ある日の事です。G41が娯楽室にやってくると、M590さんが黄昏ていました。
なんだか、暗い表情でため息を吐いています。悩みがあるのかもしれません。
M590さんはご主人様の部屋を掃除し隊の隊長さんです。隊員として、M590さんの悩みを解決しようと思います!
「M590さん!」
「あ、G41ちゃん」
G41が近づくと、M590さんもこっちを見ました。笑顔ですが、なんだかちょっと悲しそうです。M590さんが悲しいとG41も悲しいです。何とか力になってあげたいです!
「M590さん? 何かあったの?」
G41の言葉に、M590さんは少しだけ迷うように視線を彷徨わせましたが、しばらくするとため息を一つ吐いて悩みを打ち明けてくれました。
「実は指揮官のことなのですが…」
悩みはどうもご主人様のことらしいです。それならG41には自信があります! 何せ、G41は46時中ご主人様のことばかり考えてます。ご主人様に関する理解度はFALさんの次ぐらいだと自負しています!
「私、指揮官から敬遠されているのではないかと思って…」
M590さんの言葉にG41は首を傾げました。そんなことはないと思います。ご主人様はM590さんのことを頼りにしていますし、お掃除に関しても感謝しています。その後に続いたあんよが云々は聞き流しましたが、それでもM590さんを避けているとは思えません。
「うーん、考えすぎだと思うよ?」
「でも… M500にはかなりフランクに話をするのに、私の前では固いのですよね…」
G41の言葉に、M590さんはまたため息を吐いて言います。M500さんはこの前入ってきたばかりのSG型戦術人形で、M590さんの妹分みたいなものです。
言われてみれば、確かに入ってきたばかりなのにご主人様と頻繁に話しているところを見かけます。なんでしょう。ほんのちょっぴり腹が立ちました。何としても、M500さんからM590さんにご主人様の視線を取り戻さなければいけません! ご主人様を取り戻せ作戦開始です!
G41は冷静に分析してみます。ご主人様やFALさんからは問題が起きたときは、まず対象や事象を比較することから始める、と言います。
まず、M590さんとM500さんを比較すると、M590さんの方が古参です。戦場での活躍も大きいです。でも、M500さんの方が話しかけられる理由はなんでしょう?
ぴこん! G41は分かりました! 謎は全て解けました!
「分かりました、M590さん!」
「…ええと、もしかして指揮官のM500に対する態度のことですか?」
「はい! それはミミがあるかないかです!」
M590さんの問いに、G41は力強く答えます。もうこれしかありません。G41の名推理です! えっへん!
まず、ご主人様はG41が大好きです。隊の最古参で、自身の右腕と言うFALさんと比べても同じぐらい好きだと思います。そして、G41にはミミがあります。だから、ご主人様はミミのある戦術人形が好きなのです!
というわけで、推理が成立しました! 後は、それを検証しないといけません。
というわけで、G41はご主人様のところに行くことにしました。
「M590さん、ちょっと待っててね?」
「え、ええ…」
というわけで、G41はご主人様の部屋にダッシュです。部屋の前に行って、申告したのち入ります。部屋の中には
「やあ、G41。どうしたんだ?」
G41を見つけたご主人様が声をかけてきます。G41はとりあえずご主人様の前に駆けて行きます。そして、猫さんみたいなポーズをして言いました。
「ご主人様、G41だにゃ~♪」
それはIDWちゃんの台詞を真似たものでした。ミミのある戦術人形の代名詞であるIDWちゃんの物まねをすることで、ご主人様がミミを好きかどうかを測るのです。
「ぐはぁ!」
そう言って、ご主人様は一瞬天を仰ぎ、そして机に突っ伏しました。どうしたんでしょう?
「ちょっと、指揮官?」
「ああ… 余りに可愛くて意識が飛んでしまった…」
FALさんの呆れ半分の言葉に、ご主人様は真顔でそう答えました。そして、G41をなでなでしてくれました。気持ちいいです。
というわけで、ご主人様がミミが好きということは確定事項になりつつあります。でも、まだ確実ではありません。というわけで、もう一度検証をしてみます。
「
「え? うん、私はいいけど…」
「ああ。ちょうど暇だし、席を外していいぞ、
ご主人様からの許可が出たので、G41は
そして、部屋の隅のおもちゃ箱からこの前のハロウィンで使った猫さんの耳の付いたカチューシャと尻尾の付いたベルトを取り出しました。
「
「え? う、うん」
「それでね、あのね…」(ごにょごにょ)
「う、うん。分かったよ」
G41の伝えた作戦内容に
「あ、あの…指揮官…」
「どうしたんだ、も…」
「え、ええと…ひゃ、一〇〇式機関短銃だにゃ~…なんて、えへへ…」
でも。ご主人様とFALさんは無反応です。どうしたんでしょう? 可愛い
「う…」
ご主人様が呻くようにそう言って、次の瞬間
「うぼあー」
そう言って、机に突っ伏しました。何が起こったのでしょう?
「…
私もちょっときゅんとしたわ、とFALさんが言います。何と、
というわけで、ご主人様はミミが大好きだということが確定しました。というわけで、G41は
「M590さん! やっぱり、ご主人様はミミが大好きです!」
「え、ええ。そうなの…」
「というわけで、はい!」
何だか戸惑っているM590さんに、G41は
「これを着けて、あの台詞を言えば、ご主人様を倒せます!」
「た、倒すの?」
M590さんが戸惑いがちに言いますが、G41はご主人様を倒すにはこれしかない、と思っています。そういえば、M590さんの悩みってなんでしたっけ? ちょっと忘れましたが、でもこれで大丈夫だと思います!
「M590さん…何事も挑戦です!」
多分事情がちっとも分かってない
「…M590だにゃ~、なんて…」
「…M590!?」
部屋に入ってきたFALさんが驚いて言います。なんでしょう、部屋の空気が凍り付いた気がします。
「…M590、休暇の申請出しておくわね…」
「ち、ちがうんです、FAL!」
部屋から出ようとするFALさんをM590さんが必死で止めます。それで今までの経緯をFALさんに説明します。
「…なるほどね」
M590さんの言葉にFALさんは軽くため息を吐いて言いました。
「単にスタンスの問題よ。M500はテキトーだけど、M590は真面目でしょ? それに合わせて対応しているだけよ」
FALさん曰く、ご主人様は数多くの戦術人形を相手にしないといけないのでそれぞれに対応が少し違うらしいです。考えてみれば、G41と
「そういうことですか…」
M590さんは軽くため息を吐いて言います。安心したのか、それとも少し残念に思っているのかは定かではないですが、FALさんの言葉を信じたみたいです。ご主人様のいうことを一番知っているFALさんがそういうのです。絶対間違いありません!
「でも、そうだとすると、指揮官の態度はこれからも固いままなのでしょうか?」
M590さんは少し残念そうに言います。M590さんはご主人様にもっと親しく接して欲しいみたいです。
「任せて、M590!」
FALさんはとってもいい笑顔でそう言います。
「貴女のセンスを直してあげるわ!」
そう言って、M590さんを引っ張って連行します。
「え、ええ!? FALのセンスって…!?」
「つべこべ言わないの。行くわよ!」
微妙に抵抗するM590さんと有無を言わさず連れていくFALさん。きっとFALさんに任せておけば大丈夫です!
明くる日、G41はFALさんのアドバイスの成果を見ました。ミニなチャイナドレスを着たM590さんです! しかも、頭にミミも付いています。さすがFALさん! 完璧です!
案の定M590さんは副官に急遽任命されました。流石です! これもミミがあるおかげです! G41の検証は間違っていなかったです。
でも、ご主人様の視線が何だか低いです。足元ばかり見ている気がします。何だかよくわかりません。
でも、M590さんがご主人様と仲良さそうなので問題なしです! M590さん、良かったね! まる。