ご~るでん☆れとりば~ず!   作:カール・ロビンソン

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38・愛されG41(その3)

 G41はるんるんです。FALさんの曰く、もうすぐ今回の事件が終わるからです。

 FALさんはご主人様と共に、今回の事件の経緯をつぶさに観察しているそうです。そして、もう敵は追い詰められており、今は逃げようとしているスポンサーに噛みついているそうです。

 敵はおバカさんです。スポンサーに噛みついたところで敵を増やすだけです。もはや長期的な補給は期待できません。もう敵は自壊を待つのみとなりました。

 今後のG41達の仕事は、死に体の敵の息の根を止めることです。ほっといても自壊するだけの相手ですが、死ぬ間際の足掻きで被害が出るかもしれません。なので、その前に敵の動きの隙を衝いて完全に葬らなくてはならないのです。今はその機会を伺っているらしいです。

 

 さすがご主人様です! もう事件は解決した同然です。後はご主人様の号令を待つのみです。G41はやる気満々です!

 あいつらのせいで、G41は切ない気持ちをいっぱい味わいました。G41は許しません。仮設G41隊の力をもって、あいつらを木っ端みじんにして見せます。出撃が待ち遠しいです。うきうき。

 

 というわけで、今日は仮設G41隊とM590隊で模擬戦闘訓練を行いました。結果はG41隊の圧勝です。M590さんも感心していました。

 

 G41はうきうきしながらご主人様のところに報告に行きます。仮設G41隊はいい隊になってきています。正直、一〇〇式隊と勝負しても勝てる気がします。ご主人様はきっと褒めてくれます。というわけで、G41はスキップしながら指揮官室に向かいました。

 

 指揮官室に行くと、何やら先客がご主人様とお話ししていました。部屋にいるのはTMPちゃんのようです。どうしたのでしょう?

 

「…TMP。最近調子が悪いようだが、どうしたんだ? 前の訓練ももう少し粘れただろう?」

 

 あう。TMPちゃんはお説教されているみたいです。しょんぼりです。

 でも、ご主人様の指摘は当たっています。本来TMPちゃんは体捌きに優れた戦術人形です。でも、最近訓練でやられる頻度が増えています。調子が悪いのかな、とG41も思っていました。

 でも、TMPちゃんを責めないで欲しいです。ハイエンドモデルの人形で固められた一〇〇式隊の中でTMPちゃんは唯一のハイコモングレードの戦術人形です。戦果の面でやや劣るのは仕方ないことです。

 いざとなったら、乱入してTMPちゃんを擁護しよう、とG41はミミを立ててドアの前で待機します。

 

「ご、ごめんなさい、指揮官…」

 

「いや、謝る必要はないさ。ただ、不安や不満があるなら言ってくれ。それを解消すればTMPも調子が回復するだろう?」

 

 謝るTMPちゃんに、ご主人様は優しく言います。ご主人様は優しいです。G41は安心しました。

 

「あの…G41さんはいつ一〇〇式隊に戻るんですか?」

 

 TMPちゃんが言いました。なんと、TMPちゃんはG41のことを気にしていたみたいです。

 

「とりあえず、現状今回の戦いが終わってからだ、としか言えん。言いたいことはわかるが、しばらくはそのつもりで行動してくれ」

 

「…分かりました」

 

 ご主人様の言葉に、TMPちゃんは肩を落として退出しました。

 

 むー。これはいけません。TMPちゃんはG41がいないので寂しいに違いないです。秘密基地とかでは今まで通りに接しているつもりですが、戦場で接することがないので寂しいのかもしれません。

 TMPちゃんとG41は言うまでもなく、相思相愛です。えっへん。でも、そのことがTMPちゃんの負担になってはいけません。隊が違っても、G41はTMPちゃんが大好きだ、と伝えてあげたいです。身体は少し離れてても心は共にある、ということを教えてあげたいです。

 

「TMPちゃん!」

 

「きゃっ! …じ、G41さん?」

 

 指揮官室を出たTMPちゃんを、G41は捕まえます。今はTMPちゃんの悩みを解決してあげたいです。訓練の報告はまた後でいいです。別に急ぎじゃないですし、ご主人様は分かってくれると思います。

 

「TMPちゃん! ちょっと、一緒に行こう!」

 

「は、はい!」

 

 G41の言葉に、TMPちゃんは頷きました。というわけで、G41はTMPちゃんを肩に担いで基地の裏門に行きます。そして、ゲートを開いてバイクで走り出しました。ネイキッドの大型バイクで、TMPちゃんをタンデムシートに乗せています。これはFALさんのバイクですが、G41も使えるようにして貰ってます。

 

 エンジンに火を入れて、G41達は夕日の中を駆けていきました。廃墟になった街の風景を丘から見下ろしつつ、駆けていきます。最初は驚いていたTMPちゃんも今は楽しそうにしています。G41は笑顔です。TMPちゃんも笑顔です。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 小高い山の上の展望台。暮れていく陽を横目に、G41はポケットからポケットストーブを出します。そして、マッチで燃料に火を点けて、水の入ったケトルを上に置きました。やがてお湯が煮えてきます。G41はチタンカップにカモミールティーのティーパックを添えてお湯を注ぎます。香ばしいお茶の香りがしてきました。

 G41はお茶をマグカップに注いでTMPちゃんに渡しました。

 

「はい、TMPちゃん」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 G41が渡したお茶を、TMPちゃんはフーフーしながら飲んでます。可愛いです。G41も自分の分を作って、飲むことにします。

 

 二人でお茶を飲みながら、静かに沈んでいく夕日を眺めます。周りが暗くなってきます。でも、何も怖いことはありません。銃には野戦装備を施してきていますし、TMPちゃんとG41が組んで戦えば大体の敵は片づけることができます。

 小高い丘からは基地とか周囲の街の残骸とかが全て見えます。オレンジに染められた世界は今やG41とTMPちゃんのもののように思えるぐらいです。そんな景色を二人で静かに眺めていました。

 

「あの…G41さん…」

 

 TMPちゃんが控えめにG41のことを呼びます。G41は笑顔でそれを受け入れました。

 

「…やっぱり、G41さんがいないと寂しいです。みんな良くしてくれますけど、やっぱり…」

 

「そうなんだー…」

 

 G41はそんなTMPちゃんを抱きしめます。寂しい時、G41はこうして欲しいです。きっと、TMPちゃんもそうして欲しいと思います。そして、TMPちゃんはG41の胸に顔を埋めています。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「大丈夫だよ。G41はいつまでもTMPちゃんのことが大好きだから」

 

「G41さん…!」

 

 G41の言葉に、TMPちゃんはとっても嬉しそうな笑顔を見せます。G41も嬉しくなりました! やっぱり、二人は相思相愛です! えっへん!

 

「この戦いが終わったら、また同じ隊だから。一緒に頑張ろうね!」

 

「はい!」

 

 G41はそう言って、TMPちゃんの頭をなでなでします。TMPちゃんは嬉しそうです。誰かに頭をなでなでしてもらうのも嬉しいですが、なでなでするのも嬉しいものです。G41はTMPちゃんが大好きです!

 

「というわけで、今日はここでキャンプしよー」

 

 すっかり暗くなったところで、G41はバイクのサイドについているバッグからテントを取り出して言います。ついこの間FALさんが野営用のセットをバイクに積んでいたのです。

 テントはそれほど大きくないですが、それでもG41とTMPちゃんが一緒にまるまるできるぐらいには広いです。今日はここがG41達のおうちです。

 

「は、はい!」

 

 TMPちゃんも嬉しそうに頷いてテントの設営を開始します。細引きを張って、ペグで固定します。10数分の後にテントが出来上がりました。ランタンを吊るして明かりをつけると、すっかり我が家の雰囲気になります。エアマットを膨らませて敷けばふかふかの床になります。寝心地は良さそうです。

 

「あとはご飯を用意しよー」

 

 G41はそう言って、ポケットストーブをもう一つ取り出し、固形燃料を置きます。そして、火を点けて取っ手付きの飯盒を温めて油を引きます。そして、ベーコンを炒めます。じゅう、と音がして美味しそうな匂いが漂ってきます。TMPちゃんも目を輝かせながらそれを見ています。でも、まだ食べてはだめです。料理は完成していません。

 

 そこに野菜の缶詰を入れて更に炒めます。そして、頃合いを見てペットボトルから水を入れます。そして、味覇を入れて下味をつけてます。そして、そこにオートミールを投入してしばらく煮込みます。

 その間にケトルに水を足し、ポケットストーブに燃料を追加して更にお湯を沸かします。そして、G41とTMPちゃんのカップに味覇と乾燥玉ねぎとニンニクを入れます。これにお湯を注いでかき混ぜると、即席のスープになります。

 

 しばらくして、オートミールが煮えてきました。そこにカレー粉を投入します。そして更に煮込んでカレー粉が馴染んだら、G41特製野営カレーリゾットの完成です!

 

 G41とTMPちゃんはカレーと即席スープ。それにコンビーフの缶詰という夕食を摂りました。星空の下で食べるご飯は美味しいです! G41もTMPちゃんもニコニコです!

 

「G41さんのご飯、久し振り…美味しい…」

 

 TMPちゃんがしみじみとそう言ってカレーを食べます。とっても嬉しそうです。一〇〇式隊には一〇〇式(モモ)ちゃんがいるので、ご飯がまずいわけはありません。このカレーだって一〇〇式(モモ)ちゃんに習ったものなので、ほとんど一緒の味がするはずです。でも、TMPちゃんはG41が作ったという事実が嬉しいみたいです。TMPちゃんに愛されて、G41は嬉しいです!

 

『G41、TMP。今日はそこで野営するのか?』

 

 通信モジュールからご主人様の声が聞こえました。勝手に基地から出てきましたが、特に怒ってる風はありません。G41は主力部隊の隊長なのである程度訓練の裁量を任されています。今日のことは野営訓練、として処理されると思います。

 

『うわわわ、指揮官! ご、ごめんなさい…』

 

『謝ることはないさ、TMP。G41、明日は特に予定もないからゆっくりしてくれ。何かあったら、連絡をくれ』

 

『はい、ご主人様』

 

 ご主人様にそう答えて、G41とTMPちゃんは再びご飯を食べます。星空の下、基地の明かりを見下ろしてのご飯。隣には笑顔のTMPちゃんがいます。とっても贅沢な時間です。

 

「G41さん…私、G41さんが大好きです!」

 

「うん! G41もTMPちゃんが大好きだよ!」

 

 そう言って、二人は笑顔を交わします。幸せな時間です。G41とTMPちゃんはずっと仲良しです。いつまでもいつまでもこの絆を大切にしていきたいと思います。

 そして、食事を終えたG41とTMPちゃんはテントの中でまるまるして、いろんなことをお話ししたり、尻尾やミミをはむっとしてじゃれたりしながら、夜を過ごしました。とっても楽しかったです。一〇〇式隊に戻ったら、一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんやFive-sevenさんも一緒です。みんなでする野営は楽しいものです。

 でも、そんなG41の脳裏にヴィーフリちゃんやG36ちゃんのことが思い浮かびました。仮設G41隊が解散になったら、二人は寂しいでしょうか? G41は寂しいです。なんだか名残惜しい、そんな気がします。

 

「G41さん?」

 

 黙り込んだG41にTMPちゃんが声をかけてきます。G41はそんな思いを振り払って、TMPちゃんに抱き着きました。とりあえず、今はTMPちゃんとの時間を楽しむべきです。隊のことはその時が来たらなるようになると思います。でも、何が起きてもTMPちゃんとの絆は揺るがないので安心してね? まる。


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