FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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終章
第21章 飛竜の谷


ガトーに言われ向かった、マケドニア、飛竜の谷。

この先の『竜の祭壇』に、ガーネフがいる。そして・・・

 

ルオは、デジャヴを覚えた。

いや、確かにそこを知っていた。

 

「思い、だした・・・

確か俺が最初に立っていたのも、マケドニアの山奥だったんだ。

父さんも母さんも、このあたりにあるっていう古代遺跡を探りに来て、俺を見つけたって」

「そう、なの?」

 

山の形、大河。

珍しい羽の蝶、自分の家の近くにはあるはずのない、放置されたのがわかる広すぎる草原。

 

その時の、途方もない気持ちを覚えている。

 

「ここは野生の飛竜も多いし、長くとどまるわけにもいかないし、自分で調査するのも危険だからしばらく考えないようにしていたけど・・・

こんな風に訪れる事になるなんて」

「じゃあ、ここにこそ手掛かりがあるかもしれないのね」

 

アイシャにそう言われて、ルオは少し言葉に詰まった。そして。

 

「アイシャ、ありがとう」

 

いきなりの言葉に、アイシャはびっくりした。嬉しくは、あったけど。

 

「なあに?突然」

「封印の盾と5つのオーブが失われて、メディウスを復活させようとした事が異世界の扉を開くカギになり、それに巻き込まれて俺がここに来てしまったのだとしたら・・・

 

マルス様が竜の祭壇に封印の盾を置くことによって、その歪みが修正されたら。

俺はその場で、消えてしまうことだって考えられるじゃないか。歪みの一つとして」

 

今度はアイシャが言葉に詰まった。あり得る話だからだ。

封印は、もう二度ととかれてはならない封印だ。それこそ、この世界のすべてのために。

 

「だから、言っておかなきゃならないと思った。勿論、いくら言葉で言っても足りないくらいの感謝があるんだけれど…

そのかけらだけでも伝えておきたくなって。

アイシャ、ありがとう。俺も、いろんな人に支えてもらって、交わって来たけど…

父さん母さん、じいちゃんとは違う意味で、一番大切なのは、アイシャだから。

俺は何もしてあげてないから、世話になるばっかりだったから。

 

お礼くらいは、万が一にも言わずじまいだなんて嫌だったから」

「・・・・・・うん」

 

何もしてあげてない?

ルオにとってはそうなのだろう。

したいようにしてきただけだったのかもしれない。

でも。

 

自分のドジで片目を失ったとき、自分以上に動揺し、責任を感じ、心配してくれたルオ。

そんな事があっても、縛るようなことはしようとしなかったルオ。

たどたどしく紡ぐ言葉の中に、『ぼく』を交えながら、心をそのままに聞かせてくれるルオ。

アイシャを大切だと、伝えたがるルオ。

 

それがどれだけ大きな意味を持っていることか。

 

「あたしも、だよ。ルオが、一番大事」

 

どうなるか誰もわからない事をしに歩く中で、永遠の別れを心の片隅に置きながら言葉を交わしている時くらい。

本当の事だけ、口にしよう。どんなに照れくさくっても、間違ったまま終わるのは、死んでも嫌だ。

 

顔を真っ赤にしながら、顔も見ずに差し出された手を、両手で握り返す。

驚いて振り向いたルオに微笑むと、ルオはそのまま穏やかに見つめ続けてくれた。

 

 

 ・

 

 

山のような影が覆いかぶさってきた。

ルオはとっさにマルスを庇う。

 

「うおお! マルス!」

「!? 君はユミル!」

 

そこには山賊のような男がいた。しかし彼も、先の戦争の仲間らしい。グルニア軍の取引材料にされそうになっていた村人を助けるために戦った英雄だそうだ。手にある大斧といい、どう見てもバーサーカーだが。

 

「俺も協力する」

「心強いよ。さあみんな、ここからは飛竜の襲ってくる難所だ。十分に気をつけてくれ!!」

 

竜の祭壇を目指して、アリティア軍の本当に最後の行軍が始まる。

 

 

 ・

 

 

飛竜の谷にアリティア軍が到着する少し前。

竜の祭壇では、別の物語があった。

 

「貴様っ・・・ 貴様アッ!! そうか、ミネルバ王女の件は貴様が・・・!」

「足を踏み入れる事許されぬ地と言えど、かつての我が領土で好き勝手してくれたな。

いや、貴様の傍若無人ぶりは以前からか。もっとも、俺が言えた義理でもないが」

 

その青年はそう言うと、封印されていた戒めを解いて、台座から一冊の魔導書を奪う。

 

「今の俺では貴様は倒せまい。しかし、今この魔導書を奪う事は俺にしか出来ん。

そしてそれは、この世を人の手に取り戻す要因の一つだ」

「死ねぇっ!!!!」

 

襲い来るマフーを、すべては防ぎきれない。

闇の霧に触れたところが、腐り落ちてゆく。

 

「ぐっ!!!!」

「逃がさぬ・・・」

 

乱れ打たれるマフー。しかしダメ―ジをいくらかかぶりながらも、青年は致命傷は避けた。

 

「くっ・・・ 魔力が持たぬ・・・ 魔力を無限に供する魔導器も、実体さえも持たぬ今、魔力尽きれば存在ごと消えてしまう!

くそう、くそうっ!!」

「さらばだ・・・ ガーネフっ・・・!!」

「ぐぅうっ!!!!」

 

歯噛みするガーネフだが、どうしようもない。

精神体となった今、力の尖鋭化は成せても、死はさらに近い物となってしまった。

 

「闇の部族どもを出せっ!! どうせあの傷では近くの村で身を休めねばならん。

村ごと火にかけて殺してしまえ!!」

 

魔導書も燃えさえすれば。

あの魔導書は、複数作る事は出来ない。今失われれば、ガトーは作り直す時間がないだろう。

そのうちにアリティア軍を潰してしまえば、もう逆らえるだけの力を持つ存在はいなくなろう。

 

「このような時にこんな事をしに来るとはな・・・ 腐っても英雄ということか。

時節というものを見ておる。搦め手では敵わぬか。

まあよい。何とか間に合うだろう」

 

このギリギリの運命の導きは、吉と出るのか、凶と出るのか。

 

 

 ・

 

 

 飛竜と闇の部族との戦いは熾烈を極める。

 飛竜は強力なブレスを放ってくる上に、その移動力は尋常ではない。身動きの全く出来ない砂漠での遭遇では苦戦をさせられたが、今回は狭い山間の間である上に、メティオという長距離魔法を使ってくるダークマージや、デビルソード、キラーアクスといった空恐ろしさのある武具を操る闇の部族が波状攻撃をしてくるのだ。

 

その時、ネクスから情報を受け取ったアイシャが来た。

 

「山を越えたところにある小さな集落に、ガーネフの手の者らしき集団が火を放とうとしているらしいわ。

しかもそこで、『マルス王子に渡すものがある』と言ってる、竜騎士の高貴な青年が、危篤状態だって言うの」

 

 軍を危険にさらすわけにはいかないというのは指揮者として当然ではあるが、村や関わりあるとみられる誰かを見捨てるわけにもいかない。

 

(どうする・・・!?)

「マルス様、ご指示を!!」

 

その話を聞いたミネルバが、名乗りを上げた。

 

「いかせてくれ、マルス王子!! きっと、その青年は・・・!!」

 

マルスは少し逡巡したが、意を決して発した。

もとより、村を見捨てる判断をする王子ではなかった。

 

 

 ・

 

 

「・・・これで全部でしょうか」

 

ガーネフが送った、村を潰そうとしていた刺客たちは、村に行く前に残らずカチュアに倒された。

ミネルバは先に村に入って、その青年を探している。

 

「もし・・・ 本当にあの方なら。

どんな風に変わっておられるのか・・・ それとも、相も変わらずなのでしょうか・・・」

 

カチュアとミネルバは、マルスの許可を得て、先に村へ飛んだ。

天馬騎士や竜騎士の一小隊もついている。

 

カチュアは祈るような気持ちで、村の方に目をやりながら瞳を閉じた。

 

 

 ・

 

 

「ミネルバさん、大丈夫でしょうか。まだ村の周りにも敵はいるかもしれませんし」

「カチュアもついてるし、何とかなるとは思うが、問題は間にあったかどうかだね・・・」

 

マルスとシーダも、村の方に向かっていた。リンダやマリクもだ。

ルオ以下他の面々は、竜の祭壇周りの敵をせん滅する任務を遂行している。

 

 

この分け方は、戦局を左右しない。

ガーネフがそれどころでなかったのが幸いした。

 

いや・・・

 

ガーネフに猶予を与えてしまったという意味では、あまり良くもなかったが。

 

 

 ・

 

再会ははたされた。

しかし、ミシェイルの容態は良いとはいえなかった。

 

「ミシェイルっ・・・ 兄上!

しっかり・・・ しっかりなされよ!!」

「ミネルバか・・・ マリアに救われ、お前に看取られるというのなら、俺の生き様というのも悪くなかったのかもな」

「何を馬鹿な! こんなところで終わるような男がアイオテの再来であってたまるものか!!

マリアはガーネフに捕らわれたままだ。まだ何も終わってなどいないっ!!」

「ああ・・・ そうだ。マルスを呼んで来い。奴に・・・

渡さねばならないものがある・・・」

 

瘴気のかたまりをあわやの所で受け、五体はともかく肺はやられている。

マルスが来るまでもつか、微妙な所であった。

 

 ・

 

 

山間の谷を抜けて、本隊が再びガーネフの手の者との戦いになる。

デビルソードやキラーアクスなど、油断ならない武器を持つ者たちがゾロゾロ出てくるが・・・

 

「暁の騎士ルーク様のお通りだっ!!」

「僕の矢を受けろっ!!」

 

ルークが攻撃を受け止め、ライアンがカトンボのように落としていく。飛竜をあらかた倒してしまえば、あまり脅威を感じる事もなく進軍が進んでしまう。

村にはその日のうちについてしまった。

 

半日のうちにさらに痩せてしまったミシェイルは、幽鬼のようであった。

 

「やはり、ミシェイル王子・・・」

「ふん。久しいな英雄よ・・・ くく。惨めだろう。こんなところで身動きも出来ずにな・・・

さあ、うけとれ・・・」

 

懐から、一冊の魔導書が出てくる。

マリクははっきりと、マルスもおぼろげに見覚えがあった。

 

「!? これは・・・ スターライト!?

まさか、そのけがは」

「ガーネフとやりあったのさ・・・ マリアに拾われた命だ。あいつを救えるのなら、多少の事はな・・・」

「兄上、死ぬなっ・・・!

マリアを助け出した時、何と言えばいい!? お前を助ける為に死におったとあの子に言えると思うのか!?

最後に目にしたマリアが、何と言っていたと思う。『いつかまた、お兄さまとも一緒にいれるようになったらいいね』と、花のような笑顔で言ったのだ!

あの時、私は兄上が生きていると知らなかった。だから泣きそうな顔で何とか笑おうとしただけだった!

だが、あの子は知っていた、信じていたのだ。自分の元から再び姿を消した兄上が、いつか必ず戻ると!

3人でともに生きる日が、戻ってくるのだと・・・!」

 

村で予断を許さぬ状況であるミシェイルを抱えると同時に、竜の祭壇の門が開く。

念のためにとマルスがよこしたリンダが到着し、リカバーをかけ始める。

 

 

スターライトをここで手に入れ、事態は動く。

諸悪の根源ガーネフを倒し、レナ、マリア、ニーナ、そしてエリスを救い出す。

 

一方・・・

 

  ・

 

 

「・・・いこう。みんな」

 

別行動し、遺跡の周りの敵を片づけたルオは、さらなる道筋を作るために、竜の祭壇に突入を開始した。

 

第21章 飛竜の谷 終

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