FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード 作:おかのん
「商隊を襲う山賊?」
「ええ」
あれからアイシャは時々会いに来る。
ギルドの仕事の一環ということになっているので、今や顔パスだ。
「その中に、山賊にしては手際が良すぎる奴らがいるの。襲いっぱなしになってる惨状が、いかにもただの野党に見える。
でも、一撃目と思われる、御者への的確すぎる一撃が違うと言ってるの。
10中8、9奴らだわ」
「対策は?」
「なるべく寄り集まって、護衛を多めに雇うしかないわ。
アリティアはこういう時、マルス様のつるの一声で、騎士団が動くからいいわよね。
実際、時間を決めてだけど、希望者には護衛をつけてくれるのよ。出るって言われてるあたりで。
要人護衛の訓練としては絶好の機会でもあるし、個人や家族単位の隊商は助かるはずよ。
そして、道すがら聞ける他国の情報は、実は価千金であることがある。護衛してくれる騎士になら惜しみなく喋るしね」
「へぇ・・・・・・」
昨日の理想ばかり先走った話を聞くと、マルスのおぼつかなさを見るような気持ちになったが、こういう実際やっていることは意外と質実剛健で、しかも互いに利があるように考えられている。
あの王子様は本当に興味深い。
「それから、オーブだけど」
「うん」
「オーブは5つあるらしい事と、そのうちの二つの行方がわかったわ。
行方っていうか、状態、かな?」
「状態?」
「『光のオーブ』と『星のオーブ』よ。
この二つのオーブによって、マフーを破るスターライトが生み出され、役目を終えたオーブの片方、星のオーブは、砕けて大陸中に散らばったという話よ」
「ええっ・・・」
5つならまだしも、砕けて飛び散ったとなると、いくつ探せばいいのかもわからない。
「・・・・・・ねえルオ。大地のオーブの話が聞けそうだからって、騎士団を志願するのは先走りすぎよ。
情報収集ならどう考えても、うちのギルドを頼ればいいだけじゃない。
騎士自体あんまり向いてない気もするし、何より遠回りになっちゃうんじゃない?」
確かにそんな気もしないでもない。
けれど。
「・・・・・・それでも、リーダーだしね。
僕が抜けることで、隊のみんなが迷惑することを考えると、簡単にはいかないよ」
「・・・・・・」
そこへ、カタリナがやって来た。
「あの、ルオ。今日の訓練の事で・・・」
「ああ、今いくよ。じゃあね。アイシャ」
ひらひらと手を振りながら、アイシャはルオに対する、嫌な予感を振り切れなかった。
なにか、胸騒ぎがする。
・
「今回の訓練からなんですけど、仲間が入ってくれるかもしれません」
「なかま・・・・・・って?」
「ほら、他の小隊は脱落者が多いってマルス様も言ってたでしょう?
才能はあるのに、仲間とのめぐり合わせが悪くて不合格になっちゃった人もいるんですよ。
で、そういう人の中にいい人がいたんです!!」
確かに、それでも残ろうとしている根性だけでも評価できる。仲間は多いほうがいい。
「それから、新しい武器とかも手に入れてきました。良かったら、使ってください!!
新しい仲間が持ってくるはずなんで!!」
「・・・・・・うん。ありがとう。
でも、よくそんなツテがあったね?」
「えへへ。頑張りました!!」
そろそろ時間である。
今回は二つの狭い橋のある川を挟んでの戦闘だ。
教官のカインが出てきて、号令を出す。
「ようし、早速はじめる!!
今回の試験官はこの人だ!!」
「っ!?」
「え、英雄オグマさん!?」
先の大戦では、その剣を存分に振るった傭兵である。
カタリナが驚くのも無理はない。
「さあ、誰で来る?」
「る、ルオ。ここはこちらも英雄の方々に・・・
いえむしろシーダ様を人質に・・・!!」
「落ち着きなよカタリナ」
ルオも魔導士マリクあたりには力を借りたい気もしたが、むしろせっかく暗黒戦争の勇者と手合わせを願えるのならと思った。
「いつものメンバーで・・・第七小隊のみんなで行くよ。リフさんに回復役をしてもらう程度かな」
再度カインの声が響く。
「始め!!」
・
「まずは、俺の指揮する兵達に勝ってみろ。
話はそれからだ」
手加減されているのがわかる。
オグマが自分で切り込むタイプなのは知っている。
(試される段階で怖気付くわけにもいかない)
「みんな一旦下がって!!
橋を渡り切る所に身を潜めて待ち伏せるんだ!!」
そこへ、騎馬が駆けてくる。
「!?」
「来ました、ルオ!!」
嘶きと共に騎馬がとまり、場上の人物が話しかけてくる。
「はぁ、はぁ・・・・・・
ルオってのは誰!?」
「え、あ、ぼ、僕だけど君は?」
「あたしは元第九小隊のセシル!!
カタリナの誘いに乗って、入隊しに来たわ!!」
(あ、新しい仲間って、女の子!?)
しかも、気の強そうな赤毛の娘で、ハチマキまでしている。
男勝りを絵に描いたような子だ。
「鋼の武器も、持ってきたわ!!順番に持って行って!!」
「あ、ああ。助かる!!」
鋼の武器は、少し重めではあるが、一撃の威力が強い。
素早さが相手より少し高いときは、今までの鉄の装備なら、二回攻撃ができるし、敵の方が少し高めなのに鋼の武器を持っていると、二回攻撃を喰らう恐れがある。
しかし、互角の相手なら、ぜひ手にしておきたい武器であった。
「ぐあっ!!」
「ロディ!?
リフさん、回復を!!」
なぜ、待ち伏せていたロディが?
その疑問には、カタリナが答えた。
「ルオ! この細い川の幅は、矢の届く距離です!
川に隣接していては、弓兵の攻撃を受けてしまいます!!」
(しまった!!!)
慌ててロディを後方に下げさせる。
「ぎゃーっ!!」
今度はルークの悲鳴である。
「く、くそっ!!
ルオ、橋は二本あるって言われただろ!?
待ち伏せをしようったって、セシルを入れても六人でギリギリなのに、リフのじいさんや弓兵のライアンも入れて、あんな布陣を両方の橋に出来ねえよ!!
片方にすれば、空いてる方の橋から強襲されることくらい分かれよ!!」
(馬鹿に理屈で怒られた!!)Σ(゚д゚lll)ガーン
「ルオ、これはまずいです。総崩れになります!!」
(くっ・・・・・・!!)
「みんな、一旦下がって、強襲に備えて!!
川からも離れるんだ!!」
「で、でもルオさん、両方の橋から強襲されたら防げません。せめてどちらかの橋は塞いでおかないと・・・」
ライアンの言うことももっともだった。
「僕が一人で橋一つ塞ぐ!!
強襲を警戒しながら各自回復を!!!」
こうなったのは自分のせいだ。責任を取らないと。
・
「・・・ほら、向いてないじゃない」
アイシャは、見下ろせる木の上で、そんなことをつぶやいた。
・
なんとか橋の上を守りきり、強襲もしのいだ。
鋼の武器のおかげで、早めに敵を倒せたのが幸いした。
「ふむ。お前は指揮などより、自分で切り込むほうがいいかもな」
苦虫を噛み潰した顔しかできない。
(叱責にしか聞こえないよ・・・)
皮肉ですらない。
「いやいや、褒めているんだ。
『自分のせいだ』と思っても、責任を取るために、その時一番過酷な状況・・・・・・
『橋を一つ塞ぐ』のは、おいそれとは出来ない。
自分を指揮する立場においては尚更だ。
『指揮する自分がまず五体満足でないと話にならない』という言い訳がきくからな。
しかし。
それでは部下はついてこない。
上から安全な場所で指図するだけでは駄目だ。
最低限、ピンチの時に、危険に身を晒すポーズはできないと、『コイツのために戦おう』とは思えないんだ」
「・・・・・・」
甘っちょろい信頼話に聞こえるようで、実はドライな『人心掌握術』についての講義だ。
(成る程。これが『傭兵オグマ』か)
「褒美だ。お前は、最後に俺が相手をしてやる。
訓練と思うなよ。殺すつもりでこい。
でないと、死ぬぞ」
ヒュガァン!!
っ!!!!!!!?
(速いっ!!?)
ルオがギリギリ対処出来る速さだ。
キィン!!
あっという間にルオの剣が弾かれる。
速さはルオもひけを取らないが、経験が違いすぎる。
剣の先を向けられる。
(くっ・・・・・・!!)
「・・・残念だな。お前は、ここで終わるのか」
ゾクッ・・・・・・!!
その凍るような目は、確かに死の恐怖を感じさせた。
自分が。
終わる?
ここで。
え?
「ルオさんっ!!」
ヒュオッ!!!
風切り音と共に、オグマの肩に矢が刺さる。
「ぐっ!?」
い ま だ。
弾かれた剣を掴んで、斬りかかる。
ギィン!!
受けられた。
次だ。
相手に考えさせるな。
隙を見せるな。
殺さなければ、殺される!!!!!
「うあああああああああっ!!!」
「そこまでっ!!!」
が、鍔迫り合いが終わらない。
ルークが声をかけるが、響かない。
「ルオ、もう終わりだ。ルオッ!!?」
なに言ってるんだ。殺さなきゃ、終わらな・・・
「ル・オッ!!!!!!!!」
アイシャの、声。
「終わり、だってさ」
「あ・・・・・・」
これは、『訓練』なのを思い出す。
「ご、ごめん、なさい・・・」
「いや、今の気持ちを覚えておけ。
戦場では、敵も味方も、みんな同じ今の気持ちなんだ。
そして、生き残るために、それにのまれるな」
「・・・はい!!」
今回の訓練は、ルオに得るものがあった。
・
その日の夜。
今回は軽傷とはいえ怪我人も出てしまい、ルオは少し落ち込んでいた。
『いや、まあ気にすんなよ。お前はまだ従騎士だ。俺と同じ未熟者なのは分かってる。
俺だって、一人前になるためには、その命令を聞きつつ、生き残ってこそ騎士だ』
『そうだ。英雄オグマが口にしたとおり、あそこで《僕が一人で橋一つ塞ぐ》と君が言った時。
俺は君と共に戦おうと改めて思えた。
明日には胸を張って歩いてきてくれ。
それさえも隊長の務めだ』
そう言ってくれるからこそ。
彼らを危ない目に合わせたくない。
自分の指揮の間違いで、死地に赴かせることになるかもと思うと、怖い。
(この先、本当に僕に隊長が務まるんだろうか)
どうしても眠れず、夜風にあたろうと、庭へ出る。
と。先客だ。
「あ・・・ ルオ」
カタリナ。
「眠れないんですか?」
「・・・・・・うん」
カタリナは察したようだった。
「気にしないでください。というか、むしろ私のせいですよね。本来軍師は私なんだから、気がつかなきゃいけなかったのに、セシルが来てくれたことが嬉しくて・・・」
そういえば、第七小隊は女の子はカタリナ一人だ。
カタリナは少し浮かれていたのかもしれない。
そして、意外にカタリナに頼っていたのにも気づいた。
戦況や地形を的確に判断して、ちゃんとアドバイスをくれ、正解に辿り着きやすいように説明してくれていた。
(・・・・・・結構、優秀なんだな)
最初にあまりに頼りのない姿を見ていたから、守ってあげてるようなつもりでいた。
馬鹿な思い上がりだ。結果、ろくに観察もせずに、いつものようにやったつもりになって、みんなを危険に晒した。
(マルス様は、仲間となりたいものを拒まなかった。
それは、得意分野を持ち寄れば、より大きな結果を出せることを・・・・・・力を合わせることの大切さを知っていたからなんだ。
僕は強いつもりだったけど、僕が強いだけじゃ出来ない事なんて、きっといっぱいある)
少しルオが押し黙ったのを見て、カタリナは話題を変えた。
「あの、近衛騎士の件、どう思います?」
「え?」
「私は、やりたいです。ルオや、みんなと一緒に。
戦争で荒れ果ててしまったアカネイア大陸を、元の豊かな地に戻すための希望、マルス様を守れるということ。
仲間がいて、誇れる仕事をして、日々を営んでいけること。
そんな未来を思い描いて、それだけでも幸せな気持ちになれます。
ルオは、どうですか?
ルオも一緒に・・・・・・」
ちょっと前のルオなら、それもいいね、くらい返せただろうか。
けれど、失敗をしてしまった自分。誰かに頼りきりだった自分。本当は、自分のためだけにここに居る自分を改めて感じて、落ち込んでいたルオには余裕がなかった。
そして。
「ごめん。いまは、頷ける気分じゃないよ」
自分の不甲斐なさから出た、自信がないという意味の返しだった。
でも、カタリナには、別の意味に取れた。
その時の傷ついた顔を、ルオはうつむいていて見ていない。
「そ、・・・そう、ですよね。
すいません。わたしったら、一人で舞い上がっちゃって・・・・・・
ご、ごめんなさい。わすれて、ください
おやすみ なさ・・・」
その涙声も、ルオは聞いていなかった。
明日、どうしたらいいか考えていた。
ほんとは、簡単な事。
なんでも自分で背負い込まずに、頼れば良いのだ。
そのために、仲間はいるのだから。
その6 絆 終