お正月企画三題噺シリーズ・アドヴァンスドサード 作:ルシエド
男性体の服の裏地と女性体の着物の帯の柄が同じなあたり、女性体でもファッションにこだわってる感じありますよね無惨様
下弦殺しのキラークイーン。鬼滅の刃の裏には壮大な性癖とメッセージが隠されている……!(大嘘)
バイツァ・ダスト。
それは殺人鬼吉良吉影が発現させた能力。
発動者の心の底からの咆哮に応じ、発動者が求める結末だけを残し、それ以外の結末が訪れそうになれば『爆殺』を実行することで、時を爆発にて巻き戻すことができる。
時が巻き戻される度に事象は運命にピン留めされ、爆殺と運命の確定が繰り返されることで、最終的に発動者に都合の良い運命が固定された世界の流れが完成する。
そんな、スタンド能力だ。
しかしながら、スタンド能力とは、遺伝が強い異能である。
血が繋がっていれば、Aの覚醒がBに影響する。
Bの血がAの血と引き合う。
AとBで似たスタンドが発現する。
先祖の肉体と子孫の肉体に同じ時止めのスタンドが発現する、ということすらある。
吉良吉影のスタンド能力とは、彼だけのものだったのだろうか?
彼の血の中に眠っていた、血脈の特性が発現したとは考えられないだろうか?
血は力を伝える。
先祖と同じ力を身に着けるのは、一種の先祖返りでもある。
吉良吉影の先祖に、そういった人物はいたのか?
日本の大昔に、スタンド使いに類する人間はいたのか?
いた! いたのだ!
「『負けて死ね』」
カチリ、と能力が発動する音がする。
「鬼舞辻無惨、貴様は最高の女装ができるまで、一時間で爆死し、一時間遡行し続ける……!」
「何故」
「オレの趣味だ」
「おのれ妖怪・吉良……! 面倒な血脈がぁ……!」
かつて戦国時代、鬼舞辻無惨を追い詰めた剣士達には、残らず鬼の文様に似た『痣』が現れていたという。
同時代。
戦国時代に、吉良親実なる武士がいた。
長宗我部に仕え、智勇双全、怒りがちなことだけが欠点という男であった。
だが主君の側近と折り合いが悪く、主君の跡継ぎ候補を巡る争いで主君への諫言を繰り返し、そのせいで主君の不況を買い切腹を命じられたという。
吉良親実は腹を切り、その家臣七人も後を追って腹を切ったとか。
その怨念は土地を汚し、そこに住まう者達を末永く呪ったという。
吉良親実を核とし、七人の後追い家臣をモデルとした妖怪。
それを、『七人ミサキ』と言う。
かの有名な七人ミサキは、"吉良の亡霊"と言い換えても過言ではないのだ。
そして。
スタンドは使い手の死後に真なる力が発動する場合もある。
使い手の心が勝手に歩き出すかのように、勝手な行動を始めることがある。
それはもはや、死者の怨念が怨霊となることと同義であると言えないだろうか?
そう。
吉良も、崇徳天皇も、菅原道真も。
怨霊と呼ばれる者達は、皆死後に発動するスタンドの使い手だったのだッ!
ならば。
女装させるのが好きな男なら。
鬼舞辻無惨を幾度となく追い詰めた戦国時代の剣士たちに紛れ発生した、吉良とかいう怨霊化のサラブレッドのような血脈に生まれた男なら。
その男が死した瞬間に発動する能力は。
男を女装させることに特化したスタンドになるのでは?
そう、それが妖怪・吉良! 世界最新の七人ミサキがごとき存在!
吉良吉影の先祖のスタンドにして、時を巻き戻すスタンドを発現させてから死亡したため、スタンドが『目を付けたやつに強制的に女装をさせる』存在と化したもの!
スタンドが満足するまで、狙われた存在は何度でも爆死させられ、時間を巻き戻して最初からやり直しということとなる!
もはや鬼舞辻無惨は、女装を強制させられ、拒んでは爆死させられ、一時間の制限時間を超えても爆死させられ、爆死の度に時間を巻き戻されループ10回目に突入していた。
「どうだ、こんな服で」
「あーダメダメ、照れが残ってる、男にも女にも見える服とか吉良許さないよ」
爆死。
時間遡行。
一時間前に時間が巻き戻る。
「ど、どうだ」
「いいねいいねー。外見も着物も無惨ちゃんって感じ」
「そうか、ならこれで」
「でもちょっと色気が足りんのでリテイク」
「おい」
爆死。
時間遡行。
一時間前に時間が巻き戻る。
「どうだ、ちょっとかわいい系で……」
「はぁー、無惨ちゃん、ちょっとやる気ある?
女装は男を興奮させられるライン超えないと……そんなアンバランスで正気かよ」
「ぐっ」
「自分の女装のダメ出しされて、反発しないのも駄目だよね
自分の女装に誇り持とうよ。
ちゃんと自分が思う最高の女装してる?
それができてたらさぁ、俺のダメ出しに反発してるはずだよね?
"これが鬼舞辻無惨の考える最高の女装なんだ"って。
俺にダメ出しされて"じゃあ次の女装だ"って考えてる時点で二流なのよ」
「黙れ」
爆死。
時間遡行。
一時間前に時間が巻き戻る。
「無惨ちゃーん、こっちの髪飾り付けた方が良くない?」
「……いや、それならこっちの髪飾りの方が女性らしさが出る」
「お、確かに。
いいねいいねぇ。
こだわりでてきたんじゃないのぉ?
ようやく体だけ女になった、みたいな二流の女装の領域超えたね」
「気色が悪いぞ」
爆死。
時間遡行。
一時間前に時間が巻き戻る。
「ほら鏡だよ鏡。無惨ちゃん一回自分のトータルコーディネート見ないと」
「結構いけるんじゃないか私……」
「いけるよーいけるよー無惨ちゃん美人だよー!」
「うるさい」
そうして、美女・鬼舞辻無惨は完成した。
かくして、スタンドであり吉良でありバイツァ・ダストを繰り返す怨霊であったそれは、本懐を果たし消滅していく。
「いい女装だ、鬼舞辻無惨……」
「貴様が鬼であったなら、一瞬で貴様を消していたところだ。さっさと消えろ。」
「だが……嫌いじゃなくなっただろ……? 女装……」
「ああ?」
無惨のドスの利いた声を叩きつけられ、女装の亡霊・吉良は消滅した。
ほっと、無惨は息を吐く。
臆病者の無惨にあるまじき油断の一瞬と、あるまじきホッとした表情であった。
女装が楽しいという気持ちがすっと引くと、先程までの理不尽への怒りが湧いてくる。
もはや皮膚の一部のようになった心地良い女装の着心地のせいか、鬼舞辻無惨は着替えるという発想にも中々至らない。
男性に戻るのは数日後になるやもしれない。
(何か手近な殴れるもの、壊せるもの、苛立ちの解消になるものはないか)
そんな無惨が、その日の夜、招集した下弦の鬼達を見て、苛立つ心でこう思った。
まあもう下弦は要らないか、と。
苛立ち解消にぴったりなものを見つけた無残は、100%ノリで決めた。
上司がなんかイラッとしたら死ぬ。下弦の鬼の命は軽い。無残である。