お正月企画三題噺シリーズ・アドヴァンスドサード 作:ルシエド
夢の中でなら、いつも助けに来てくれる。
いつも共に戦える。
夢のヒーロー。
これは夢だ、とグリッドマンは思った。
これは夢だ、と御守竜胆は思った。
「あれ、この前の夢で共闘した……グリッドマンさん」
『おや? もしかしてだが……あの夢の中で共闘した、ティガだろうか』
「あ、はい、あの時のティガです」
ウルトラマンフェスティバル2015にて、グリッドマンはウルトラマンと共闘している。
公式イベントのライブステージにてウルトラマンXと並び立つグリッドマンは、当時サプライズで会場のお父さん達を大いに驚かせたとか。
ジオラマステージなどではガイア&ダイナと共闘し、超大混戦の中ファイブキングに立ち向かうティガの姿もあったという。
十勇士ティガ然り、超古代ティガ然り、中身がマドカ・ダイゴでないティガが宇宙の数だけ存在するのもまた、『ウルトラマンティガ』の特色である。
「あの時は色々あって力出しきれなくて、活躍しきれなくてすみませんでした」
『いや、助かったとも。君の力もまた必要なものだった』
「ババルウ星人を吹っ飛ばしたグリッドビーム、クソ強かったですね……」
『だがファイブキングは吹き飛ばせなかっただろう。
あれは君のゼペリオン光線の力だったと、私は思う』
「ゼロさんがあそこでハイパーゼットンに睨みを利かせてくれて無かったらヤバかったですね」
『しかし、今日まで夢だと思っていたよ』
「俺は完璧に忘れてましたよ。起きてる時は忘れちゃうみたいです」
『私はハイパーエージェントだ。そういう忘却にも、ある程度耐性がある』
「ハイパーエージェントすっげえ……じゃあちょっと、話でもしましょうか」
『ティガがこんな少年だったとは、私も想像していなかった。
君くらいの年頃なら悩みも多いんじゃないか?
少なくとも私がこれまで支え合ってきた中学生達は、そうだった』
「俺最近中学生じゃなくなったんですよ」
『む、そうか。すまない』
「謝るこたないです。
最近の悩みは……そうですね……
ちーちゃんと若葉が喧嘩してて、俺が間に挟まれること多いこととかでしょうか」
『恋の三角関係の修羅場……だな?』
「違います」
『すまない』
この人表情筋も顔の皮膚もなさそうなのによくドヤ顔できるな、と竜胆は思った。
『誠実に接し、気遣い、優しさを忘れない。人間関係の基本はそうではないだろうか』
「やっぱそれっすかねー、やっぱか」
『役に立たないアドバイスしかできなくて申し訳ない。
ここが夢でなく、私の仲間が同行していたら別のアドバイスもできたかもしれないが……』
「気にしないでください」
『思えば、私は最初に一体化した直人の恋の助けにもなれなかった。
先日一体化した裕太の時に、初めて恋の助けになれたような者だ。
去り際に裕太が胸の奥に隠していた恋心を、片思いの相手にバラしていくことしか……』
「それ状況によっては殺意抱かれても仕方ない失策では……?」
『なんだって!? それは本当か!?』
「無自覚ですか!?」
彼はハイパーエージェント・グリッドマン。
去り際に一体化した少年の恋心をヒロインに勝手にバラし、去っていった夢のヒーロー!
『綺麗で尊い想いを聞かれて何が悪いのだろうか。
想いは胸に秘めたまま、ずっと明かされなければその尊さと共に消えてしまう……』
「善意だったら全て許されるってわけじゃねえぞグリッドマン!」
思わず叫んでしまった竜胆も、むべなるかな。
グリッドマンがしょぼんとした。
『……裕太なら、全てを知っても許してくれそうなのが怖い。
彼と私は一体化し、一人の少女をなんとか救えたが……
一体になっている時にずっと、光を感じていた。光の心の持ち主だったんだ』
「あー、分かります、俺分かる。純粋で真っ直ぐな奴は眩しいですよね……」
竜胆は、どこか遠くを見るような目で、どこかの誰かを思い出すような声色で、とても優しく暖かな声を出した。
竜胆が特定の誰かの笑顔を頭に浮かべたことは、想像に難くない。
「光の心の響裕太、か。そういうの、結構憧れてたんですよ、俺」
グリッドマンは、憧れの言葉を口にする竜胆の前に立つ。
そして、手を差し出す。
友情を表明するために。
信頼を表明するために。
かつて共に戦った戦友に対する評価を、誤解なく伝えるために。
『君も十分眩しいとも。君は既に光だ』
「―――」
『君は光の戦士だからこそ、あの謎のスパークドールズをきっかけとした戦いに喚ばれたのだ』
グリッドマンは光だ。
電子の世界の光に潜り込み、その中にはびこる闇を撃つ。
『アクセス・フラッシュ』とは、グリッドマンが光であるがゆえの変身コード。
ウルトラマンという光の戦士とは別に、グリッドマンという光の戦士もまた、人々の笑顔と希望のために戦っている。
電脳世界では、電子の巨人として。
現実世界では、光の巨人として。
個別の戦う姿を持つのが、グリッドマンという夢のヒーローである。
竜胆は複雑そうに、けれど嬉しそうに、グリッドマンが差し出した手を取った。
「ありがとう」
少年とグリッドマンの手が、固く握られる。
「起きてる間は忘れてましたけど、俺はあれの後も喚ばれてましたよ。*1
タイプチェンジもできない簡素なマルチのティガの姿でしたけどね。
Xさんは、マジャバって怪獣を人形にしていて。
オーブさんは、ウルトラマンシャドーと戦って。
ジード君は、ウルトラダークキラーと戦って。
ゼロさんは、ウルトラセブンの偽物と戦って。
俺はイーヴィルティガとかいうやつと戦ってたような……
グリッドマンがまたウルトラマンと共闘する時間が、またきっと来ますよ」
『その時は、よろしく頼む』
「あ、夢じゃなくて現実だと俺ちょっと違うティガなので。
それと起きたら俺忘れてるっぽいので。そこは覚えておいてください」
『分かった。私も違う姿で君の前に現れるかもしれない。その時は、よろしく頼む』
「はい」
二人の握手が解かれ、二人が背中を向け合い、別々の道に歩き出す。
別々の道。
されど、方向が違うだけの光の道だ。
そうして、御守竜胆とグリッドマンは、夢から醒めた。
「随分寝てたなグリッドマン。次の指令が来てるぞ」
「あ、リュウくんおはよう! 怪獣は来てないよ」
それぞれの耳に、それぞれの仲間の声が届く。
グリッドマンと竜胆は、それぞれの答えを返した。
「ああ」
「ああ」
道は違えど、世界は違えど、グリッドマンと竜胆が思うことは同じ。
いつも、どこかの誰かの笑顔のために。
彼らはまた立ち、また歩き出し、人々を守るための拳を握った。