FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
「さて、この橋まで来て一区切りだ。4割というところかな。
ここはフレイムバレル。火竜の墓場さ。老いた火竜が死を迎えるのを待つ場所だ。
火竜は常に熱を身体に持ってないと生きられない。
若いうちはまだいいが、老いればこんなところでしか意識も保てないんだ」
長い長い橋の上。下には煮えたぎるマグマ。
ただそこにいるだけで煮えたぎりそうだ。
「チェイニー、君はどうしてこの道や竜にそんなに詳しいんだ?
ガトー様とはどういうつながりが?」
「・・・・・・ふむ。
まあ先は長い。ゆっくり話してやるよ。
そうだな・・・・・・
そもそも、竜はこの大陸の支配者といってよかった。
文明も種の多さも単純な数も、今とは比べ物にならなかった。
しかし。
どんな生き物も、始まりがあれば終わりがある。
気の遠くなるような年月の話だが、確かにそれはある。
竜にもそれが訪れ始めた。
まず、子供が生まれなくなった。次世代を支えるものの不在はいかんともしがたい。
次に知能の突然の退化。
いきなり暴れだすもの、言葉がわからなくなるもの。
今より数が多いといっても、人ほどではない。
近親婚を繰り返すうちに、遺伝子が限界を・・・
まあ、そんなことは人間はまだ知らないだろうが、マルスもエリス姫が美人だと思っても、お姉さんと子供をこさえたいとは思わないだろう? それは本能がその危険性を知っているからだ。
でも竜族は知らないうちに近いもの同士が結ばれていった。新しい血がなかったんだ。
竜の王は提案した。
狂う元である、強大な竜の力の封印。
竜石に力を封じて人になろうと。
その頃には、竜の力さえ封印すれば、子を残す事は難しくても、狂う事は最小限の確率に出来る事が分かっていたらしい」
「・・・・・・!
それを受け入れたのが、マムクートなのか。
マムクートとは、古代の竜が力を封印した今の姿・・・」
「そのとおりさ。そしてその提案を受け入れられなかった奴は、今はここで全員狂っている、もしくはもう死んだだろうな」
ということは、メディウスも魔王などではなく、力ある古代竜ということになる。
「さあ、おしゃべりはまた後だ。
狂った火竜どもが押し寄せてきたぜ?」
「うわっ・・・!!」
橋にいっぱいになって迫る火竜は、脅威そのものだ。
「マルス様、下がってください!!
行くぞ、みんな!!」
こんなところで輸送隊を失うわけにもいかないので、念のためルーク、マリクをそちらの警護にやる。
竜が相手ということで、ドラゴンランスをロディ、ナバールにドラゴンソードを持ってもらい、戦端を開く。
「ルギャオオオオオオッ!!!!」
火のブレスがロディを襲う。
「ぐうううっ!!!」
「ぬうっ・・・」
ナバールも苦戦している。
特攻武器を使っても、敵の一撃が重すぎる。
倒せないことはないのだが、先手をとっても反撃は食らってしまう。
「・・・・・・弓兵や魔道士は一撃与えてくれ!!
その後でなら、ブレスを吐かれる前に息の根を止められる!!」
だが、それも後の先が取れての話。
倒した後にすぐ別の竜に来られると、もう後がない。
「一体ずつ仕留めて、直ぐに下がって!!
絶対に無理をするな!!」
ルオの直感的だが、しかし適切な指示が飛ぶ。
「まだ来ます!!
後方から挟撃っ!!」
「ひ、飛竜が、すごいスピードでっ!!」
(間に合わないっ!?)
しかし、飛び込んでくる飛竜の翼は、風の刃に引き裂かれる。
「シェイバーッ!!」
ヒュバアッ!!
「ルギャオオオオオオオオオッ!!」
竜のさけびと風切り音。
「リンダさん!!!」
「まだっ!!」
波状攻撃を仕掛けてくる飛竜達。
「任せてください!!」
ライアンの放つ矢が、飛竜の脳天に突き刺さる。
飛竜はマグマのたぎる橋の下に落ちていった。
・・・こんな攻防をいつまで繰り返したろうか。
火竜の持つ星のかけらも手に入れ・・・
やっとのことで火山帯を抜けた。
「・・・・・・こんな場所があるなんて・・・」
マルスの素直な感想に、チェイニーは面白そうに答える。
「こういう場所は他にもある。
これから行く氷竜神殿、マケドニアにある竜の祭壇だってそうだぜ。
龍が狂いだした時、人間はまだ、小さな集落を作って生きているだけのか弱い存在だった。
竜に対抗出来るわけもなく、逃げて逃げて、大陸の隅に追いやられた。
けれど神龍族の王ナーガは、人こそがこの大陸の次の守り手となるだろうと考えたらしく、人を守る戦いを始めた。竜だけの未来でなく、この大陸のすべてを愛したからこそ、滅びゆく自分達を看取り、未来を任せるに足る種として生き残っていて欲しかったんだな。
その考えに賛同したものも共に戦い始めた。
認めたくなくても、いつか滅びる現実がある。
認めたくないのも分かるっちゃ分かるし、自暴自棄になるのもやっぱ分かる。
激しい戦いの末・・・
ナーガと人間は勝利した。
そして、眠りについた竜たちを起こす事のないように、五つの宝玉を納めた封印の台座、そして自分の牙から、竜を傷つけることのできる剣を切り出した。
そして、残った仲間達に、人を見守るように言い残して自らも封印したんだ」
「そうか・・・伝説にあるナーガ神とは、神龍族の王のことだったのか」
ルオは、ここまで横で聞いていて、ふと気づいたことがあった。
封印の台座、五つの宝玉、ファルシオン・・・
何か別の所でも聞いた気がしたのだ。
「さて、暑さの次は寒さとの戦いだ。
氷竜神殿は北の果て。対策はしっかりしておけよ」
チェイニーの忠告どおり、今度は極寒の中の行軍となる。
・
「我々も、一行に加えていただきたい」
「君達は・・・?」
「私はロベルト。こっちがベルフとライデンです。グルニアを救っていただき、我らはその恩に報いたい。
報を聞いてから追っていたので、今までかかってしまいましたが、お力になるとお約束します」
「そうか、よろしく頼む!!」
理解してくれる者もいる。
マルスは次の一歩に力を込めた。
第12章 火竜の墓場 終