ウェルロッドさんの運転する軽トラに揺られながら、仮設G41隊は基地に帰還しました。ようやく、今回の事件の主犯を撃滅したのです。
仮設G41隊とM590隊とトンプソンさん達、それに404小隊を囮にして、一〇〇式隊とAR小隊が基地に潜入、そして深部に潜む主犯を撃滅するという作戦でした。
主犯を撃滅したのは、やはり一〇〇式隊でした。本来、民間の戦術人形が勝てるような相手ではなかったみたいですが、FALさんの作戦と
仮設G41隊も大いに暴れて、敵の注意を釘付けにしました。敵アジトへの正面突破を果たし、内部の敵の大半を引き付けることに成功したのです。これはご主人様も想定してなかった戦果で、物凄く感心していました。仮設G41隊も流石です! えっへん!
今は軽トラの荷台でお茶を沸かしています。ポケットストーブにケトルを置いて、ウインドスクリーンを巻き付けて足で押さえ、ケトルの取っ手を手で押さえています。燃料をいっぱい燃やしているのですぐにお湯が沸いてきました。後は、ケトルにアップルティーのティーパックを入れてしばらく待った後、みんなのカップにお茶を注いで渡していきました。もちろん、運転席のウェルロッドさんと助手席のドラグちゃんの分もあります。
「はい、ヴィーフリちゃん」
「ありがと」
笑顔でカップを渡すG41に、ヴィーフリちゃんはどこか作ったような笑顔で受け取りました。なんだか、無理して笑っているようです。大戦果を挙げての帰還だというのにどうしたのでしょう?
「どうしたの、ヴィーフリちゃん?」
「あ、うん…」
G41の言葉に、ヴィーフリちゃんは少しだけ寂しそうに答えました。
「基地に帰ったら、この隊も解散かなって…少し寂しくなっただけ」
「…私も、もう少しこの隊で戦いたかったです…」
ヴィーフリちゃんの言葉に、G36ちゃんも同意します。二人はこの隊を離れたくないみたいです。
G41は何も言えませんでした。G41もまたこの隊の解散を寂しく思っているのです。
もちろん、G41は一〇〇式隊に帰りたいです。お母さんのようなFALさんとお姉ちゃんみたいなFive-sevenさん、そして大好きな
でも、仮設G41隊もまたよく纏まった良い隊です。特にヴィーフリちゃんとは期間が短いながらも、相思相愛の仲になれたと思っています。名残惜しいと思います。
その後、何も言えないまま仮設G41隊は基地に帰りました。みんな消毒と手当てを受け、データを提出しました。その後、各隊の隊長が指揮官室に集められます。いよいよ戦果報告です。
指揮官室にはご主人様と
なお、FALさんは64式さんとどこかにでかけたみたいです。ちょっとだけヤキモチですが、64式さんにとっては敵が討てたのです。今日ばかりは大目に見てあげようと思います。G41はいい先輩です! えっへん!
「各隊、ご苦労だった。今日もみんな無事で何よりだ。諸君の奮闘に感謝する」
「ボスの作戦が上手くいったからさ。まあ、お嬢のところだけは少し危なかったがな」
「まさか、あんなものが出てくるなんて。ぞっとしますね」
ご主人様の言葉に、トンプソンさんが笑いながら、M590さんが肩を竦めて言いました。実際、あれと対峙していたら仮設G41隊でも勝てるかどうかわかりませんでした。そんな強敵を倒したのは
「
「はい、指揮官。…後、千鳥ちゃんにも…」
「そうだな。後であいつにもやらないとな」
「後、G41隊もよくやってくれた。まさか、正面突破ができるなんて思いもしなかったよ」
「ええ。お陰で私達も
ご主人様の褒めの言葉に、M4さんも付け加えます。G41達が敵の大半を引き付けたことで、
「ご主人様、褒めて~!」
G41はご主人様に駆け寄って、褒めの言葉をおねだりします。あれだけ活躍したのだから、物凄く褒めてくれると思います。
「ああ、G41。本当によくやってくれた。お前は俺の天使だ。宝物だ」
ご主人様はG41を抱きしめて、頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は嬉しいです。ご主人様のために戦えて、G41はとっても幸せです。
「後、今後の編成について、ここで説明する」
G41をなでなでしながらご主人様が言います。いよいよ、G41は一〇〇式隊に戻るのです。G41は複雑です。戻りたいですが、名残惜しい。そんな感じです。でも、仕方ないです。G41は一〇〇式隊のエースなのですから。そう思いながら、G41はご主人様の言葉を待ちました。
「今日から常設第二小隊として、G41隊を設立する。以後、特別事案対処隊は一〇〇式隊、G41隊、M590隊、AR小隊の4隊で回すこととする」
え……… G41は耳を疑いました。一〇〇式隊に戻るという話ではありませんでした。どういうことなのでしょう。
「やったじゃないか、G41!」
「まあ、あの戦果なら妥当ですね。おめでとう、G41さん」
トンプソンさんとM590さんが祝福してくれます。でも、G41は分かりません。どういうことなのか、ご主人様に尋ねてみます。
「ご主人様…どういうことですか?」
「ああ、聞いての通りだ、G41。今後もG41隊を率いて頑張ってくれ。まあ、編成は少し変わるかもしれないがな」
ご主人様が微笑みながら、G41の頭をなでなでして言います。でも、G41の顔は凍り付いたままです。
一〇〇式隊に戻れません。大好きなFALさんと
次の瞬間、G41は駆けだしてしましました。指揮官室を飛び出して、ひたすら走ります。後ろから声が聞こえました。すれ違った誰かが声をかけてきました。でも、G41の耳には入りません。ひたすら走って行きます。
どれぐらいの時間が過ぎたのか。G41は気が付くと、野外訓練所の片隅に座っていました。
頭の中がぐるぐるです。もちろん、ご主人様の言いたいことは分かります。G41隊が予想以上の戦果を挙げたので、常設隊として今後も活躍して欲しいのです。
でも、一〇〇式隊はG41のおうちのような場所でした。そこから切り離されてしまいました。悲しいです。もしかして、G41の代わりは64式さんで十分と判断されたのでしょうか? G41はいらない子なのでしょうか。ぽろり。思わず涙が零れました。
「G41ちゃん」
後ろから
「
G41は思わず
「
「そんなことないよ。G41ちゃんがいてくれたら、私も心強いから…」
G41の頭をなでなでしながら
「でもね、G41ちゃん。一〇〇式隊は…もう昔のままじゃいられないんだ…」
「その通りだ、G41」
「すまなかった、G41。お前がこんなに一〇〇式隊を大切に思ってたなんて。俺が無神経だった」
ご主人様がG41に頭を下げて詫びてくれます。G41はまたご主人様の負担になってしまいました。G41はダメな子です。でも、それぐらいG41にとって一〇〇式隊は大切な所なのです。家族のようだ、と思っていたのです。
「G41、聞いてくれ。一〇〇式隊隊からはFALとTMPが抜ける。また新しい体制になるんだ」
「ふぇ!? FALさんも!?」
ご主人様の言葉に、G41は驚きました。一〇〇式隊の中で作戦を立案し、実質的に指揮しているのは副長のFALさんです。それが抜けるということは大黒柱がなくなるということです。G41が抜けるどころの話ではありません。
「FALにもまた隊長として隊を率いてもらう。俺の懐刀としてな。今の形の一〇〇式隊はもう存在し得ないんだ」
ご主人様の曰く、
「G41ちゃん。お互いに頑張ろう」
「…うん、
G41はそう言って、顔を上げます。
「ご主人様。このG41、ご主人様の期待を裏切らないように頑張ります!」
「ああ。ありがとう、G41」
G41の言葉に、ご主人様が笑顔でお礼を言って頭をなでなでしてくれます。なんだか、嬉しいです。いつものなでなでと少しだけ違います。そんな気がしました。
「G41!」
「お嬢様!」
ふと、声が聞こえました。ヴィーフリちゃんとG36ちゃんが走ってきています。G41もまた二人のところに走って行きました。
「G41! また一緒に戦えてよかった!」
「はい! お嬢様と一緒に居られて嬉しいです!」
「うん!」
G41はヴィーフリちゃんとG36ちゃんと抱き合いながら喜びました。G41も二人と一緒に戦えて嬉しいです。ご主人様と
こうして、G41は一〇〇式隊ではなく、正規G41隊の隊長になりました。
家族のようだった一〇〇式隊はもうありません。でも、G41隊が新しい家族です。そして、
「G41、これからもよろしく頼むぞ?」
「はい、ご主人様!」
ご主人様の言葉に、G41は力強く答えました。今日までもこれからもG41はご主人様のために頑張っていきます! ヴィーフリちゃん、G36ちゃん。改めてよろしくね? まる!