・・・・・」

「助けたいって思うルオの事、嫌いじゃないわ。でも。

忘れないでね。あなたが大事だって事」

「・・・・・・うん」

 

そうしたい思いが消えないとしても。

それ以上に大事なものがある。

 

オグマが去っていった方角に、ルオは頭を下げた。

 

 

 ・

 

 

海賊どもの根城を借りて、休んだ次の日。明日はアリティア国内に入れるという時。

物見が、天馬騎士を見つけた。

 

「あれは・・・・・・ シーダ!?」

 

マルスが見間違えるわけもない。シーダであった。

 

「マルス様っ・・・・・・!!」

「どうしたんだ一体。どうしてここに君が・・・・・・」

「あ、アリティアが、う、うう・・・・・・」

「!? アリティアが、どうしたんだ!」

 

シーダは、泣いていた。

マルスの胸に顔を押し付けたまま、つっかえながら言葉を紡ぎ。

 

「アカネイア、グラ、オレルアンの 連合軍が 突如アリティアに侵攻っ してきて、騎士団は全滅・・・・・・

アリティア城も落城・・・・・・!

エリス様 は 私を逃がすためにっ 身代わりに・・・・・・!!

うっ、うううーーーっ・・・・・・!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」

 

一同が、呆然とした。

ラングを追い返した時から、万が一には有るかもと思っていた事。

しかし。

 

現実になるとは、誰一人信じていなかった事。

 

「・・・・・・最も恐れていた、おきてはならぬことがおきてしまいましたな・・・・・・」

「何故だジェイガン。ハーディンはラングの言うことを信じたというのか。

僕が反逆したなどと、本気で思ったのか!?」

「いいえ、これはそれ以前の話でしょう」

「!!? アイシャ?」

「こちらもたった今情報が入りました。

二週間前、大規模演習の名目で、カダインあたりにその軍勢と同じ規模の連合軍が集結しています」

「・・・・・・!?」

「定例のものではありません。

演習はそれだけの規模のものにも関わらず、大したこともせず、待機ばかり。

まるで、別の何かを待っているかのように」

「!! ・・・・・・まさか」

「ここまで揃っていれば言うまでもありませぬ。この遠征自体が罠だったのです。

アリティアの戦力を割いておいて国ごと乗っ取る。

反逆者の汚名を着せることが出来るまで準備万端で待っていたのです」

「じゃあ!! なんの理由もなしにアリティアを攻めたと!?

ラングのような男を使って、こちらを挑発して・・・・・・

むしろ攻める理由を無理やり作って・・・・・・!あの、ハーディンが!!」

「残念ながら」

 

ルオは、うなだれた。

ラングに歯向かったのは自分だ。

 

「・・・・・・僕の、せいなのか」

「そうとも言えるけど、どのみちあの時点でみんな限界だったわ。

マルス様もあなたを止めなかった」

 

それでも。

 

何を言っていいのかわからない。

どうしたらいいのかわからない。

 

「にゃーん」

 

チビの空気の読めない鳴き声が響く。

 

「マルス様、申し訳ありません・・・・・・!」

「いや、・・・・・・君が無事だっただけでも良かった。シーダ・・・・・・」

 

そんな言葉も虚しく響く。

失った物が、大きすぎるのだ。

 

「・・・・・・取り戻す」

 

マルスが、低くつぶやく。

 

「アリティアも、騎士団の皆も。

姉上も」

 

なんと、してでも。

 

「・・・・・・僕が一体、あなたに何をしたと言うんだ・・・・・・ハーディン・・・・・・」

 

まだ、マルスは信じられずにいた。

しかし、同時に、湧き上がってくるものを抑えきれない。

 

「うおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ハァアアアアアアアアアアアアーディイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

その慟哭は。

 

マケドニア全土に響いたとか。

 

 

第4章 喜びと悲しみと 終

 

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