FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
峠越えによるパレス強襲。
これは確かに、盲点であるといえばそうだった。
改めて検討された時も、ジェイガンやミネルバも好意的な意見をくれた。
だが。
戦とは盤上遊戯ではない。
特に、思いもよらない出来事が起こりうるという意味では、はるかに上級・・・いや、運や宿命などもある。
「引けっ!! 隊列を崩すな!!」
「我ら天啓を得たり!!逆賊を討ち滅ぼせ!!」
「「うおおおおおおおおおっ!!!」」
「マルスのお兄ちゃん、どこおー!?」
「俺の前に立つな、後ろは言語道断だ!!
死にたいのなら構わんが、天界行きは保証せんぞ!!」
「皇帝に逆らう奸賊がぁあああっ!!」
大乱戦となってしまった。
峠越えルートが最短で、しかし攻めるに適していないのは、アリティア側から見た話。
アカネイア友軍が通るには、ただの近道だ。
位置的にはアカネイアの北に位置するオレルアンは、言うまでもなく皇帝ハーディンの故郷にして、ハーディン即位により莫大な恩恵を受けた地である。
それはアカネイアと同等以上の栄華を得たと言っていい。
そして、アリティアがグラを落とし、まさに今よりアカネイアに攻め込まんとする時に、援軍を送らぬ道理はなかった。
オレルアンからも最短となる、この峠を使わない理由もない。
裏をかいたはずの峠越えで、偶然にも、グルニアに代わって大陸最強となった騎馬部隊、オレルアンの『狼騎士団』と鉢合わせする事となったのである。
しかも隊列が伸びきったところに、見下ろされて突撃されるという、一番やってはならない失策を、本当に全く偶然に喰らう形で、だ。
この逆落としで既に部隊一つ潰され、未だ応戦中である。伸びきった隊列ゆえに、引くも進むも思うようにはいかない。
「一旦麓まで引く!! 体制を立て直すぞ・・・ しんがりを勤めてくれ!!」
「僕に続け!! ええと・・・元第七とフィーナ、シリウスさん、マリーシア、リンダ、ミネルバ王女!!」
「俺も出ようかー?」
「いや、チェイニーさん。アンタ要らないわよ」
「そう言われるといたくなるねえ」
「子供か!」
どちらにしろ乱戦のさなか、出てくるなといったところで、安全圏があるわけでもない。
「とにかく、村のあたりまで後退を・・・」
「マルス王子!! オレルアンからの使者が・・・
オレルアン王があの村に来てるそうよ。話がしたいって!!」
「・・・え・・・?
どういう事? オレルアン王はハーディンの兄にあたる人、話って言っても・・・」
「王子、もしかして、この戦い自体、オレルアン王の本意ではないのでは?」
「ジェイガン・・・ けど、そんなことがあり得るのか・・・?」
しかし、藁をもつかむ思いで会ってみると、その通りであった。
オレルアン王は、皇帝を止めたいと思っていたのである。
「ハーディンは変わってしまった。あやつにこのまま皇帝の座を任せておくことは出来ん。
狼騎士団はハーディンの私兵のようなものだが、さすがに直接の命もなしにわしを殺す事は出来ん筈。
一旦この場を引かせることはできよう」
一旦、という事。
乱戦に巻き込まれたアリティア軍に、必要な事だった。
・
「な・・・オレルアン王からの撤退命令だと!?」
「はっ!! 間違いなく本物であります」
「馬鹿な・・・ウルフ、どうするんだ!?」
「お、オレルアン王に弓引くわけにはいかないよ・・・」
「黙れロシェ!! くっ・・・ 千載一遇のチャンスだというのに!!」
「だがビラク、ハーディン様にお伺いも立てずに、兄王に逆らうわけにもいかん。
無念だが、このままパレスに向かうしかあるまい」
こうして、狼騎士団はパレスに向かうこととなり、アリティア軍は、九死に一生を得た。
しかし・・・
・
「では、オレルアンは狼騎士団以外は、僕らの味方を・・・」
「うむ、そなたらは知らぬかもしれんが、この数ヶ月でハーディンに対する不満はもう膨れに膨れ上がっている。
アカネイア民でさえ耐えられぬ税や締め付け、規則。歪な法律、兵どもの横暴な態度・・・
もうアカネイアはおしまいじゃろう」
ファイアーエムブレムをマルスが持っていることもいつの間にか知れ渡っていて、ハーディン倒すべし、真の逆賊はハーディンであると言っているものもいるほどだとか。
そんなこともあってか、アカネイア側の麓の砦も、蜘蛛の子を散らすようであった。
オレルアン王は、真の覇者に対する忠誠の証として、オレルアンの国宝、命のオーブを差し出した。
その後の進軍は順調に進み、もうすぐパレスをその目にすることとなるだろう。
「これで後は、ハーディンの持つ闇のオーブがあれば、紋章の盾は完成する・・・」
(紋章の盾がその力を失ったことが、僕がこの世界に迷い込んだことと関係しているかもしれないってことだった。
完成したとき、僕はどうなるんだろう)
ルオは気がかりであったが、その時になってみないとわからないことでもあった。
人一人異世界から連れてくるほどの次元の歪み・・・ それが元に戻る時に、どうなるのか。
(偶然歪んだ時にその場にいたと言うだけなら、僕は歪みに因果がないというようにも取れる。つまり、歪みが戻るだけで、何も変わらない確率ももちろんある・・・)
それでも、原因が解明されねば話が進まない。少なくともルオがここに来た理由がそのことであってほしいと願うのみだった。
そしてそれは、アイシャとの今までに、どういう形であれ、ひとまずの決着がつくということである。
そんなことを考えていた時、ペガサスナイトが飛び込んできた。
「マルス様ーーーっ!!」
「カチュア!?
どうしたんだ一体!!」
「ア、アカネイアの様子を見に行っていたんです。
アカネイアでクーデターが勃発!!!
アカネイア騎士団を中心とした市民軍の蜂起だったのですが、狼騎士団の予期せぬ到着が原因で完全に失敗!! 首謀者であるミディア将軍も捕らえられ、関わったものは皆処刑されていっています。ミディアどのの首が飛ぶのは、一週間後!!」
「なんだって・・・・・・!?」
狼騎士団の撤退は、クーデターの失敗を招く結果となってしまった。
そして・・・
最終決戦の時はすぐそこに迫っていた。
第18章 峠の戦い 終