FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
「マルス王子。見つけて来たわよ。マケドニアの山脈、洞窟の奥深く・・・
まあ、竜の祭壇と言われる場所の途中だし・・・いい機会なのかもね」
あの後、ガトーが訪れた。さすがにハーディンを悼む気持ちを見せたが、ガーネフの存在を知っていたために、あせりが感じられた。
その際、竜の祭壇なる古代の遺跡の存在を知る。そこにメディウスと、ガーネフが居るというのだ。
そしてマルスはカタリナの事で、最後の決戦に挑む前に、カタリナを育てた施設を潰す事にし、その場所の捜索をアイシャに任せたのである。
「ありがとう。・・・子どもというのは、未来そのものだ。それを無理矢理あんな風に育てようというのは許せない」
アイシャとしては、意味もなく自由にするというのも良くないイメージがあるのだが、それは言うまい。少なくともこの育て方は無い・・・というのは同意である。
精鋭を引き連れ、マルス、ルオ達はそこに突入することになる。
マルス自身が行くのは愚の骨頂だと誰もが思うのだが、ハーディンの件でいまだに怒りをくすぶらせているマルスに何を言っても無駄だった。
・
「・・・ここか」
内部はいくらか人の手が入っていて、石畳や煉瓦の壁も整備してあった。
「内部は明りのない、真っ暗な場所です。施設の皆は常にそこに居るので夜目が利きますが、常人にはどうにもなりません。目が慣れてきても、分かるのはせいぜい自分の周りくらいです」
カタリナの案内は、細やかだった。
元々は自分の家のようなもの・・・ いや、寮のようなものか。そのどちらでもあるのかもしれない。
「・・・カタリナ、大丈夫かい? 君が来る事はなかったのに」
「いいえ、ルオ。これは私のけじめです。今まで私はエレミヤ様の命令を、ただ受け入れるだけでした。
でも、今は違う。ルオやマルス様、アイシャや元第七小隊のみんなの役に立ちたいと思っています。
この気持ちは、命令されたものじゃない。私の心からの願い。私の思い。私の宝物なんです」
「カタリナ・・・」
そこにいる敵は、今までともにいた仲間達のはず。そして、たとえ利用されていたとしても、育ててくれた人である。
それでもカタリナは、決別を選んだ。自分の罪を償い、未来を思って生きてゆくために。
「わかった。行こう。君の宝物を、思いを・・・ 僕達が守るよ」
「はい・・・」
そのカタリナの応えには、どうしても熱がこもった。
叶わぬぬくもりであっても、秘める事で輝く宝物もある。
(ルオ・・・)
そのために、偽りのぬくもりに決別する必要があった。
・
「ぐっ!!」
「ルーク! 大丈夫!?」
「・・・そこかあっ!!」
ライアンの放つ矢が、敵の胸に突き刺さる。
うめき声とともに倒れる暗殺者達。
「くっ・・・敵に先手を取られる戦は、なれているつもりだったけどな!」
敵の持っているのは、普通の弓よりさらに遠い間合いを持つロングボウや、遠距離魔法のウォームやメテオ。
弓の間合いなら、敵の姿が見えるのだが、それ以上となると、攻撃されてもなお位置がつかめない事が多いのだ。
それでも、勝手知ったるカタリナのおかげで、なんとかエレミヤを追い詰める事が出来た。
奥の部屋で、待ち伏せるようにエレミヤは座っていた。
「アイネ・・・ ただクズなだけではなく裏切るとはね・・・
壊れるまでつかってあげるつもりだったけど、気が変ったわ。汚れた人形は、叩きつけて壊して、ぼろ屑のように捨ててあげる!!」
目を見開いて立ち上がり、呪文詠唱が始まる。
「私は人形ではありません。人です。
ただ、ノルダの町で、本当にゴミのように扱われていた私を拾ってくれたこと。。『ただ踏みつけにされるだけにはならない』事を選べるだけの『力』をくれた。それは・・・本当に感謝しています。
だから私は選ぶ。一緒に生きていた仲間達を倒してでも。あなたのくびきを打ち壊してでも!!」
「壊れなさい! メティオ!!!!」
既に詠唱を終えた、カタリナの魔法も発動する。
「リザイアッ!!!!!!!!!!!」
それは、血のつながりなど無くても、母と子であるはずの。
今がそうありはしなくても、確かに信じた人。
魔法戦は互角だった。
エレミヤもかなりのものだが、わずかにカタリナが実戦経験の多さで優っているようだった。
トロンの乱れ打たれる雷撃は、容易にはかわせない。対して、リザイアは相手を捕らえて打たなければならない。しかし、生命力を奪うという力は、命中しさえすれば一石二鳥だ。しかもカタリナには、敵を罠にはめるのは十八番だ。
「もう一度言うわ!! 壊れなさいカタリナッ!!!!」
「エレミヤぁああああああっ!!!!!!!!!」
最後のリザイアが、エレミヤを捕らえた時。
ドンっ!!!!
「!?」
エレミヤはルオの体あたりによって吹っ飛ばされた。
「・・・・・・!!!!!!!!!!」
閃くように闇が広がり、魔法陣がエレミヤを囲む。
脱出用の方陣があったのだ。エレミヤが壁によれば、発動する仕掛けだったのだろう。
ヒュウン・・・
そんな音をたてて、エレミヤは消える。
「逃げた・・・」
「ルオ・・・ 逃がしたの?」
「・・・カタリナの頭に血が上っていたのもあるよ。瞬間移動が使えるなんて思っていなかった。
ただ・・・
やっぱり、カタリナが殺しちゃ、いけない気がした。ぼ・・・ 俺が、やろうと思った。
出来なかった、けど・・・
ごめん」
「いえ、いいんです。
・・・少し、ホッとしています」
カタリナはそう言って、目をそらした。
どちらにしろ、ここは潰していく。
マルスの命を狙うのはもう不可能だろう。
「今は、それでいい。ぼくらにはやるべき事がまだある。寄り道できるのはここまでだ」
アリティア軍は、マケドニアの山中、竜の祭壇を目指す。
封印の盾をおさめ、地竜の復活を封じるために。
・
そこもやはり、暗闇だった。
倒れ伏していたエレミヤが起き上がる。受けた傷は浅くは無かった。
「う・・・うう・・・」
「ふん、やはり敗れたか、エレミヤよ」
闇からぬうと現れたのはガーネフであった。
「ガ、ガーネフ様、申し訳・・・」
「いやいや、お前の育てた子供らは、竜の祭壇にささげる、高貴なシスターを集める為に役に立った。
お前にかけた術はきちんと作用していたよ」
聞き捨てならない一言があった。
「・・・私に、術を・・・?」
「そう、お前は、戦災によって、育てていた孤児たちを皆殺しにされた。亡骸を抱えて『私は、何か出来なかったのか』と泣いたな。
だからわしはお前に暗示と答えをやった。力がなければ何にあらがうことも出来ぬ。子らにしてやらねばならぬ事は、踏みつけにされぬだけの力を得ることだ。そして、力を与えたもう主人には命がけで尽くせとな。くくくくく・・・」
その時、エレミヤにかけられていた術がとかれ、心が戻る。
孤児たちをいつくしむ『心』が。
「あ・・・ああああ・・・
ああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
力を持たせるために施した過酷な訓練。修得が進まぬ者は見せしめに殺し、精神を病むほどに酷使した・・・
愛していたはずの、子供達。
安らかに生きていってほしいと願った、いとしい、命。
自分が地獄に追い落とし、クズと呼んだ子供達。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」
「くくくくく、ははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」
ガーネフはそのまま、エレミヤを置いて行ってしまった。
心が壊れてしまったエレミヤのその後を、誰も、知らない。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
その深き淵の底で、彼女はいつまでも狂い叫び続けた。
第20章外伝 深き渕の底 終