G41はうきうきです。待ちに待った副官業務です。
今日の副官業務はいつもとは一味違います。だって、昨日までずっとご主人様に会えなかったのです。昨日もご主人様はご飯を食べたらすぐ寝てしまったので、今日こそ甘えまくりたいです。
昨日大仕事をこなしたばかりなので、さすがに今日は仕事はないと思います。ご主人様は暇に違いありません。なので、物凄く構ってもらえると思います。うきうきです。
いつもより1時間以上早く起きて、お茶を淹れて指揮官室に向かいます。お茶が冷めてもお代わりを魔法瓶に入れて持っていきます。今日のG41は気合いっぱいです!
誰もいないはずの指揮官室に入ると、ご主人様とFALさんがいました。G41はちょっとびっくりです。ノックなしに入ってしまうことになってしまいました。でも、二人は怒ったりしませんでした。
「おはよう、G41…」
FALさんがG41に挨拶します。何だか、ちょっとばつが悪そうです。嫌な予感がしました。
「おはよう、FALさん。どうしたの?」
「うん…ヘリアンさんから緊急の仕事が入ってね…昨日までの事件絡みでね…」
G41の問いに、FALさんは何だか申し訳なさそうに説明します。
話によると、グリフィンの各基地が正体不明の敵に襲われているそうです。グリフィンは全基地及び支部に非常事態宣言を発令したそうです。
でも敵の正体がわからないのでは打つ手がありません。そこでご主人様が敵の正体を探るために調査をしているようです。
G41はご主人様を見ます。いつもとは全然表情が違います。G41がいることにも気づいていません。何もしていないように見えますが、IFNと繋がった頭の中は大忙しのはずです。しかも、かなり切迫した状況であると思います。
「ごめんね、G41。いっぱい甘えたかったでしょうにね…」
FALさんが申し訳なさそうに言って、G41の頭をなでなでしてくれます。
G41はがっかりです。せっかくご主人様にあまあましてもらえると思ったのに、これでは甘えるどころではありません。
でも、FALさんが悪いわけではありません。悪いのはグリフィンを襲っている謎の敵です。ぷんぷんです。出撃して戦うことになったら思う存分ぼこぼこにしようと思います。
それにご主人様がこういう時は決して邪魔をしてはいけません。下手をするとご主人様が危険だからです。だから、G41は甘えたい気持ちを我慢します。G41は待てもできるいい子です!
「おはようございます、ご主人様!」
そう言って、G41はお茶を出します。でも、ご主人様は上の空です。G41がいることにも気づいていないと思います。寂しいです。お茶も飲んでくれません。とっても寂しいです。
でも、G41は我慢します。ご主人様の仕事の邪魔をしてはいけません。それに、ご主人様は超有能なので、すぐに仕事を片付けてくれます。そしたら、G41といっぱい遊んでくれるはずです。少しぐらい待っても大丈夫です。FALさんだっていてくれます。G41は寂しくないです。
一時間経ちました。カップのお茶がすっかり冷めて湯気も立たなくなっています。しょんぼりです。
ご主人様は変わらずIFNの中です。時折苦しそうな表情をしたり、額に汗が浮いていたりするのは相当難しい仕事をしているようです。FALさんはご主人様の頭から延びるケーブルを握っています。ご主人様に異変があったらすぐに引き抜くためです。
G41はご主人様の仕事を手伝えません。悲しいです。
なので、せめてお祈りすることにします。ご主人様、無事にお仕事を終えてください。神様、ご主人様を守ってください。一生懸命お祈りします。
更に二時間経ちました。ご主人様は相変わらずです。G41にも気づいてくれません。
G41は寂しいです。悲しいです。今すぐご主人さまに飛びついてあまあましたいです。でも、できません。物凄くお腹が減っている状況で目の前にご飯を置かれた状況で待てをさせられているような状況です。
FALさんが心配そうにG41を見ます。FALさんに心配をかけて申し訳ないです。
でも、G41は昨日までいっぱい我慢しました。今日もいっぱい我慢しています。でも、もう我慢しきれません。なので、少しだけ、邪魔にならない範囲で甘えても怒られないと思います。
G41はご主人様に近づいていきました。FALさんも止めません。G41が寂しいことを知っていて、こんな時に決してご主人様の邪魔をすることはない、と信じてくれているからです。FALさんはいつもG41を理解してくれます。
G41はご主人様の横に座って、ひじ掛けの上のご主人様の手の上にそっと顎を乗せました。ご主人様の体温を感じます。嬉しいです。G41の寂しさが少しだけ癒されました。
すると、頭を撫でられている感触がしました。ご主人様が反対側の手で撫でてくれているのです。G41の方を見て笑ってくれました。ようやくG41に気付いてくれました! G41は嬉しいです!
でも、すぐに前を向いて仕事に戻りました。また反応がなくなりました。悲しいです。寂しいです。
でも、ご主人様の邪魔をしてはいけません。ご主人様の負担になってはいけません。G41は我慢します。我慢します。我慢します…ポロリ。我慢しすぎて涙が出ました。
すると、ご主人様はケーブルを引き抜いてすぐにG41の頭を抱きかかえてくれました。
「よしよし…ごめんな、G41。いっぱい我慢したもんな…」
ご主人様はG41を抱きしめていっぱいなでなでしてくれます。
結局ご主人様の仕事の邪魔をしてしまいました。G41はダメな子です。
でも、嬉しいです。ご主人様がなでなでしてくれて嬉しいです。ご主人様が抱きしめてくれて嬉しいです。ご主人様の匂いがいっぱいで嬉しいです。ようやく満たされた気がしました。くすん。
「まあ、仕方ないわよね。G41、いっぱい我慢したもんね」
そう言って、FALさんも頭をなでなでしてくれます。ご主人様の仕事を邪魔しても、怒らなかったです。FALさんはいつもG41を理解してくれます。
「でも、どうするの指揮官?」
FALさんの言葉に、G41は悲しくなりました。G41の寂しさが癒えても仕事は残っています。そして、G41は仕事の邪魔をしてしまいました。このままではまた長い時間ご主人様が構ってくれなくなるかもしれません。そんなの嫌です。G41はご主人様に抱き着きました。G41はダメな子です。でも、ご主人様に構って欲しいです。
「いいさ。正直、埒が空かん。戦術を切り替えよう」
ご主人様はG41を抱きしめて、なでなでしながら言います。そして、G41の顔を両手で持って視線を合わせて言いました。
「G41、今すぐにお出かけの支度をしてくるんだ。今日は市街地で一緒にデートしよう」
ご主人様の言葉にG41は目を丸くしました。そして、すぐに嬉しい気持ちで一杯になりました。
デートです! ご主人様と憧れのデートです! わーいわーい! 物凄く嬉しいです! G41の目の前が一気に薔薇色になりました!
『カリーナ、今から休暇を3日ほどとる。手続きを頼む。後、リストを送るからその案件全部を俺が帰る前に通しておいてくれ』
『え゛!? 休暇って、非常事態宣言中ですよ!? しかも、こんなの…通りっこないですよ!?』
『意見は求めてない。よろしく頼む』
ご主人様は通信モジュールでカリーナさんと会話して、一方的に話を打ち切りました。言われてみれば。確かに非常事態宣言中にデートをするとか普通あり得ません。
でも、きっと大丈夫だと思います。ご主人様は凄い人なので、これも何かの手だと思います。G41はご主人様を信じます!
「FAL。よろしく頼んだぞ?」
「ええ。…私、自分のやるべきことを間違えたりはしないわよ」
ご主人様の言葉に、FALさんは不敵に笑って言います。FALさんはご主人様が何も言わなくても命令を分かっています。凄いです。流石、FALさんです!
「よし、出かけるぞ! G41、ちゃんとスカートも履いてくるんだぞ?」
「はい、ご主人様!」
そう言って、G41は駆けていきます。自分の部屋へ、お出かけの支度をしに行くのです。
デートです! ご主人様とデートです! 憧れのデートです! 嬉しいです! G41はとてつもなく幸せです!
きっと神様がいっぱい我慢したG41にご褒美をくれたのだと思います。神様、ありがとう! 今度、神棚にほねっこをお供えするので待っててね? まる!