結局、話をもう少し詰める必要があるとかで、404小隊のみんなは泊まって行くことになりました。お部屋はご主人様の部屋にハンモックを取り付けて何とかしました。
ちなみに、ご主人様は昨日は車の中でお休みでした。みんなのために部屋を譲ってあげるなんて、ご主人様はとってもいい人です。
G41はキッチンにやってきました。乾燥コーンがあったと思うので、ポップコーンを作ってみんなで食べようと思ったのです。
そこで先客がいることに気づきました。G36ちゃんです。
G36ちゃんは最近入ってきたばかりの戦術人形で、G41の後輩です。しかも、物凄く背が低くて、M99ちゃんよりも幼く見えます。
本来のG36ちゃんは大人の女性の義体のはずなのですが、この基地に配属したのは何故か外見が大きく異なるようです。どういうこのなのでしょう。もしかして、ご主人様の趣味なのでしょうか。
「G36ちゃん、お料理中?」
「あ、お嬢様」
G41の言葉に、G36ちゃんは振り向いて返事をします。ちなみに、G36ちゃんはG41のことをお嬢様と呼んでます。よく分からないですが、それがしっくりくるそうです。
見ると、G36ちゃんはジャガイモの皮を剥いていました。ジャガイモはこの前G41がいっぱい貰ってきたので、たくさんあります。
「ジャガイモ料理でも作ろうかと…メイドとして、料理の腕を上げておかねばなりませんし」
「そうなの?」
「はい。…それに我が国ではジャガイモでフルコースが作れないと嫁に行けない、と言われていますし」
G36ちゃんの言葉にG41ははっとしました。G36ちゃんとG41は共にI.O.P.社の欧州工場産です。同じ国の出身なので、G41もジャガイモでフルコースを作れないとお嫁に行けないかもしれません。
一応、G41もそれなりに料理はできるようになりましたが、そのほぼ全てを
どうしましょう。G41は困りました。
「G36ちゃん。G41にもジャガイモ料理教えて?」
「え? お嬢様にですか?」
G41の言葉に、G36ちゃんは困ってしまいました。
「申し訳ありません、お嬢様。私も試行錯誤の段階で…最近製造されたばかりで知識が蓄積されていないのです…」
G36ちゃんが謝って言うので、G41も困りました。確かに最近造られたばかりであれば仕方ありません。
でも、ならばなおさらジャガイモ料理について学ばないといけません。G41とG36ちゃんの花嫁修業作戦開始です!
まず、料理について尋ねるなら
でも、
ちなみに、45さんは
45さんと
まず、フルコースには料理のレパートリーが必要です。そして、G41はジャガイモ料理となると、粉吹き芋とフライドポテトぐらいしか知りません。一応、肉じゃがという料理についても
「私…アイントプフとカトッフェル・ズッペぐらいしか知りません…」
G36ちゃんが申し訳なさそうに言います。でも、G41はそれでも凄いと思います。そんな料理のことなんて、G41は名前さえ聞いたことがないのですから。
困ったG41達はFALさんに頼ることにしました。
FALさんは料理のことではあんまり頼りにならないですが、それでも知識があるので料理の名前と大まかにどういうものかは知ってるかもしれません。それさえ分かれば、自分達で考えて作れるかもしれないからです。
というわけで、G41はG36ちゃんを担いで指揮官室に行きました。幸い、打ち合わせは終わったらしく、落ち着いた様子のご主人様とFALさん。それに、416さんがいました。
「ん? どうしたの、G41にG36」
部屋に入ってきたG41達にFALさんが言います。ご主人様と416さんは机の上の書類で相談中です。というわけで、G41は当初の予定通り、FALさんに尋ねます。
「FALさん。ジャガイモ料理知らない?」
「うえぇ!? ……え、ええと…フライドポテトとか?」
あう。やっぱり、FALさんは料理に関しては頼りにならないです。どうしましょう。G36ちゃんも不安そうです。
ふと見ると、ご主人様と416さんが相談するのを止めて、なんだか可哀想なものを見る目でFALさんを見てます。
「…なによ?」
「…いいえ。ただ、天野指揮官の食生活が心配なだけ」
「…指揮官の食生活が貧しいのは借金のせいよ?」
「…まあ、
「失礼ね! できるわよ!」
「そういう嘘松はいらんというに」
三人が言い合いをしていますが、G41とG36ちゃんは大弱りです。困りました。
下手に知らない者同士で料理に挑戦するととんでもないことになります。G41も料理ができないときに、SOPMODちゃんと無理やり料理しようとしてとんでもないことになった経験があります。そうでなくても、貴重な食材を無駄にしてはいけません。
これは
「…天野指揮官。 二人とキッチンを借りるわね?」
「ああ。存分にやってくれ」
416さんの申し出にご主人様が許可を出しました。そういえば、416さんも同じ国の出身です。ジャガイモのフルコースができるのでしょうか?
「二人はどんなジャガイモ料理ができるの?」
指揮官室を後にして、キッチンに向かう道すがら416さんが聞いてきました。
「ええと、アイントプフとカトッフェル・ズッペができます」
「えっとね、粉吹き芋と肉じゃが」
「なるほど。G36はスープ。G41はメインデッシュをお願いね。他は私が作るから見てなさい」
G36ちゃんとG41の言葉を聞いた416さんが言います。G41達はびっくりです。416さんは料理が得意なのでしょうか?
「でも、416さん。肉じゃがは作れないです…」
G41はしょんぼりして言います。ニンジンやジャガイモや玉ねぎはありますが、牛肉や糸こんにゃくがないです。両方ともとんでもない高級食材で、G41達には手が出ません。
「レシピにこだわる必要はないわ。…ポトフとか知らない?」
ぴこん! G41は416さんの言葉にはっとしました! そういえば、
「…相変わらず利口なのね、G41は」
そんなG41を見て、416さんは頭を撫でてくれました。気持ちいいです。G41は嬉しいです。
昔から416さんは無口で、でも見るべきところは見て、しっかり褒めてくれました。G41は416さんが大好きです。
半時間後、ジャガイモのフルコースが完成しました。試食はご主人様にやってもらうことにしました。
「おお! 凄いな!!」
ご主人様が机に並んだ料理を見て感動して言います。本来、フルコースは順次出すのが通例ですが、今回は試しということで一斉に並べてみたのです。
G36ちゃんの作ったカトッフェル・ズッペ。それに、416さんが作ったポテトパンケーキとジャガイモの浅漬けサラダとポテトアイス。それに、G41が作った洋風肉じゃがです。
ご主人様はそれらを美味しそうに食べていきます。ご主人様が幸せそうで、G41は嬉しいです。G36ちゃんと416さんも嬉しそうです。
「全部旨いが、特に肉じゃがが旨いな。G41、よくやった」
ご主人様の褒めの言葉に、G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました! これで、G41はお嫁さんに行けそうです! えっへん!
「ええ… G41も前に進んでいるのね…」
416さんがほんの一瞬微笑んで言いました。とっても綺麗な、まるで流星のような笑顔でした。416さんの笑顔、それはいつもそんなだったとG41は思い出しました。凄く素敵だと思いました。
「いいえ、416さんのお陰です。ありがとうございました!」
G41は416さんにぺこりと頭を下げてお礼を言います。416さんがくれた助言がなくては洋風肉じゃがは作れなかったからです。
ポトフと肉じゃがを融合させて作った洋風肉じゃがは牛肉の代わりにベーコンを用いてます。そして、ベースには鶏のコンソメを用い、隠し味に白ワインを加えました。ぶっつけ本番でしたが、G41は精密計算は得意なので調味料のバランスを間違うことはありませんでした。
「しかし、416がこんなに料理が上手いとは思わなかったな」
ご主人様がポテトアイスを食べながら、416さんに言います。416さんの作った三品は、凄く美味しかったです。G41もG36ちゃんも感動したぐらいです。
「言ったはずです、天野指揮官。私は完璧だと。…戦闘や謀略が上手いだけでは戦術人形とは言えないわ」
「はいはい。負けを認めるわよ」
416さんの言葉に、ご主人様のお皿から勝手に料理を横取りしていたFALさんが言いました。FALさんもまた他人の優れたところを素直に認められる戦術人形です。料理ができなくても、FALさんは立派だ、とG41は思います。
「ただいま、天野指揮官。…って、美味しそうな匂いがするわね」
「ただいま、指揮官。…これは一体…」
訓練から帰ってきた45さんと
「おお、おかえり。丁度いい、
「え!?」
ご主人様の無茶振りに
「…上等。一〇〇式、貴女を超えてみせる」
「…面白そうね。一〇〇式、次は料理で勝負ね」
416さんと45さんが楽しそうに笑って言います。二人とも乗り気です。でも、負けません。一〇〇式隊の結束を見せてあげます!
「
「お嬢様、
「う、うん! 一〇〇式、料理対決、行きます!」
G41とG36ちゃんの言葉を受け、
「よし! FAL、全員呼べ。今日はジャガイモ祭りだ! 必要な食材は全部放出しろ!」
「了解! ジャガイモファイト! レディー…ゴー!」
ご主人様とFALさんの言葉を受け、G41と
ちなみに、料理対決は途中で416さんがM16さんに飲まされたお酒でへべれけになったので、G41達の不戦勝になりました。416さん、お酒には気を付けてね。