FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
「マルス王子っ!!」
吹きすさぶ雪の中から現れたのは、なんとアテナであった。
「アテナ!?
後方で見た影って、君だったのか」
「そうだけど、違う!! 敵、来てる!!
アテナ、伝えに来た!!」
「敵!?」
そう言われても、この吹雪では数メートル先もまともには見えない。
が。
ズドシュッ!!!
「!?」
「こ、この矢は・・・ク、クインクレイン!!?」
飛兵に特効を持つ、シューターの砲弾だ。
しかも、アテナをかすめた。
「敵、こちら見えてる。脅威!!」
「そんな馬鹿な!?」
しかし、ここに来て引き返すことももうできない。
白き闇の中での戦いとなった。
吹雪のせいで、アリティア軍はバラバラになってしまい、なんとかマルスのそばにいるのは、近衛では、ルオ、ライアン、ロディ。
他に、ナバール、バーツ、マリーシアくらいであった。
シューターを警戒して進むが無駄であった。
したところで防ぎようがないのだ。
こちらからさっさと近づいて倒したほうが早いのだが、そもそもどこにいるのか分からないから苦戦を強いられるのである。
「とにかく、動きましょう! それも、なるべくパターンを作らずに、デタラメに!」
「・・・お、なるほど。
やるじゃねえかルオ」
バーツは飲み込みが早く、うまく避けながら二台ほどのシューターを破壊した。
「この調子です!!」
吹雪の中での戦いは簡単ではなかったが、敵の力量はこちらほどでもない。
(しかし、この吹雪の中で自由に動けることそのものはすごいわ。
一体何者?
この連携は訓練をうけたものの筈だけど、こんなところにアカネイア軍が来るとは・・・)
アイシャの疑問は最もだったが、メンツがアリティア軍でも指折りのメンバーだったこともあり、それほどピンチになることもなく、敵を撃破していった。
・
アリティア軍は、確実に、そして異常なほど強くなっていた。
クライネの率いる虎の子、『ナハト』が、吹雪の中という自分たちの土俵で劣勢に立たされるほどに。
「くっ・・・!!
役に立たない奴らねぇっ!!
あいつらはこっちが間近に来るまでほとんど姿が見えないっていうのに、なんでこう手こずるのよ!?」
圧倒的な力量の差があるからであった。
いくら先手を取れるといっても、先手を取られてもいいような、後の先を得意とするメンツに盾になられながらの進軍をされては、効果は半減である。
「もう、負けるわけにはいかないのよ・・・
ローローのいなくなった今、あたしがやられたら・・・
もう、アイネしかいないじゃないの!!」
元々、暗殺団だけあって、少数精鋭を旨としてきたのだ。
物量担当のローローがやられた時点で、隊員数は激減しているのである。
「殺してやるっ・・・
殺してやる殺してやる殺してやるっ!!!!!」
どこから来るのかわからない矢を避けるのは確かに難しい。
しかし、受けてもマリーシアのリブローで回復できてしまう。
マリーシア自身は護衛がついていて、クライネ達は手が出せない。
「そこまでだ」
「ひっ!!?」
後ろには、ナバールがいた。
矢のくる方向から位置を割り出されたらしい。
「このぉっ!!」
腰のダガーを抜くが、難なく躱される。
ソードマスターに剣で敵うわけもない。
「・・・死ね」
振り下ろされた銀の剣は、クライネの腕を切り落とした。
「うがぁああああああっ!!!」
「とどめだ」
その時。
ヒュガオオオオオッ!!
吹雪の中をぬって現れたようなブリザーがナバールの注意をそらした。
「くぅっ!?」
ナバールがなんとか事なきを得たとき、クライネの姿はもうなかった。
「逃がしたか。・・・まあいい。あれでは遠からず死ぬ。
万が一生き延びようと、弓など持てるまい」
マルスが雪に埋もれたアイオテの盾を見つけた頃、他の敵も見つけ出されて始末されていた。
クライネの私兵、『ナハト』は、十全の力を出し切った上で、無残にも敗れた。
・
エレミヤに伺いを立てる時間などなく、そして無駄なのがわかっていた。
ローローは、ローロー達は、暗殺団の最大の物量兵器だった。
それさえもあれほどあっさりと捨てたエレミヤが、クライネの部隊に気を向けるはずもない。
何より、この吹雪の中・・・
血を、出しすぎている。
腕を焼いたが、それでこの吹雪を抜けるまで持つはずもない。
「クライネ・・・」
「・・・何、よ。 さっさとどこへでも 行きなさいよ・・・
失敗すれば、その場ですてられる のは・・・
わかってた事だもの・・・」
「・・・・・・」
「あんたが 泣くことないでしょ・・・
あたしが あんたにしてきた扱いを 思えば」
「・・・ローロー達の墓、一つ一つ、作ってましたね」
「!!」
「エレミヤ様とそのことで言い争ってた時、私をけなして黙らせることで、エレミヤ様の怒りをそらせてくれました」
「・・・・・・」
「潜入をしてる時に、毛布の配給が間に合わなくて、次の日みんな鼻声だった時、私の部屋にはなぜか毛布が置いてありました。
あの時の連絡員当番がだれか、後で聞きました」
「・・・あんた、ムカ つくわ」
「あなたが好こうと嫌おうと、私はあなたが大切です。
もう助からないと解っているなら、せめて手を握っていようと思うくらいには」
「ああ、 そう」
「そうです。私は、あなたのお姉さんなんですから」
「・・・・・・一緒に育った、孤児 だって いうだけ じゃない。
先に エレミヤ 様に 拾われたって いうだけで、先輩ヅラしてて 気に 食わなかったわ」
「はいはい」
「まあ、でも・・・悪くないかもね。どうせ、エレミヤ様は ゴミ には 興味ない。
改めて傷付きに 行くより、ここであんたに 看取られた方が・・・・・・」
その時。
クライネの唇が、音を立てずに震えた。
声に出す気がなかったのだろう。
けれど、クライネの横顔をずっと見つめていたアイネには、それがなんと言おうとしたのか読めた。
ごめんね おねえちゃん
つないだ手に力がこもる。
伝わった事が、伝わる。
その照れ笑いは、彼女の久しぶりの本当の笑顔だった。
「あんた、本当に ムカつくわ」
・・・・・・吹雪にかき消され、アイネの泣き声は誰に届くこともなかった。
クライネは本当は寂しがり屋だった。
それは、会ってすぐに判った。
でも、プライドが高いのも確かで。
実は、誰よりも優しい子だった。
アリティア軍には、ルオがいる。
けど。
エレミヤを裏切ることも出来ない。
失敗する度に頬を打つその手が、一度は優しく抱きとめてくれたことを覚えている。
自分をゴミだグズだと罵るその口が、自分たちを宝物だと言ってくれたことを忘れていない。
誰を恨むことも、誰にすがることもできない。
「ルオ。アリティアの地で・・・
終わりに、しましょう」
どちらにしろ、もう、アイネの直属しか残っていなかった。
第13章外伝 白き闇の中 終