FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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前日編 終章

セシルに貰ったハチマキをしめてみる。

くれた本人を中心に、それなりに褒めてくれた。

 

「いやあしかし、なんだかんだで叙勲式か!

これも俺がタレルオに隊長を譲ったおかげだぜ!」

 

((((その通りだよ))))

 

という皆の心の声がきこえるようだ。

 

「でも、ホントにそうね。あんたには感謝するわ」

「ああ。君がいてくれたからこそだ」

「ルオさん。ありがとうございます・・・・・・」

 

「そういっぺんに褒めないでよ。というか、ぼくはその、一生懸命やったつもりだけど、うまくやれたとは思えない。

何度かポカもやったし、勝手なことも・・・・・・」

 

本心だった。頑張った自負があっても、実戦にはなんの意味もない。

そして騎士となるからには、失敗の許されない戦いの連続になるのだ。

 

取られた砦を取り戻す。襲われてしまった村の盗賊どもを退治する。そんな場面は出てくるだろう。けど。

そうなる前になんとかする。それが当たり前。

 

そんなことをやっていけるか?

 

やれないからこそ、冒険者や傭兵が必要とされるのだ。

それでも、そうあれるようにならなければ。

 

「教官達が文句なく合格だと言ってくれても、自分の至らなかったところを噛み締めて研鑽しようとする。

ルオったら、マルス様みたいですね」

「カタリナ」

 

思えば、彼女との出会いと同時に、この『騎士への道』は始まった。

 

「これでみんな、騎士なんですね。

・・・・・・ルオ。私、忘れません。あなたと一緒に過ごした日々を」

「・・・・・・うん」

 

あれ?

 

彼女に、この試験の後は、自由騎士を志願することは言っただろうか。

 

「さあ、式が始まりますよ」

「うん」

 

厳粛な雰囲気の中、式が始まる。

 

 ・

 

「アリティアの祖アンリと、マルスの名において。

 ルオ・ルスペード。

 貴君をアリティア騎士として任命する。

 騎士とは単なる身分ではない。

 一つの精神であり、一つの資格。

 如何なる時も弱き者の庇護者となり、

 敵に背を見せず、人を欺かず、

 己の品位を高め、信念に従い、

 不義と悪に対して戦う、

 正義と善の勇者であれ」

 

ひとりひとりにその優しげな声で、そのレイピアで肩をたたき、叙勲するマルス。

ほどなく全員が、ルオ、カタリナ、ルーク、ロディ、ライアン、セシルが肩を叩かれ、叙勲式が終わる。

 

「これで君たちは正騎士だ。よく頑張ったね」

 

「いやー、長かったぜ!!」

「そうだな、色々な事があった」

「ぼ、僕涙が出てきました・・・・・・」

「あ、あたしは泣いてなんかいないんだからね!」

 

皆がお互いを讃え合う。

 

そこへ。

 

 

「マ、マルス様、ジェイガン様!!」

 

兵士が駆け込んでくる。

 

「なんだ騒々しい。神聖なる叙勲式の最中であるぞ」

「敵です!! このアリティア城を攻める集団が!!」

「なんだとっ!!!?」

 

え?

 

「既に侵入されました!! 城内は混乱しています!!」

「!!! 数は!?」

「分かりません!! 確認が取れる状態ではありません!」

「警備の者は何をしていた!?」

「殆どが原因不明の昏倒を起こしています!!」

 

・・・・・・!!!!

 

ルオは飛び退いた。そしてマルスのそばに駆けた。

 

「ルオ?」

「奴らの狙いが、マルス様かもしれない。

この場には、僕らしかいないんです。

なら」

 

身を呈してでも。

 

「カンがいいですね。ここが一番楽なタイミングだったのですけど」

 

!?

 

「カタ、リナ?」

 

「でも、遅かれ早かれ、です。

蜘蛛が、巣にかかった獲物を逃がすことはありませんよ」

「それは、誰も邪魔しなければの話よね」

「!!?」

 

ヒュト!

 

短剣がカタリナの足元に刺さる。

 

「アイシャ!?」

 

アイシャがルオとカタリナの間に立つ。

 

「ルオ、彼女は・・・・・・

暗殺団の一員よ」

「!!?」

「そうよね? アイネ」

 

カタリナが眉間に皺をよせる。

 

「よく調べましたね。でも、計画に齟齬が見られない。

わかったのはついさっきですか」

「残念ながら間に合ったとは言えない。でも、ここからでも阻止はできるわ」

「やってみるといいです。

できるものなら」

 

ゴォッ!!

 

カタリナの手のひらが、炎に包まれる。

その炎はよりて集まって、うねる炎の球となった。

 

「!? エ、エルファイアー!?」

 

ルオが初めてあった時に感じたこと。あれは間違いではなかった。

彼女は、魔道士だ。

それも、高位の!!!

 

カタリナは地面にそれをぶつけ、あたりを火の海にする。

 

ドグゥァッツ!!!

 

ご・お・お・お・お・お・お・・・・・・

 

「もうすぐここに・・・・・・謁見の間に、私の仲間達が殺到します。

そうなれば多勢に無勢。どうにもなりませんよ」

 

「カタリナ、嘘だろ・・・・・・」

 

「ごめんなさい、ルオ。

今まで騙していて。

アイシャさんの言うとおり、私はアイネ。暗殺集団の幹部の一人です。

・・・マルス様を、殺しに来ました」

 

すすっと、カタリナが後退する。

 

謁見の間は入口がひとつしかない。つまり、閉じ込められた格好だ。

 

「流石に盗賊ギルドに目をつけられると厄介ですね。でも今回はうまくいった方でしょう。

これだけ長い間潜入出来ました。渡した地図で内部構造は隊員一人一人が完璧に頭にあるはず。

アリティア兵のほとんどは、今朝の朝食の遅効性の毒で、数日動けないでしょう。

後は、嬲り殺すだけです」

 

「カタ、リナ・・・・・・」

 

ルオは、何を言えばいいのかわからなかった。

 

あの泣きそうな彼女、はしゃぐ彼女、大慌てする彼女。

どれも、ウソだったとは思えなかったから。

 

 

 ・

 

「ウキキ。順調順調。

才能のありそうな奴にくっつく。甘える。媚びる。

あいつは、アイネはほんとに上手い。

 

外に出た任務の時に、それとなく誘導して、俺たちが雇ったゴロツキに襲わせた村を助けさせる。

マルスが好きそうな話。信用する。重用される。

 

手下は山ほど連れてきた。

アイネ、しっかり殺せー。

ウキキキキキキキキキキキキキキキキキ!!」

 

いつぞやの仮面の男である。

城門のたもとで奇妙な笑いを上げながら、ゆらゆらと揺れている。

 

アリティア城は、かつてない危機を迎えていた。

 

 

序章 前日編終章 英雄王暗殺

 

 

「どういう事!? なんでカタリナが・・・・・・」

 

こっちが聞きたい。とルオは思った。

 

しかし、そういえばおかしなことはあった。

 

まず、彼女の能力の高さだ。

 

軍師志望とはいえ、戦略の立て方はかなり的確だった。少し荒事に慣れすぎてやしないかと思うほどに。

 

森で道に迷った時もそうだ。

迷い始めた時に、流石にまずいと思って分かれ道でカタリナにアドバイスをもらった。

あの後とったルートは、本道から外れすぎていた上、目印のリボンは同じものだったのに、木が違うような気がした。

 

極めつけは、鋼の武器だ。

外部に連絡を取れない自分達に、どんなつてがある?

しかもその頃は、商隊が襲われる事件のことをアイシャと話した気がする。

取られたものの中に武器はあっただろうか。

 

「どっちにしろ、追い詰められた格好だぜ。

うかつに近づけないのに、出入り口はひとつしかない」

「ど、どうしましょうルオさん。僕ら、カタリナさんと戦うんですか・・・・・・?」

 

・・・・・・

 

「ご、ごめん。考えさせて・・・・・・」

 

そこに口を挟んだのは、マルスだった。

 

「みんな、ここは僕が単独で脱出をはかって、囮を兼任する。

君たちはその隙に各々逃げて・・・・・・」

「王子様。貴方アホなの?」

 

アイシャの一言に皆固まる。

 

「ここにいる人たちは、国そのものである『貴方』を守るためにいるのよ。

貴方が単独で逃げて、しかも囮も?

それはむしろ、騎士たちの存在意義さえ台無しにする発言よ?」

 

そのとおりではあるが、それはその『国そのもの』くらい偉い人にぶつける言葉だろうか。

 

しかし、それを正面から受け止めるだけの器がマルスにはあった。

 

「・・・・・・ごめん。

みんな、力を貸してくれ。

そして、ひとつだけ命令するよ。

君たちには、このアリティアの未来を背負ってもらうつもりでいる。

こんな所で死ぬことは許さない。

必ず、みんなでここを出るから!!」

 

「「「「御意!!」」」」

 

その声の中に、ルオの物は混じっていなかった。

 

「ルオ・・・・・・」

 

シーダの護衛として居たオグマが、ルオを見下ろす。

 

「オグマ、さん。

カタリナがこんなことするはずないんだ。

だって、そんな風にはみえなかっ・・・」

 

バキィッ!!

 

オグマに思い切り殴られ、ルオはへたり込んだ。

 

「気がつかなかったのは、しかたない。

しかし、間違いなく敵に回ったとわかるのに、そんなことを言い続けてなんになる?

貴様、奴にマルス様の喉元に剣を振りかざされても、『君がそんなことするはずない』と言い続ける気か?

現実を見ろ。

 

あの時、貴様は自分の間違いを認めて、戦局を立て直すために、一人で橋を守った。

オレを、失望させるな」

 

そう叱咤されても。

ルオは諦められなかった。

 

「身代わりに僕が死ぬぐらいの覚悟はあります。

でも、仲間を見捨てろと教わった覚えはありません」

「このっ・・・・・・!!」

 

そこにまたマルスが口を挟む。

 

「待ってくれオグマ。僕も、ルオにはギリギリまで諦めて欲しくない。

彼は、他でもない、仲間のことで葛藤しているんだ」

 

続けてアイシャが言う。

 

「ルオ、ここは私達が引き受ける。

貴方はカタリナを何とかすることを考えてて。

マルス様。時間を稼いで頂きたいのですが」

 

マルスは、行動で応える。彼は正しく権力をかざす。

 

「第七小隊は、僕の指揮下に入ってくれ。

まずは、守りを固める!! 特攻をかけてくる暗殺者を迎撃して!!」

 

隊員達の思いは、それぞれある。

しかし、カタリナの事をただ敵であったと割り切れる者はいなかった。

 

戦場では、それで仲間や自分の命を失うこともある。

命は、失ってからでは取り返しがつかない。

それでも。

諦めずにいればなんとかなるのなら、諦めたい者などいない。

 

なんとかなるのなら。

 

だって、諦めたくないのも仲間の命なのだ。

 

 

 ・

 

 

「うわあっ・・・!!」

 

暗殺団だけあるというべきか、敵の素早さはなかなかのものだ。

セシルやロディはついていけるが、ライアンは再攻撃を受けたりして苦戦している。

それでもなんとか、敵に対応していた。

 

「ここは通さねえぜ!!」

 

こういってはなんだが、ルオが使い物にならない以上、皆が動くしかなかった。

 

こうして矢面に立つと、ルオの強さが実感出来る。

頼りなげにしている時もあった。実際今はあてにならない。

そうなった時のこの戦局の苦しさ。

 

しかし、後ろに守るものがある、そして自分を守る誰かがいないこの状況。

 

皆、きついと思った。

けど。

 

自分がいるからこそ守れる、大切なものがあるという事。

 

((((悪くない))))

 

皆、その事実に、力がわく。

心が研ぎ澄まされ、手にこもる力が鋭くなる。

 

「隊長、安心しろ。

カタリナと話せ。

私も、敵でしたと言われてはいそうですかと殺意を抱けるほど割り切れていない。

だが、敵として振舞うものに油断はできない。

叩き伏せてからでないと、尋問もできん」

「そうよ、ルオ隊長!!

とにかく、あの子を止めてからよ!!」

 

隊長。

まだ僕を、そう呼んでくれるのか。

ロディ、セシル。

 

「おいタレルオ!!いつまでヘタレルオになってやがんだ!!

あいつは、ずっとお前にくっついてたじゃねえか。敵だとしても、観察には行き過ぎなくらい!

まだ信じてるって言うなら、迷うなよ!!

仲間を信じるのが、アリティア騎士だろ!?」

 

ルーク。

 

信じて、失うかもしれないものがある。

見限れば、確実に失うものがある。

 

そうだ。まだ失われていないなら。

諦めたくない。

 

俺は何も失わない。

失ってたまるか!!

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!」

「ルオ!?」

 

アイシャの声も届かず、ルオは駆け出す。

護衛の暗殺者を倒し、カタリナに近づく。

 

「・・・・・・エルファイアー」

 

巨大なふた筋の炎が荒れ狂い、ルオをめがけて飛ぶ。

 

「はっ!!」

 

なんとかかわし、言葉をかわす。

 

「カタリナ・・・・・・」

「ルオ。ごめんなさい。

そうです。私は貴方をずっと騙していました」

 

感情のこもらない、うつろな声。

 

思い出される、今までの彼女。

 

『じ、実戦なんて、どうしましょう!?

ルオ、私、軍師志望なのです。

戦略の助言ならできるつもりですけど、白兵戦の役には立ちません。いきなりこんな試験だなんて!』

 

 

『ほら、他の小隊は脱落者が多いってマルス様も言ってたでしょう?

才能はあるのに、仲間とのめぐり合わせが悪くて不合格になっちゃった人もいるんですよ。

で、そういう人の中にいい人がいたんです!!』

 

 

『私は、やりたいです。ルオや、みんなと一緒に。

戦争で荒れ果ててしまったアカネイア大陸を、元の豊かな地に戻すための希望、マルス様を守れるということ。

仲間がいて、誇れる仕事をして、日々を営んでいけること。

そんな未来を思い描いて、それだけでも幸せな気持ちになれます。

 

ルオは、どうですか?

ルオも一緒に・・・・・・』

 

 

あの言葉も、この言葉も。

演技だったっていうのか。

 

「最初の試験のあの時、戦えないって言ったのも嘘なんだね」

「ホントですよ。私が魔道士なのは隠しておきたかったから、軍師志望で来たんです。

だから魔道書も持ってきてなかった。

身体検査をされるとまずいと思ったので、暗殺道具も持ってきてなかったし」

 

「セシルを引っ張ってきたのは、何のため?」

「言ったじゃないですか。解散しちゃった組にも才能のある人はいたって。

私、孤児だったからかな。自分と重ね合わせて、ついつい助けちゃうんですよ」

 

「近衛騎士を一緒にって言ったのも嘘?」

「仲間がいて、誇れる仕事をして、日々を営んでいける。

それは幸せな未来です。やりたかったです。

でも、ノルダに居た時に、差し伸べてくれた手。

それを振り払う理由にはならなかった。

それだけです」

 

 

ルオは適当にあしらわれている。

皆、そうとしか思えなかった。

 

しかし。

 

 

・・・・・・

 

 

 

ルオは、あることに気づいた。

 

「・・・・・・カタリナ。ひとつだけでいい。

『本当の事』を言ってくれ」

「私は、一度も嘘なんか言ってませんよ」

 

にこやかに微笑む、カタリナ。

 

 

第七小隊の皆は、肩を落とした。

マルスも、シーダも。

オグマに至っては呆れ返ったため息をついた。

 

「もういい。貴様には心底失望した。

この娘は俺が切り捨てる」

 

「・・・・・・」

 

次の瞬間。

 

モーションなしで喉を突く。

 

「やめろおおおおおおおっ!!!!」

 

「くっ!!!」

 

ルオのタックルのせいで、オグマの刃はカタリナに半歩届かなかった。

 

「貴様ッ!!!」

「カタリナは、いった!!『一度も嘘を言っていない』って!!

騙していたのも認めた。でも、彼女は『嘘』を言ってないって!!

 

彼女は、俺達と一緒に騎士になることを思って、幸せになれると言ったんだ!!」

「敵の言葉をなぜ信じる!?」

「敵じゃないって、言ってるじゃないかぁぁああああっ!!!!」

 

そこへ。

 

またこの玉座の間に来る者がいた。

 

敵の増援。誰もがそう思った。

が。

 

「お嬢。下はギルドの腕利きが取り返しましたぜ」

「ネクス!! 上出来!!」

 

傷だらけの顔の、バンダナをかぶったいかにも盗賊な男だった。金髪と相まって虎のようだ。

 

「誰あれ」

「アイシャ嬢が盗賊ギルドの助っ人を呼んでおいてくれたということだろう」

 

そういう事であった。

 

「ちっ」

 

カタリナが歯噛みする。と。

窓が割られて、仮面の男が顔をのぞかせた。

 

「ウキキ。どうやら、多勢に無勢はこちらのよう。

アイネ。どうする?」

「撤退します。残存戦力もない今、到底勝てません」

「やっぱり?

まあ、機会はまだある。今は逃げろー」

 

窓枠にひらりと飛び乗り、そのまま降りていった。

 

「・・・追わなくていい」

 

マルスが呟く。

 

 

「ルオ。貴様・・・・・・」

「オグマ。その先を言うなら僕からにしてくれ」

「私も」

「シーダ様・・・・・・」

 

後に禍根を残す事は解っていた。

そのせいで死ぬ者もあらわれるかもしれない。

それでも、その選択は希望でもあった。

 

マルスは、その場でルオの方を向いた。

 

「ルオ。君を近衛にこの場で任命する」

 

!?

 

いきなりのマルスのセリフに皆驚く。

 

「どうやら僕は目をつけられているらしい。

そして、あの子は・・・・・・カタリナは位の上のものの一人のようだ。

彼女と、向き合ってあげて欲しい。

『嘘をついていない』のなら。

君がそれを信じたのが伝わっているなら。

彼女には、君にしか言えない言葉がある。きっと」

 

「はい」

 

 

今度は、迷わなかった。

今度こそ、カタリナに応える。そう思った。

 

第七小隊は、近衛騎士ルオの指揮下となった。

 

マリクはカダインに戻り、オグマは契約を終えて別の仕事にゆく。

リフも旅に出ることになり、エストもアベルの待つ店に戻る。

 

ハチマキは、なんとなく返した。

しめて奮い立つような気分ではない。

 

それでも、決意はあった。

 

譲れないものが、あった。

 

 

 ・

 

 

後日。

 

「で、本当に近衛騎士をやるつもり?」

 

鍛錬を繰り返すルオに、アイシャは語りかける。

 

「ほうって・・・・・・おけないんだ。

彼女は幸せになりたいって、ちゃんと言ってた。

でも、きっと彼女の周りは、そうさせてくれないんだ。

わかるんだ。

元の世界に帰りたいのに、どうしたらいいのかわからない僕みたいに・・・・・・

苦しんでるのが。

 

ノルダで手を差し伸べてくれた人がいたって言ってた。

その人の手を振り払えないとも。

なら、どうして暗殺団にいるんだ。

彼女は、それを楽しいとは思っていないだろうに。

そこにいても幸せになれないのはわかっているはずだ。なのに。

 

アイシャ・・・・・・」

 

ふい、とアイシャは目をそらす。

 

「分かってる。協力するわ。

 

ルオは、そういう人だもんね。

あたしを助けてくれた時も、目のことでもそうだった。

・・・・・・誰にでも、そうなんだよね」

 

「誰にでもじゃないよ。

彼女は・・・・・・カタリナは、守ってあげなきゃって、そう思うから」

 

アイシャの顔が、歪む。

 

「妹みたいに、思えちゃったのかな。

だから、『この子となら、きっと僕はどこまでも走っていける』って思わせてくれた、アイシャとはまた違うんだ」

 

「・・・・・・ばか」

 

そのままアイシャは去ってしまった。

声が震えていたような気がするのは、気のせいだろうか。

 

 

終章 英雄王暗殺 終

 

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