FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
「俺が貴様らの教官を務める騎士カインだ!
アリティアを守る騎士を育てるためと思って、ビシビシ行くのでそのつもりでいろ!!」
「「「「「はいっ!!!」」」」」
真っ赤な短髪の、いかにもな好青年。
見た目通りの熱血教官と見た。
ある意味扱いやすいはずである。
「・・・・・・ところで、今日の訓練だが・・・・・・
俺とその部下が、まずお前らの力量をはかってやるはずだったんだが、予定が変わった。
光栄にもこの方がお前達の相手になる」
「みなさん、よろしくね」
そう言って出てきたのは、天馬に跨った蒼髪長髪の可憐な少女である。
直接顔を知らないルオでも誰なのかわかった。
「「「「「シーダ様!?」」」」」
何故従騎士の訓練なんぞに英雄王の婚約者が。
「シーダ様はこう見えて天馬乗りとしてお強い。
いいかお前ら。間違ってもお怪我をさせぬようにな」
本気も出せないが手加減も出来たものではない。どうしろと。
「これは難題ですよルオ。どうしましょう」
「ああ、いいや。その辺りは僕がなんとかするよ。それより、純粋に戦いとして君の意見を聞かせて」
こちら側にまた砦が二つ。森も多い。
相手はまず、タリス傭兵隊の二人。
傭兵剣士と斧戦士である。
二人を倒すとシーダが現れるだろう。
「あ、はい。では・・・ 演習場として定められたエリアは、ちょっと狭すぎます。 すぐに間合いを詰められてしまうので、先手を取るほど距離を取るのは難しいでしょう」
「うん。なら、特攻したほうがいいかな?」
「いえ。シーダ様が出てくるとなると、下手に距離を詰めていると先手を取られます。タリス傭兵隊の方たちに先手を譲ってでも、シーダ様との戦いに備えたいです」
「先手を取られること承知で、待ち伏せるんだね。わかった」
シーダに初撃を与えるのはライアンということになった。
カタリナの作戦を皆も同意し、演習が始まった。
「始め!!」
地形効果の高いところに待ち伏せるのは基本だ。が・・・
(とにかく、反撃のできない弓兵、ライアンを守らないと)
砦にライアンを陣取らせて、それを三人で守る。
なんとか向こうの攻撃に耐えて、押し返して片付けた。
「・・・ふう」
「戦い方は心得ているようね。ならば次は私が相手よ」
ヴァサッ!!
羽音がして、シーダがさっそうと出てくる。
(よし)
ルオはわざと姿を現し、誘い出す。
シーダが突っ込んできた。
「ルオは傭兵なのね。ふふ。頼もしいわ」
「どうも」
(オグマさんのイメージがあるんだろうな)
ルオは剣を鞘に収めたまま、シーダの突いたやりを逆に掴んだ。
「!?」
「今だ、ライアン!!」
「はいっ!!」
ヒュン!!
ヒヒィイン!!
矢に驚いたペガサスが暴れ、シーダが振り落とされる。
掴んだヤリを支点にシーダをふわりと抱き寄せて地面に転がし、組み伏せた。
「「きゃあ・・・!!」」
何故かカタリナも悲鳴。
「うわぁ!?」
少し遅れて、ルオが間の抜けた声を上げてシーダから離れる。
組み伏せた時に、膝を太ももに挟ませてしまったのである。
「ご、ごめんなさい…」
その謝罪の理由を正確に見ていたロディが
「勝負あり、ですよね」
と、カインにすかさず確認を願う。
「う、うむ。それまで!!」
体制を直すシーダが何も言わないことに安堵する。
「・・・隊長。今のがわざとなら私は見損なったというしかないが」
「え・・・ちが、いや今のはその・・・」
カイン教官はしどろもどろのルオを見て、故意でないと解釈したらしい。
安心させるべく、評価を口にした。
「うむ、満点に近い。ただし、シーダ様を押し倒したのは軍法会議モノだが」
「!! ちょ、ちょっとまってください!?」
「はっは。もちろん冗談だ」
なるほど、カタリナの方の悲鳴はそれか。
あの謝罪の理由には気付いていないようだ。
どこまでも幸運な隊長殿だ…
ロディは内心肩をすくめた。
「良い戦いだったわ。強い騎士になって、マルス様を支える力になってね」
「はっ」
「貴方達の訓練は、私も顔を出すことにするわ。ペガサスナイトが必要な場面が出てきたら、言いなさい」
「え・・・・・・?」
奇妙な話になった。
どうも部隊ごと気に入られたらしい。
「ありがたい申し出ですけど、いいんでしょうか・・・?」
カタリナは困惑している。
婚約の発表もあって、あまり仕事を押し付けないように皆がしているうちに、むしろ暇になったのだろうか。
どちらにしても、万が一にも怪我をされては困るお姫様が部隊に加わるのは、ルオとしてはいっそ迷惑だった。
しかし、100%好意でおっしゃっているとわかるとなれば、理由もなく断れない。
「どうなんでしょう? 私、ジェイガン様に聞いてきます」
「ああ、待ってよ。僕も行く。シーダ様。ジェイガン将軍の許可が出次第お声をかけさせていただきます」
「ええ。それじゃあまたね」
ほかの部隊の訓練を見ていたジェイガンを見つけ、聞いてみると、
「構わぬ。これ以後もそういう申し出を受けたときには、必要な時にその方の力を借りると良い」
・・・という意外な答えであった。
それ以前にシーダ姫様の身の安全の話として扱って欲しかったが、ジェイガンとしても変な部分でシーダに信頼をおいているところがあるらしく、頓着していない。
「い、いいのでしょうか。シーダ様もその一人ですが、歴戦の勇士の姿も多いアリティアの城内でのこと。
助けを借りられるとあっては、僕たちの訓練にならないんじゃ・・・・・・」
「ふむ、お主は、マルス様が先の大戦をどのように戦ったか知っているかな?」
それが今の話と、どうつながるのだろう。
「ええと、大まかに伝聞でなら。
タリス傭兵部隊との連合であった解放軍は、ニーナ様を擁するオレルアン軍と合流、マケドニアのミネルバ殿のアキレス腱であるマリア姫を連れ出すことで、白騎士団の一部をミネルバ殿ごと統合し、アカネイア・パレスを奪還。
コーネリアス陛下の仇国グラを叩き潰し、グルニアの老将軍、太古の竜族さえ味方につけ、ドルーアを打倒したと」
「うむ。ここで例えたいのはそこじゃ。マルス様はともに戦おうと願い出るものは拒まなかった。
勿論スパイや暗殺者の不安はあったが、それが結果的に軍を大きくし、短期で劣勢のかの戦争を逆転させたのじゃ。
どんな者とでも、出会ったその瞬間から、息のあった戦いをしようと思えること。それすらも経験がモノを言う。
自らを鍛えることにも手を抜いてはならぬが、誰かとともに戦うことに尻込みしてはならぬ。
それでこそつかめる勝機というのも、戦場にはあるものじゃからな」
どちらかというと、一人での旅の多かったルオにとってみれば、弱いうちから誰かに頼るようではいけないと思った。
だが、ともに力を合わせることに引いていてはいけないという話もわからなくはない。
「・・・わかりました。訓練のうちと思って、ありがたくお力を借りるとします」
カタリナは単純に、素敵なお姫様とお近づきになったと喜んだ。
ルオとしては、やはり力を借りるメリットより、姫君の身を預かる重圧の方が重かったが。
その3 訓練開始 終