ある日の事です。G41にお仕事が入りました。PV撮影のお仕事です。
何でも結婚式場の宣伝用らしいです。ということは、G41は花嫁さんです!
G41は嬉しいです。ウエディングドレスとか着てみたかったからです。うきうきです!
というわけで、G41はご主人様と一緒に結婚式場に行きました! 式場の職員の人が迎えてくれて、G41は早速ドレスを着ることになりました。更衣室で職員の人達が着付けてくれて、お化粧もしてくれました! すっかりお嫁さんです! えへへ。
というわけで、ご主人様にお披露目です。ご主人様はG41の花嫁姿を気に入ってくれるでしょうか?
「はっ…! …ハレルヤ~!」
ご主人様の前に行くと、いきなり平伏してしまいました。どうしたんでしょうか?
「ご、ご主人様?」
「はっ! G41だったのか!? てっきり天使が降臨してきたのかと思った…」
戸惑うG41に、ご主人様は顔を上げて言います。よくわかりませんが、きっと褒めてくれているのだと思います。G41は嬉しいです。
「いやぁ、こんな可愛いG41と誓約の練習か~。夢みたいだなぁ」
ご主人様がニコニコして言います。ご主人様はG41と誓約してくれるつもり満々です。その予行演習なら嬉しいです。G41もうきうきです。ご主人様もうきうきです。二人は相思相愛です。えっへん!
「あの…相手役はこちらで男性型人形を用意してますから…」
「何ぃ!?」
職員の人の言葉にご主人様が衝撃を受けます。G41も残念ですが、考えてみれば仕方ないです。ご主人様は人形じゃないですし、メディアに露出とかしちゃいけません。
「いや、それはまかりならん。例え芝居でも、G41と誓約しようというなら俺を倒してからにしろ」
あう。ご主人様がヤキモチを妬き始めました。それ自体は嬉しいですが、これでは仕事になりません。どうしましょう。
いろいろすったもんだした結果、相手役にはG36ちゃんが選ばれました! G36ちゃんはG41と相思相愛ですし、義体を標準型にすればタキシードも似合いそうです!
「お嬢様、どうでしょうか?」
「凄い素敵だよ、G36ちゃん!」
タキシードを着て、眼鏡をかけているG36ちゃんはカッコいいです! 今はG41よりもずっと大人っぽく見えます。ドキドキです!
というわけで、G41とG36ちゃんは係の人から段取りを聞いて、式の動画を見て、それをロジック化して頭にインストールしました。これで動作を失敗することはありません。
というわけで、さっそく本番です。G41とG36ちゃんは腕を組んで教会に入場しました。そして、一緒にゆっくりと歩いていきます。両脇にいるエキストラの人達が、祝福の言葉と花びらを浴びせてくれます。
真っ白な教会を歩く、真っ白なドレスのG41。なんだかちょっと嬉しいです。お芝居ですがお嫁さんです。えへへ。
「うううう… 俺こんな日が来たら、泣いちゃうかも…」
教会の隅のカメラに映らない辺りで見ているご主人様が、目に涙を浮かべて言いました。どうして泣いちゃうのかは分かりませんが、G41の花嫁姿を喜んでくれていると思います。
G41は笑顔でG36ちゃんを見上げました。G36ちゃんも嬉しいといいです。ところが、G36ちゃんは顔を真っ赤にして緊張してました。どうしたんでしょう? 動きはロジック化しているので、緊張する必要はないと思うのですが…
やがて、神父様の前にやってきました。ちゃんと台詞は覚えています。G36ちゃんも覚えていると思うのですが… 凄く緊張しています。でも、きっとG36ちゃんなら大丈夫です。
「G36さん、あなたはG41さんを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい! お嬢様は何があっても私が守ります!」
G36ちゃんが力強く宣言してくれました。ちょっと台詞が違うような気がしますが、これはこれでいいと思います。なんだか、本気で言われてるみたいでちょっとドキドキです。
「G41さん、あなたはG36さんを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います!」
G41はちゃんと台詞通りに答えました。G41はお芝居も完璧です。えっへん!
でも、G36ちゃんの顔がさらに赤くなった気がします。どうしたんでしょう? 具合が悪いのでしょうか? これは頑張って、一発で終わらせてG36ちゃんの負担にならないようにしないといけません。
その後も式は着々と続いていきます。指輪交換をしたりとか、誓いの言葉を言ったりとかしました。ちゃんと式次第通りにG41はやっています。G36ちゃんも時々言葉がとっても力強かったりしますが、おおむね式次第の通りです。
そして、いよいよ誓いのキスの場面です! G36ちゃんとちゅーです。えへへ。
G41とG36ちゃんは相思相愛です。なので、ちゅーしても問題ありません。
「お、お嬢様…し、失礼します…」
G36ちゃんがG41のヴェールを取ってくれました。いよいよちゅーです。G36ちゃんの顔はもはやゆでだこのようです。早く終わらせないといけません。というわけで、G41は笑顔で目を閉じました。ちゅーを待つことにします。
1分経ちました。ちゅーはまだです。ほんの少しだけ薄目を開けて様子を見ました。G36ちゃんが顔を真っ赤にしてフリーズしています。これはいけません。不具合が起きたのかもしれません。早く終わらせて診断しないといけません。
というわけで、G41はG36ちゃんの頬を両手で持ってちゅーしました! なんだか、G36ちゃんの唇は柔らかくていい感じです。えへへ。
というわけで、10秒ほどちゅーしてG41はG36ちゃんを放しました。すると、G36ちゃんは鼻血を垂らして、糸が切れた人形のようにその場に倒れてしまいました。大変です! 早く、診断しないといけません!
「ご主人様! G36ちゃんの診断をお願いします!」
「…ああ。いいものを見たなぁ」
ご主人様がよくわからないことを言っています。そんなことを言っている場合ではないのですが…
しょうがないので、G41はG36ちゃんを担いでご主人様のところまで持っていきました。でも、ご主人様は夢見心地で反応がありません。困りました。
というわけで、正気に戻すためにご主人様にもちゅーしました! これできっと元に戻ってくれるに違いありません。
10秒ほどちゅーした後、ご主人様は…
「うぼあー」
と言って鼻血を出して倒れてしまいました! どうしたんでしょう? よく分かりませんが、困ったことになってしまいました。
結局、その日の撮影はそれで終わりということになって、G41はご主人様とG36ちゃんを車に乗せて、基地に戻りました。そして、ご主人様をトンプソンさんにお任せして、G36ちゃんを医務室まで運んでいきます。
「お嬢様… 大好きです…」
途中でG36ちゃんがうわ言を言いました。G41もG36ちゃんが大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!
なんだかドタバタしてしまいましたが、次の日には式の残りをやってPVは完成しました。G41は楽しかったですし、G36ちゃんも何だかんだで幸せそうでした。ご主人様もPVの仕上がりに満足そうで、嬉しそうに何度も見返していました。
いつかまたこんな風に式を開いて、ご主人様と誓約したいです。その時もこんな風に幸せと祝福に満ちた日であるといいな、って思いました! まる。