FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第8章 ソウルフル・ブリッジ

カシミア大橋を渡ったまでは良かったが、中間点の島まできた所で問題が発生した。

 

対岸にいる敵の防衛軍に完全に警戒態勢を取られたのである。

 

「ここは大陸とグルニアを結ぶ唯一の橋。個人や少数ならともかく、軍隊が気づかれずに渡るのはさすがに無理だったってことね」

「それでも渡れないでは話にならない。アストリア殿の勇者隊を捲けたのはアイシャ、君の手柄だ。

ここからは任せてくれ。と言っても、正面突破しかない。今のアリティア軍なら、其の辺の部隊には負けない」

 

そう言って突破を約束するマルスだったが、そう甘くはなかった。

 

「マルス様!

カイン教官がこられました!!」

「本当か、ルオ!!」

 

一騎だけであれば、こちらの伝令かと思い、制止するのに躊躇するという話がある。

それに則って、カインはカシミア大橋を単騎でかけてきた。

 

カインは馬を降りるなり、地に頭をつける。

 

「マルス王子!!ご無事でなにより・・・

そして、申し訳ありませんッ!!!

アリティアをみすみすアカネイアに・・・」

「いや、よく戻ってくれた。

国は取り返せばいい。だけど、信のおける臣下は、簡単には得られない。

君がここに戻ってきてくれたことは、アリティアを失った悲しみを忘れさせてくれる。

力を貸してくれカイン!!」

「はい。 ・・・・・・はいっ!!!

し、しかし、ここはもう危険です。まもなくハーディン率いるジェネラル級重騎士隊が到着してしまう。彼らも脅威ですが、なによりハーディン本人がヤバい。

やつには攻撃が『全く』通じない。

アリティア城は最終的にはヤツ一人で落城したようなものです」

「!!? ・・・・・・どういうことです教官。

それはもう人間じゃないでしょう」

「いえ・・・」

 

ルオの疑問に答えたのは、アイシャだった。

 

「似た話をひとつだけ知ってる。

というか、暗黒戦争の英雄たるお二人なら、すぐにピンと来るんじゃあ」

「「・・・・・・!!」」

 

「ガーネフ、か」

「!!!」

 

闇魔法、マフー。

思えばそれにそっくりである。

 

「どちらにしろ、今どうこうできる問題じゃないってことですよね。

なら、早いとこ脱出したほうが」

 

ルオの言うことももっともだった。

 

「よし、全軍対岸に移る!!

輸送隊の護衛と、血路を開く部隊に分かれたら進軍を開始!!」

 

カシミア大橋を舞台に、橋上戦が始まる。

 

 ・

 

いくつもの報告が錯綜する中、撤退戦を始めねばならなかった。

その中で、近衛隊は役割を果たしたと言えるだろう。

 

「星の欠片らしきものを、近くの村で奪ったという盗賊が逃亡中!?

誰か追いかけろッ!!!」

「俺が行くぜ!!

一発でキメてやる!!おらー!!」

 

南の橋を渡って、また勇者隊の前を通り過ぎる危険な任務だったが、ルークはお構いなしに飛び出した。

結果的に難なく帰ってくるが、ああいう端的に過ぎる命令は今後避けようと思ったルオだった。

 

 

橋の防衛をしていたロジャーはシーダが仲間に引き入れた。

「アカネイアに逆らっても勝てるわけない」と言い始めたので、諦めて帰ろうとしたところ、「やっぱりついて行く」と言い始めたらしい。

 

「かなり情けないこと言ってたし、本人にも自覚はあったんでしょうね。そこを『やっぱり仕方なく戦っているのね。優しいままのあなたでよかった』なんて言われたら、クラっとくるわよ」

「相変わらず天然だねあのお姫様・・・」

 

また、バヌトゥの姿を見かけたというので、チキがいるのならともに保護せねばとマルスが向かったが、本人だけだったらしい。

 

「チキはガトー様のもとにいるそうだ」

 

バヌトゥは同行することになったそうである。

 

「火竜石があるなら働くぞい」

「そういえば、ライアンが倒した火竜が持ってた気が・・・」

 

働いてもらうかどうかはその時決めるとして、またかつての仲間との再会であった。

 

進軍は進むが、問題も山積みである。

 

「北の橋のたもとには、スナイパー部隊とジェネラル部隊・・・

どうにかしないと、それに・・・

北の城を守っているのはジョルジュさんよ」

「僕が話してみる。血路を開いてくれ!!」

「マルス様っ!! 大変です。アカネイア帝国軍の増援が!!」

「アストリア殿の勇者隊も、突入準備が整いそうです!!」

 

逃げ場のない橋上で、大混戦となりそうであった。

 

「くくく・・・・・・

 

ジェネラルナイツ、ゆけぇっ!!!

奴らを踏み潰してこい!!」

 

ハーディンの号令の元、ジェネラル級が動き出す。

 

 

東からはジェネラル級、南からは勇者隊。まさに絶体絶命であった。

 

「僕が弓騎士を誘い出す!!みんな、協力してくれっ!!

マルス様は早く城の方へ!!」

「わかった!!」

 

しかし、その時。

 

「来たか・・・アリティアの敗残兵どもよ」

 

ハーディンが姿を見せた。

 

「「「!!!!!!!!!!!!!」」」

 

宝槍グラディウスを手に、迫り来るハーディン。

マルスは、今の今まで、もしかすると、すべては何かの勘違いではないかと思っていた。

 

消し飛んだ。

 

目が血走り、土気まで出ている歪んだ顔。

これがあの、ハーディンだろうか。

まさに草原を駆け抜ける狼のような、どこまでも自由に、しかし研ぎ澄まされた、男さえ、いや男だからこそ見惚れるような男だったハーディン。

皇帝の印として作られた豪奢な鎧も、アカネイアに着せられた柵そのものにしか見えず、醜く歪む表情はまるで悪鬼だ。

 

「・・・・・・・・・

 

ハーディン。なぜ我が国を攻めた。なぜ僕らを追い詰める。

僕らが一体、何をしたと言うんだ?」

「五月蝿い」

 

震える声で、それでも尋ねたマルスの言葉に返った答えは端的だった。

 

「そもそも最初からカンに障ったのだよ貴様は。

戦場のなんたるかもまだ手探りのようなガキが、勇者アンリの子孫というだけで、アカネイアの覇者の証を手にしおって。

その後のことにしても、各国の英雄たちが成し遂げたことを全て自分の手柄にしてしまいおって。

身の程の多少はわきまえていたと見えて、何を褒美にねだることもなかったが、そのおかげで莫大な名声を手にしおった。

『世界を救いながら何も求めぬ、清廉の英雄』などと!!

おかげで各国が荒廃から未だ立ち上がれぬ中、各地から移民が絶えず、アリティアは急速に復興し、既に各種祭りや、騎士団の再建まで終わっている。

 

貴様は国ごと目障りなのだ!!

 

しかもニーナめ。俺があそこまでつくしてやっているのに、ファイアーエムブレムを貴様にやってしまったというではないか!!

アカネイアの覇者の証が他国の王の手にあるなど言語道断だ!!

恥となるので公表はしないが、なれば我自ら取り戻さねばなるまい!!!

 

死ね。

死んでアカネイアの礎となるがいい!!

この腐れた大陸は、貴様の墓標がお似合いだ!!」

 

「なっ・・・・・・」

 

マルスは絶句した。

曲解もいいところだ。

最後のセリフも聞き捨てならない。

 

あの戦争の名声を殆どマルスが手にしたというのは否定できない。が、それは結果論だ。

少なくともマルスは常に『皆の力があったから』と言い続けてきた。

それを奥ゆかしいとか清廉とか言い続けたのは民だ。

しかもそのせいで膨れ上がった移民。

確かにこれどほ早い復興が出来たのは、単純に人手があったからではある。移民たちのおかげだ。

しかし、その移民たちは来た当初は難民だったのだ。

故郷にこのままいては食べていけない、大陸中どこに行っても、復興途中で受け入れる余裕がない。

その中で、ギリギリの線まで難民を受け入れたのはアリティアくらいだったのだ。

するべき事を見つけて動き出してくれるまで待ち、税を払って定住してくれるまで世話をし、もらうものをもらってまた何処かへ行ってしまう者を管理する体制を・・・

マルスや騎士団がどれだけ苦労したと思うのだ。

 

マルス自身は、自分はそうあるべき立場であると思っているからそこはいいが、今までついてきてくれた部下に申し訳が立たなかった。

 

「そうなのか・・・・・・ハーディン。

そんな、ふうに・・・・・・!!」

 

「殺してやる、殺してやる!!!

ニーナもガーネフにくれてやったわ!!!

アカネイアの王たる存在は我一人でいい!!

他は皆死ね!民さえも死んでしまえ、いや民こそ死につくせ!!!

人間などどいつもこいつも醜すぎる!!

すべてが死に尽くした荒野に、この俺が君臨する未来のみが、この大陸のあるべき姿だっ!!!」

 

狂っている。

何がハーディンをここまで歪ませたのだ。

 

そして、そんなことをしている間にも、ジェネラル級部隊や勇者隊は迫り来る。

 

「マ、マルス様指示をっ!!!」

「退避ーーーーーーっ!!」

 

なんとか勇者隊も足止めに成功し、ジェネラル級部隊も押さえ込む。

近衛隊の活躍が目についた。

マルスは北の砦に向かって叫んだ。

 

 

「ジョルジュ、弓を下ろしてくれ!!

今の話を聞いただろう、ニーナ様がガーネフに奪われたと!!

スターライトで滅したはずのガーネフの名がどうしてここで出てくるのかはともかく、今のままのハーディンにこの大陸を任せておくわけにはいかない!!!」

「・・・・・・」

 

その時。

砦の門が開き、ジョルジュが何も持たずに佇むのが見えた。

 

「! あ・・・」

 

あまりにもあっさりと聞き入れてくれた。

勿論、罠という可能性も捨てきれなかった。

しかし。

 

「皆、砦に!!体制を立て直す!!!!」

 

それを受けて、ルオも激を飛ばす。

 

「近衛隊はしんがりを務める!!

各々、奮戦してくれ!!!」

「「「応っ!!!!!!!」」」

 

 

 ・

 

 

なだれ込むアリティア軍を見つつ、ジョルジュは思った。

自分は流れに乗るのをよしとしてきた。家も部下も抱えている身で、勝ち馬に乗る、乗れる、乗る努力をするというのは最低限のことだ。

 

だが。

 

「許せよ、ミディア、アストリア。

俺は。

 

ニーナ様をこそ守る」

 

総崩れになりながらも、アリティア軍は勇者隊とも交戦。引けを取らぬ戦いを見せる。

 

「あの時の・・・

ルオといったか」

 

あの時の若僧が。

 

そう、目を細めた時に、勇者の絶叫が響いた。

 

 

アリティア軍は、無事砦に逃げ込んだ。

 

「ジョルジューーーーッ!!

この、裏切り者がぁあっ!!!!!!!」

 

城門前では、宝剣メリクルを振り回すアストリアが。

親友がジョルジュを罵っていた。

 

ジョルジュは、クスリと笑った。

 

まるで、ぐずる子供を『しょうがない子ね』とあやす母親のような微笑みであった。

 

第8章 ソウルフル・ブリッジ 終

 

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