ロイド・ミュージック症候群   作:羽倉

9 / 10
最近書くのサボってました…



覚悟

 

 『よし!ついてきているな!後10秒でそちらに着く。カウント頼んだ!』

 

 夜も更け、時刻はそろそろ深夜に差し掛かろうという時間。僕たちは怪物を攻めあぐねていた。理由の一つに有るのが、怪物と一緒にいる能力者の少女を出来るだけ傷つけない為に高火力の能力を使えない事だろう。

 

 『3秒前、2、1、今!』

 

 その合図と共に怪物が十字路から建物を壊しながら飛び出してきた。

 

 『お前ら直接見るんじゃねーぞ!』「くらいやがれ!」

 

 ババババババッ!という音と共に電波さんから紫電がほとばしり怪物の目を焼いていく。わざと声を出すことで、怪物の注意を引いてからの目潰しだ。しばらくは目が見えずに混乱するだろう。

 

 『今だ!フルアタック!』

 

 会長の掛け声?と同時に、愛夜と電波さんを含めた5人のアタッカーが飛び出して、各々が攻撃を始める。手足と胴体に能力を利用した攻撃が当たるが、傷ついたと同時に回復されているようで、削りきれない。

 

 『アタッカーは退避!怪物の視界が回復してきている!』

 

 怪物の視界が回復たようで、さっきまでアタッカーがいた場所に豪腕が振り下ろされる。あと一瞬指示が遅ければ間違いなく今の攻撃に巻き込まれていただろう。

 

 影を使って愛夜が会長と僕のいる屋根の上に飛び移って来た。

 

 「いや〜困った困った。操ってる本人が近くにいるせいで全力は出せないし、手加減すると今度はダメージを回復されると来た。どうする会長?」

 

 会長はしばらく悩んだあと、何かを決意したかのような表情に変わる。

 

 「あまりやりたくはなかったが、仕方がないか…愛夜君、君が()()()を使ったら、どのくらいの確率で怪物を行動不能に出来る?」

 

 ()()()ってなんのことだ?そんなものがあるのなら、今の千日手状態を打開するために、さっさと切ってしまえば良いのに。

 

 「ウ~ン、正直わかんない。どのくらい回復するのかによって変わってくるし、全力で逃げられたら流石に追えないよ。」

 

 「そうか、それならまだ切るのはやめておこう。アレを使うなら確実性がないと使えないからな。」

 

 切り札なるものを使う事は無くなったようだ。その時、突如として誰もいない方に怪物が走り出した。

 

 『なっ!会長!怪物が逃走を始めました!』

 

 『総員、足を狙って攻撃!絶対に逃がさないでくれ!』

 

 全員で足を狙った攻撃を放つが、あと一歩の所で逃げられた。

 

 『電波班と夢見班以外は全員集合してくれ、電波班と班は追跡を続行。対象を挟撃する。』

 

 『『『了解!』』』

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 再び怪物を包囲したのは、偶然にもビルを囲むような形になる。ビルに明かりはついていない、どうやら無人のようだ。

 

 「おい!あの怪物、ビルを登り始めやがった!」

 

 誰かがそう叫ぶ。すると、視界の端にまるで猿のようななめらかな動きでスイスイと登っていく怪物を捉える。逃げ場がなくなったので追い詰められたというよりは、大人数で囲まれない位置に移動したように感じられる。しかし、下手に手を出すと怪物ごとビルに攻撃が当たり、ビルが崩れてしまう可能性もあるので迂闊に手は出せない。僕らはそれを見ていることしかできなかった。

 

 『少数精鋭で行こう、大人数で行っても狭い屋上では身動きが取りづらい。愛夜君と夜空君、あと夢見君で追撃してくれないかい?』

 

 真面目そうな人が悲鳴のような声で叫んだ。

 

 『会長!?彼はまだ新人ですよ!?大怪我をする可能性が高いです!もしかしたら最悪の事態になるかもしれません!』

 

 『いや、夜空君でなくては駄目だ。あのビルを一人で登れて、ビルを倒壊させずにヤツに攻撃ができるのはこの3人しかいない。2人で行かせては不慮の自体に対処できない可能性が高い。夜空君、やってくれるね。』

 

 正直、ここで僕の出番が来るとは思ってもみなかった。だけど、確かに編成としては理にかなっているし、適任が他にいないのもきっと事実だろう。

 

 『はい、僕がやります。覚悟は最初からできています。』

 

 そう、覚悟は最初に説明された時からできている。既に被害は出ていて、友達や妹が巻き込まれる可能性が少しでもあるならば絶対に止めて、いや、やめさせなくてはならない。

 

 『本人も承諾している。これ以上の反論はないな。』

 

 すると、そこまで黙って聞いていた電波さんがおもむろに口を開く。

 

 『しょうがねぇなぁ。新人がここまで根性見せてんだ、なら、俺達がそれをサポートするってのが筋ってもんだろ。あと、新人!危なくなったら降りてこい。無傷で受け止めるぐらいなら俺たちでしてやれる。』

 

 新人の手助けを少しでもしようとしてくれる。電波さんはきっと、みんなに好かれて頼られるタイプの優しい人なんだろうなぁ。ってのが今の気遣いからよくわかる。

 

 『はい!わかりました!』

 

 『よし、では三人共用意してくれ。他の者はビルを囲むようにして離れて囲んでくれ。これ以上の逃走を許すな。逃げるようなら各自の判断で捕獲、討伐してくれ。』

 

 初めての危険度が高い任務に僕は「よしっ」と気合を入れ直した。

 

 

 

 

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