木の葉からの逃走を続ける男、大蛇丸は木の葉崩しが失敗したことに歯噛みしていた。
「おのれ、あの老いぼれめ…!」
全てはかつての師、猿飛ヒルゼンによる封印術・屍鬼封尽による、両腕を封印されたのが災いした。
そのせいで忍術を封じられ、撤退を余儀なくされたのである。
音の四人衆を護衛につけ、戦闘からの敗走の途中、疲弊した大蛇丸が、接近する敵に気づいたのと、攻撃を受けたのはほぼ同時のことであった。
ーー通天脚!!
その攻撃は隊列の最後尾、巨漢の少年、次郎坊に直撃し、その意識を簡単に奪い去った。
チャクラを集中した全力の踵落とし。それによって大地は大きくひび割れ、余波で大蛇丸と残った三忍を吹き飛ばす。
「大蛇丸!!」
白いインナー、黒のパーカーに黒のズボンを身にまとった黒髪黒眼の少年は、鬼の形相で大蛇丸一行を睨みつけ、そう叫んだ。
「ここまできて追っ手ぜよ」
「どうしましょう大蛇丸様!」
残った音の三忍の内、蜘蛛のように腕を六本生やした男、鬼童丸が前に進みでて、首の途中から人の頭のようなものが飛び出ている男、左近が大蛇丸の側へ駆け寄った。
(私の状態的に、この子達を囮にしても追いつかれるのは時間の問題。なら…)
「ここで殺すわ」
大蛇丸は一瞬にしてそう決断する。
「誰が…誰を殺すって!?」
全身の滾るチャクラを足へ集中させた踏み込み。それにより爆発的な初速を得たナギサは大蛇丸達に急接近する。
(速い!?だが…)
「やらせんぜよ!!」
ーー忍法・蜘蛛縛り!!
鬼童丸によってナギサに目掛けて巨大な蜘蛛の糸が放射状に吐き出される。
ーー水遁・
高濃度のチャクラ水によって切れ味を増した手刀。それにより強靭なはずの蜘蛛の糸は切り裂かれ、鬼童丸はナギサの接近を許した。
(この距離は…!まずい!!)
ナギサは右手にチャクラ水を集中させ、それを高速で軸回転させる。それにより表面が空気に触れ、甲高い音を発していた。
それを見た鬼童丸は両手を犠牲にその技を防ごうとするが、
「防いでみろよ!!」
ーー
チャクラの一点集中による馬鹿力。それに水を高速回転させ弾丸のように打ち込むことで、掌底に貫通力を持たせた技。それこそが「武頼貫」であり、ナギサが苦しい修行の末に編み出した奥義である。
ナギサの一撃は六本の腕のガードの上から鬼童丸を打ちのめした。
そして間髪入れずに、ナギサは両腕に水でできた巨大な手裏剣を両の手に作り出している。
ーー水遁・
高速回転する、人の胴ほどもあるそれらを、ナギサは残った左近、多由也に向け投げ放つ。
「その程度の術で怯むウチらじゃないぜ!!」
そう強気に言い切ったのは、四人衆の紅一点である多由也。その肌には黒い紋様ーー呪印が浮かび上がり、その能力を底上げしていた。
ナギサは手裏剣を追うように距離を詰めていく。瞬く間に二人と手裏剣の距離は近くなり、そして迎え撃とうとする二人の目の前で、手裏剣の形状は突如変化する。
ーー水遁・水分身の術!!
カオルとの模擬戦でも使った水遁術から分身を作り出す技、それは上手く左近、多由也の意表をついた。
分身が二人に組みつく。それにより、一時だが大蛇丸が完全にフリーな状態となる。
「うおおおおォ!!」
ナギサが空中に飛び出る。そしてその勢いもそのままに、両手から左右逆向きに、高濃度のチャクラ水を爆発的な勢いで放出する。その反動によってナギサの体は高速で錐揉み回転を始める。
「
その回転の勢いのままに大蛇丸へ急速に接近する。大量の水が回転する様は、まさに中忍試験でネジが見せた「回天」のようだった。
『大蛇丸様!!』
助けに入ろうとする二人だったが、分身による妨害がそれを許さない。
「
刹那、大量の激流が大蛇丸を襲った。その広範囲にわたる攻撃は、周りの木々をなぎ倒し、辺りの人影を完全にかき消した。
ーーーーーーーーーーーーーー
攻撃によってできたクレーター。その中心でナギサは大きく肩で息をしていた。
(今出せる最大火力に、回転というアイデアを加えた一撃。即席でやったがうまくいったな)
そして、周囲の状況を確認する。少し遠くに左近と多由夜の姿を見つけるが、大蛇丸の姿は見えなかった。
そう思っていると、突如として背後に円による反応が現れた。
ーー下にいたのか!?
地面から飛び出した大蛇丸の首。その口には草薙剣が咥えられており、それはナギサに向けて振り下ろされる。
「チィッ!?」
斬撃をかわしきれず肩に傷を受けながらも、ナギサはその場を飛び退いた。
しかしその先には状態2となり、鬼の様な見た目になった左近が待ち受ける。
ーー多連拳!!
左近の体から二本の腕を生やした三本腕による掴みは、ナギサの体を拘束する。
「この程度…最大火力の水遁で…」
ナギサは拘束されていない右手で水を放射させ、吹き飛ばそうとする。が、ちょうどその時、円がこちらへ飛来する物体を捉えた。
ナギサと左近に絡みついたそれーー鬼童丸の蜘蛛の糸は二人の自由を完全に奪い去る。
(これは…鬼童丸は倒したはずじゃ…!)
糸が飛んできた方向を見ると、体を黄色い鎧で覆った鬼童丸が目に入った。
(蜘蛛粘金で防いでいたのか!!)
糸を硬質化させることにより作り出されるそれは最強の矛とも盾ともなる。
ナギサはここに来て自身の置かれた状況の危うさに気づく。
そして水斬拳によって拘束を解こうとしたその瞬間、ナギサの耳に笛の音色の様なものが届く。
(これは…多由也の幻術か…)
幻術は徐々にナギサの体の自由を奪っていく。
(こんなとこで…母さん…)
ナギサの必死の抵抗も虚しく、彼の意識は暗い闇の中へと沈んでいった。
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「大蛇丸様、そいつは殺しましょう!危険すぎます!!」
笛によってナギサの意識を奪った張本人、多由也は大蛇丸にそう進言する。
「いいえ、この子はアジトに連れて帰るわ。多由也はこの子を。左近はそこでのびてる次郎坊を連れて来なさい」
『っは!』
残った三忍はそれぞれ違う思いを浮かべながらも、大蛇丸の命令通りに行動した。
(思いがけない戦闘だったけれど…いい拾い物をしたかもねェ…)
大蛇丸は不敵な笑みを浮かべながら、唇の渇きを舌で潤した。
次郎坊の出番なし!!水遁は土遁に相性が悪いので真っ先に潰しました。