FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第9章 魔導の聖域

アリティア軍が命からがら逃げ込んだ北の砦では、ジョルジュとの再会が待っていた。

 

「助かったよジョルジュ。もうダメかと・・・」

「アストリアよりは真実を見抜く目があるつもりですよ。今のアカネイアに正義はない。

利も、理もね。

その目のある分一途さが足りないのかもしれないが、俺にとってはそんなものは野良犬にでも食わせるべきものだと思ってる。

勿論・・・・・・

アストリアみたいなヤローには、大事にして欲しいもので、目を覚まさせるのが俺の役目と自負もしていますがね。

まあそんなことより。

 

とっとと逃げましょう」

「!?」

 

一同唖然とするが、間髪いれずにアイシャが口を挟む。

 

「当然ね。

こんな小さな砦に立て篭ったってアリティア城の二の舞よ。

ルオ、あたしと一緒にしんがりを務めなさい」

「・・・反対も文句もないけどなんでまた」

「そりゃあ、一番被害を受けずに済みそうなのがあたしら盗賊ギルドの面々で、 !  万一の時に・・・その・・・」

 

途中まで出かけた言葉を言いよどむ。アイシャらしくない。

でも、こんな時どうするかはルオはわかっていた。

 

「いや、そうだね。

多分、その時の僕はいつの時の僕より強いだろうから」

 

ひやかす口笛もならない。

アイシャの顔は真っ赤である。

 

明朝、いや、夜明け前に。

アリティア軍は、中立地帯であるカダインに向かうことにした。

 

 

 ・

 

 

軍議の後、もめているふたりがいた。

 

「ロディ!!

なんで軍議の時、私に椅子を譲ろうとしたの!!」

「いや・・・別に普通のことだろう。

女性を立たしたまま、自分が腰を下ろすなんて、そんな気分にはなれん」

「あたしは貴方と同じように鍛えてるわ。

そんな事で苦痛を感じたりしない。

あたしは、侮られるのが一番イヤなの!!」

 

ロディは鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をした。

紳士的に振舞って、文句をつけられるとは思わなかったのである。

 

「侮ったりはしていない。むしろ、ないがしろにしないように努めているつもりだ。

君の事は認めているよ。男も女もない。いや、女ならではの流れるような身のこなし、無駄のない体躯、軽量であるがゆえの騎馬兵としての抜きん出たその速さ。

それは俺には望むべくもないものだ。

であるからこそ、君を尊する証として、軍議で席を譲り、あの場に堂々といて欲しかった。

我ら近衛隊の一人として。

君のこだわりはわかる。そして俺は、君を認めている。だからああしたかった。

君の気に触ったのなら謝ろうとは思う。けれど、きっと君が思うような考えで、俺が席を譲ろうとしたのではないことをわかってくれ」

 

そこまで言って、セシルの様子が変わっているのに気がついた。

 

瞳が潤み、顔を真っ赤にし、口元は歪んでいるというのに、その、まるで生まれたばかりの命のような輝きが、セシルから感じられるのだ。

 

「そんな、そんな言葉になんか騙されないんだからぁっ!!!!!」

「セシル!!?」

 

そのままセシルは走り去ってしまった。

 

と同時に、物陰からひょこりとルークが顔を出す。

 

「・・・よお。色男」

「何の話だ、ルーク」

「まあ、お前はそうなんだろうよ天然ジゴロのロディ。

あそこまであいつの欲しかった言葉を的確に言った上、意識もしちゃいない。罪なやつ。

セシルがもう少し素直になれば、どうとでもなるだろうにな」

「・・・・・・

素直になどとはよく言ったものだな。

ルーク、聞いたぞ。お前、俺が『騎士になったきっかけはなんだ』と聞いたとき、『モテたかった』とか言ったが、違うそうだな」

「!   ・・・・・・誰から聞いた?」

「ジェイガン様だ。

怪我を負って騎士になれなくなった兄の代わりになろうとしたんだろう? 立派な動機じゃないか。

隠すことはもちろん、恥じることではけしてない」

「・・・・・・お前ホントに天然なんだな。

けどやっぱ、俺はお前みたいな立派な動機とは言えないさ。お前は腹空かせた兄弟のために騎士になったんだろ? 

俺は逆に自分のためさ。

 

俺は兄貴の代わりだった。予備だった。だから、兄貴の代わりに騎士になるなら、コネでなれたんだ。

 

・・・でも俺は嫌だった。

俺は俺だ。家柄とかそんなもん背負う前に、ただの俺はもっとスゲエはずだ。

それを、証明したかった。

だから。

俺は、試験に臨んだ」

「・・・・・・」

 

ロディの感想としては、『どっちが天然だ』だった。

しかもこいつはそれを成し遂げ、現実にした上に、今や王を守るエリート部隊、近衛隊。そのリーダーに続く、エースなのだ。

こんな『立派な』奴がどこにいる。

 

言うのはやめた。

これ以上天然に『天然』と言われるのも業腹だ。

 

「せいぜいふさわしい女性に惚れられてくれ」

「おうよ!!」

 

 

 ・

 

 

カダインには、マリクもいる。

中立地帯になら、ハーディンも手を出しにくいはずであった。

 

だが。

 

「マルス様、大変です!!

カダイン魔導軍が我々に攻撃を!!」

「!?

ここは中立地帯ではないのか!?」

「つい先日、一部の導師達がクーデターまがいのことを・・・

彼らはアカネイア側についた模様!!」

「!!!!!

そんな・・・

じゃあ、マリクは一体どうなったんだ!!」

 

どう希望的観測を入れても、親アリティアの筆頭、アリティア貴族の出であるマリクが無事とは思えなかった。

 

愕然とするマルスを、ルオは叱咤する。

 

「マルス様、ここは迷う場面じゃない。

親友を助けに行くんでしょう!?」

「ルオ・・・

そうだな。うん。そうだ。

みんな、協力してくれ!!!!

マリクを救い出す!!!!」

 

おおおおおおおおおっ!!!!

 

 

逆境に次ぐ逆境。

しかし、彼らはその度に立ち上がった。

今回もだ。

 

その鬨の声が砂漠に響き渡った時。

 

 

ヴァサアッ!!!!!!!!!!!

 

 

「!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

一匹の竜が、砂漠を横切り、通り過ぎていった。

 

 

 ・

  

 

見事な飛竜を見上げながら砂漠にいたのは、カダイン側の方も同じ。

一瞬の動揺だけを残して、任務に戻る。

 

カダイン魔導軍には、モノクルの魔道士、エッツェルがいた。

 

「マルス王子が反乱、ねえ・・・

それがホントならこの扱いもやぶさかではないが・・・

はてさて」

 

彼は直接マルスを知っている。

それ故に、反乱を起こしたという話自体、信じられなかった。

 

 

 ・

 

 

その流れに続くように、アリティア軍を追う者達がいた。

 

「隊長!

アリティア軍です!!」

「中立地帯に逃げ込む気か。そうはさせん!!

やっとニーナ様の下、平和な時代が訪れたというのに。

勇者隊、ゆくぞっ!!!!

奴らを逃がすな、賊徒どもがっ!!!」

 

アストリアは、ここまで追いかけてきていた。

自らの信じる正義のために。

親友、ジョルジュと同じ、ニーナ様のために。

 

いくつもの思いが錯綜する砂漠の嵐の中、カダインは戦場になりつつあった。

 

 

 ・

 

 

「ルオ、ふと思ったんだけど・・・

さっきの飛竜、ミシェイル王子じゃない?」

「・・・・・・え、ホントに?」

「多分間違いないわ。見覚えあるもの。

ということは、あの村にもしかして・・・」

 

もしそうなら、ここだけの話ではない。

マルスに報告することにした。

 

彼は報告を聞くなり、判断した。

 

「・・・もしそうなら、僕が行かないわけには。

どちらにしろ、人をやらないといけない」

「マルス様。しかし、アカネイア勇者隊が来ているという話もありますぞ。

もたもたしていては、軍そのものが」

「わかっているよジェイガン。だが、もしミネルバ王女が来ていたらと思うと・・・」

「ぼ・・・俺が、出来る限り露払いをしておきます!!

マルス様は、マルス様のお考え通りに・・・!!」

 

足かせになる近衛など聞いたこともない。

力になるというのはこういうことのはずだ。

 

「・・・わかった。任せたよ、ルオ。

ルーク、君の部隊で僕の護衛を頼む。フィーナ、ついて来てほしい。そしてジュリアン。東の祠を探ってみてくれ。

他のメンバーはルオ、アイシャの指示で、カダインをおさえてくれ!!」

「「「「はっ!!!!」」」」

 

砂漠を舞台に、いよいよ戦端が開かれる。

 

 

 ・

 

 

その頃、村では運命の兄妹が別れを惜しんでいた。

 

「ここにいれば、マルス王子がアリティア軍に迎えようとするだろう。

お前にはあそこが似合いだ」

「・・・・・・

兄上は変わったな。いや、元に戻られた。

やはりあの時の兄上は、ガーネフに操られて・・・」

「いや、俺は俺の意思でドルーアと手を組んだ。

父を殺したのも、あいつが俺を認めず、追放しようとしたからだ」

「・・・・・・それぐらいせねば、聞き入れようとはしないだろうと父王もわかっていたのだ。

マケドニア王は、兄上に本当に期待していた。だからこそ兄上に厳しかったのだ」

「・・・・・・今になってそれがわからぬ程、俺も馬鹿ではない。それに、どのみち俺は、自分が間違っていたとは未だに思っていない。

ただ・・・・・・

あの時。

お前は俺と槍を交わし、全力であっても勝てるかどうかわからない俺を前に、それでも急所をはずしに来た。

墜落し、生死の境をさまよった俺が次に気がついたとき、俺を助けようと必死にライブをかけていたのは、俺が道具にして、ドルーアの人質にして見捨てたマリアだった。

 

俺は。

お前達には応えねばと思った。

それだけだ」

「ミシェイル・・・・・・」

 

国を失い、ただの男となった時に。

踏みつけにしてきた者たちをこそ、本当は守りたかったはずだったのを思い出した。

それを、愚かだと認めることは出来ない。

いや、結局マケドニアを失った今、どう言おうと正当化することは不可能だ。

それでも。

 

みとめるわけには、いかないのだ。

 

 

ミシェイルはそのまま、行ってしまった。

まだやることは残っていると言い残して。

 

マルスがミネルバを迎え入れた時、憂いを隠せぬミネルバの瞳に、涙の跡があった。

 

 

 ・

 

 

竜騎士と魔道士のコンビネーションで攻めてくるカダイン魔導軍は、思いの外てこずった。

盗賊が貴重な宝を持って逃げていくのを見逃すわけにもいかず、シーダやカチュアが飛び回ることになったのも痛かった。他に魔法を受け止める力のあるものもいないというのに。

 

「・・・せめてリンダさんに出てきてもらうべきだったかな」

「今更言わないの」

 

ウォームやボルガノンを使う司祭、そして遅々として進まない行軍。

輸送隊の警護も必要だったとはいえ、砂漠でこそその脚が生きる魔道士はいてもよかった気はする。

だが、そこは歴戦の勇士たち。

なんとかカダイン魔導軍を撃破した。

 

エッツェルとも、レスキューで呼びもどされたマルスが言葉を交わし、『マルスが反乱を起こした』というのが誤解なのもわかってもらえたのだった。

 

「僕がどういう人間なのかは、君自身が判断して欲しい」

「・・・そうだな。そうするさ」

 

また、ミネルバはカチュアらとの再会を果たす。

 

「ミネルバ様!!

よくぞご無事で・・・」

「心配をかけましたねカチュア。この、飛竜から振るう斧・・・・・・ アリティアとマケドニアの未来のために振るいましょう」

 

感動の再会ではあったが、ゆっくりしているわけにもいかない。

 

「急げ!!

カダインに逃げ込むんだ!!!

ここが中立地帯なのは間違いない。なかに逃げ込めば、とりあえず勇者隊は追っては来れない!!」

 

クーデターは起こりはしたが成立はしていないという。

敵だらけの砂漠か、混乱中の都市か。

勇者隊の追撃がある以上、選択の余地はなかった。

 

なんとかカダインに入り込んだアリティア軍。

 

そして、カダインは前述のとおり、混乱の渦中にあった。

 

 

第9章 魔導の聖域 終わり

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