ご~るでん☆れとりば~ず!   作:カール・ロビンソン

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18・甘えんぼG41(その3)

 凄いです! 木と布と紙で出来たお部屋です! こんなお部屋見たことありません。

 しかも、床は畳です! 柔らかくて草の匂いがするので、多分天然物の畳です! 基地の娯楽室のプラスチック製の畳とは大違いです!

 ここは今日泊まるお宿です。料亭旅館風の宿で、今G41達はご飯を食べるために離れの建物にいます。凄いです! ご飯を食べるところが別の建物なんて、流石高級宿泊施設です!

 G41は思わず畳の上でコロコロしたくなりました。でも、そんなことはしません。今日のG41は大和撫子だからです!

 今G41は浴衣を着ています。白くて花の模様の可愛い浴衣です。女将さんが着付けてくれました。

 ご主人様に似合うかどうか聞いたら、物凄い勢いで床でゴロゴロし始めました。よく分からないですが、ご主人様はお行儀が悪いです。G41だって我慢しているのに。困ったご主人様です。

 

 そんなG41とご主人様の目の前には凄いご飯が並んでいます。透けて見えるような薄い刺身や、綺麗な丸いものが盛られた小鉢なんかが並んでいます。凄いです! こんなご馳走、見たこともありません!

 

「いやぁ、てっぽうなんて久し振りだな」

 

 そう言って、ご主人様は刺身をお箸で取って紅葉おろしを乗せて、ポン酢をつけて食べようとします。

 てっぽうって何でしょうか? G41は首を傾げました。G41の記憶が正しければ、鉄砲はこの国の古い言葉で銃の事を指すはずです。でも、銃が食べられるはずがありません。ご主人様に尋ねてみます。

 

「ご主人様? てっぽうって何ですか?」

 

「ああ。河豚のことさ。当たったら死ぬからてっぽうっていうんだ」

 

 ご主人様の言葉を聞いたG41は真っ蒼になりました。河豚には怖い毒があると聞いたことがあります。そんなものを食べたらご主人様が死ぬかもしれません。ご主人様が死んだらG41は生きていけません。

 

「だめです、ご主人様!」

 

 G41はご主人様のお箸の先の刺身をぱくっとしました! 危ないところでした。これでご主人様は死にません!G41は戦術人形なので平気です。何とかご主人様を守ることができました!

 ちなみに、とてもおいしいです。何だか、一瞬味がないように思いましたが、もぐもぐしているとじわじわと口の中に体験したこともない味わいが広がっていきました。幸せです。でも、油断してはいけません。ご主人様が危ないからです。

 

「ありがとう、G41」

 

 ご主人様はそう言って頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41はご主人様が無事で嬉しいです。

 

「でも、大丈夫だ。この河豚は食っても死なないからな」

 

 ご主人様はそう言いました。そういえば、一〇〇式(モモ)ちゃんが海洋研究所の河豚には毒がないって言っていたような気がします。それならご主人様も美味しい河豚を食べられます。嬉しいです。

 

「じゃあ、ご主人様! あ~ん♪」

 

 そう言って、G41は刺身に紅葉おろしを乗せて、ポン酢をつけてご主人様の口元に運びました。G41はお箸も上手に使えます!

 

「ああ。あ~ん…」

 

 そう言ってご主人様は食べてくれました。間接キッスです。嬉しいです。えへへ。

 ふと見ると、ご主人様のお猪口が空でした。なので、お銚子を取ってお酒を注いであげます。G41は気の利いた大和撫子です! えっへん!

 

「G41…俺、もうこの瞬間死んでもいい…」

 

 ご主人様が感慨深そうに言います。幸せそうです。ご主人様が幸せでG41は嬉しいです。でも、死んだらだめです。G41とご主人様はずっと一緒です。

 

 その後、お鍋がやってきたり、生きた魚を捌いてお寿司にしてくれたりとか色々美味しい事が沢山あって、ご主人様もG41も大満足でした! 特にお吸い物に浮いていた肝が美味しかったです! FALさんや一〇〇式(モモ)ちゃんにもおいしいご飯を持って帰ってあげようと思いましたが、ご主人様の曰く、お土産は別に用意するそうなので遠慮しないで食べました。とっても美味しかったです!

 

 お部屋に帰る途中、廊下を歩いているとガラス張りの部屋が見えました。中には何やら大きなテーブルみたいなものがあります。でも、その真ん中にネットが張られていたりもしました。あれは何でしょう。G41は興味津々です。

 

「高級旅館に似合わないチープなものがあるじゃないか」

 

 ご主人様がニヤリとして言います。きっとあれは楽しいものです! なんとなくそう思いました!

 

「せっかくだし、卓球やっていくか、G41?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は頷きます。G41は楽しいことをするのが大好きです。ご主人様も一緒だともっと大好きです。

 ご主人様は部屋の隅にあった籠からラケットを取り出して、G41に渡してくれました。ボールはご主人様が持ってます。

 

「そういえば、G41は卓球を知っているのか?」

 

 ご主人様が尋ねてきます。G41は卓球とか知りません。でも、この前ステンちゃんが持って来た玩具がそれっぽいのでそうだと思います。

 

「はい、ご主人様!」

 

 なので、G41は元気良く頷いてラケットを構えました。小さいので両手では持てませんが、ボールが軽いので片手で十分です!

 

「じゃあ、行くぞ。それー!」

 

 ご主人様がラケットでボールを打ち出してきました。バウンドしている遅い球です。ご主人様はG41が初心者だと思って手加減してくれています。でも、G41の動態センサーは伊達ではありません。ミミをぴん!と立てて、ボールの動きを捉えます。

 

「えーい!」

 

 完全に捉えました! G41は力いっぱいボールをかっ飛ばします!

 ぱっこーん! やりました! これでホームランは確実です! えっへん!

 

「おっとっと」

 

 と思ったら、ご主人様があっさりとキャッチしてしまいました。G41はしょんぼりです。アウトになってしまいました。

 

「G41、それは野球だ。卓球じゃない」

 

 ご主人様の言葉に、G41ははっとなりました! そういえば、ステンちゃんはあれを野球盤って言ってました。卓球盤じゃありません。なんと、G41は勘違いをしていました!

 

 というわけで、G41はご主人様から卓球を教わりました。しばらくすると、ラリーを30回とかできるようになったので、ご主人様に一杯褒めて貰いました。G41は卓球が好きになりました。今度、一〇〇式(モモ)ちゃん達とも一緒にやってみたいです。

 

「さて、そろそろ部屋に戻るか」

 

「はい、ご主人様!」

 

 というわけで、ひとしきり遊んでご主人様とG41は部屋に戻りました。お部屋にはもう布団が敷かれていました。ご主人様とお隣です。嬉しいです。ご主人様の御伽噺を聞かせて貰えると超嬉しいです。

 

「G41、先に風呂入るか?」

 

 ご主人様が尋ねてきます。G41は普段お風呂に入りません。大体の場合は、シャワーで洗浄するだけです。なので、ご主人様にゆっくり入って来て欲しいです。

 

「いいえ、ご主人様。ゆっくり入って来てください」

 

「ああ。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰う」

 

 そう言って、ご主人様はお風呂に行きました。この部屋のお風呂はなんと露天風呂みたいになってます。凄いです。流石、高級宿泊施設です。お水も人工ですが温泉らしいです。凄いです。

 

 というわけで、G41は一人になりました。お布団の上でゴロゴロしたり、お部屋の中を見て回ったりします。

 …飽きました。やっぱり、ご主人様がいないと楽しくないです。

 G41は露天風呂をそっと覗いてみます。ご主人様はお風呂でお酒を飲みながら極楽気分です。あんなにゆったりしているご主人様は珍しいです。そっとしておいてあげるべきです。

 でも、ご主人様がいないとG41はつまんないです。どうしましょう。

 

 いいことを思いつきました!

 

「ご主人様ー!」

 

「うん? どうしたんだ、Gよんい…って、ぶっ!」

 

 ご主人様はG41を見るなりお酒を吹き出しました。どうしたんでしょう?

 ちなみに、G41はご主人様の背中を流すべくお風呂に乱入してます。もちろん、浴衣は脱いでます。お風呂には服を着て入ったらいけません。FALさんからもそう言われています。

 

「じ、G41、おまっ…!」

 

「ご主人様! 背中を流しに来ました!」

 

 狼狽えているご主人様を見て、G41は笑顔で言います。背中を流すとみんな喜んでくれます。FALさんも喜んでくれます。なので、ご主人様の背中を流して、喜んで貰いたいです。

 

「G41! せめて、タオル…! タオル巻け!」

 

「ふぇ!? でも、お風呂にタオルを漬けちゃいけませんってFALさんが…」

 

「命令だ! タオル巻け!」

 

 ご主人様の命令は絶対です。なので、G41はタオルを身体に巻きました。ご主人様は顔を真っ赤にして、顔を背けています。呼吸も荒い気がします。上せたのでしょうか?

 

「…で、G41? どうしたんだ?」

 

「はい! ご主人様、背中を流します!」

 

「そ、そうか…」

 

 じゃあ、お願いするか。と、ご主人様は洗い場に座って背中を向けました。お任せください、ご主人様! G41は一生懸命ご主人様の背中を流します!

 

 ご主人様の背後に座ると、なんだかドキドキしました。ご主人様の背中は広いです。逞しいです。しばらく運動してないから鈍ったっていつも言ってますが、すごく鍛えられてると思います。ドキドキです!

 

「えーい!」

 

 というわけで、ご主人様の背中に抱き着きました。ご主人様の体温と匂いを感じます。ぬくぬくです。G41は幸せです。

 

「ぐはあ!」

 

 突然ご主人様が盛大に呻きました。ご主人様の目の前の鏡が真っ赤です。血の匂いがします。どうしたんでしょうか?

 

「G41… のぼせたみたいだから、上がるよ…」

 

 そう言ってご主人様は立ち上がって、左手で鼻を押さえながら前屈みになってお風呂場から出ていきました。変なご主人様です。とりあえず、鏡をお湯で流して身体を洗うことにしました。後、お風呂にも漬かりました。温泉はぬくぬくでした! 気持ちよかったです!

 

 お風呂から上がると、ご主人様はお布団の上で転がっていました。もうお眠なのかもしれません。体内時計を確認してみると、もう2200を超えています。G41はお眠の時間です。ご主人様も眠いのかもしれません。

 

「ご主人様、もうお眠する?」

 

「…ああ。明かりを消してくれ」

 

 ご主人様がそう言ったので、G41は明かりを消しました。部屋が真っ暗です。でも完全な闇ではないです。G41は狙眼を起動して歩いていきます。G41の狙眼は抵光量空間にも対応しています! えっへん!

 

 G41は自分の布団に潜り込みました。ふわふわでいい匂いがします。ぬくぬくです。G41は幸せな気持ちでいっぱいです。でも、もっと幸せな気持ちになりたいです。

 というわけで、もそもそもそ…

 

「って、おい。G41?」

 

「ご主人様ー!」

 

 というわけで、G41はご主人様のお布団に潜り込みました。ご主人様の匂いに包まれています。ぬくぬくです。G41は物凄く幸せです。こんな幸せなこと滅多にないです。幸せ150%です!

 

「全く、甘えん坊だな、G41は」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様に抱きしめて貰いながら、G41は頷きました。それはそうです。G41はご主人様が大好きです! ご主人様に甘えている時がG41の至福の時なのです!

 

「ご主人様! ご主人様の御伽噺が聞きたい!」

 

「分かったよ、G41… 昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいました…」

 

 ご主人様はG41のおねだりを聞いてくれました。嬉しいです。ご主人様に抱き着いたまま、御伽噺を聞きます。幸せすぎます。きっと夢でもこんなに幸せなことはありえません。幸せ200%です!

 G41はご主人様がいてくれて幸せです。ご主人様の戦術人形で幸せです。いつまでも、ご主人様と一緒の日々を送っていきたいです。ご主人様の声が途切れがちになってきました。眠いのだと思います。G41も寝ます。また明日、ご主人様! まる!


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