FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第6章外伝 傭兵部隊

オルベルン城に捕らえられていた者たちの中には、なんとウェンデル司祭がいた。

 

「こんなところに!!

しかし、ご無事で何よりです」

「おお、マルス殿。ラングは、私が王子たちと懇意なのを知っていて、私を捕らえたようです。

私にはガトー様から託された使命があるというのに、とんだ時間をくってしまいました」

「大賢者ガトー様から?

一体どんな使命を・・・」

「王子にならお話しても良いでしょう。

一年前の暗黒戦争のおり、ガーネフと戦う術を持つため、暗黒魔法マフーを破るために、スターライトという魔法をガトー様に授けていただいた事は記憶に新しいかと存じます。

その時基となったのは、星と光のオーブというものでしたね。

その片割れ、星のオーブは、その中に12星座の星の並びをうつす宝玉。

このオーブは、その時の衝撃で12のかけらに分かれ、大陸中に飛び散ってしまったというのです。

 

この『オーブ』は本来5つあり、ひとところに収めてこそ意味があり、失われたままでは、世界のバランスを崩してしまうと言われています」

 

「!!!!??

話が大きすぎる気がします。にわかに信じ難い。

しかし、ガトー様から伝え聞いたと司祭がおっしゃるのなら、疑うべき話ではない。

それに・・・・・・

 

今思い当たりました。

その、星の欠片というのは、これのことではないですか?」

 

マルスは、トラースを倒して手に入れた小さな宝玉を見せた。

アイシャがリュッケから手に入れたものも。

 

「おお・・・おおお!!!

間違いありませぬ、これです!!!

これを12個集めて、ガトー様のもとへゆかねば!!」

「我々はこれからカシミア大橋を渡ってアリティアに戻り、アカネイアと戦い我が国を奪還します。

その中で手に入れることがあればお渡ししますし、事が片付いた後ならご協力します」

「・・・・・・うむ、そうですな。どちらも機を逃してはならぬこと。

私もお供しまする。

ああそれと、ラーマン神殿には足を運んでくださらぬか。

あの場所には古代の宝物が納められている。

星の欠片も紛れているやも」

「わかりました。通り道でもありますし、行きましょう!!」

 

アリティアを目指す中、まずラーマン神殿によることとなった。

 

グルニアは開放したばかりである。せっかく拠点を肩代わりしてくれるグルニアを失うわけにもいかない。となると、全軍で行くわけにはいかない。

 

またいくらかの仲間たちに任せて行くべきであろう。

 

マルスはジェイガン、ルオやアイシャと相談し、連れて行くメンバーを決めていった。

 

 

「シリウス、君は僕らと来たいという話だったけど、いいのかい?」

「というと?」

「いや、ほら・・・ ユベロ王子と・・・

そうだ。君達は主従の儀式をしていただろう」

「ああ。しかし、私にはやらねばならぬことが出来た。グルニアはもう大丈夫だ。なぜなら・・・

アリティア軍がアリティアを取り戻すための足がかりにしたからだ」

「・・・・・・」

 

成る程。

ここを死守する意思があるのなら、自分が是が非にでもここにいる事もないということか。

 

「何より、ユベロ王子が同行を希望している。

無理もない。

幼少時代の殆どを人質として石牢で過ごされ、ウェンデル司祭に預けられたあとも、戦場を見ることはなかった。

活気のある市場や、遊戯や見世物も。

興味があるというだけではない。民の生活を知らねばという使命感もあろう。

なれば、出来うる限りお望みのようにして差し上げたい。

となると、次期王位継承者であるユベロ殿下には、私が直々につきたいのだ」

「・・・・・・わかった」

 

シリウスほどの男が残ってくれれば、連れて行ける仲間ももう少し増やせたが、こうなると、信のおけるアリティア騎士を十二分に配置せねばならないだろう。

 

そのへんも加味し、ゴードン、ドーガ、フレイ、ノルン、そしてサムトーに残ってもらうこととなった。このメンツでユミナ王女を守ることとなる。

 

また、アカネイアを完全に敵に回したとなると、マケドニアの方にもいくらか増援を送っておかねば不安が残る。

カシム、リフ、パオラにそちらに行ってもらうこととなった。

 

マケドニアの方は、アランなら実務能力もあるし、マチスやウォレンなど、地元の有力者がいる。

それでパオラに帰ってもらえば、十分すぎる統治ができるだろう。

 

「パオラさんの飛兵という特性は、私としては手放したくなかったですけどね。

彼女の腕のほどは、カチュアさんにも劣りません。人心掌握や指揮能力に至っては、我が軍でも指折りです」

「だからこそ、マケドニアの憂いが完全に払拭できる。

手痛い戦力減退だけど、メリットも大きい」

 

マルスとアイシャは意見を交わし、細かい所を詰めていく。

こういう話だと、ルオは、蚊帳の外とはいかないが、あまり口を出す場面がない。

その通りだなあという話がとなりで飛び交うだけだ。

 

「ルオは何か意見はあるかい?」

「・・・あ、はい。

えーと・・・

 

いや、特に。

 

これで、アリティアを取り戻すための進軍部隊は、

 

アリティア騎士は僕を含む近衛隊、ルーク、ロディ、セシル、ライアン。そしてシーダ様。

そして、シーダ様の希望でオグマ殿。

星の欠片の捜索で同行されるウェンデル司祭。

ユベロ王子とお付きのシリウス殿。

本人の強い希望でリンダさんとカチュアさんとマリーシア。

そしてバーツ殿と・・・

ジュリアン殿とリカード。

 

アイシャの『飛兵』に関する危惧も、シーダ様を戦力としてみていいのかは僕の口からは言い出しにくいですが、助力していただけるなら心強いです。

羽のように軽い『ウイングスピアー』は、騎士や重騎士の鎧の隙間を突くのに適していると聞きます。

 

それぞれの武器に精通しているものはいるようですし、主力となる騎馬は十分。

十分かと」

「・・・うん。問題ないだろう。

準備が終わり次第、進軍にかかろう」

 

 

マルス、ルオ、近衛隊のルーク、ロディ、セシル、ライアン。そしてシーダ。

オグマ。ウェンデル司祭。ユベロとシリウス。

リンダとカチュアとマリーシア。

バーツ、ジュリアン、リカード。

 

2日後、進軍は開始された。

 

 

 ・

 

 

ユミナ王女は気丈に振舞っていた。

既にノルンらアリティア騎士とは打ち解けているようなので大丈夫だろう。

それでもいつまでも手を振っている姿には後ろ髪を引かれた。

 

まずはラーマン神殿を目指すわけだが、グルニア領内でもあるし、あっさりと着くはずであった。

 

しかし・・・・・・

 

 

「マルス様ーーーーーーーーーっ!!」

「カチュア。何か見つけたのかい?」

「はっ。この先の砦に傭兵団が伏兵を置いているのが見えました!」

 

ここはグルニア領内だ。

そこでマルス達が聞いていない作戦行動をとっている時点で敵なのは確定だ。

 

「どうするかな・・・

傭兵団の一団くらいなら遅れを取るわけもないが、大掛かりな罠に万一かかって、被害を受けてもつまらない」

「僕が先行してきましょうか?」

「私もそれがいいと思いますぞ。ルオ程の剛の者なら、多少の小細工はものともしますまい」

「・・・分かった。

部隊を選抜して先行してくれ。

それから、僕も行く」

 

皆、『またか』という顔をする。

止めても無駄なのもわかっていた。

 

「来ないでくださいとはもはや言いません。僕も」

「しかし、王子はこの軍『そのもの』と言える重要な存在である事を忘れないでください。

王子が戦死されれば、みな、祖国も大陸の未来も投げ捨て、その場でそっ首を自分で切り落とすつもりでいると覚えておいてくださいね」

 

横からぼそりととんでもない事をアイシャが言う。

 

「あ、アイシャ・・・」

「それくらい言わないとダメよこの人は。

みんなを大切に思ってるのに、そのみんながそれ以上に自分を思っていることにピンと来てないんだもん。

それともルオ。みんな、マルス様をむざむざ死なせたら、みんなその後まともに生きていけると思う?」

「・・・・・・」

 

二の句が告げない。

 

「そんなわけで。

万一にも倒れないでくださいよ」

「うん」

 

王子のその声は若干震えていた。

感じるものがあったのかもしれない。

ならばなんとかなるだろう。

 

ルオは、先行させる部隊を選ぶ。

 

 

 ・

 

 

「あんた達は、あんた達自身が人質なわけ。

暗黒戦争を一緒に戦った仲間なんでしょう?

アレだけの仕打ちを受けたハーディン皇帝にだって、あいつらは憎しみを持ちきれてるとは言えないんだもの。

 

さあ、行きなさい!」

「・・・・・・」

 

クライネに雇われて持ち場の砦につき、アリティア軍を待つのは、かつての仲間、ラディとシーザであった。 

 

「ウキキキキキキ。せいぜいがんばれー」

 

程なくして、知らせが入る。

包囲が成功したと。

 

 

 ・

 

 

「やった!!成功だよシーザ!!

これで、あいつらを倒せれば、金が手に入る。

あの子の病気を治してあげられる・・・!!」

 

シーザの妹は、病にかかっていた。

治らない病気でもない。しかし、ある程度の間薬を飲み続けねばならず、その薬も高価だった。

 

「ラディ、今更だが、お前が俺の私情に付き合うことはない」

「ほんとに今更だね。でも、俺だって俺の私情さ。

シーザの力になりたい、それだけだ。

ここまでのエゴがあるかい?」

「わかった。

・・・・・・感謝する。

 

行くぞ!!」

 

どんな戦いにも、命はかかっている。

これが美談であるわけもない。

それでも。

 

それでも。

 

 

  ・

 

 

アイシャの報告から割れた、傭兵団の正体。

それはかつての仲間であった。

 

「シーザと・・・ラディ!?」

 

金で動く傭兵を、雇っただけのこと。そういってしまえばそれまでだ。

しかし。

マルスは方針転換をする。

 

「応戦は仕方ない、だが、出来るだけ将の撃破を目標にして、降伏を促す!!」

 

みな、そう言うだろうと思っていた。

それゆえに行動は迅速であった。

 

「ライアン!! 対岸から敵将を足止めしろ!!

セシル、ロディ!! 左右の橋を封鎖してくれ!!

シーダ様はマリーシアを守りつつ、弓の届かない所へ!!

僕は・・・彼らの相手をする!!」

 

ルオは目の前にいるアーマーナイトを打ち倒す。

ロディとセシルは・・・

 

「『倒さない』戦いをするなら、こういうものが」

「役に立つわね!!」

 

彼らが持ち出したのは、グルニアで市民が差し入れてくれた物資の一部だった。

 

ロクに切れないなまくらや、穂先のない物干し竿。

 

しかし確かにこれは便利であった。

倒しきれないということは、次の敵の相手をせず、あしらう事が出来るという事だ。

 

今回のような戦いでこそ威力を発揮するものだった。

 

「いっけええええっ!!!」

 

ヒュガッ!!!!

 

ライアンの放った、ゴードン愛用の弓からの一撃は、相手の将の眉間を一発で貫いた。

 

「え・・・」

 

「ウ・・・ウギ?

こ、これで終わり??」

 

よくよく見れば、それはカタリナを迎えに来た仮面の男であった。

 

 

  ・

 

 

将を失って総崩れとなった傭兵団の捕縛はいと安かった。

 

「・・・・・・完敗だ。

どうとでもしてくれ」

 

シーザもラディももう気力はない。

 

「なら、頼みがある。

君たちを雇いたい」

 

「!?」

 

驚いたのはシーザとラディだけだった。

 

「気持ちは嬉しいが、俺たちは傭兵だ。金で動く。

国を失ったアリティア軍に、そんな金はないだろう」

 

「あるさ!!」

 

その声は、ルオだった。

 

「僕達は必ずアリティアを取り戻す。そうすれば金はできる」

「・・・・・・

本気で、アカネイアと戦うつもりなのか?」

 

続いて、アイシャが口を挟んできた。

 

「どう取ろうと勝手だけど、あたし達はそうするしかないのよ。

それに、それはあなたたちも同じでしょう?

任務に失敗した以上、今回の報酬は出ないのよね?

しかもそれで信頼をなくした傭兵団を、この先誰か雇うとでも??

後がないのはお互い様よ。

 

ついでに言わせてもらえば。

 

 

私達の系列の盗賊ギルドの拠点の一つに『リミエアーディル』の花の群生地があるんだけど、興味ないかしら?」

「!!!!!」

 

リミエアーディルとは、『とある』病気に効くとされる、僻地にしかない、手に入れるのが困難な薬草だ。

当然高価だが、それは希少性によるものなのである。

そして、今このタイミングで出したそれがどういう意味を持つのかはわざわざ語るまでもなかった。

 

「・・・・・・全部お見通しというわけか」

「どんなことをしても成し遂げたいことがあるなら、それを叶えてあげることは最大の枷になるわ。

信用だけで生きる傭兵は尚更ね」

 

もう、決まったようなものだった。

というより、断る理由がない。

 

「オレ達はアリティア軍に忠誠を誓おう」

 

 

また、かつての仲間が集まったのであった。

 

 

 ・

 

 

その、少し前。

 

この戦いを見下ろしていた二人がいた。

 

「うっわ。あっさりと負けたわねえ。

・・・あんたのニセモノ」

 

それは、クライネと。

 

「いあいあ、偽物とは違う。

オレ達、みんな本物。全員がオレ」

 

あの、仮面の男であった。

 

「どうでもいいわ。で、どうすんの?」

「あいつら強い。今度はオレ達、『全員』でかかる」

「・・・ま、勝手にしなさい」

 

猿が笑うような奇妙な笑い声が、森に静かにこだました。

 

 

 ・

 

 

「そうだルオ。『オーブ』の話なんだけど」

「え・・・ な、何かわかったの!?」

 

行軍中の雑談であるが、アイシャはこういう時にさらっと重要なことを言う。

 

「わかったというか・・・

ほら、こないだの。トラースの持ってた、小さな星座の入った宝玉」

「ああ、うん」

「アレに似た物を発見したら、マルス王子かウェンデル司祭に報告しろって言われたでしょ」

「言われた」

「5大オーブと呼ばれる物のうち、光と星はスターライトという魔術書のために、先の大戦で大賢者ガトーが使ったとされているわ。

そのうちの『星のオーブ』は、『十二星座のすべてを小さな真珠のような星の並びで写す、透き通った蒼きオーブ』だそうよ」

「へえ・・・・・・

 

 

・・・・・・って!!!!」

 

「そう、いろんな部分でトラースが持ってたものと重なるでしょ?

しかもそれを『見つけたら報告しろ』って言われてるってことは、探してるわけよね。

しかも、知ってる二つが、十二星座のいずれかの星の並びを移しているとなると、全部で十二個?

そして、大賢者ガトーとつながりの深いウェンデル司祭とあってすぐにその命令が出てるんだから、もう間違いないんじゃない?」

「ウェンデル司祭の使命は、『星のオーブ』のかけらを集めるってことだと!?」

「となると、ルオはこの戦い、一抜けたは出来ないわね」

 

そもそもする気もなかったが、これは良い知らせであった。

自分がこの世界に放り出されることになった原因なのではないかと考えた、『世界のバランスが崩れる』原因となった、『失われたオーブ』の話。

その内の一つに、かなり近い位置に今いるのかもしれないのだ。

 

「アイシャ」

「ん?」

「ありがとう」

「ん」

 

礼を言う彼の声音は、心地いい。

それは彼女にとって、何より大切なことだ。

 

第6章外伝 傭兵部隊 終わり

 

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