お正月企画三題噺シリーズ・アドヴァンスドサード   作:ルシエド

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お題は「デストラ・マッジョ」「ジョジョの奇妙な冒険・ディアボロ」「平成ガメラ」

『未来を見る人間の隙を見逃さず、最初から狙うためには』というルパパト42話のちょっと前の話。


デストラ君とディアボロさん

 其は、亀だった。

 大昔から存在する亀。

 普段は漂流する環礁であると人間に認識され、海の上をぷかぷかと浮いて流れながら、目覚めの時を待つ万年単位の休眠中の亀。

 遠い昔から海の上をさまよっているがために、その甲羅の上には超古代の遺物、大昔に散逸した価値あるものが埋没されている。

 

 そこに、二人の男が来訪した。

 

 片や、デストラという男。

 怪人と呼ばれるに相応しい風貌を持ち、今は最後の戦いに赴くべく、かつて人間界に渡ったルパンコレクションの知られざる一品があるやもと、か細い情報をあてにここにやって来ていた。

 されど見つかるのは超古代の勾玉のみ。

 ルパンコレクションなど、見つかるはずもなかった。

 

 片や、ディアボロという男。

 ある戦いに敗北した彼は、永遠に世界のどこかを彷徨いながら死に続けている。

 ある場所で死ねば別の場所で死に、その場所で死ねばまた別の場所に飛ばされる。

 終わりが無いのが終わり。永遠に終わらないまま終わり続ける。

 それが、敗北者となったディアボロの運命だった。

 

 "やってきた"デストラ。

 "飛ばされてきた"ディアボロ。

 怪人のデストラを見たディアボロが『自分を殺すもの』だと認識し、恐怖から絶叫したのは当然のことだった。

 

「オレのそばに近寄るなああ―――!」

 

 特に生かす理由はなかった。

 デストラは人間を見下している。

 その命を無価値に見ている。

 癇に障ったならば、殺すことに躊躇いはなかった。

 

 だが、怪人が何気なく放った人を殺すに足る威力のミサイルが、飛翔した瞬間。

 この死のループにも慣れてきたディアボロはミサイルが()()()()()()()避け。

 彼らを乗せた島の如き亀が、それに合わせて身動ぎする。

 立っている場所が大きく動くということは、地面が揺れる地震以上のズレを生み出し、攻撃の前にディアブロが動いていたこともあり、デストラの攻撃はかすりもせず回避されてしまった。

 

 デストラの肩が、ピクリと動く。

 "今の避け方"に、デストラはとても見覚えがあった。

 怯えに怯えるディアボロの襟首を掴み、持ち上げる。

 

「貴様、今、何かしたな。未来を見たのか? 数秒は先か」

 

「あ、ああ」

 

 ディアボロは"未来を見る異能"を行使し。

 デストラは"未来を見るルパンコレクション"を連想した。

 奇しくもこの場で、ディアボロがデストラに殺されるという確定の運命を覆したのは、休眠中でも僅かに干渉した心優しき巨亀と、『未来予知能力者を殺すつもり』のデストラの思惑、その二つが噛み合うという奇跡であった。

 

「『未来を見ることができるヤツの攻略法』を教えろ。そうすれば見逃してやる」

 

「あ、ああ。……本当に見逃してくれるんだな?」

 

「私は貴様の生死に興味はない。

 貴様が巻き込まれて死ぬ分には気にせんが、わざわざ殺そうとも思わん」

 

「そ、そうか。そうか……

 攻略法があるかは知らん。だが、弱点はある。オレの体感だが」

 

「ほう」

 

「たとえば―――」

 

 ディアボロは卑屈に、命乞いを繰り返すような口調で、『自分が今まで未来を見て予想外に失敗した事柄』を片っ端から伝えていく。

 それはデストラの中に蓄積された情報となる。

 ゆえに、もはや"一人で戦う未来予知能力者"はどうやってもデストラの敵ではなくなった。

 ディアボロは常に一人で戦ってきた、未来を見て時間を飛ばす戦闘者。

 

 なればこそ。

 未来を見ながら戦うという破格の能力を持っていたとしても、一人で戦う限り、もはやその者はデストラに勝つことは不可能となった。

 

「なるほど、それが未来を予知できる者に付け入る隙か」

 

 特にデストラが気に入ったのは、"未来を見ていても予想外なことが絶対に起こらないとは限らない"という点であった。

 ディアボロが未来を見る能力を発動する前に奇襲され、予想外の事態に動揺し、未来を見ないまま戦わざるを得なくなったという話は、デストラにいくつかの戦術を思いつかせたようだ。

 

「特に、未来を見るのは疲れるという話が気に入った。

 今と未来を同時に見るのは面倒なのだな。

 だからこそ、戦闘の要事にのみ集中して常時発動させる。

 奴が戦闘中の有事にのみしか未来を見る形態と能力を使わないのであれば、どうとでもなるか」

 

「そう、そういうことだ。

 未来が見える者に奇襲が全く通用しないというのは、少し違う。

 戦闘中に奇襲されないだけ、ということもある。

 戦闘中だって能力が発動する前に攻撃を当てれば、当たる。だから―――」

 

 ふっ、とディアボロが消えた。

 終わり無きが彼の終わり。

 殺されないまま時間が経過したことで、次の死に場所に転送されたようだ。

 デストラはそういった仕組みを理解していたわけではないが、突然現れた者が突然消えたことにさして疑問は持たなかった。

 必要な情報は、既にディアボロを通して得ている。

 

「消えた、か」

 

 デストラは地面――のようにすら感じる巨大な亀――を踏みしめる。

 巨亀は休眠中のまま。

 未だこの亀が目覚めるに相応しい『世界の敵』は現れていない。

 ゆえにこそ、漂流する環礁の如き存在のまま、海の表面を漂うのみ。

 

 この星に生きる命であるディアブロを、この星に生きる命でないデストラから、眠ったまま本能的に助けはしたものの、それだけ。

 巨大な亀は眠り続ける。

 星の危機は、まだ到来していない。

 

「貴様が寝ているだけの存在で助かった」

 

 星を死滅させる気は無い異世界の犯罪者は、漂うだけの巨大な亀をひと蹴りし、その場を去っていった。

 

 

 

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