ある日の事でした。珍しく、基地に第一種戦闘配備の号令が下されました。久々の大規模戦闘です。
任務の内容は、大陸で遭遇したパロディウスだとかいう敵がこの国にも現れたので、それを殲滅するというものでした。
G41はあいつらが大嫌いです。一年前の事件で、ご主人様を虐めたからです。もうG41は殺る気満々です。怒りを込めて絶対に木っ端みじんにしてやります。
M4さんも絶対に殺すっていいながら、封印したケースを持って出撃しましたし、
結果、奴らを徹底的に撃滅し、二度と現れることがなくなるまでぼこぼこにしました。みんな大きな怪我もなかったですし、本来ならば、にこにこ顔で凱旋するところです。
でも、G41は肩を落として、暗い顔のまま帰還しました。途中で、ヴィーフリちゃんや89式さんが励ましてくれましたが、何も言えずに黙ったままでした。
何故なら、G41は作戦中にFALさんと喧嘩してしまったのです。
G41の出撃した戦闘区域は、G41隊と臨時FAL隊で受け持っていました。FAL隊がガンダムとか呼ばれるかっこ悪いロボットを相手して、G41隊はそれ以外を相手にする、という形で戦闘を進めていました。
ところが、思ったよりも敵の攻勢が強く、G41隊とFAL隊は次第に追い込まれていきました。
これ以上後がない。そんな場面で、FALさんが起死回生の策に打って出ました。G41隊も策を打診されましたが、これはいけない、とG41は思いました。
FALさんは策を打つときによく自身を危険に晒そうとします。G41はFALさんが酷い目に遭うのは嫌です。なので、FALさんの策に従わず独自に策を打って行動しました。作戦は図に当たり、ご主人様から貰った切り札も活用した結果、見事敵の殲滅に成功しました。もちろん、FALさんが危険に晒されることもなかったです。とっても上手くできた、と思いました。
ところが、戦闘が終わった後FALさんからは褒めて貰えず、お叱りの言葉を受けました。
「どうして、策に従わなかったの、G41?」
FALさんの言葉は激しいものではなかったですが、明らかにG41を叱咤するものでした。
G41はちょっとむっとしてしまいました。作戦は明らかに成功でしたし、みんなの中に怪我人も出ていません。
それに、確かにFALさんの方が序列は上ですが、そもそもG41は第一常設小隊の隊長なのです。現場においては、FALさんはおろかご主人様の命令にさえ必ずしも従う必要はないという権限を持っています。G41は間違ったことはしていないと思います。
「はい! その方が効率がいい、とG41は判断しました!」
なので、G41は堂々とそう言いました。ヴィーフリちゃんもFALさんの隣にいたM16さんも頷いていたので、G41の判断は間違っていなかったと思います。
だから、FALさんもその場では分かったわ、とため息を一つ吐いてそれ以降何も言いませんでした。
その後、軽トラで帰還する際中もG41は黙って体育座りしたままでした。FALさんのことを想って、G41は頑張ったのに…FALさんはいつもG41を理解してくれてるって思っていたのに…ぽろり、涙が零れてしまいました。
「みんな、任務ご苦労だった」
ご主人様は凱旋したみんなを温かく迎え入れてくれました。そして、指揮官室で隊長格が並んで戦勝報告が始まります。でも、FALさんはさっさと報告して引き下がってしまいました。隣にいたG41に声もかけてくれません。悲しいです。
そんなこんなで報告は終わりました。みんな退出していきます。
「G41は残ってくれ」
ご主人様はそう言ってG41を引き留めました。G41もご主人様に相談したかったのです。ご主人様はいつもG41の気持ちを分かってくれます。FALさんもそうだと思っていたのに…どうしてこうなってしまったのでしょう…
「よしよし、G41」
ご主人様はG41を抱き締めてなでなでしてくれました。ぐすん。G41は思わず泣いてしまいました。ご主人様に抱っこされて安心してしまったのです。ぐすぐすとしばらく泣き続けてしまいました。
「ご主人様…G41はFALさんに嫌われちゃったの?」
G41は泣きながら、ご主人様に尋ねました。G41はFALさんが大好きです。今回は衝突してしまいましたが、それでもG41はFALさんが大好きです。今後、口をきいてもらえないかもしれない、そう思うと物凄く悲しいです。悲しすぎて涙が止まりません。ぐすぐす…
「俺やFALがG41を嫌うことなんて絶対にない。安心するんだ」
そう言いながら、ご主人様はG41を抱き締めてくれます。頭をなでなでしてくれます。
「そもそも、FALだって今回の事はG41の方が正しいことは分かっている。あいつはそんな馬鹿な奴じゃない」
ご主人様の言葉に、G41は顔を上げます。ご主人様は全てを分かり切っているような穏やかな微笑みを湛えていました。ご主人様のことをFALさんが一番分かっているように、FALさんのことはご主人様が一番よくわかっています。ご主人様の言葉に間違いはないと思います。
「だがな、あいつもまだこの世に生まれて10年も過ごしていない。感情を制御できない時だってあるのさ…」
そう言って、ご主人様はG41の顔を持って、目を合わせて尋ねます。
「G41? G41はどうしたいんだい?」
「はい! G41はFALさんと仲直りしたいです」
「そうだな。なら…」
そう言って、ご主人様は机の中からポテチとかチョコレートとかのお菓子を出して、G41に渡してくれました。
「これを持って行ってFALと話し合うんだ。あいつはきっと娯楽室でG41を待っているから」
「はい! ご主人様!」
ご主人様の言葉を受けて、G41は娯楽室に向かいます。途中、本当に嫌われていたらどうしよう。怖い、という思いがG41の足を何度も挫きました。でも、G41はご主人様を信じます。FALさんを信じます。嫌な思いを振り払ってG41は娯楽室の扉を開けました。
部屋の中ではFALさんが待っていました。ここにきて、G41の怖い思いが強く湧き出してしまいました。部屋の中に入れません。G41は俯いて足を止めてしまいます。
「G41、そんなところにいないで、話しましょう」
すると、FALさんが優しい声でそう言ってくれました。G41は耳を寝かせたまま、恐る恐るFALさんのテーブルのところに行き、体面に座りました。FALさんは用意してくれていた紙コップにコーラを注いでくれました。
「まずは…ごめん、G41。今回の件は貴女の方が正しいわ」
FALさんの言葉にG41は頭をあげました。FALさんは自嘲的な笑みを浮かべて話を続けます。
「あのね、私は指揮官の傍らに立つ唯一の人形だって思ってた。それを誇りにここ数年は頑張ってきたつもりだったわ」
FALさんの独白に似た言葉を聞いたG41は頷きます。FALさんはご主人様から一番信頼されている戦術人形です。過去もご主人様の期待にこたえ続け、最近もご主人様からの密命を受けて事件解決の鍵ともいえる活躍をこなしてきました。ご主人様がFALさんほど信頼する人形はいない、と断言できます。
「でもね、何だかG41が成長して…指揮官に似た策を立てるのを見てね…ちょっと、やきもちを妬いてしまった…そんなところね」
私もまだまだね、そうFALさんは苦笑してコーラを一気に煽りました。
G41は気づきました。FALさんだって神様じゃありません。時に悲しいこともありますし、怒ることもあります。G41はFALさんに分かってもらうだけではいけなかったのです。FALさんの気持ちだって考えなくてはならなかったのです。
今回の件に関しても、G41は正しいことをしたとはいえ、最終的にFALさんが分かってくれるという甘えのもとに作戦を勝手に遂行しました。最初にFALさんに相談すればこんなことはなかったはずです。
「ごめんなさい、FALさん」
G41はFALさんに謝りました。G41はFALさんの気持ちを考えていなかったのです。こんなに酷い話はありません…
「そうね。じゃあ、お互い謝ったから仲直りね?」
そう言ってFALさんはG41をなでなでしてくれました。G41は顔を上げました。FALさんはG41を許してくれたのです。嬉しいです。
「はい、FALさん!」
「じゃあ、今度は仲良しの二人サワー会ね? 楽しくやりましょう?」
こうして、G41とFALさんは一緒にポテチを摘まんだり、コーラを飲んだり、お膝に乗せて貰ってなでなでして貰ったりしながら楽しい午後の時間を過ごしました。二人ともニコニコでした。G41はFALさんが大好きです。FALさんもG41が大好きです。そして、二人は今回の件でもっと仲良くなれたと思います。二人は超相思相愛です! えっへん!
「せっかくだし、机上演習でもやってみる? …次からは手加減しないわよ?」
「はい、FALさん!」
チェス盤と駒、それにレゴブロックを取り出してきたFALさんにG41が答えます。もちろんです! G41はFALさんに教わりたいことがいくらでもあります。それに手加減して貰っては、訓練のし甲斐がないです。FALさん、よろしくお願いします!
結果、G41とFALさんの戦績は0勝3敗2引き分けでした。その結果を聞いたご主人様は、FALさんに大人げない奴だなぁ、と呆れていましたが、G41はFALさんに一人前に認められたみたいで嬉しかったです。
やっぱり、FALさんはG41の憧れです。今後も、G41はFALさんみたいな立派な戦術人形になれるように努力していきたいと思います! FALさん、次は負けないからね? まる!