FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第11章 アンリの道

蛮族と幾種の竜が待ち受ける、アンリの道。

その子孫であるマルスと、アリティア軍の踏破が始まる。

 

「カダインも辛かったけど、ここはそれ以上だぜ・・・」

「・・・・・・あら・・・だらしない・・・わね。

こんな・・・あつさ・・・くりゃぃ・・・」

「・・・・・・」

 

この暑さである。

近衛隊三人の雑談にもキレがない。

 

砂漠の延々と続く、カダインの北にある不毛の大地。

生半可な命は生きてさえいけない。

 

「『行く手を阻むもの、まず、死の砂漠ありき。

太陽、砂漠、砂の部族と飛龍の群れ。

辿りつけぬ幻の街に途方に暮れながら、前に進むことしかできぬ』

アンリ・サーガの一節よ。

しかも彼は、一人で来た。

時のアカネイアの姫、アルテミスのために、神剣ファルシオンを求めて」

 

アイシャは涼しい顔はしているものの、無理をしているのは感じる。

 

「みんな、よくついてきてくれた。こんなところまで・・・」

「マルス様、それはいいっこなしですよ。

みんな、好きでついてきてるんですから。

勇者アンリは立派な人だったんでしょう。この男なら一人で行かせても帰ってくると思わせる何かがあったんでしょう。

でも、マルス様は、命令でなく、希望者のみでという話でも、全員がこの旅に立候補した。それは、頼りないからじゃない。力になりたいと思わせる何かがあるからです」

 

ルオの歯の浮くようなセリフにマルスははにかむ。

 

「そうだね。だからこそ僕は、途方になんかくれずに、胸を張って前に進める」

 

しかし結局は少数精鋭にしている。

こんな困難な旅に、ぞろぞろと人数を連れて行けない。

兵は殆どを、将も半数をカダインに残してきていた。

 

「報告!! 飛竜が襲いかかってきます!!」

 

敵襲にこちらの都合は関係ない。

 

「迎撃の準備を!!!」

「ボクが行きます!!弓隊、前へ!!」

 

ライアンの部隊が構える。

波状攻撃で襲いかかる飛竜の群れ。

 

「兄さん・・・ 使うよ!!」

 

ヒュガアンッ!!

 

シギャアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

ゴードンからもらった、彼の改良した鋼の弓が、飛竜の翼に大穴を開ける。

 

「精霊よ、英霊よ!! 寄りて集いて、ひと振りの剣となれ!!

風の聖剣、エクスカリバーーーーッ!!!」

 

ルギャアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

すっかり体力を取り戻したマリクが、飛竜を八つ裂きにする。

 

砂の部族達は逆にシーダやカチュアに任せて、魔法・弓部隊が飛竜達を次々に落としていった。

 

好調のようだったが、アイシャは難しい顔をしている。

 

「・・・戦果は上々、と言いたいとこだけど・・・

戦ったところで、どこかの国を分捕れる戦いじゃないし、真面目に戦うだけ消耗するのよね・・・

いわゆるジリ貧だわ」

「それを見越して物資は持ってきてるんだろ?」

「そうだけど、補給ができないってことは軍隊にとっては死活問題なのよ?

遠征であればあるほど、その物資の輸送にかかる費用も労力も雪だるま式で増えるのよ。

切り詰めたいけど、ギリギリだとアクシデントに対応できない。せめて水だけでも補給できればいいんだけど・・・」

「??」

 

マルスになら通じる話だが、ルオはいまいちピンと来ていない。

しかし、砂漠を越えるというのがどのような形であれ大変なのは身をもって体験しているところだ。

 

こっそり耳を傾けていた近衛隊のメンツが、会話に興じる。

 

「こんなところを一人で・・・か。

アンリ王ってのはすごかったんだな」

「それでも叶うことのなかった恋・・・

悲恋ってのは、現実にあるもんねぇ」

英雄に感じいるルークに、セシルは意外にロマンチックな返しをする。

「あんま高望みは良くないってことだな。どうだセシル、俺やロディあたりで手を打っちゃ?」

「バーカ」

いきなり軽くなった話題に、ライアンが合いの手を入れる。

「ルークさんやロディさんはモテれると思いますよ?

アリティアを取り戻したらってただしがつくとしてですけど。今のままじゃ僕らは反逆者ですからね。

でも、マルス様をお守りする近衛で、アリティアでも指折りの実力者なんですから。

勿論、その指折りの中のひとりであるセシルさんから見てどうなのかはセシルさんしか知らないわけですけど」

「自分もその中の一人と自覚しての発言なの?それ」

 

誰もがエース級の実力者である元第七近衛隊だが、苦楽を共にした仲間であるだけに、お互いの関係はあまり変わっていない。

 

 

あらかた飛竜も砂の部族も倒したところで、リカードがジュリアンにこっそりすり寄る。

 

「アニキ。お話が」

「なんだァ?」

「この、マーモトードの砂漠は、誰も立ち入りたいと思えない秘境っす。だもんで、お宝を隠すならここだって、幾多の盗賊がこのあたりにお宝を持ち込んだんすよ。

でも、目印となるものを見つける前に砂嵐に捲き込まれてお陀仏・・・なんて話はごまんとあるんス」

「ほーう」

「ところがですね!!

ここ数年はカダインの方角に、やまない強い風が吹いてるんス。もうずっと。意味わかります??」

「・・・・・・そういう盗賊どもの持ち寄ったお宝が、埋まったままになってたのが、ここんとこの強風で砂が飛んで顔を出してきてるってか?」

「さっすがアニキ!! それをこっそり見つけて売りさばけば、オイラたちあっという間に大金持ち・・・・・・

あ、あれ? アニキ、どこいったんスか?」

 

ジュリアンはマルスのところに報告に行っていた。

 

「というわけで、何かいいものが手に入るかもしれません。

カチュアやシーダ姫様、軽装な魔道士さん達に、探ってもらってもいいんじゃあ・・・」

「ああああああああにぃぃぃぃぃぃぃきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!???」

リカードの抗議に、ジュリアンはうるさそうにする。

「あのな。誘う相手を間違ってるよお前。俺はレナさんのこともあるし、アリティア軍と俺とは一蓮托生なんだよ。

・・・だいたい、こっそりやって二次遭難でもしてみろ。誰も助けちゃくれねえぞ」

「おおおおおおおおおおおおおぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううう」

 

男泣きである。

 

「よく言ってくれた。思いつかなかったよ。

見つけた宝の2%は君たちの手柄として相応の物を贈るよ」

「マルス王子ィィィィィィィィィィィ。

いいこと聞いたと思ったら口封じにかかるアカネイア貴族より1000倍マシですけど、ぼったくりには違いないっスぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

・゜・(ノД`)・゜・」

 

とはいえ、リカードに関してはマルスはついてきてくれと頼んだ覚えはなかった。

つまりいつの間にか紛れ込んでいたのである。

軍備の恩恵を勝手に受けていたわけであるから、その場で斬首されてもおかしくないのだが、マルスの人柄につけこんで、舐めきって密行していたのである。

今回の措置は因果応報と言うしかなかった。

 

リカードの言っていたことは本当であった。

面白いように貴重な財宝が見つかり、アリティア軍は一気に資産を得た。

 

「お金があっても使える場所がないけどね・・・」

 

アイシャがそんなことをぼやくと、シーダが戻ってきた。ペガサスの背には誰か乗っている。

 

「ジェイク!?」

「やー久しぶりだなマルス王子。シューターぶっ壊しちまって、この通りウォリアーの俺だが、シーダちゃんに説得されて仲間になりに来たぜ!!」

「・・・・・・あ、ああ。心強いよ」

 

彼も暗黒戦争の英雄である。シューターのジェイクだ。

 

(このノリについていけないなあ・・・)

 

「それでだな、この辺にアンナの秘密の店があるんだ!!

なにせこんなとこにある上に秘密の店なもんで、だれもたどり着くこともできやしねえ。そのおかげでちっとも儲からねえらしい。

メンバーカードっていう会員証が必要なんだが・・・」

「あら、それ持ってなかったっけ」

「なにー!!

是非とも買い物をしていってやってくれ!!」

 

そんなわけで案内された秘密の店で、いくらか買い物をした。

貴重な武器が多く、良い買い物ではあったが・・・

 

「・・・私が買いたいのは日用品や食料、水とかなんだけど・・・」

 

最もである。

 

「あ、じゃあ教えちゃおうかしら。久しぶりのお客様だし、随分買い物してもらっちゃったし」

「え、なになに?」

 

アイシャの一言に、アンナはこの先の遺跡のことを教えてくれた。

そこにある地下水脈はまだ生きているらしい。

これで水の目処が立った。

 

そして。

その遺跡の塔の上で、意外な再会があった。

 

「マルスのおにぃちゃーん!!」

「チキ!?」

「あのね、ガトーのおじいちゃんのお使いで、チキが来たんだよ!!」

「マルス様、ロリコンだったんすか?」

 

とんでもない以前に脈絡のない言いがかりである。

お宝の事で恨まれているらしい。

 

「違うっ!! リカード、君はこの子のこと知ってるじゃないか!」

「で、結局お知り合いですか?」

「ああ、ルオ。この子はチキ。バヌトゥがマムクートなのは知っているかい? 彼女も火竜ではないけど、竜に変身できるんだ」

「! へええ。こんな小さな女の子が」

 

なぜか突如涙目でマルスを見るチキ。

 

「あのね、チキね、マルスのお兄ちゃんが来てくれなかったから寂しかったの・・・」

「チキ・・・」

「マルスのお兄ちゃん、もうどこにもいかないで。そしたらチキ、マルスのお兄ちゃんのためなら恥ずかしいことでも我慢するから」

「は!?」

「マルス様どういうことですか」

「疑問符さえ付けないのが怖すぎるよシーダ!?

チキもいきなり何を言い出すの!!?」

「ぶっ。ぶははははははは!!!」

 

チキが品のない笑いで転げ始めた。

一同、ポカンとしている。

 

「くひひひひひ。いや、悪い悪い。

面倒事を押し付けられた格好なんでな。ちょいと憂さ晴らしをな。

それ!!」

 

ぼぅん!!

 

チキが煙に包まれたと思うと、そこから中性的な顔立ちの、道化っぽい態度の青年が出てきた。

 

「チェイニー!!?」

「お初の奴もいるみたいだから自己紹介といこうか。オレはチェイニー。変身能力があるんだ」

 

実際ルオ達は初めてである。

 

「へ、変身!?」

 

「ということは、ガトー様がよこした案内役って君なのか!?」

「そういうことさ。

ここからは火山帯を横切ることとなる。飛竜や火竜も目白押しだ。

せいぜいがんばってくれ」

「せいぜいって・・・」

 

砂漠の次は火山。アンリの道はまだ入口のようである。

 

第11章 アンリの道 終

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