原作版だと、主人公とオーガ達は戦ってないはずです。
確か怪我したオーガを治療して、信頼を得た後に村に連れて行った、という流れだったと思います。
なので主人公にぶつけてそのまま村まで連れて行ったら結果的には同じかなぁという感じ。
声がした方に視界を向けてみると、そこにはあの有名な、鬼のような者達がいた。
その数7。
鬼達の声から察せられることはというと、若様と姫様と呼ばれている人達が一番偉いらしい。
そして邪悪な魔人がいるとのこと。
装備はボロボロとはいえ、身長は2mを超え、体から溢れ出ている妖気は俺には及ばないものの、先程のアリとはレベルが違う。
そんなやつらが邪悪な魔人と呼び、警戒するやつだ。
よほどの大物なのだろう。
ここは鬼達をできる事なら誘導して、一緒に逃げた方がいいか。
なんて考えていると、どうも鬼達の視線はこちらを向いている。
俺の後ろにいるのかな、と思い振り返って見ても、その視界に広がるのは樹海のみ。
もう一度前を見る。
そこには各々が自分の武器を持ち、こちらを睨んでいる。
よくよく考えれば、妖気などのエネルギーを完全に垂れ流している俺は、鬼達にとって、だいぶ脅威として感じられるだろう。
そして俺は戦いたくないという理由で垂れ流したまんま。
あーつまり、邪悪な魔人っていうのは、おそらく俺のことだろうなぁ。
そんなことを遠い目をして思いながら、どうするかを思案する。
とりあえず弁明、か。
「えっと、意思疎通は可能だろ?なら俺の話を聞いてほしい」
「黙れ邪悪な魔人め!騙されるものか!我らの里にオークを差し向けた魔人の仲間だろう!」
完全に頭に血がのぼっている、若様と呼ばれていた鬼は、吠えるように俺へ言葉を吐いた。
おそらく、彼らの里は滅ぼされてしまったのだろう。
魔人が差し向けたオーク達によって。
そして、自分達より多い妖気の保有者が、それを隠すことなくかなりのスピードで走ってきた。
そりゃ、勘違いもするわ。
完全に運がなかった。
そして、弁明出来るような状態でもない。
戦闘は避けられないだろう。
逃げるか?
そんな問いかけを自分にし、即首を振る。
ここで逃げたら、邪悪な魔人だということを否定出来ないまま、その認識が固まってしまう。
別に俺自身がどう思われようと好きにすればいいが、問題なのが俺の姿がリムルにそっくりだということ。
進化をしたことで何か変わったかもしれないが、何もいじっていない分身体に憑依したことで、見た目がほぼ同じだと言っても過言ではない。
つまり、この鬼達に、リムルが邪悪な魔人だと勘違いされる可能性もある。
その場合、リムルに迷惑がかかってしまうし、その上俺の妖気を目にしても刃を向けて来る奴らだ。
ある程度実力があることは確かだろう。
そんな連中にリムルが狙われる、となると、リムルなら返り討ちにできるが、その配下のホブゴブリン達は成すすべもなく蹂躙される可能性が高い。
なんとか話を聞いてもらうしかなさそうだ。
ある程度痛い目にあってもらってでも。
正直、今日はもう疲れたんだけどなぁ。
それに、相手は7人。
無事に勝てるかどうか…
「逃げるなら今のうちだぞ?勿論ただでは逃さんがな!」
そう言って笑う若様とやらは、手に持っている刀を上段に振り上げ、俺に向かって走ってきた。
相手は戦う気満々、そして回避する方法は、今のところない。
仕方ない、か。
俺の元へとたどり着いた若様と呼ばれる鬼は、振り上げていた刀をそれなりの速度で俺に振り下ろす。
それをバックステップで躱した俺は、嫉妬者のスキルを素早く発動させながら、敵が使っている武器を確認する。
目の前の鬼は刀。そして奥にいるお年寄りの鬼さんと青色の髪の毛の鬼も刀だろう。
一番大柄な鬼は木製のハンマー。
お胸の大きな紫色の髪の毛の鬼はモーニングスターというロマン武器。
最後に緑色の髪の毛の鬼と桃色の髪の毛の鬼はなんも持っていない、が桃色は手に青色の炎が灯っている。
あれは…?
手に灯っている青色の炎に一瞬戸惑いを見せた瞬間、桃色な鬼はその炎をこちらに向けるように手を伸ばした。
その行動に疑問を覚える間も無く、その炎がかなりの速度で俺目掛けて飛んできた。
「魔法かっ!」
飛んできた炎を思いっきり身体を逸らし、回避。
バク転の要領で態勢を立て直す。
そこに息つく暇もなく、隠密のように気配を消して近寄っていた青色の鬼が横から俺を刺すように刀を放った。
それをさらにバックステップを行うことで躱し、完全に身体の側面を晒した青色の鬼の横腹に向かって、思いっきり殴ってやった。
態勢が整っていなくて力がこもっていなかったが、それでも身体能力の差か、若様と呼ばれる鬼のところまで青色の鬼は吹き飛んでいく。
やっべぇ。
さっきのアリとは全然違う。
バク転で躱すというのも咄嗟に思いついた方法、しかも上昇していた身体能力のお陰で出来たものだ。
桃色の遠距離。
若様の近距離に、隙をつくような青色の攻撃。
3人だけでもなかなか厄介だ。
それなのにあと4人もいる。
今はなんの動きも見せていないが、タイミングさえあれば容赦のかけらもなく攻めてくるだろう。
こんな状態なら逃げても許されるかなぁ。
なんて虚ろな目で考えながら、逃げてリムル達に迷惑かけることなんて出来るはずもなく、大人しく解決策を考える。
意思疎通が出来て、おそらく何かの勘違いで今争っている。
それなのに殺すのは、良心的にNG。
大人しくさせてから、なんとか話を聞いてもらうしかないだろう。
一番簡単に思いつく方法。
それは先程もやった範囲結界で鬼達を囲い、麻痺吐息を吹きかける方法。
虫系と融合しなければならないが、贅沢を言っている場合でもない。
若干憂鬱になりつつ、デビルムカデとの融合を開始。
俺の突然の変化に驚いている鬼達を、その隙に発動させた範囲結界でぐるっと囲んだ。
ただ、麻痺吐息を吹き付けやすいように、上空には展開していない。
そこからは先程の戦闘と同じ。
思いっきりジャンプし、落下中に麻痺吐息をこれまた思いっきり吹きかける。
アリの時よりも気合いを入れて吐いた麻痺吐息。
これで一件落着、そう思ったその時、麻痺吐息によって発生した煙が、何かに吹き飛ばされるように上空に飛ばされていく。
煙が晴れた先には、吹き飛ばされる前に当たったのだろう。
図体のでかい鬼、青色の鬼、紫色の鬼は、地面に伏している。
しかし、それ以外の鬼は無事だったようだ。
原因は、緑色の鬼だろう。
両手を上空に向けているそいつの手から風が発生し、麻痺吐息を吹き飛ばしていた。
おそらく魔法だろう。
桃色の鬼が火属性だとしたら、緑色は風属性か。
虫と融合してまで行使した麻痺吐息。
3体の無力化には成功したものの、まだ4体も残っている。
しかも麻痺吐息という唯一無力化出来る能力は緑色の鬼に対策され、確認できているスキルで攻撃技は、色欲者の即死攻撃ぐらいだ。
これは本格的にやばいかもな。
スキルの確認をまだ出来ていない、ということが、大きく響いている。
ぶっつけ本番でスキルを使うしかないか、と思っていたら、あることに気づいた。
色欲者で見えている鬼達のエネルギーが、もうほとんどないのだ。
鬼達の顔を伺えば、だいぶ消耗しているのがわかる。
オークに里を襲われ、命からがら逃げてきて、その上俺との戦闘。
しかも俺は時間経過すればするほど、相手からエネルギーを奪うことが出来る能力持ち。
鬼達はもう限界なのかもしれない。
それでも目から戦意が消えていないのは、誇り故か。
…ちょっと、見直した。
最初襲い掛かられた時は、正直勝手に勘違いして襲いかかるとか、キチガイかよ、と冗談半分に思っていたものだが、そうやって疑わなければならないほど追い詰められていたのだろう。
それに、ただそんな状況でも、誰一人として逃げなかった。
そして、今もこうして立ち向かおうとしている。
なんていうか、こう、カッコいい、というのかね。
アニメでいう、強力な悪役を前にした主人公を見ている感覚。
まあ、その感覚で言ったら、俺は悪役になってしまうのだが…
と、そんなことを考えているうちに、残った4人の鬼達は既にエネルギーのほとんどを奪い取られ、膝をついていた。
そんな鬼達へ、悠々と歩みを進め、若様を見下ろす形で前に立つ。
すると、膝をついていたお年寄りの鬼がフラフラではあるが、腰に差していた刀を抜き、俺に斬りかかってきた。
もちろん、剣速なんてあってないようなもの。
前世の俺でも躱せたであろうその刀を、あえて若様を見つめたまま、刀の腹を思いっきり叩き、へし折る。
「俺の勝ち、だよな?」
自身の勝利を宣言した俺を、まさに鬼のような形相で睨みつけ、立とうとし、途中で力尽きたのか、そのまま俺にもたれかかるような形で倒れてきた。
それをうまく抱きとめ、ゆっくりと地面に寝かせてやる。
「安心しろ。悪いようにはしないさ」
そう言った俺は鬼達に笑いかける。
もちろん信じてはくれないだろうが、言っておいた方が安心して眠れるだろう。
その言葉を告げると同時に、全ての鬼が気を失った。
まるでさっきまでの戦いが嘘だったかのように、周り一面静寂が包んでいる。
聞こえるのは風が木を揺らし、擦れる葉っぱの音ぐらいだ。
戦いの連続で、精神的に疲れたのもあるのか、しばらくこの静けさに浸っていたい気持ちになるが、すぐ帰らないとそろそろリグルドが心配するかもしれない。
目的の洞窟周辺までは行けたんだ、村に帰ろう。
しかし…とあたり周辺に散らばっている鬼達に目を向ける。
考えていることはただ一つ、どう村まで運ぼうか、だ。
完全に気を失ってしまったこいつらの回復を待っていたら、それこそいつ帰れるかわからない。
しかし、運ぶ方法がないのだ。
いや、正確には一つある、がとても手荒な方法である。
気を失って、どう運ばれたか、なんて分からないのだ。
もうその方法で構わないだろう。
突然襲われた恨みを晴らす意味合いがないといえば嘘になるが…
そう考えた俺は、またスライム状態に戻り、鬼達に近づいていく。
そして。
「捕食!」
ほい、ほい、と流れ作業のように全ての鬼を胃袋に仕舞う。
食べたわけではなく、ただ仕舞っているだけだ。
こうして胃袋に入れておけば、俺一人で帰るのと、なんら変わりはない。
「やっと帰宅だー!」
手を思いっきり上に伸ばし、伸びをしながら、いい笑顔で叫ぶ。
流石に肉体的には疲れないスライムボディとはいえ、精神的な疲れはある。
課題を全てやり終えたような、晴れ晴れとした気分で俺は帰路についた。
オリキャラっていうんでしょうか?
あの緑色の髪の毛の子です。
容姿は次の話にでも。
それと主人公がオーガを鬼と言っているのは、種族の知識がないからです。
リムルと2km以上離れてしまった主人公は、大賢者と話すことができません。
そのため、オーガだということがわかりませんでした。
眠いので寝ます。
またなんか変なところあればご指摘ください