そんな話はここまでにして、本編どうぞ。
予定の時刻、20:00になると会議室にはさっきいたメンバー全員がそこに集合していた。休憩のときの緩かった雰囲気とは違って、全員が少し緊張したような表情で私語などは一切なく、会長が来るのを今か今かと待っているようだった。
そんな張り詰めた空気の中、ーガチャーっと扉の開ける音が響いて会長が感連さんと共に中に入ってくる。
「どうやら全員準備もしっかりとできているようだね。今回の作戦は3人一組のチームを作ってもらって、範囲内の怪物をひたすら倒していく。恐らく怪物たちは生みの親に近づけば近づくほど、守りを固くするだろう。だからこそ、その行動からより正確な位置を把握する。能力者と思わしき人物を発見した場合は位置を報告、逃亡するようなら追跡してほしい。では最初のチームは前に。」
前に出た3人組は次々と消えて、現地に送られていく。ちょうど4チームを送ったところで最後のチーム、つまり僕たちの番が来た。
「夜空君のチームには僕と愛夜が入るよ。それじゃあ感連、現地まで送ってくれ。緊急事態の時、チーム単位での回収を頼んだよ。」
「はい、わかりました神咲様。それでは転送いたします、お気をつけて。」
そう言い終わると共に会議室から視界が一気にパッと変わって裏路地らしき場所になる。
「うおっ!びっくりした〜」
「ふふ、最初はみんなそんな反応なんだよ。酔ったりはしてない?大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。いきなり景色が変わったからびっくりしただけだよ。」
「大丈夫なら良かった、感連君のワープは最初に酔う人がいるかね。さて、そろそろ捜索を始めよう。」
左目が紅く光り輝いている会長がそう言って捜索を始めようとする。目が紅く輝いている!?と思わず二度見してしまうが、会長の目は依然と紅いままだった。
「か、会長。その目大丈夫なんですか?」
会長は目?と一瞬考えると、思い当たるフシがあるのか、ああ、と呟いた。
「この紅い左目の事だね。これは僕が能力を使うとこんな感じに光るんだよ。」
なんだその中二病設定は……しかも白い学ランと手袋までつけて、メチャクチャ格好いいじゃないか。そんな会話をしながら裏路地を出ると、そこは大量の怪物が闊歩していた。相変わらず強烈な違和感を振りまきながら、まるで人がすべて怪物になってしまったのでは、と錯覚させるほどに量が多い。本当にここら辺に能力者は隠れているんだろう。
頭の中のスイッチを戦闘を行う為に切り替えて、攻撃を仕掛けようとしたとき、怪物の頭上にゲームのHPバーの様なものが出現する。きっと会長の能力だろう。
それと同時に頭の中に会長の声が響き渡った。
『夜空君ちょっとストップ。相手の体力は20000/20000か、一般人の平均が大体100/100と考えると大体200倍か。あの怪物を全力で一発殴ってくれないかい?』
「イヤイヤイヤ、何で頭の中で会長の声がするんですか!?」
静かにしながら叫ぶ、という自分でもどうやってやったのかよくわからない事をしながら会長に詰め寄る。
『僕の能力で喋らないまま話すことが出来る状態にしているだけだよ。念話みたいなものだと思ってくれればいい。僕に話しかけようと念じながら頭の中で話しかけると繋がるはずだ。夜空君もやってみるといい。』
頭の中で話しかけてみるって言われたって、一体どうすればいいのかわからない。とりあえず、頭の中で会長を意識しながら声に出さずに頭の中で「あーー」と言ってみる。
『……ぁ………あ…あーー』
『繋がったね。そうそう、こんな感じだよ。一度やり方を覚えてしまえば後は案外簡単に使えるよ。作戦行動中の会話は基本的に念話でするようにしてほしい、僕が能力を使っていれば、仲間なら誰にでもちゃんと繋がるしね。さて、使い方も覚えた所で、今の夜空君の全力が見てみたいからあの怪物を全力で攻撃して貰ってもいいかな。』
一度覚えたら簡単って事は、自転車に一度乗れたら一生乗れるみたいな感じなのか?戦っている時に喋らなくて良いのは仲間との連携がとりやすいから結構便利そうだ。
それにしても、あの怪物に全力の一撃か。会長は今の僕がどれだけの力を持っているのか知りたいのだろう。なるほど、あの怪物のHPの減り方をパンチングマシーンの数値みたいな感じにして測るんだろう。確かに僕も今の全力がどの程度のものなのか試してみたい。一般人のHPの平均が100らしいから、500位はせっかくだし出してみたい。
呼吸と心を落ち着かせて、頭の中のスイッチをカチリッと入れる。自分でも不思議なくらいに頭の中がクリアになっていく。なんだか今はすごく落ち着いていて、何でもできるような気がする。
怪物に攻撃する為にどう動けば良いのかがわかり、怪物のクリティカルポイントが見えるようになる。
これで行ける!そう思って見えた予測をなぞるように動いて、右手に溜めていた力をクリティカルポイントに力を解放することで、思いっきり叩き込んだ。
ドン、と鈍い音がして拳は確かに怪物にヒットしたが、殴った感覚が何処かおかしい。しかしそんな事を考える間もなく、怪物は一撃で倒れて灰になって消えていく。
『鮮やかな動きだったね夜空君。まさか怪物を一撃で倒すとは!どうやら僕は君のことを見くびっていたらしい。』
『凄いね夜空君!まだ自分の能力の歌もわかってないのに、あんなに使いこなして!』
会長と愛夜に褒められて、ようやく上手く行ったことを実感した。
『ありがとうございます。少し手応えがおかしかった気がするんですけど、うまく行って良かったです。』
『あぁ、すまないね。手応えがおかしかったのはきっと僕の能力のせいだ。僕の能力に掛かっている時は出血することも無いし、骨が折れることもないし、痛みも軽減されて不快感を覚える程度になる。ただし、HPが0になった瞬間、何をしようとも確実に死亡する。夜空君の攻撃が怪物の体を壊してしまう程の威力だったから、手応えがおかしかったのだろう。』
なるほど、本来は怪物の体が壊れるはずだったのに、会長の能力によって壊れなかったから手応えがおかしかったのか。
『そうだったんですね。それじゃあ、怪物を倒しながら探索を続けましょう。』
そして僕たちは裏路地から出て、怪物を生み出した犯人探しを再開した。