FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第13章 氷の大地

チェイニーの話は佳境にあった。

 

「チキはその時に一緒に眠りにつかされた、神竜王の娘だ。そしてガトーは、神竜王の一番信頼したまとめ役だったのさ。

そして、俺も、その時働いてた・・・

まあ、雑用係みたいなもんだったんだけどな。

 

俺とガトーは、戦いの後、竜石を捨てた。だからもう竜には戻れない。

寿命だけは長いけどな・・・

 

ガトーはナーガのいいつけを守って、人を見守っている。

けど、あいつだって、そこまで人間が好きなわけじゃない。

その戦いの時だって、哀れに思った、もしくは、竜にどのみち先がないことが分かっていたからだったんだろうな。

 

オレは、ナーガやガトーは好きだ。

でも、ナーガが人間のことを押し付けたのは気に入らないし、それをちゃんとこなそうとするガトーの気持ちがわからない。

 

俺は、人間のこと・・・好きになれないんだ。

 

竜は、ずっと人を大切にしてきた。導いてきたんだ。

なのに、種として老いて、力を失ってマムクートとなったら、人は俺達をだんだん蔑むようになり、五百年もしないうちに虫けらのように扱い始めた。

 

だから俺は、メディウス達が人間を憎む気持ちもわかるんだ。

 

地竜達は、とても強い力を持つ竜達だった。だから余計に、マムクートになりたがらなかった。

せっかく持っている力が大きければ大きいほど、もったいないのは当然だ。

そんな中でメディウスは、部族に逆らってただ一人マムクートになった。あいつは本当は、竜族の中で誰よりも優しい奴だったんだ。

 

もうナーガもいない、種としてゆっくりと滅んでいくだけ。

ならば安らかに眠っていきたい。そのためには力を封じ、歩み寄り、次なる世代の大陸の守り手に看取ってもらいたいと思っていた。

伝えられるだけの知恵を伝え、何も思い残すことなく・・・

そのためにあいつは、長い長い墓守を引き受けたんだ。

 

なのに。

 

人は自分たちの方が力をつけたと知ると、マムクートを邪魔者扱いし始めた。

今の自分たちがあるのは竜族の庇護と授けた知恵のおかげなのに、ただ静かに過ごしているだけのマムクートを迫害した。

 

だからメディウスは、激怒した。

信じて、愛してさえいたからこそ、許せなかった。

 

そもそも、封印の台座は失われていた。ある事件によって。

だからメディウスも、遠慮なんかしなかった。

 

ドルーアにマムクートを集め、竜神族の国を作って、人間征服の戦いを始めた。

 

ガトーは人間を助けようと、ファルシオンをアンリに与え、人間は勝利した。

けど、竜はたとえ殺されても、百年も眠れば蘇る。

メディウスが暗黒戦争を再び起こしたのもそれだ。

封印の台座が氷竜神殿か竜の祭壇に納められていない限り、竜の力は自在に使えるんだ。その力で、倒しても倒しても100年後には復活する」

 

「・・・暗黒竜などと呼ばれるメディウスが・・・

竜族で一番人を愛した、優しい竜だったなんて・・・」

 

マルスは愕然とする。

ならば結局悪いのは人間ではないか。

 

受けた恩を忘れ、先人に敬意を払わず、迫害までし・・・

 

『貴様ラノソノ醜サガアル限リ、貴様ラニ安寧ナドナイッ!!!!!!』

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

暗黒戦争の終結の折。

メディウスの捨て台詞が思い出される。

 

あの時には、聞く耳を持たなかった。

人は、醜くなどない。この戦いを終えて、平和で、皆が幸せになる世界を創るのだと本気で思っていた。

 

なんて愚かな。物知らずな。

 

彼は、人を滅ぼしても当然なほど、怒るだけの理由があった。

勿論唯々諾々で受け入れられはしない、けど。

彼にも理はあった。

怒って当然だ。

 

それを、自分はどうした?

 

仇と罵って、ただ殺した。

 

 

「あ、ああああっ・・・!!!!」

 

その後の世界はどうだ。

 

ハーディンの元、強引な政策と帝国の恐怖支配。

自分は反逆者扱いで国を失い、世界には怨嗟の声が響いている。

 

メディウスの言葉通りではないか。

 

 

あまりにも気落ちしたマルスを見て、チェイニーはフォローをし始める。

 

「・・・・・・ただ、人間は寿命が短い。

限られた時間の中で生きるお前達が、実際に見たこともない竜を恐れられない、受けたことのない恩に報いる暇などないと思うのも、人の中で生きてるとわかる気もするんだ。

 

だから俺は、嫌いきることも出来なかった。

 

今こうやって、ガトーのお使いなんかしてるのも、それが理由かな。

 

特にマルス、お前は危なっかしいよ。

 

 

心配すんな。俺は、お前は・・・

お前たちは、多分好きだ。好きでいられる。

メディウスも、こんなふうに出会ったのでなかったら、人を憎み切ったあとでなければ、分かり合えたと思う。

俺は客観的に見る癖がついていたから、今の人間を昔と同じように恨むのは無意味だって知っているしな。

 

大事なのは、ひとりひとりと向き合っていくことだ。互いに認め合うってことを、忘れないことだ。

竜人族がそれを怠っていたのも要因の一つだ。人間だけのせいじゃない。

力を封じる選択をしたのが全員じゃなかった時点で、竜にだって勝手なやつも、話が通じないやつも、醜い奴もいたのさ。

竜が人を大切にしていた、導いていたといったけど、龍族全員そうだった証拠もない」

 

少しだけマルスは顔を上げて、力なく笑う。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

「さあ、気持ちを切り替えろ。あそこに見えるのが氷竜神殿だ。

氷竜どもがうじゃうじゃいるぜ」

 

「・・・わかった。

 

みんな、行くぞ!!」

 

 

「「「御意!!」」」

 

相変わらずの速さで迫り来る飛竜、川をものともしない氷竜。

 

それらを相手にするだけでも大変なのに、この寒さは堪える。

 

しかし、ミネルバやナバールが竜に特効のある武器を振り回すことで、なんとか先に進んでいった。

 

その道中、ベックにあう。

 

「ベック!? なんで君こんなところに・・・」

「いやあ、あてのない旅を続けていたら迷ってしまって。

シューターも動かなくなってしまいましてね。

シューターは特殊な油を常にさしていないと、移動させられなくなってしまうんですが、あの戦争以来、その油の取れる木の実が全滅してしまったらしくて・・・

今はこの愛馬ポニーが相棒です」

 

相変わらず主義主張はないようなので、誘ってみると、二つ返事で同行してきた。まさに渡りに船である。

 

「さて、神殿が目前だね」

「氷竜が三体、闇司祭も・・・

しかも誘いに乗ってこないわね」

 

さてどうするか。

 

「誘いに乗ってこないなら総力戦しかないよ」

「・・・まあ、それもそうなんだけどね」

「あたしはいつでも行けるわよ」

 

遅ればせとはいえ、セシルもパラディンに昇格して張り切っている。

 

門の前を動かぬ氷竜たちは強敵であったが、魔法にはそこまで強くもないし、遠くから攻撃されれば反撃も出来ないらしい。

ライアンやリンダの手も借りて、こちらが被害を受けないようにしながら、特攻武器で止めを刺す。

 

竜はバタバタと倒れ、神殿への道を確保した。

 

「ところでチェイニー、オーブというのはそんなに大切なものなのか?

ガトー様を疑うわけでは勿論ないけど、今ひとつ実感がわかないんだ」

「ああ・・・・・・

オーブはな、元々『封印の台座に収められていた五つの宝玉』なんだよ。

台座はただの飾りだ。

ここまで言えばわかるだろ?」

「・・・!

眠りについた竜らを封印していたのは、オーブそのものだっていうことか!?」

「そのとおり。

つまり、600年も前から、この大陸は滅びの危機に瀕していたのさ。

伝説にも残らないような太古の昔に救われて、封印までしてもらっていたのに、な。

くだらない、本当にくだらない話さ。

それでも聞きたいか?」

 

マルスは当然に、ルオもなんとなく重ねた。

600年前とはどういう事が起こった時か。

 

アカネイア王国は、建国されてそろそろ600年になる。

どういう結び付きか知らないが、無関係とは思えなかった。

 

その先が聞きたいような、聞きたくないような気持ちでいるとき、報告があった。

 

「部隊の後方に人影を見た者がいる・・・?」

 

挟撃を受けても面白くないし、味方なら合流せねばならない。

 

「マルス様、俺がいってきます」

「いや、僕も一緒に行こう。

暗黒戦争の時の、あまり知られていない仲間とかだと、誤解を生むかもしれないしね」

 

氷竜神殿を目前にして、アリティア軍は少しだけ引き返す事となった。

 

 

第13章 氷の大地 終

 

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