ナギサの人格を破壊し、そして完全にその心を掌握した大蛇丸。その手によって新たな実験がナギサに施されようとしていた。
支配されたナギサの人格は、完全に自分の記憶とともにその意思をなくし、大蛇丸のただ一つの命令、「己の力を高める」ためだけに行動している。そこで大蛇丸は考える、重吾の力。仙人化をナギサに授けられないかと。
仙人化とは大蛇丸の配下である重吾の一族が使う能力である。周囲の自然エネルギーを取り込み、自身のチャクラとともに練り上げることで能力を引き上げるものだ。その効果は絶大だが、自然エネルギーの扱いは非常に難しく、コントロールできず、精神に異常をきたす。
しかし、意思もない、ある意味で安定しているナギサなら精神面のデメリットを抑えられるのではないかと。
大蛇丸の気に入った忍につけられる呪印。仙人化の力を再現できるように与えられるそれは、取り込む自然エネルギーの量を制限するよう設定されている。そのおかげである程度デメリットを防いでいる。
ナギサに限っては呪印を精神の支配も兼ねて使っているので取り除きこそしないものの、自然エネルギーの吸収を違う形で行おうということだ。
それこそが重吾の仙人化の能力であり、それを行うための彼の細胞である。これ以降、呪印細胞と呼ぶ。その移植の前段階として、データ上拒否反応の低い、うずまき一族の移植が決まる。
大蛇丸の配下、香燐のものであるその細胞は、移植者の生命力を上げ、それりより拒否反応の大きな呪印細胞への適合の手助けになるだろうということだった。
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そうして行われた移植手術は、結果だけを見るならば成功したといっていい。
それぞれの移植で拒否反応こそ出たが、段階を踏んだことで、難しいと思われていた呪印細胞への適合も成功した。
そうして得られた仙人化の能力は呪印をキーとして発動し、体中の呪印細胞から自然エネルギーを取り込み、己の力とした。精神への負荷も比較的抑えられたようで、いわゆる状態1の時は問題なく行動しているようだ。
問題は状態2である。それは自然エネルギーを多く体に取り込んだ状態であり、驚異的な能力を得るが、それに伴って殺人衝動などが生まれる。オリジナルである重吾などは強すぎる衝動を抑えられず、見境なく周囲へ攻撃してしまうほどである。
その力を試すための当て馬は、ちょうど大蛇丸のもとへ迫ってきていた。
うちはサスケを木の葉からさらった音の四人衆。それを追っている忍達のうち一人が、他でもないナギサの父、やなぎカオルだったのだから。
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サスケ奪還という目的でナルトたちの後を追うように任務へ向かうカオル。その本当の目的はナギサの救出である。大蛇丸による妨害によって失敗したものの、逆口寄せによってナギサの生存とその大体の位置はつかんでいる。その位置がサスケ奪還に向かっているナルト達の行く方角と一致したことがこの任務につけたきっかけである。
「待ってろナギサ。必ず・・・必ず助け出してやる!!」
ナギサを助け出すために意気込むカオル。その先に悪夢と呼べるほどの凄惨な未来が待ってるなど、彼には知る由もなかった。