FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第10章 魔道士二人

「・・・ここに連れてこられた理由はわかっているか」

 

見下すエルレーンを、マリクは見上げる。

その瞳には、焦りと憂いがあった。

アリティア城の落城を聞かされたと同時に牢に入れられ、アカネイアに忠誠を誓うまで出さぬと言われて、もう幾日経ったろうか。

ろくなものも食べておらず、空腹は限界だ。

それでもウェンデルの教え通り、心を保ち身を鍛えることを忘れずにいた。牢の中でも鍛錬を欠かさなかった。

だからこそ、衰弱だけはしていなかった。瞳の輝きは失われていない。

 

そして、その事実がエルレーンを苛立たせる。

 

「なぜ、僕を憎むんだエルレーン。

君とは友であり好敵手であった。憎まれる覚えは僕にはない・・・・・・!」

「よくも言えたものだ。

ああ、そうだな。確かにお前とはともに研鑽するライバルだった。

だが、俺にはお前より、わずかだがどれも勝っている自信があった。

事実、いつも俺は頂点にいてお前は次点だった。オレに並ぶと言える者はお前のみだったが、それでもオレはお前に劣ってなどいなかった。

 

だが!!

 

ウェンデル司祭は、カダインの至宝の一つ、風の聖剣『エクスカリバー』を、お前に与えてしまった。

俺が手にするはずだった、至高の魔道書を!!

 

それはすなわち、ウェンデル司祭のあとを継いで、このカダインのトップに立つ事を約束されたということ。

 

何故だ!!?

 

俺のほうが、優れているのに!!!

一度も負けたことなどなかったのに!!

 

・・・思い至ることが一つあった。それはお前が、貴族であるという事だ。

それ以外に考えられん!!!

 

俺の方が優れているのに!!!!

こんな。

こんなことが許されてなるか!!!

この古いカダインのあり方を、直さねばならない!! 正さねばならないっ!!!

ウェンデル先生はお前の、貴族としての力に屈する他なかったのだ。そうに違いない。

 

幸い今、大司教を始め、主だった司祭はガーネフに殺されるなどして、風通しの良い時期だ。

これを機に、抜本的な改革を行う!!

実力のあるものこそがこのカダインを動かしていくように変えるのだ!!

 

それには、貴様のような! 努力している者をせせら笑いながら、利を掻っ攫う貴様のような奴らを!!

残らず殺す、もしくは追放してやる!!

 

・・・・・・お前をここに呼んだのはな、お前の立場がハッキリしたからだ。

アリティア軍は反乱を起こし、ここカダインに攻め寄せてきた。アリティア貴族である貴様は、敵だ!!

アカネイアを支持する、俺の、カダインの敵なのだ!

勿論アリティア軍は返り討ちにしてやる。だが!!

その前にお前はこの俺の手で直々に引き裂いてやるっ!!!!」

 

「違う!!

エクスカリバーは、かつての暗黒戦争で、僕がアリティアの力になるために、司祭から借り受けたものだ!!

それに僕は、カダインの権威もウェンデル先生の後継も執着はない。

アリティアに、一生をかけて守りたい人がいる。

僕はそれだけの男なんだッ!!」

 

「問答無用だ!!!

貴様がエクスカリバーを手放そうとしない限り、説得力はない!!

 

死ね。

死ね! 死ねぇっ!!

 

雷蛇の顎(あぎと)よ。乱れて狂え。

紫電滅殺!!!! トロンッ!!!!!!!!!!!!!!」

「やめろーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

失望と嫉妬に狂う、至高の学徒と。

運命に弄ばれる、風の聖剣。

 

魔道士、二人。

 

 

その術が交わるのと、アリティア軍の突入は同時であった。

 

 

バァンッ!!

 

 

アリティアの精鋭達が突入した。

マルスが真っ先に見たのは、親友に雷撃が襲う瞬間。

 

「マリクーーーッ!!」

 

ビシャアアアアアッ!!!!

 

「マリーシア、レスキューを!!!」

「我が腕(かいな)に彼の者を招かん!! レスキュー!!!」

 

アイシャの指示に躊躇いもせずに呪文を唱える。

次の瞬間には、マリクはマルスに抱きかかえられた。

 

「マリクっ!!」

「マルス様ッ・・・!

ごめんなさい、アリティアが大変な時に・・・ それどころか、お手を煩わせてしまって」

「今はそんなことはいい。無事でよかった」

「・・・エルレーンは、もう止まらない。どうにかして救いたいけど・・・」

 

ルオも声をかける。

 

「後は任せてください。マリクさん」

「ルオ君か・・・

そうだ、この場にいるシスターは、エルレーン怖さに従っているだけだ。だから・・・」

「わかりました。彼女たちを傷つけずに何とかしてみせます!!」

 

屋内の少数での白兵戦となれば、アリティア軍は少数精鋭なだけに強かった。

ウォームを持つ厄介な司祭はシーダとカチュアのコンビネーションであっさりと倒せた。そのほかの傭兵や魔導士達などは相手にもならなかった。

ジュリアンが、先んじられる前に宝を手に入れ、そんな間にエルレーンはあっさりと追い詰められた。

 

「ぐ、ぐくぅっ・・・ き、貴様ら・・・!!」

「こんな事をして、何になるのよ・・・ 貴族だ何だなんて、それにふさわしい貢献をしなければ、意味は無いのに・・・」

「貴様・・・リンダか! 貴様がそれを言うか!!

アカネイアからファイアーエムブレムを盗み出した、裏切者が!!」

「何よその無茶苦茶な濡れ衣!!」

 

リンダはエルレーンを説得しようとしたが、相手が悪すぎた。

マリクを救うという考えでなら頭も回ったかもしれないが、既にマリクは安全な場所にいる。リンダにとって、憎む相手であっても救う相手ではないエルレーンの説得などできるわけがない。

また、リンダはアカネイアの、ミロア大司祭の娘。

彼が憎んでやまない貴族の高慢は、リンダこそ色濃く持っていた。

話は全く通じない。

 

「紫電必っさ・・・」

「光よぉおおおおおおっ!!! オーラッ!!!!!」

 

エルレーンのとっさのトロンに、リンダは反射的にオーラを放ってしまった。

光の刃が、エルレーンを散り散りに引き裂いた。

 

「かはっ・・・!!!! ウ、ウェンデル・・・先生・・・」

 

その時、やっとウェンデルがその場に到着した。

エルレーンが、息を引き取った直後だった。

 

ウェンデルはその場で崩れ落ちる。

 

「おおお、おおおおお・・・・・・

エルレーン、なんと愚かな・・・・・・

 

言いがかりのような嫉妬に狂って、身を滅ぼすとは・・・・・・ それでは、オーラを手にできぬと知って世界を混乱に陥れたガーネフと同じではないか。

マリクがアリティアにいずれ戻り、カダインでわしのあとを次ぐ気がないのはわかっていた。

エクスカリバーも貸与えただけじゃ。

 

お前がマリクに唯一届かぬ、人を思いやる心を手にした時には、カダインの全てをお前に任せるつもりであったのに・・・。

他のすべてに秀で、結果を残したお前を、努力家のお前を、わしが評価せずにいたと思っていたのか。

なんたる、なんたる・・・」

 

ウェンデルの嘆きは筆舌に尽くしがたいものがあった。

かける言葉もなかったが、どうにもならなかった。

 

「ごめんなさい、ごめんなさいっ・・・ 私っ・・・」

「リンダ、君のせいじゃない。君を失うわけにはいかなかった・・・」

 

彼の持っていた星の欠片を手にした事も、何の慰めにもならなかった。

 

 

 ・

 

 

シスター達は全員無事で、その中の一人が、礼にと言って、シルバーカードを渡してくれた。

 

「・・・あの子、五大貴族の一家、レフカンディ家の隠し子だわ。カダインにいたなんて・・・」

「よくそんな情報持ってるねアイシャ・・・」

 

ともあれ本物のようであった。

 

 

・・・カダインは解放されたが、今後のことは何も決まっていない。

 

そこへ、いきなり、頭の中に響くように声が聞こえた。

 

{マルスよ・・・}

「こ、この声はガトー様!!

どこにいらっしゃるのですか!!」

{我は氷竜神殿におる。久しいの}

 

大賢者が心に話しかける事が出来るのは周知の事実であるが、何度受けても慣れるものでもない。

 

「世界の様子はお知りですか」

{うむ・・・ハーディンのことじゃな。

彼は、闇のオーブに魅入られておる。

実は、ガーネフは嫉妬に狂いこそしたが、身を滅ぼすような愚か者でもないはずであった。ああなったのは、闇のオーブに魅入られたからなのじゃ。

 

ハーディンも同じであろう。あの男は、第二のガーネフと化しておると言っていい。暗黒魔法マフーとなってその力を顕現させたように、今のやつには傷ひとつ付けられまい。

 

破る方法は、光のオーブのみ。

そして、光のオーブはわしが持っておる。

だが、わしはチキを見守らねばならぬ。

お前がこの氷竜神殿に来るというなら、光のオーブを授けよう。

 

闇に染まりきっていなければ、ハーディンを救うことさえ出来るやもしれぬ}

「なんと!!」

 

思いがけず重要な話がわかった。

・・・氷竜神殿までの道のりは、100年前アンリがファルシオンを授かるために踏破した地獄の道程である。

が、どんなところであろうと行くしかない。

 

砂漠越えの準備が開始された。

 

 

第10章 魔道士二人 終

 

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