お正月企画三題噺シリーズ・アドヴァンスドサード 作:ルシエド
性格悪いヤツと何も考えてないヤツがニーアオートマタの世界を見たら、出る反応は違うのやも。
ひょっとしたらロードブレイザーとナグリ王妃の年齢ってひょっとしたら同じくらいなんじゃないかという疑惑
二人の破壊者がその場所を訪れた。
一人は無関心に去った。
一人は手を差し伸べた。
その地球は、どうしようもなく終わっていた。
かつて、そこには人類という生命がいた。
人類に戻るはずだった、人類だった生命がいた。
宇宙から侵攻したエイリアンがいた。
地球と地球外生命体の間で、戦争が勃発した。
人類が作り上げた機械兵器、アンドロイドが戦場に現れ。
エイリアンが作り上げた機械兵器、機械生命体が戦場に現れ。
人類が滅び。
エイリアンが滅び。
けれど戦争は終わらず。
アンドロイドと機械生命体は、命も無いのに殺し合う日々を続けた。
戦わねばならない。
入力されたコマンドだから。
それ以外に道がないから。
得るものがないまま壊し合い、殺し合う。
敵を倒せという命令を継続しなければならない。
けれど、敵がいなくなれば命令を継続できない。
だから敵を全力で倒しながら、敵を全滅させないようにしなければならない。
命令を継続するために。
何の得もないままに。
それを何度も繰り返す。
ある存在が発生し、失敗し、遠い未来に同じような存在が発生し、同じような失敗を繰り返し、同じような歴史を繰り返し。
選択によって歴史は無数の平行世界に分岐し、全てがBADENDに終わりながらも、世界は分岐と合流を繰り返し、相互に干渉し合いながら進んでいく。
時に、何の関係もない平和な世界も、この崩壊と破綻に巻き込みながら。
その地球が、多元宇宙との接続を得たのは、完全に偶然と言えた。
「面白そうなものが飛ばされているな」
その魔神の名は、ロードブレイザー。
全並行宇宙を滅ぼし尽くすことも可能な力と、多元宇宙を渡り焼き尽くす権能、上位次元に干渉する創造神の分け身ですら超える力を持つ、焔の魔神である。
その力は不老不死を殺すという矛盾を成立させ、神すらも殺し尽くす者。
そんな魔神が、ある日「竜」を見た。
世界と世界の間の壁を超える、『神の異形』と、その後を追う竜だ。
興味を掻き立てられ、その周囲の世界群を覗く魔神。
平和でない世界から平和な世界へと飛び立つ、神の異形と追う竜は、地獄の世界からそうでない世界へと射出される『地獄の種』のように見えたからだ。
新たに宇宙を焼き尽くそう、新たに世界を滅ぼそう、とその魔神は飛翔し、宇宙の壁を越え、その宇宙を覗き込む。
「……つまらん。既に手垢が付いた世界か」
そうしてロードブレイザーは、アンドロイドと機械生命体の地球を見て、萎えた。
ここは既に、『神』と呼ばれた者に無価値にされた並行宇宙群。
中世の時代の世界でも。
三十数世紀という時代の世界でも。
それすらかすかなものに見えるほどの、遠い未来の時代の世界でも。
残酷ばかりが満ちていて、完全な救済に至る道は全て途中で途切れるようになっている。
結末と行く末が決まりきっている、悪辣な世界。
魔神ロードブレイザーの好みの世界であり。
これ以上手を加えようとも思えない世界であり。
価値ある命の営みを自らの手で潰したいロードブレイザーからすれば、この上なく無価値で興味の湧かない地球であった。
「時間の無駄であったな」
ロードブレイザーは水没都市の水を踏みしめ、飛び上がり、この宇宙を去っていく。
綺麗な新雪を踏み荒らすことを楽しむ者はいるだろう。
積み上げられた積み木を崩すことに快感を覚える子供は多い。
ゲームで爽快感のある破壊を楽しむ大人も少なくないはずだ。
けれど、粉々になったゴミをわざわざ手間暇かけて更に破壊しよう、などと思う者はいまい。
外宇宙からの侵略者が狙わないほどに。
邪悪な神が破壊する価値を見出だせず見捨ててしまうほどに。
この地球は、無価値だった。
神というマクロな視点から見れば、この並行宇宙群は全て無価値な世界であった。
長命種であればあるほど、無味乾燥なその無価値さに目を覆うかもしれない。
よっぽどのバカ以外は。
よっぽどのバカ以外は。
宇宙の壁、世界の壁は厚い。
世界の壁を越えて飛び出した竜が、他の世界に絶望の種を届けること。
宇宙一つを遥かに超えるスケールに到達した魔神が、他の宇宙を滅ぼしに飛ぶこと。
それらはとても、"希少なこと"であると言える。
なればこそ。
いつかの日に、竜が世界の壁を越えてこの地球にやってきた。
竜の到来した地球の人類は滅び、地球に攻め入ったエイリアンも滅び、アンドロイドと機械生命体のみが残った地球が、延々と乾燥した無価値な日々を繰り返す。
その竜を見て、魔神が宇宙の壁を越えてきた。
宇宙の壁、世界の壁には、魔神が通った分の穴が空く。
星間活動規模の上位生命種であれば、興味本位でくぐり抜けられる程度の穴が。
それから一年後。
一つの戦いが終わり、破壊されたアンドロイド達のデータがサルベージされ、破壊された躯体が以前と同じそのままの姿で再生され、新たなアンドロイドの営みが始まった頃。
2Bと呼ばれたアンドロイド。
9Sと呼ばれたアンドロイド。
A2と呼ばれたアンドロイド。
三者はまとめて、水没都市にて、なんか突然現れたよく分からん頭のネジの外れた女に叩きのめされていた。
「2B、2B! しっかり!」
「な、なんだこいつ……」
「あらあなた、体に面白そうなネジを使ってるでコブシ」
彼女の名はナグリ・ドツーキ王妃。
億年を生きる、『まだ終わっていないどこか遠くの地球』からの来訪者である。
その筋肉は強力無比。
"ギャグ漫画の強キャラは基本的には負けない"のルールに従い、恐ろしいパワーでアンドロイドのヨルハ部隊達を軒並み吹っ飛ばしていった。
その目的は?
おそらく大したものではない。
何故なら彼女の世界には、2B達の世界に過剰にあるシリアスがなく。
2B達の世界には、彼女の世界に過剰にあるギャグがなく。
ギャグ世界の住人は大抵大したことを考えていないからだ。
まあ細かいところを抜きにして見れば。
彼女はこの地球のアンドロイドや機械生命体の中で話の分かりそうな個体を襲撃し、大人しくさせてから、欝要素のないギャグアニメの世界に拉致しようとする侵略者である。
戦争に負けた国の女性が奴隷娼婦に堕ちるかの如く、ナグリ王妃に負けたアンドロイド達はギャグアニメ堕ちの刑に処される、そんな危機に瀕していた!
「ちょっとこの子たち持って帰るでコブシ。
うちでちょっと下働きが欲しいと思っていたところでコブシ」
「語尾の安易なキャラ付けにイラっとくる!」
「落ち着いてナインズ!」
全てが失われる世界だからこそ、『次』が継ぎ足されてこそ価値がある。
繰り返した世界の結末は、人間も機械もほんわか楽しくやってるギャグアニメの世界に、多くが移住しギャグアニメ堕ちするFエンド、だった模様。