FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第6章 悪の巣

「シーダは来てくれ。オグマも一度ここへ遺児達の奪還に来た事から、内部構造は把握しているだろう。

宝物庫のものを持ち去られないように、ジュリアンはそちらに。

近衛隊は、ライアン以外は来てくれ。マリーシアもいざという時のために一緒に。

ライアンはゴードンと外の警戒を」

 

次々に指示を出すマルスに、シリウスと、ユミナユベロの双子が具申する。

 

「マルス王子、ラングとの決着は是非とも我らの目の前で‥‥‥」

「そうだねシリウス殿。一緒に来てもらおう。

いいかな?」

「こ、怖いけど・・・・・・

これは、僕が目にしておかなきゃいけないことなんだよね」

「もちろん行くわ。この国を踏みにじった男の最後。

自らの手を下せないにしても、焼き付けておきたい」

 

マルスは頷いた後、手を掲げて城門をさす。

 

「それぞれの率いる部隊を投入する。

突貫っ!!!!!!!!!!!」

 

 

オルベルン城の攻略が始まった。

 

 

 ・

 

 

「おおお、きたか『紅の剣士』ナバール!!

貴様の腕ならアリティア軍も敵ではあるまい!」

 

腰まである長い髪と、独特の東洋風の衣服。鷹のような、冷徹な目。

ラングは、奥の手としてナバールを雇っていた。

 

「無論だ。あのような雑多な軍は、数人ほど無惨に切り捨てるだけで足が止まる。

後は囲い込んでどうとでもするがいい」

「くっくっく。頼もしいことだ。

お前ならタリスの『英雄』オグマにも勝てるのだろう?

なにせそれを目的としていると聞いたからな。

ちょうどオグマはロレンスの味方をした流れでアリティア軍にいる。

遠慮はいらん、首をとって来い!!」

 

だが、それを聞いて、ナバールはひやりとした汗をかいた。

 

「な、何!? オグマさ・・・

オグマだと!?

 

い、言われるまでもない。奴を倒して最強の剣士の名を手に入れてくれる。

は、はっはー。ふわはっは!!?

 

そ、それでは俺は奴が来るのを隣の部屋で待つぞ!!」

 

彼の笑い声は引きつっていた。

何故かは不明だが。

 

 

 ・

 

 

「ファイアーっ!!!」

「うっぎゃあああああああ!!!!」

 

アーマーナイト部隊はあっさりと片付いた。

防御力の高い部隊だが、ワンランク上の鋼の装備なら、近衛隊の皆の力とあわせて、撃破が出来る程度であったのだ。

もちろん元々アーマーナイト向けの『魔法』を操るリンダも活躍。

 

「ふふん。俺の力ならもうアーマーナイトさえ敵じゃねえぜ!!」

「ふん、あんたは剣士を相手にしたら速さがおっつかないわよ。

そこへ行くとあたしは天馬騎士が相手でも再攻撃を繰り出す自信が・・・」

「セシルの剣は守りが犠牲となった速さだ。

痛恨の一撃を食らわないようにな」

 

などと言いながら、その戦いは危なげのないものであった。

一方、遠隔魔法『ウォーム』を多用してくる司祭などはシリウスの移動力と手槍に任せ、ジュリアンは宝物の確保に向かう。

 

と、そこへ。

 

一騎の騎馬が駆け込んでくる。

 

「マルス様っ!!!ご無事であられましたか!!」

「フレイ!!!それにノルンも!!」

 

彼らも暗黒戦争の英雄である。

『青の騎士』と呼ばれるフレイと、女弓師ノルン。

 

「アリティア城からなんとか脱出してまいりました。

皆とははぐれてしまいましたが・・・・・・」

「君らがこうして無事でいるんだ。皆もきっと無事さ。

よく駆けつけてくれた」

 

だが、アイシャは警戒を解かなかった。

それは彼らがどうこうではなく・・・・・・

 

一緒に来た兵士たちだった。

 

「? ええ、見慣れない人達だったけど、アリティア軍の末席にいたっていうから」

 

ノルンは民兵上がりだが、フレイまで警戒心が薄い。少々油断気味だ。

グルニア全体の、『ラング討つべし』ムードにのまれているのか。

 

「そこの兵士、兜を取りなさい」

 

「え!? ええと、その」

 

「・・・・・・ふん。やっぱりね。アリティア軍では、こう言われたら『貴様に見せる素顔などない!!』と見栄を切りつつ、即座に脱ぐのが合図なのよ。貴方、敵ね!?」

 

「くっ、バレては仕方ない。おうともよ。我らはヴィックス団!!

この作戦が成功すればクライネ様直属にしていただけるのだァ!!

かかれえっ!!!!」

「アイシャ、そんな合図、僕は聞いてないけど」

「当然よ。『そんな合図があってたまるか。兜をかぶってない時はどうするんだ』って言ったら本物なのよ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんな会話のうちに完全に囲まれていた。

勿論砂にされた。

 

間抜けな一団だけあって、底抜けに弱い連中であった。

補充部隊が間に合わなかったとしか思えない。

 

 

「ぐ、ぐおおお・・・・・・

我らの悲願を・・・・・・がくっ」

「がくってセリフで言ったぞ」

「どこかの素人演劇集団かなんかじゃないのかこいつら」

 

あり得る話である。

 

ともかく、後顧の憂いは絶った。

 

「今後、集まってきた仲間は城内に入れないように」

 

アイシャの部下への指示もため息まじりである。

 

「は、そうだお嬢。これを伝えに来たんですが・・・・・・」

「ん?」

 

その情報は、聞き捨てならないものだった。

 

「あの『紅の剣士』ナバールが敵の傭兵に!?」

 

暗黒戦争の英雄の一人である。

『英雄』オグマと肩を並べる凄腕の剣士だ。

 

確かに聞き流すことではない。だが・・・

 

「臆していても始まらない。

先に進もう」

「しかし、奥に通じる扉は二つあります。

挟撃を狙うなら二手に分けるべきですが・・・」

「オグマを東、シーダは西に行ってもらう。

それぞれ、会えば説得してみてくれ」

 

念のため、マルスはシーダと。

そして近衛隊の面々。

残りは東側に。

 

そして・・・・・・

 

 

 ・

 

 

「『ヴィックス団』は、罠にもならなかったようですね」

「そんな見れば分かることを言いに来たわけ?

いいのよ。どうせこの国は終わりだわ」

「我らの活動がしにくくなるだけで、この国の民にとってみれば、ここからが始まりでしょう」

「ふん・・・・・・

どうせあのハゲオヤジは気に食わなかったのよ。

あんな小物、死ねばいいの」

 

クライネとアイネ・・・カタリナは、良くも悪くもグルニアに思い入れはない。

彼らにあるのは、己の長への忠誠だけだ。

 

「次はローローが仕掛けるわ。

それなら無事にはすまないでしょ」

「どうでしょう。

ローローは今は『各地に散らばって』いるし、本領を発揮できないのでは?」

「そんな必要はないわ。奴らは仲間を見捨てないんでしょ?

そこを突けばいいのよ」

「・・・・・・彼らを、使うのですか」

 

敵味方とは、そう受け取る側の問題だ。

彼らは金のために動ける。

だが、アリティア軍の連中は、仲間を殺せない。

 

「さて、どう出るの??

偽善者のマルス様。ふふん」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

ラングも既に興味の範疇にない。

 

 

 ・

 

 

結論から言えば、ナバールは西の部屋にいた。

 

「!! ・・・剣士、ナバール・・・・・・

 

お願い、もう一度私たちに力を貸して!!

その力を振るう先を選ばぬというなら尚更。

 

今のアリティア軍には、あなたの力が必要なの!!」

 

シーダは必死の説得を始める。

アリティアを取り戻すには、協力者はいくらいても足りないだろう。

その中で、彼を仲間にできれば大きい。

 

「!?

なんだ、貴様は・・・・・・

 

まあいい。お前のような美しい娘の言うことなら無視するわけにもいかんな。

話を聞こうじゃあないか。

ここではなんだから奥の部屋でお茶でも・・・・・・」

「!!?っ」

 

ものすごい違和感であった。

確かに外観は似てなくもないが、言動が完全にありえなかった。

 

「あなた・・・ナバールではない!?

誰なの!!?」

「・・・ちぇ、バレちまったか。

オレはサムトー。ちったあ腕の立つ傭兵剣士さ。

騙したのは悪かったが、別に悪気があったわけじゃない。

よく間違えられるんで、面倒くさくなって、『ああそうだ俺がナバールだ』って言ってたら、気がついたらここで雇われてただけさ。

けどよー。あのラングってヤロー俺も嫌いなんだよねー。

そこ行くとかっわいいねキミ!

俺でよければ、うん、力になったげるよ?

どう?」

「う、うん・・・・・・

あなたでも別にいいわ。力になってくれるなら・・・」

 

呆気にとられてか、シーダ姫もナチュラルにひどいことを言っている。

しかし、それさえ全く気にした様子がない。

 

「おっし決まり!

よろしく頼むぜ!」

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

マルスもルオも思った。

 

((別にいらないなあ・・・))

 

 

 ・

 

 

アカネイアと決別することを心に決めてみれば、ラングなど恐るるに足らなかった。

 

「!! き、貴様は・・・・・・あの時の無礼な剣士!!」

 

怒り心頭のルオが出てくると、向こうもこちらを覚えていた。

 

「どっちが無礼者だよ。暗黒戦争の英雄を顎で使って。

あの時背中から切り刻んでやればよかった。

どのみち皇帝はアリティアを襲うつもりだったのなら」

 

ルオの目は完全にすわっていた。

 

「うおおおおおっ!!

貴様らのせいで、貴様らのせいでっ!!」

「自業自得、因果応報、虎の威をかる皮算用って感じかしら?」

「アイシャ、最後のはとても間違っている」

「ばっかロディ、ギャグに決まってんだろ」

「いや、どうみても相手がタヌキなんでつい間違えたとかじゃない?」

 

近衛隊のメンツの軽口も好き放題である。

 

「おのれらああああああああっ!!!」

 

ラングが持っている武器は手槍である。

確かに、遠近両用でなければ、弓などで遠巻きにされて終わりということはあるだろう。

しかし、武器性能自体の低い手槍では、守りの力にも優れた近衛隊の面々とまともに戦えるわけもなかった。

あっという間に追い詰められたラングは、命乞いをし始めた。

 

「まっ…待ってくれ。すまぬ…許してくれ… わしは、皇帝の言うとおりにしてきただけなのだ。

わしも、民を苦しめるのはイヤだったのだが、人質を取られていた。仕方なかったのだ。

なっ…だから、たっ…助けてくれ…!

何でも言うことをきく。

ほら…このとおりだ…!!」

 

土下座をしだすラング。その様子に、マルスの足が翻り、ラングから離れ始める。

 

「と…油断させといて…

馬鹿め…死ねぇっ!!!」

 

槍を持って突進するラング。

 

しかし。

 

その槍はレイピアにあっさりいなされ、ラングは脇腹に刺突を受ける。

 

「ぐあああああっ!!?」

「・・・そんな真似が通用するとでも思っていたのか?

お前の品性はこれまでの僕らに対する仕打ちでよおぉくわかっている」

 

背を向け、遠ざかりながらも、マルスは臨戦態勢だったのである。

どうせ隙を見せるまで命乞いを続けるだろうから、面倒臭くなって許すふりをしたのだ。

 

血の吹き出す脇を押さえるラングを、今度は皆がとり囲む。

 

「ぐぐぐ、貴様ら・・・」

 

皆、一合ずつ刃を交える。

それぞれの、恨み辛みのこもった一刺しを受け、ラングは満身創痍となってゆく。

 

「ロレンス将軍の無念を晴らす!!」

 

オグマがアキレス腱を叩き切る。

 

「よくも僕らのアリティアを・・・そして、グルニアを!!」

 

ルオが鋼の剣で腕の神経をねじり切る。

 

「があああああっ!!!!うぎゃあああああああああああっ!!!!!!!!!!!」

 

ラングは、無惨であった。

 

両方の入口からアリティア軍が流れ込み、玉座の裏の隠し通路も、何故か開かなかった。

 

勿論アイシャの仕業である。

 

 

ラングが、倒れこむ。

 

「ゆ、許してくれぇ・・・・・・ ほ、本当に、こ、皇帝の命令だったのだ・・・・・・

わしも、好きでやっていたのでは・・・・・・」

 

嘘なのはわかっていた。

民を苦しめずとも、グルニアやアリティアを陥れることは出来た。

娘をさらい、犯し殺すことも、略奪をすることも、全く必要なかったはずだ。

たとえ本当に民を苦しめる事まで皇帝の命令であったとしても、この男が嫌々やっていたなどとは誰も信じなかった。

 

「黙れ」

 

低く、低く響いたのはシリウスの声だった。

 

ぞん。

 

そんな音と共に、ラングの舌と顎がかき消えた。

ダルマにされた上にあぎとを絶たれ、ぐしゃりと倒れこむ。

 

 

 

・・・・・・ユベロは、必死で心を保っていた。

 

優しかったみんなが、怒り狂って、ラングを嬲っていた。

自分もラングは『大嫌い』だった。

ユミナにも、髪を引っ張ったりして乱暴だったし、優しかったロレンスが死んでしまったのは、この人のせいだっていうのも聞いた。

皇帝のせいだっていうのも嘘なのはちゃんとわかる。

 

それでも。

 

 

かわいそうだ。

 

 

 

だけど。

 

 

 

 

 

(ぼくは、ひどいことをされたら本気で怒るんだぞって、みんなに見せなきゃいけないんだ。

僕の国に勝手なことしたら許さないぞって、怒れなきゃダメなんだ。

そうじゃなきゃ、だれも僕のために頑張ろうって思わない。

 

僕だって、熱心に、わかりやすいように、でも、甘やかさずに教えてくれる先生が好きになっていった。

僕に一生懸命になってくれるから、僕もがんばれた。

 

なら。

 

僕もグルニアのみんなに、こくみんに、一生懸命でなきゃダメなんだ。

いくらこの人がかわいそうだと思っても、この人のしたことを許しちゃったらダメなんだ!!!)

 

 

マルスを見ていて、そう思った。

 

本当に、みんなに一生懸命で。

みんなのことを大好きな人で。

 

だから。

 

アリティアが攻められた時に、泣いて、怒って。

必ず取り戻すと誓って。

 

グルニアのことだって、本気で心配して。

 

僕の代わりに、取り戻そうとしてくれた。

 

 

ぼくも、おもった。

 

この人のために一生懸命になって、そして。

 

 

 

ちゃんと助けになれるだけの力が欲しい。

 

 

 

なら。

 

「・・・・・・ぼくにも、やらせて」

 

 

何故だろう。

 

オグマの叫びより大きく、マルスの言葉よりはっきり、シリウスの声より低く響いた。

 

 

皆が静まり返り、その道をあけた。

 

 

「わが手のひらに、かぜよみちよ。やいばとなって、わがてきをきりきざめ・・・・・・」

 

ゴォッ!!!!

 

「風刃烈閃っ!!!! シェイバーーーッ!!!」

 

 

ビシャアァッ!!!!!!

 

「・・・・・・っ!!!!!!!」

 

 

文字通り、八つ裂きとなったラングは、完全に絶命した。

 

村でウェンデルから託されたというシェイバーだった。

 

お守り替わりぐらいに皆思っていた。

 

違った。

 

 

涙を流し、ふるえながらであっても。

いや、恐怖の中にもかかわらず、やらせて、と呟いた彼だからこそ。

 

シリウスが膝をついた。

 

今こそが、シリウスが本当に彼の騎士となった瞬間なのだろう。

 

 

ユベロは彼の肩に手刀をおいた。それは紛れもなく、叙勲。

 

騎士と名のつくものは、一人残らず心を震わせた。

 

 

 

 ・

 

 

 

グルニアは解放された。

 

 

わずかな時間も立たぬうちに、外から地鳴りのような声が聞こえた。

 

 

グルニアの民が開放を喜び、集まってきたのである。

 

 

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

止まぬ声。

 

 

「彼らが、彼らこそが民です。

貴方を守り、貴方が守らねばならぬ者達です。

 

貴方がここにいることを、自分の幸せが続いてゆくことと同じ意味を持っていると信じている人たち。

 

貴方がこれから何をなすかによって、不幸にも幸福にもなる、グルニアという名の国で生きている、生きていこうとしている人たち。

 

彼らの今の顔を忘れてはなりません。

 

 

貴方がここにいること。

何を背負っているのかということ。

 

貴方に一生懸命な人たちが、ここで微笑んでいることを・・・・・・」

 

 

ユベロは、そのことを正しく理解した。

おどおどとはせず、苦い顔さえせず、ただ皆の方を向いて、頷いた。

 

その横顔には、幼いながらも風格があった。

 

ユミナは、それを見て、皆と同じように微笑んで。

 

彼と同じように、皆を見て頷いた。

 

 

悪の巣は潰え。

 

グルニアが、立つ。

 

 

第6章 悪の巣 終

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