4月1日です! 全てのウソが許される万愚節です!
この日、G41達戦術人形には大切な緊急任務が発生します。それがエイプリルフール大作戦です!
ご主人様は戦術人形の嘘を物凄く嫌います。下手に嘘をつくと解体処分も辞さない勢いです。
何故なら、報告の虚偽を許すと作戦が成り立たないからです。なので、G41もステンちゃん達も絶対にご主人様に嘘はつきません。FALさんでさえご主人様に嘘を言うことはないです。
でも、この日は嘘が許されます。なので、今日は嘘をついて盛大にご主人様を困らせるべき日なのです。
でも、みんなで嘘をついたりするとご主人様も辟易とする上に、効果が薄まります。なので、代表で誰かが嘘をついて、視覚と聴覚を共有して、慌てるご主人様を楽しむのです。
そして、今年の嘘つき役はG41です! くじ引きでそう決まりました! えっへん!
ちなみに、去年は
「ご主人様~!」
「おお、G41! どうしたんだ?」
G41が近づいていくと、ご主人様は笑顔で迎えてくれます。そして、頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。でも、幸せに囚われてはいけません。G41には重要な使命があるのです。みんなも楽しみにして待っています。というわけで、G41はFALさんから教えられた嘘を言います。
「あのね、ご主人様。G41ね、好きな人ができたの!」
「そうか~、好きな人ができたのか~」
G41の嘘を聞いたご主人様は穏やかな口調でそう言いました。G41と視覚を共有しているFALさん、及び他のみんなも首を傾げます。なんだか、ご主人様の反応が薄いです。FALさんが言うには物凄く驚くはずだったのですが…
「好きな人ができた………………………だとぉ!?!?!?!?」
そう思っていたら、いきなりご主人様が絶叫しました。物凄くびっくりです。ご主人様が物凄く驚いたので作戦は大成功です。
「じ、G41!? そ、それはどういうことなんだ!? く、詳しいことを聞かせて貰うぞ!?」
「は、はい、ご主人様」
ご主人様に両肩を掴まれて、鬼気迫る表情で言われたのでG41は戸惑いながら頷きました。怖いです。ご主人様を驚かせるのには成功しましたが、何だか変な方向に話が進んでます。
G41の窮状を察したFALさんが腰を上げました。流石、FALさんです。アフターケアもばっちりです! FALさんが来てくれれば何の問題もありません!
「まずはだ、G41… そいつは誰なんだ?」
でも、FALさんが来る前にご主人様から質問をぶつけられてしまいました。あう。ご主人様の雰囲気がいつもと違ってちょっと怖いです。怒られてしまうのでしょうか? でも、最悪正直に言えばご主人様は許してくれると思います。なので、今はFALさんの言うプラン通りに答えます。
「ごめんなさい、ご主人様。それは言えません」
「そ、そうか…」
G41の言葉にご主人様はあっさり引き下がりました。流石、FALさんの読み通りです! ご主人様はG41達戦術人形の自主性を重んじるので、任務以外のことには強く追及はしないのです。
「もう一つ聞くぞ? …そいつと俺、どっちが好きなんだ?」
ご主人様の言葉にG41は困ってしまいました。
この質問が来ること自体はFALさんの読み通りでした。でも、答えはG41の好きに言っていいとのことでした。FALさんはG41がご主人様より好きです、って言えないことを理解してくれているからです。
「はい! ご主人様と同じぐらい好きです!」
なので、G41はつける限りの精一杯の嘘をつきました。G41はご主人様より好きな人はいないのでそれより好きな人がいる、という嘘は絶対につけないですが、FALさんや
「そ、そうなのか…」
でも、ご主人様は物凄くショックを受けたみたいです。視覚を共有しているみんながどう思っているかは知りませんが、G41はあんまり笑えないです。ご主人様の顔色が目に見えて悪いからです。
でも、でもでもG41の心は喜んでいます。嬉しいです。ご主人様がやきもちを妬いてくれているみたいで嬉しいです。G41は悪い子です。でも嬉しいです。
「指揮官。どうしたのよ、G41をそんな目で見て」
そうこうしているうちにFALさんがやってきました。G41はほっとしました。料理以外のことなら、FALさんに任せておけば何とかしてくれます。
「おお、FALか。いいところに来た。…G41は下がってくれ」
ご主人様にそう言われたので、G41は部屋から出ました。でも、G41はFALさんとも視覚と聴覚を共有しているのでやり取りがわかります。ちょっと気になるので、部屋のドアの前で待つことにしました。
『FAL。大至急、G41と接触した基地の男のリストを上げろ。一時間以内にやれ』
あう。いきなりご主人様が無茶苦茶なことを言います。FALさんもまずい、思っているみたいです。舌打ちが聞こえました。
『…無茶苦茶言わないでよ、指揮官。それに、G41に接した人とか整備班の人間しかいないし…』
『…そうだな。…よし、リストアップした。すぐにそいつらを呼び出せ。非番だろうが何だろうが関係ない。指揮官命令だ』
ご主人様、早いです。しかも言っていることが無茶苦茶です。あう。なんだか、話が物凄く無茶苦茶な方向に突き進んでいます。
『落ち着いてよ、指揮官』
『これが落ち着いていられるか!? 俺のG41に色目を使いやがって! 生きて帰れると思うな!!』
『ちょっと、指揮官!? それ何よ!?』
『西の野郎が開発した、歩兵携行用対要塞光子砲だ。G41を嫁に欲しかったら、これぐらい受けて見せろ!』
『基地を吹っ飛ばすつもりなの!?』
あうう。もう収集がつきません。こんなご主人様は初めてです。FALさんでさえ手に負えない状況です。もうどうしようもありません。
「ごめんなさい、ご主人様!」
「「G41!?」」
部屋に飛び込んだG41は驚く二人の前で事情を説明しました。全部、エイプリルフール大作戦でしたと告白しました。
「そ、そうだったのか…」
そう言って、ご主人様は落ち着いてくれて、手にしたアサルトキャノンを床においてくれました。よかったです。大惨事は免れました。
「もう、指揮官。今日の日付を考えてよ」
「うるせえ。本気でびっくりしただろうが」
ほっとしたFALさんとご主人様が文句を言い合います。よかったです。いつものご主人様が戻ってきてくれました。よかったです。G41はご主人様に抱き着きました。嬉しかったからです。
「でも、ご主人様! G41はご主人様がやきもちを妬いてくれて、嬉しかったです!」
G41は自分の心を正直に言いました。ご主人様がG41のことでやきもちを妬いて慌ててくれているのを見て、G41は嬉しかったです。G41は悪い子です。でも、本当に嬉しかったです。
「全く…そんな可愛いこと言われたら、許すしかないだろ?」
そう言って、ご主人様はG41を抱きしめて頭をなでなでしてくれました。気持ちいいです。G41は嬉しいです。G41はご主人様が大好きです。ご主人様もG41が大好きです。二人は超相思相愛です。えっへん!
「G41? G41は誰が一番好きなんだ?」
「はい! もちろん、ご主人様です!」
ご主人様の問いに、G41は今度こそ正直に答えました。G41にとって、ご主人様ほど好きな人がいるはずがありません。そう言うと、ご主人様がなでなでしてくれます。嬉しいです。
「G41、もう一回」
「はい! G41は、ご主人様が一番大好きです!」
「もう一回」
「はい! G41は、この世界で一番ご主人様が大好きです!」
「全くもう、ばかっぷるね~」
ご主人様とG41のやり取りを聞いていたFALさんが苦笑して言いました。それはそうです。G41はご主人様が一番大好きなのです!!
というわけで、エイプリルフール大作戦は終わりました。ご主人様は物凄く驚いてくれましたし、G41はご主人様の愛情を再確認できました。そして、ご主人様の慌てるところが見えたので他のみんなも多分大満足です。なので、エイプリルフール大作戦は大成功した! まる!