第十四話 新たな力
大蛇丸が起こした木の葉崩し。それは木の葉隠れの里に多大な被害をもたらした。死傷者や行方不明者も多く出たこの事件。中でも大きかったのは、三代目火影の殉職であろう。
火影は里の民の心の支えとも呼べる存在だった。それを失い、民衆の心には大きな傷跡ができていた。
他にも家族や恋人を亡くした人々もおり、里には悲しみが蔓延していた。
里の上忍、やなぎカオルもその一人である。
初めに聞いたのは、妻、カオリが重症であるとの報告だった。動揺しつつも病院に向かい、その先で命に別状はないと聞かされ、一応は安心できた。
しかし、続けざまに息子、ナギサが行方不明であると知らされ、そして取り乱した。
自分が本気を出さざるを得ないほど強いとはいえ、まだアカデミー生、子供なのである。親として当然のように心配し、自身もまた捜索に参加した。
そうして得られたのはナギサの身柄ではなく、大蛇丸一行に連れ去られるのを見たという情報だけであった。
それを聞いてカオルは絶望した。大蛇丸といえば、酷い人体実験の末、里を追われた抜け忍である。そんな人物に息子の命が握られていることを知り、いてもたってもいられなかった。
里の上層部に息子の奪還任務を命じるように詰め寄った。しかし、火影不在の上、先の事件による被害の復興もできてない今、そのような任務は命じられないというのが、里の判断であった。
ならば、自分一人でもナギサを助け出す。カオルはそう決意した。たとえそれが小さな望みであったとしても。
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左肩の鋭い痛みによって目を覚ました。
左の首筋が焼けるように痛い。今まで感じたことのないほどの痛みに、のたうちまわろうとするが、身体が拘束されてるようでそれも叶わない。
「ここは…!?」
混乱する頭で状況を確認する。
今いる場所は薄暗い部屋で、いくつかの蝋燭があかりとなっている。そしてすぐ近くに人影が見えた。
「どうやら目が覚めたようね」
「大蛇丸…!」
目の前の男、大蛇丸は続けてこう言った。
「悪いけど、寝てる間に呪印をつけさせてもらったわ。どう、痛むでしょう?」
痛みの正体がわかった。大蛇丸の呪印。それは強大な力を得る代わりにその意思を大蛇丸に縛られ、適応できなければ最悪死ぬほどの凶悪な代物なはずだ。
「俺をどうするつもりだ…?」
「どうするつもりもないわ。ただ少し強くしてあげようと思ってね。中々見所がありそうだしねぇ」
(一体何を考えてる?いや、それより拘束をどうかしないと…)
拘束を振りほどこうと体にチャクラを込める。すると首筋を中心に激しい痛みがはしる。
「無駄よ。呪印もまだ馴染んでないし…強引に力を出そうとすれば最悪死ぬわよ?」
(本当に何を考えてる?殺すことが目的なら既にそうしてるはず、となれば転生先として選ばれたのか?)
大蛇丸には他人の身体を乗っ取り自分のものにする術があり、原作でその術の対象として選ばれたのがあのうちはサスケだった。
その代わりとしてこうして連れてこられたのかもしれない。
(ならなおさら逃げ出さないと…)
そう思い、再びチャクラを練り込む。
「無駄だと言ったでしょう。それともここで死にたいのかしら?」
鋭い痛みが再び身体をはしった。だが、これでわかったことがある。
呪印による痛み。つまり呪印に侵食され始めるのは、チャクラをおよそ全力の三割程度練りこんだあたりからだ。ならそれ以下のチャクラを使えば…
ーー水遁・水斬拳!!
水を纏った手刀によって手の拘束を解く。続けて足の拘束を断ち切り、戦闘態勢に入る。
「やっぱり面白いわ…あなた」
チャクラを身体に巡らせ大蛇丸に突貫する。その動きは普段より数段劣るが、相手もまた本調子とはいえないはずだ。
「このまま押し通る!!」
「だから無駄だと言ったでしょう」
ーー印!!
大蛇丸が印を結ぶと同時に再び首筋が刺すように痛み、今度は思考はまで妨げられてるような気がした。
「術者の私がコントロールできないはずないでしょう」
そのままモヤがかかるように意識が遠のいていく。
「ちょうどいいわ。このまま眠っていてもらおうかしら」
そのまま意識は深い闇に沈んでいった。