FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第5章 グルニア解放

マルスがハーディンの名を怒りを込めて叫んだ2週間後。

アリティア軍はもと来た道を戻る様に南下。

事実確認や情報収集をある程度した後……

「これからどうするか」についての話し合いを行った。

 

アリティアを失っている今、とれる選択肢は多くない。

だが幸い、マケドニアは暫定的にアリティアの統治下にある。足がかりとすることは可能であった。

 

「既にアカネイアは主国ではなく敵とみるべきです」

「そもそも敵だった、の方が正確かもな。

罠にかけられ滅亡させられたんだ。それぐらいの認識にしておいた方がいいぜ」

「ともかく、そうなるとアリティアに戻るのは不可能です。

当初の目的を変更せざるを得ない事になります」

 

仕切りが上手いのと、立場が高くも低くもないため、皆が話しやすいアイシャが、普通に軍議の中心にいる様になって来た。

 

「盗賊ギルドはどういう態度をとるんだい?」

「……盗賊ギルドは元々新皇帝の下で冷遇を受けています。汚れ仕事は私兵や特殊部隊があるので要らないということでしょう。

そして今回の件で、アリティアと繋がりがあると見られた為に、盗賊ギルドは組織ごとパレスを追い出されたと義父から連絡がありました」

 

既に十分以上にとばっちりを受けた後であった。

 

「……すまない」

「いえ、今回のやり方を見れば、こっちから愛想が尽きました。

今から盗賊ギルドは全面的にアリティア軍の後方支援にまわります。

アカネイアは何かにつけて税を取るので、世界中の商人が、信用出来る相手との闇取引を望んでいる状態です。

情報収集や、そのついでに見つけたお値打ち品など提供できるかと」

 

天幕を眺めてみると、色々な品が持ち込まれていた。

中には物干し竿やフライパンまである。これは近くの村などからの応援の品のかわりだろうが・・・

民達の苦しさと、それでも切実な期待が窺えた。

 

「アレを使えっつーの?」

「……まだそこまで切迫はしてないけど、使える様なら節約になるわ。補給がしにくい今の状況で倹約は大事よ」

 

他にも、威力は月並みだが量産グラディウスの失敗作「不死身の斧」は、体力を回復させる力があるという。

一時的に能力を上げる薬の各種も目に付いた。

よく切れそうだが、すぐに壊れそうなガラスの剣や、限界まで軽くして、威力は低くても二回攻撃のできる槍などだ。

 

 

「それぞれ好きに使ってくれ。

話を元に戻すけど……

我々は、グルニアを開放する」

「「「「「!?」」」」」

 

皆、マルスの言葉に、わけが分からないといった顔をする。

 

「国を失ってしまった僕らは、それに変わる拠点が必要だ。

加えて、アカネイアを敵にまわし、アリティアを取り戻すには、兵力の新たな獲得と、アカネイアの目を僕らだけに向かせておかないだけの別の勢力も必要だ。

そして、その条件を満たすのが、現在実質僕らが統治しているマケドニアと……

アカネイアにロレンス将軍を謀殺され、今までラングに屈辱的な支配をされて来たグルニアだ」

 

そう続けられれば、何人かは理解した。

 

「グルニアを開放するのを助く代わりに、解放後に同盟と援助を頼む、と?」

「同時にラングも倒してしまおうって事ですね?」

 

ロディとルオが確認する。

マルスは大きく頷いた。

 

「実は、もうグルニアは開放寸前なんだ。

アイシャ?」

 

アイシャが報告書をめくり始める。

 

「明日、グルニア占領軍指揮官ラングの居城であるオルベルン城に、アリティア軍が強襲をかけることは、盗賊ギルドの情報操作でグルニア国民の8割が知っています。

それに伴うアジテーションや、具体的な示威行動を促してあるため、グルニアの勢力図は一気に塗り変わります。

グルニア国民は既に、座しても死ぬなら一矢報いてという気持ちになっています。

ラングはグルニアを追い詰めすぎていました。

この反乱は7割がた成功します。

勿論、アリティア軍の強襲の成功とその迅速さが残りの3割を埋めるのは言うまでもありません」

 

一同がざわめく。この二週間の進軍の最中にそこまで準備が済んでいたとは。

 

マルスが続ける。

 

「いくらアカネイアが大軍をようしていようと、国民全員を敵に回して国家は成り立たない。

ラングははっきりと自業自得だ。

ハーディンはおそらく奴を切り捨てる。

そのついでに僕達はグルニアを救い、同時に足がかりとさせてもらう。

勿論この同盟は、君たちの同意なしには出来ない。

 

ユベロ王子、ユミナ王女。

 

君たちの国を解放する手助けをさせてもらう。

 

代わりに、頼む。

 

僕たちの、かりそめの家となってくれ」

 

幼き二人は、しかし大きく頷く。

 

「お願いします。

そして、僕たちがグルニアを取り戻した時には、アリティア軍への協力を惜しみません」

 

王子どうしの握手の後、細かいところの詰めに入った。

今回はラングとの正面対決である。

うっておかねばならぬ手は数多かった。

 

 

 ・

 

 

・・・今さっき見た夢を、思い出せない。

目の両端から流れた涙の跡と、寝起きの気分の悪さから、嫌な夢だったのは想像がつくけれど。

 

「・・・・・・やあ」

 

優しい目で自分を見つめる、自分と同じ青い髪の青年。

フィアンセの、マルス王子だった。

アリティアの。

今は、ない国の王子様。

 

天幕の中でシーダは、いまだに療養していた。

 

「マルス様・・・・・・」

「ん?」

「ごめんなさい、軍議にも顔を出せないままなんて」

「君にとっても、アリティアと姉上の事はショックだったんだろう。

誰も君を責めたりしないさ。

 

むしろ、僕こそごめん。

 

婚約したばかりで、国を失うなんて。

男としてこれほど頼りない人間もいないよね」

「そんな!

・・・・・・私は、そんな事・・・・・・」

「・・・・・・うん。ごめん。何を言ってるんだろう僕は。

君を困らせるつもりで、起きるのを待っていたわけじゃないのに」

 

口を開けば、謝罪しか出てこない。

それが一番、愛しい人を苦しめるのに。

その事が、お互いにわかった。

 

マルスが、シーダにこそ、シーダにしか望まない事。

 

シーダが、マルスに望んできた事。

自分がいる事で、そうあって欲しいという・・・・・・

 

こんな時こそ。

 

 

 

マルスが、笑顔を見せた。

 

それは、憂いや不安をどうしても滲ませる、晴れ切らない笑顔。

 

そうじゃない。

そんな悲しい笑顔を見せて欲しいんじゃない。

そう思いながら。

 

返したシーダの笑顔も、合わせ鏡でうつしたようだった。

 

笑顔でさえ、今はお互いを傷つける。

 

 

どちらが先とも言えぬ口づけの味だけが、少しだけお互いを慰めた。

 

 

 ・

 

 

 

「久方ぶりだな。バーツ」

「お、オグマ隊長!!

どうしてこんなところに!!」

「仕事だ。

恩あるタリス王の義理のために、グルニアに加担してな。

今はそのグルニアを取り戻すために、アリティア軍に身を寄せている。

 

・・・・・・バーツ、お前が元々、お前にしかできないことを探して生きているのは知っている。

それは兵隊ではないと、暗黒戦争のさなかで悟ったこともな。

 

だが、お前が何かを成し遂げる舞台となる世界は、一部の権力者のみが笑うつまらぬ世でいいはずがあるまい。

お前の望みのためにも、もう一度力を貸してくれないか」

 

バーツは、その事は薄々感じていた。

そして、さんざん世話になり、命を助けられたことも一度や二度ではない、他ならぬオグマの頼みを断る道理はなかった。

 

「オグマ隊長。俺はあんたの為ならなんだってやる覚悟がある。

それだけは、兵隊をやめたあとも変わってねえんですよ」

 

また一人、かつての勇士が帰還した。

 

 

 ・

 

 

「探したぞリカード、この野郎!!」

「げ、ジュリアンの兄貴!!」

 

お互いの感想は決まっている。

 

『全く変わっていないなあ』である。

 

「お前、まだこんな下らねえ事やってんのか」

「そりゃこっちのセリフですよ。いつかみたいにまた兄貴と組んで、しこたま儲けるつもりだったのに、儚げなシスターにコロッとやられてあっさり足を洗っちまうんだもん。

寂しいっすよ兄貴。俺らの絆ってそんなもんだったんスか」

 

ジュリアンはさすがに呆れた。

 

「俺がレナさんを守るって決めたのはそんなんじゃねえって言ったじゃねえか。

少なくとも向こうは相手になんかしてねえよ。

俺はそれを承知で惚れたんだし、それだけが足を洗った理由じゃねえ。

 

大体なあ。

お前暗黒戦争の後、軍の金ちょろまかして逃げたろ」

「なんでそれを!?」

「むしろその話が広まってるからお前を見つけたんだよ!!

酔って自慢話をする癖が全然治ってねえな!?

 

言っとくけど、あれは見逃してもらったんだからな」

「へ?」

「それにな、お前が持ち出したのは300Gってとこだろ?

あのまま待ってりゃ報奨金が500Gはもらえたんだよ。

まさに『慌てる乞食は』なんとやらだ」

「うそーーーー!?」

「ってわけで、くだらねえ盗みなんかしてねえでアリティア軍で働け。

一芸ありゃ使ってもらえるし、寝床の心配がいらねえからよ」

「わっかりやした!!

ついていくっス、ジュリアンの兄貴!!」

 

ちなみにこの後リカードは、アイシャの元で厳重な監視下での特殊任務をたびたびやらされる事になる。

アイシャらギルドの人間にとって、フリーの盗賊は不倶戴天の敵である。

 

 

 ・

 

 

 

 

「では、この軍議で決まった通り、オルベルン城の強襲は、近衛隊を主に行う。

グルニア領内の城だけに、案内役にユベロ王子やユミナ王女にも付いてきてもらう。

彼らの騎士となったシリウスと、オグマやバーツなどにも来てもらうこととする。

 

その他のメンバーは、各地の反乱の扇動を」

 

 

ジェイガンの読み上げが終わり、マルスが顔を上げる。

 

「作戦はさっき話した通りだ。

皆の奮戦を期待する」

「「「はっ!!!!!!!!!!!!!」」」

 

グルニアの夜明けが近づいていた。

 

 

一方、オルベルン城のラング達は。

 

「ら、ラング将軍!!アリティア軍がこちらに進軍してくるとの報告が!!」

 

トラース将軍の慌てふためく様子を、ラングはどっしりとかまえた声で一笑にふした。

 

「何を慌てておる。兵力はこちらが圧倒的なのだ。

それに、マケドニアを再び南下したのを聞いた時点で、ハーディン陛下に増援を頼んである。

ほどなく到着した暁には、挟み撃ちにしてくれる」

 

ラングは非道な男であるが、無能ではない。

有能でもないが、やるべきことはやる男である。

 

「そ、それが、今朝、このような書簡が!」

 

訝しげに開いた後、ラングは愕然とする。

 

アリティアを攻める際、圧倒的な兵力差で囲めば降伏してくるとふんだのだが、最後まで抵抗された挙句に、かなりの打撃を受け、アリティアの平定に支障はないものの、既に大軍を置いているそちらにまで回す余裕はないとのことだった。

 

「し、しかし、それでも数で勝っているのは間違いないのだ。

各地の部隊を呼び寄せるだけでも挟撃することは・・・・・・」

 

と、取り繕おうとしたところで、会議室のドアが開け放たれ、兵士が要件を告げる。

 

「申し上げます!!

グルニア各地で民衆による反乱が発生!!

今回のアリティア軍強襲に合わせた同時多発のもので、各地の駐留施設がほぼ壊滅!!

援軍の見込みは絶望的です!!」

 

ラングはトラース共々真っ青になった。

 

無能でない程度では、暗黒戦争を乗り越えた綺羅星の英雄の相手にはならない。

 

「わ、わしは守りを固める!!

トラース、お前は城門を死守せよ!!

ネズミ一匹城に入れるなっ!!!!」

 

威をかれるはずの狼にそっぽを向かれた今、ラングの命運は風前の灯であった。

 

 

 ・

 

 

伝令の兵士は『ほぼ』壊滅といった。

無事な部隊も若干あった。

例えば、『大陸一の弓取り』ジョルジュ率いるスナイパー部隊である。

勿論救援要請は来ていたが、ジョルジュはそれを無視した。

 

(ラング・・・・・・ あの男は好かん。

民を奴隷か何かと勘違いしている。

貴族が愚か者だとも思わぬ。高貴な人間というのはいて然るべきだ。

だが、民あっての国家だということを自覚していない貴族というのはただの害悪だ。

国賓を迎えるのは貴族だろう。だが彼らが国を見るときまず目をやるのは民なのだ。

民が多少貧しくとも、品性を持つ国はある。

そういう国にこそ未来はあるのだ)

 

しかし、そうは思っても、アカネイアにはニーナ王女がおられる。

部下達を路頭に迷わすわけにも行かない。

ジョルジュは今のアカネイアに疑問を持ちながらも、反旗を翻す事は出来ずにいた。

 

 

 ・

 

 

トラース率いるアカネイア兵、特に竜騎士達を相手取って、活躍を見せたのはロディとセシルであった。

ここのところのルークの成長ぶりを見て、刺激されたようである。

 

「我が槍を」「あたしの剣を」

「「受けろっ!!!!!」」

 

格上のはずの竜騎士相手に引けを取らぬ活躍を見せる。

 

山岳の入口を切り開くには十分であった。

 

 

  ・

 

 

山肌に沿って進軍する最中、知った顔にあう。

 

「ジョルジュ!?」

「マルス王子か」

「頼む、力を貸してくれ。

君もわかっているだろう。ラングのような男を野放しには出来ないことを」

 

ジョルジュは、目を伏せる。

 

「だが、それでも俺はアカネイア貴族だ。

ラングに協力をするつもりは無い。だが、そちらにもまだ行けぬよ」

「しかし・・・・・・」

「くどいぞマルス王子。俺にできるのは、見逃すことくらいだ」

 

それでもそれは、好意の証であった。

 

「分かった。

ジョルジュ将軍、いずれ、また」

「ああ」

 

結局、彼らの方からは動かなかった。

だがそれは、積極的ではなくても、アリティアへの協力であり、アカネイアへの裏切りだった。

 

 

 ・

 

 

山間の村は、レナの祖父がいるとの事だった。

マリーシアが行った事があるらしい。

 

「村ではハマーンの杖を預かったわ。

マリーシアが使えるみたい。

さすがに家族に『レナさんはさらわれた』とは言えなかったわ」

「ハマーンの杖っていうのは?」

「物の時の流れを操る魔法ね。竜石とか、特殊な力を持つ物はダメみたいだけど」

「まあ、今すぐ要るものでもないか」

 

山岳の村を通り、麓の騎士達を倒していく。

一方本隊は、橋が狭すぎるのと、複数のシューターの猛攻で苦戦を強いられたが、どうにか敵を片付けた。

オグマやライアンが活躍し、トラースは追い詰められていった。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・

 

ここは通さん、通さんぞ!

どのみち通せば俺は破滅だからな!!」

 

ラングに対する怒りに燃えるアリティア軍がそんな事情を斟酌するはずもない。

バーツの斧でシューターは粉々にされ、

 

「グルニアの人々の数十分の一でも、その痛みを知るといい!!」

 

マルスのレイピアにあっさりとトラースは貫かれ、

 

「ぐぅ・・・お・・・

アリティア軍・・・強すぎる・・・・・・」

 

オルベルン城城門は、アリティア軍の手に落ちた。

 

その時。

ころりとトラースの懐から、星のように光る真珠のようなものを内包した、空色の宝玉が落ちた。

 

「ん?」

 

ルオはそれを見つけ、拾った。

 

「これは・・・・・・なんでしょうマルス様」

「? なんだろう。

でも、それとわかる神々しさがある。

それになんだか懐かしいような」

 

それは、天に浮かぶ十二宮星座の一つ、ジェミニの星の並びをしていた。

 

「それ・・・・・・私も同じものを持ってる。

マケドニアのクーデターの時に、リュッケが持っていたものよ」

 

アイシャが懐からそれを取りだす。

確かに、同じもの・・・・・・

いや、星の並びが違った。

それは、タウルスの並びであった。

 

それがなんなのかはわからないが、今はしまっておくこととなった。

 

このまま、オルベルン城の奪還が行われる。

 

 

 ・

 

 

「おおおおおおう。オイラのメンバーカードぉぉぉぉぉぉ」

「もってたって使えないくせに。

こういうのは偉いさんに持っててもらうんだよ」

「せ、せめてその分の金を・・・・・・」

「これまでの罪をアリティアからは問わねえってさ。

よかったな。何よりの褒美じゃねえか」

「うおおおおおおおおおおおお。

あ、兄貴の嘘つきぃぃぃぃぃぃぃ」

 

ジュリアンとリカードの三文芝居はともかく、秘密の店で、聖なる勳章を手に入れた。

 

「昇格かあ・・・・・・憧れるぜ」

「うむ、聖騎士ともなれば、弟たちを食わしていくのは造作もないこと」

「ぼ、僕も兄さんみたいなスナイパーに・・・・・・」

 

皆、夢をふくらませているようである。

 

それはともかく、いよいよラングとの決戦である。

 

「奴の行なってきた非道を思えばためらうことはない。

引導を渡してやろう」

「「「「「「はっ!!!」」」」」」

 

各地での戦いを終えた、特に近くにいた部隊のものは集まってくる。

マルスとルオは、ジェイガンとアイシャの話を聞きながら、突入部隊の人選を開始した。

 

 

 

第5章 グルニア解放 終

 

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