お正月企画三題噺シリーズ・アドヴァンスドサード   作:ルシエド

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お題は「呉島貴虎」「戦士の頂」「アンチ」


 「新条アカネの心は、痛かったんだろうか」

 アンチはある日、ふと思った。
 彼には、自分が作ったもの、自分の部下に裏切られる者の気持ちが分からなかった。
 誰も教えてくれなかったから、分からなかった。
 自分が新条アカネの敵に回った時、新条アカネの心に痛みはあったんだろうかと、そう思うアンチは、自分を深く省みていた。

 呉島貴虎を裏切った者達は特にそういうことを考えることもなかったので、皆基本的には裏切った後も笑顔だった。
 呉島主任!


斬月超人グリッドナイト

 『それ』を、戦士の頂と呼んだのは、誰だっただろうか。

 人間だったか。

 機械だったか。

 怪獣だったか。

 『それ』がそう呼ばれるようになってから、もう数年の時が経とうとしていた。

 

 

 

 

 

 それはもう、数年も前のこと。

 そこが"戦士の頂"と呼ばれたのは、彼らの最後の戦いがそのコンピュータ・ワールドの中で行われたからだ。

 その戦いの残骸と残滓の山が、数年後に戦士の頂と呼ばれるようになった。

 

 コンピュータ・ワールドは、全ての機械の中にある世界。

 それぞれの中に怪獣や、コンポイドと呼ばれる人間に似た電子生命体が生息している。

 かつてそこで、グリッドマンという光の戦士が戦い、世界を救った。

 世紀は変わり。

 変わらず人類の守護者として在るグリッドマンと、その仲間達が、一人の少女と、一つのコンピュータ・ワールドを救った。

 

 その戦いで、グリッドマンを助けた戦士の一人がいる。

 その名を、『グリッドナイト』……またの名を、アンチ。

 

「グリッドナイトサーキュラーッ!!」

 

 彼は今一人、自分が生まれ育ったコンピュータ・ワールドを守るべく、『謎の巨大機械』による侵略者軍団を一掃していた。

 紫色の光刃が大気を裂き、飛翔する。

 無数のロボットがバラバラになり、機械部品が雨のように街に降る。

 絶え間なく続いていた援軍が一旦止まったのを見て、グリッドナイトは大通りの交差点の中心にて、安心した様子で構えを解く。

 

「チッ、なんだこれは。どこから来ている?」

 

 平穏が訪れたはずの街に現れた、世界の外部からのロボット達。

 電子の世界を征服せんとする侵略者。

 グリッドナイトが思わず舌打ちするのもむべなるかな。

 そんなグリッドナイトに、遠くから内海なる少年の声が届く。

 

「グリッドナイト! 無理すんなよ!」

 

「ああ」

 

 "複雑な想い"が前提だとしても、かつて蛇蝎の如く嫌われていた相手から認められ、応援と心配を贈られるというのは、悪い気がしなかった。

 グリッドナイトの身に力が入る。

 足元に知人の六花と、知人の知人の裕太がいるのを見たグリッドナイトは、膝をつき彼女らを安全な場所に誘導する。

 

「建物が崩れればオダブツだ。広い場所に行け」

 

「う、うん。ありがと、アンチ君」

 

 六花は頷き、礼を言い、裕太の手を引いていった。

 あまり芳しくない反応をする響裕太に一抹の寂しさを覚えながらも、グリッドナイトはひょひょいと自分の肩まで飛び上がってきた少女・アノシラスとの会話を始める。

 

「どーもお客さんみたいだネ」

 

「お客さん? 外からの侵略者ということか? アレクシスのような?」

 

「元を断たなきゃ永遠に敵が来るやつっぽ。にひぇひぇうぃうぃひぃひひ」

 

 コイツの笑い声本当に変だよな、とアンチは思った。

 

「なら潰しに行くだけだ。ここは任せたぞ」

 

「いってらっしゃーい」

 

 アンチ/グリッドナイトの全身に力が漲り、その体が飛翔した。

 

 コンピュータ・ワールドは、通常のデータ回線を超越した電子経路・バサルートを使って相互に接続されている。

 それは、独立するカーナビと他のパソコンを繋ぐようなものもあり。

 コンセントから電気の経路を通して繋がっているようなものもある。

 ゆえに、通常のセキュリティの多くを、グリッドマンやグリッドナイトは突破することができるのである。

 

 それでも通れない、重度のセキュリティウォールというものはある。あるのだが。

 グリッドナイトが辿り着いたその場所のセキュリティホールは、ズタズタになっていた。

 もはや電子の壁はなく、ズタズタにされた電子の壁の残骸と、それによってそこら中が埋まってしまったバサルートがあった。

 

「ここが奴らの侵略経路か」

 

 バサルートを探り、黒幕に辿り着ける到達経路を探し回るグリッドナイト。

 その過程で、ちょうどいいコンピュータ・ワールドを発見した。

 データの流れからして黒幕がこの先にいるのは明らかで、かつそのコンピュータ・ワールドはまだ黒幕に制圧されていない。

 格好の基点であった。

 

「グリッドマンは安定した特定世界への介入にジャンクを使っていたな……

 よし、オレもここを基点にして介入するか。グリッドナイト……ストーム!」

 

 わらわらと湧いて来ていたロボット軍団をビームで一掃し、綺麗になったそのコンピュータ・ワールドを、ジャンクのように基点に設定する。

 それが、『そのパソコンを操作できる者』と、そのパソコンのコンピュータ・ワールドの中にいたグリッドナイトを、結線した。

 操作者の意向によって、スーパーコンピュータの処理能力がそのままグリッドナイトのスペックに加算されていく。

 

『こちらのスパコンを基点にしているな? こちらから全力でバックアップする』

 

「何者だ?」

 

『今の戦闘はモニターに映っていた。

 説明は後でいい、この事態を解決しようと動いている者だとお見受けする』

 

「オレは自分の街を守りに来ただけだ。侵略者は殴って倒す」

 

『好ましい答えだ』

 

 世界最新型のコンピュータに後押しされ、グリッドナイトが敵本拠地に繋がるバサルートへと飛び込んだ。

 

『私は呉島貴虎。君の名は?』

 

「グリッドナイトと呼べ」

 

『君になんとかできる力があるなら、急いでくれ。

 今、ネットワークの世界にとんでもない危機が起こっている。

 スタンドアローンのはずの海外核発射基地のシステムが乗っ取られている。

 下手人はメガヘクス。かつて倒された、地球外機械生命体の侵略者の残党だ!』

 

「鼻歌交じりに片付けてやる。この程度の敵なら、グリッドマンの足元にも及ばん雑魚だ」

 

『セキュリティは随時こちらで解除する。止まらず進め』

 

 全力で飛ぶグリッドナイト。

 その飛行を邪魔しないために次々消えていくセキュリティ。

 かくしてグリッドナイトは、核発射施設の致命的に破壊されたコンピュータ・ワールドに降り立ち、そこに救う無数の機械兵器達と対峙した。

 

 

 

 

 

 メガヘクス。

 それはかつて地球に飛来した機械生命の侵略者である。

 侵食植物による星単位の侵略に対抗すべく、星とそこに生きる生命の全てを機械化し、他の星や生命も取り込み機械化せんとする星系規模の侵略者だ。

 

 かつて多くの戦士が立ち向かい、その星と端末の全ては破壊しつくされた。

 かに、見えた。

 その一部は僅かに残り、残りカス程度の電子戦力が核発射施設のコンピュータ・ワールドを乗っ取り、コンピュータ・ワールドの制圧と現実の更地化を目論んでいたのだ。

 

 現実世界では、メガヘクスの母星を破壊した戦士達がいる。

 なら、コンピュータ・ワールドなら?

 電子世界でなら?

 それならば、止められる可能性は低い。

 そう考えたこと自体は間違いではないだろう。

 

 問題は、現実世界の戦士達との戦いを避けた先に、凄まじき騎士がいたということだった。

 

 殴れば電脳戦仕様の巨大メガヘクスロボが砕け。

 蹴ればメガヘクスの一旦は吹っ飛び。

 ビームがメガヘクスを片っ端から焼き尽くしていく。

 

『圧倒的だな』

 

「グリッドマンは最も強い。ならば、俺も強いということだ!」

 

 地面を蹴り、壁を蹴るグリッドナイトの足取りはたん、たん、たんと軽いのに、蹴り込むグリッドナイトの足はドゴォと恐ろしいまでに重々しい。

 吹っ飛んだ敵に、追撃の紫の光刃が投げつけられた。

 

「グリッドナイト! サーキュラーッ!」

 

 電子戦個体とはいえ合金でガチガチの硬度を誇るメガヘクスの機械兵達が、まるでビスケットかゼリーのように破壊されている。

 恐るべし、グリッドナイト。

 "一番最初に一番強い奴の真似をした"からか、大量の伸び代があるにも関わらず強さの初期値が桁違いで、その強さは誇張抜きで化け物じみている。

 

「それより、話の続きだ。

 貴様が先程迂闊に漏らした話の続きを聞かせろ。裏切られたとは、どういうことだ」

 

『本当に余裕だな……』

 

「仲間。友。俺には知らないことが多すぎる。

 そして、知るべきことも多すぎる。

 俺は内海とやらが俺に怒っていた理由を理解するのにも、随分時間がかかってしまった」

 

『無知の知、か。知るを求める子供のようだな。

 ……大したことではない。俺が愚かしく、部下の仲間に造反されたというだけのことだ』

 

 呉島貴虎は、かつて仲間に、部下に、友に、弟に裏切られている。

 彼は真っ直ぐに世界の救済を求めていたが、彼の仲間や家族は世界の救済なんてものは比較的どうでも良かった。

 自分の才能の誇示。

 自分の願いの成就。

 最後の勝利の到達。

 誰も彼もが根本的には"自分のため"に何かを成そうとしていたがために、"自分以外のため"が基本な貴虎とは致命的なレベルでソリが合わなかった。

 

 貴虎が他人を疑い、打算と計算で付き合いができる人間だったなら。

 あるいは、仲間の裏切りを想像できる自由な想像力(イマジネーション)があったなら、また別の道もあったかもしれない。

 

『俺は、仲間を最後まで信じ切り、味方で在り続けることが、誠実であり礼儀だと思っていた』

 

「味方でいること、仲間でいることが、必ずしも正解とは限らないだろう」

 

『ああ、その通りだ』

 

「だがタカトラの言葉が間違っているようにも感じない。よく分からない」

 

 アンチ/グリッドナイトは、途中から自らの創造主である新条アカネの造物に立ち向かい、それを打倒する者となった。

 

 貴虎とアンチの最大の違いは、ただ一点。

 貴虎は部下に裏切られ。

 アンチは部下として裏切った。

 貴虎は部下にほとんど愛されていなかったが、アンチの反逆は一種愛のような感情から行われた事柄であった。

 

 貴虎の部下と新条アカネの部下は、共に上司を裏切った。

 裏切りとは悪なのか。

 それともそれ以外の意味も持つのか。

 "新条アカネのために新条アカネを裏切る"ということに何の違和感も持たなかったアンチの言葉だからこそ、貴虎の心の妙な部分に突き刺さる。

 

「仲間を信じるとはなんだ、タカトラ。

 オレに仲間のようなものがいたことはある。

 だがオレの戦いはオレが単独で飛び回るものが多かった。

 仲間を信じるとはなんだ。友を信じるということとは違うのか」

 

 グリッドナイトの一撃が、右翼側のロボット群を一掃する。

 

『少し前、友人から聞いた話の受け売りで申し訳ないが。

 同じ道を進んでいくのが仲間。

 別々の道を共に立って行けるのが友、だそうだ。

 だからこそ、仲間と友の信頼の仕方というものは違うんだろう』

 

 グリッドナイトの一撃が、左翼側のロボット群を一掃する。

 

『俺にも葛葉紘汰という友がいて、何人かの仲間がいたのかもしれんな……』

 

 メガヘクスは時間稼ぎを始めた。

 コンピュータ・ワールド内にロボが散り、容易に一掃できないように分散する。

 時間が経てば核は発射され、メガヘクスの勝利が決まる。

 時間稼ぎは、グリッドナイトにとっても貴虎にとっても、あまり嬉しくない一手であった。

 

「なら、オレにとって新条アカネは友か?

 オレにとってキャリバーは友か?

 アノシラスは……仲間だが、まあ、友でいいか」

 

『お前がそう思えるかどうかが、一番大事なことだろう』

 

「貴虎。部下に裏切られたお前にこそ、聞きたいことがある」

 

『なんだ』

 

「オレは一つ、後悔していたこと……いや、振り返って、よく分からなくなったことがある」

 

 飛び回るグリッドナイトは流星の如く、目についた端からメガヘクスの残党を破壊していく。

 

「上に立つ者というのは、下の者に裏切られた時、辛く思うのか?」

 

 通信越しにも、貴虎が密かに息を呑んだことが分かる、そんな沈黙が広がった。

 

『ああ。色々と思うことは多かった。

 だが……これは、俺の個人的話だが。

 共に歩んできた仲間が裏切った時にこそ、思う。

 自分の下にいた者が裏切り、全てをひっくり返した時にこそ、思う。

 そうなって初めて、俺は一度、自分の全てを振り返り、こう思うことができた』

 

 裏切りが善だったか、悪だったか。

 それは裏切る側の者の心情の問題で、裏切られる側から見れば関係ない。

 

 裏切りが良いことだったか、悪いことだったか。

 それは最後の結果を参照して考えるべきことで、結果論である。

 

 だが一つ。

 呉島貴虎と新条アカネに共通したところがある。

 裏切られた二人の心に、共通して生まれた感情がある。

 

『"俺は、間違っていたんじゃないか"と。自分の間違いについて、考えられた』

 

 "自分を振り返る気持ち"だ。

 裏切られたことは、大なり小なりショックだっただろう。

 そこから二人とも、自分のことを省みただろう。

 貴虎の場合は、自分を裏切った者達はほとんど死に、別の者に手を差し伸べられた。

 アカネの場合は、本気でアカネにぶつかっていったアンチが、グリッドナイトとしてアカネを救う手を差し伸べた。

 

 裏切りからは、悪しきものしか生まれないわけではない。

 結果的に良きものが生まれることもある。

 

 貴虎には『反省』が生まれ。

 アカネには『救済』が生まれた。

 本当に酷い裏切られ方をした貴虎が、その裏切りを何もかも否定しているわけではなく、自らの過ちを認め、そこから得た教訓を肯定していることは、アンチにとっての救いでもあった。

 

 心の隅に刺さっていた"自分の反抗はアカネの心を傷付けたのでは?"という、アンチのほんの小さな苦悩は、この会話にて完全に消失する。

 

「なるほど。オレはそんなに間違ってなかったんだな」

 

『だが辛い気持ちは大なり小なりある。あまり敵に回ってやるなよ』

 

「分からん。オレにはヤツの気持ちしか分からん。

 ヤツの気持ちを裏切らないことしかできない、それがオレだ!」

 

 グリッドナイトの飛び蹴りを、巨大なロボの一体が受け止めた。

 

「!」

 

 ロボの残存戦力の残りが分散するふりをして、数体のロボをグリッドナイトを引きつける囮とし使い、残り全てが一箇所に集まって合体したのだ。

 グリッドナイトの一撃を受け止められるほどに。

 分散したのも戦術で、合体こそが本命の一手。

 

「敵の合体か……」

 

「よっすー、大詰めみたいだから援軍に来たよ」

 

「アノシラス!」

 

 ひょこひょこ歩いてきた幼い少女が、グリッドナイトの肩に飛び乗る。

 その手には、フルーツをモチーフとした錠前のような、アイテムにもオモチャにも見える、何かが握られていた。

 

「でもその前におやつおやつ」

 

『それは……ドラゴンフルーツエナジーロックシードのデータ!

 戦極も使っていた、あの……

 ぺっしなさいぺっ! 小さい女の子が口にしていいものではない!』

 

「うっわまっず、味しないやこれ」

 

 ドラゴンフルーツエナジーロックシード、と呼ばれるもののデータがアノシラスに食われ、様々なデータと混じり合いながらペッされる。

 吐き出されたロックシードデータは盛大なバグを起こし、データ変異を起こしながら変形と拡大化を続け、一気に膨大なデータ塊となり。

 

《 Dyna Dragon fruit Energy 》

 

 そして、最終的にドラゴンっぽい何かとなった。

 

「私これ知ってるー。アシストウェポンってやつだよ。装着!」

 

「うおっ!?」

 

 そして、グリッドナイトとの合体シークエンス開始。

 

 『アーマーを上から素体に被せる』というロックシードアーマーの基本システムに準じ、ドラゴンはグリッドナイトの体表面に重なるようにして、その体と一体化した。

 

「合体竜帝! キンググリッドナイトぉー!」

 

「なんだこれはァー!?」

 

「撃つんだよ、アンチくん!」

 

「分からん! 分からんがノリで撃てば良いんだな!

 キング、グリッドぉ―――ナイトストームッ!!」

 

 合体メガヘクスが構え、光線を発射する。

 が、全て無駄。

 残り全てのメガヘクスが力を合わせた光線も、キンググリッドナイトの放つ極太光線に飲み込まれ、その体ごと一瞬で消滅していった。

 敵残数、0。

 ここにようやく、地球に残っていた地球外機械生命体メガヘクスの侵略の爪痕は、その全てが終わりを告げたのだった。

 

『よし、間に合ったぞ! 核発射前に一掃できた! 後はプログラムの修復をすれば……』

 

「そっちでなんとかならないのか?」

 

『日本のこのコンピュータからアクセスしているだけだ。こちらからは修復できない』

 

「なら……間に合わないか」

 

『っ!』

 

「オレはフィクサービームなど使ったこともない。直せないなら、このままだ」

 

『何か、何か方法は……!』

 

「焦るな。

 オレはやったことがない。

 アノシラスは役に立たん。

 お前にもできることはないんだろう。だが」

 

 きらりと、コンピュータ・ワールドの空の彼方に輝く光。

 

 それが、希望をもたらす光。

 

 いつでもどこでもやって来る、コンピュータ・ワールドの光の守護者。

 

「真打ちの登場だ」

 

 『本物の方』が来たのを見て、アンチは楽しげな笑みを浮かべた。

 

 広がる光が、破壊されたコンピュータ・ワールドを修復していく。

 

 世界の危機は今、真の意味で去ったのだ。

 

 

 

 

 

 なにはともあれ。

 敵をぶっ倒した後は、棚上げにされてたアンチ君の願いを叶える時間だ。

 すなわち、"グリッドナイトはグリッドマンを倒す者である"という定義の実行である。

 

「さあ勝負だグリッドマン。このキンググリッドナイトの力で」

 

「よそでやろうねよそで。……あ、グリッドマンあれ、サンダーグリッドマンじゃん……」

 

「何? あれの呼び名はフルパワーグリッドマンじゃないのか?

 まあいい。あっちも合体、こっちも合体、条件は互角のはずだ! 行くぞアノシラス!」

 

「はいはい」

 

 グリッドマンもグリッドナイトもコンピュータ・ワールドを守ってくれる戦士だが、それはそれでこれはこれ。

 いざや行かん決闘へ。

 そんなアンチの耳元に届く声が一つ。

 

『ありがとう。君達のおかげで、億人単位の人の命が救われた』

 

「構わん。オレたちは、自分の街を守っただけだ」

 

『何か礼がしたい』

 

「礼が欲しいなどと言った覚えはない。要らん」

 

『借りは返す。そうでなくては、俺の気が済まん』

 

 貴虎のその返答を聞いて、アノシラスとアンチは目を丸くして、互いの顔を見合わせた。

 そして、アノシラスはまた変な笑い方をして、爆笑し始めた。

 "借りは返す"なんて律儀に言われてしまうと、少女はついつい笑ってしまう。

 

「なーんか、わたしたち、似たようなの集まっちゃってるねえ?」

 

「そうだな。オレとグリッドマンの決闘の場所でも貸してもらうか」

 

『お安い御用だ』

 

 本来の姿を取り戻したグリッドマンと仲間達が一体となった、サンダーグリッドマンが飛ぶ。

 

「意味の無い戦いだ」

 

 拾い物のバグデータを一体化させたという、いかにもアンチらしい『合体能力をコピーした結果の力』による、キンググリッドナイトが飛ぶ。

 

「そう言うな。こいつがオレの、命の意味なんだ」

 

 貴虎の用意した電脳の戦場で、二人は激突し。

 

 その結果は―――悪いものでは、なかったとか。

 

 

 

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