ロイド・ミュージック症候群   作:羽倉

8 / 10
令和初投稿。
最近書くモチベーションが上がらない…


能力の正体

 『3時の方向から怪物が5体、追加で来たようだね。撃破次第そちらに向かっていこう。』

 

 捜索開始からおよそ1時間。僕たちは確実に包囲網をゆっくりと狭めてきていた。最初は多く感じた怪物も各々が着実に倒している為か、ほとんど見かけなくなってきていた。

 

 『電波(でんば)班から各班に通達、商店街近くで怪しげな人影を発見!声をかけたところ逃走を開始。現在北方向に逃走中、背丈は160cmほどで髪が長かった為、女性かと思われる。近くに居る手の空いている班は、捕獲するのを手伝って欲しい。』

 

 突然の他の班からの念話。その内容は犯人と思われる人影を見たというものだった。商店街から北側、恐らく僕たちの班が一番近いだろう。

 

 『愛夜君、夜空君、多分僕らが一番近い位置にいるはずだ、急いで向かうとしよう。向かっている途中に接敵する可能性もあるから警戒しながら進んでくれ。』

 

 『『了解!』』

 

 そう言った時、ちょうど示し合わせたかのように逃走中の能力者だろうと思われる少女が道路から転がるように飛び出てきた。

 

 『一応何があっても良いように警戒だけはしておいて欲しい。僕から話しかけてみよう。』

 

 少女の顔は暗くてよく見えないが、どうやらこちらを警戒しているようで、あまり近づいて来ない。

 

 「こんばんわ。こんな夜更けにどうかしたのかい?ずいぶんと慌てているようだけど、誰かから追われてでもいるのかな?」

 

 会長の問いかけに少女は答えずに沈黙を貫く。だが、話しかけたことによって余計に警戒を強めたように見えることから、この少女が怪物を生み出している能力者の可能性が高くなってきた。

 

 「答えない、か…じゃあ単刀直入に聞くとしよう。君が怪物を生み出しているのかい?もし怪物を生み出しているのが本意でないなら、僕たちにはそれを抑える用意がある。」

 

 少女はビクッとした反応を見せ小声でブツブツと何かを言い出した。何を言っているのか聞き逃さないように急いで耳を傾ける。

 

 「よってたかって私の邪魔をして……そんなに私の邪魔をして…奪い取るのが楽しいの?……やっぱり、〈先生〉以外の人間は私を助けないんだ……私と〈先生〉以外要らない……もうこんな世界なんて…何もかも全部消えちゃえ!!」

 

 少女は世界を恨んでいて、呪っていた。だけど僕にはその声がどうしても、心の弱い少女が助けを求めている声に聞こえてしまう。

 

 だけど、僕たちには話し合う余裕なんてものは無かった。少女が能力を使って怪物を生み出して、襲いかかってきたからだ。今までの怪物とは明らかに格が違う。その存在そのものがチリチリと背中を焼くような威圧感を与えてきて、戦うことを躊躇わせてくる。

 

「グルアアアアアァァァァァ」

 

 少女を守るように現れた異形の怪物の咆哮は、会長の能力によって怪我などを負わないようになっていなかったら間違いなく至近距離にいた僕らは、鼓膜を破られて脳を揺さぶられていたに違いない、そう思う程の衝撃だった。ただの咆哮のはずが、衝撃波となってあたり一面に叩きつけられた。

 

咆哮によって吹き飛ばされ、倒れた伏した視界の端に出ている自分のHPバーは半分ほど削れていた。

 

『グッ、みんな無事かい?一旦撤退して、体制を立て直そう。感連、僕たちを怪物が見える位置にまで送って欲しい。』

 

会長の指示によって現れた感連さんに回収される形で撤退する。

 

 「感連、エクストラエナジーを運んできてくれ。その後他のメンバーも集めておいてくれ。」

 

 えっ、エクストラエナジーって神咲財閥が作ってる栄養ドリンクで、EEとか魔剤とか呼ばれてる日本の栄養ドリンクのシェアナンバー1のやつだよな…何でそんなものを?

 

 考えているうちに、感連さんが箱ごとエクストラエナジーを持ってきていた。やっぱり市販のやつだ。

 

 会長が箱を開けて一本取り出して僕に渡してきた。

 

 「だいぶHPを削られただろうからこれを飲むといい。ゲームで言うところのポーションの代わりだ。」

 

 会長いわく、EEは自分の能力のHPは休憩したり、飲食することで回復するのに気がついたらしい。そして色々と試していくうちに栄養ドリンクを飲むことが一番手軽で効率が良かった。そして一番回復効率のいい栄養ドリンクを作らせたら想像以上に美味しかった為に市販で売り出したらヒットした、と言う事だった。

 

 EEを飲んで、HPがジリジリとゆっくり回復しているのを横目で見ながら待っていると、次々とABCのメンバーが送られてくる。

 

 「全員送られてきたね。まずあの怪物を見て欲しい。あの怪物は今までの奴らとは格が違う。恐らく生み出している能力者が最終段階に上がった為だろう。そして皆には良い報告と悪い報告がある。まず悪い報告は、あの怪物のステータスが全く読み取れなかった。HPすらも表示されずに???/???と出てくる。つまりどれほど強いのかの判断がつかない。」

 

 会長の能力で読み取れ無いとか、一体全体どれほど強いのだろう。下手するとここにいる全員でかかっても倒せるかどうかわからないってことか…情報のアドバンテージがないのは結構つらいな。

 

 「そして良い報告の方は、まだ確実にそうだとは言えないが、相手の能力の曲名がわかった。恐らく《ぼくらはみんな意味不明》であると思われる。能力は怪物の生成と認識阻害、他にも僕の能力を何か持っている可能性が高いだろう。」

 

 敵の能力がわかったのは大きいな。あれ?でもちょっとおかしいな。友達のアイツは、怪物が人を襲うのは当たり前だと言っていた…怪物を生み出しても、認識を阻害しても、そんなに人を襲うのが当たり前の事のように言うはずが無い。この場合だと阻害というよりは、誤認とか改変の方が近いんじゃないか?一応伝えておこう。

 

 「会長!ちょっといいですか?」

 

 「どうかしたのかい?夜空君。」

 

 ここでさっき考えていた事を話していく。

 

 「なるほど。一般人の常識が書き換わるなんて事が起きていたのか…完全に気づいていなかったよ。仮定ではあるが全員、今の事を頭の中に置いておいてほしい。もしかしたら、それが第3の能力の可能性もある。十分注意して動いて行動するように。」

 

 そして怪物を倒す為の作戦会議が始まった。

 

 

 

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