ナギサを助けに向かうカオル。森の中を木から木へ飛び移りながら高速で移動している彼は前方からの気配を感知し立ち止まった。
視線を向けるとそこには一人の忍が佇んでいる。背丈は少年と呼ぶほどに低く、側面が縫われていない黒いチャイナドレスのようなものを身にまとった白髪の人物。その忍からは殺気などは向けられてこなかったが、その服の正面に音の四人衆などの衣類に描かれていたものと同じ陰陽太極図があったことから、大蛇丸の手下と認識。即座にクナイを構え目の前の敵に迫った。
その瞬間だった。白髪の忍もこちらに気づいたのだろう。うつむいていた顔を上げ、その目と目が合った。その顔はやつれ、人相などは変わっていたが、実の息子を見間違えるはずもない。忍はナギサだった。
カオルの胸に様々な感情があふれる。しかしそれも一つの疑問によりさえぎれれることになった。
”なぜこんなところにナギサがいるのか”
カオルが深く考える余裕などはなかった。
目の前のナギサから肌を刺すような殺気が向けられてきたからである。反射的に構えをとったのは正解であっただろう、そうでなければもう勝負は終わっていた。それほどの速度、重さの乗った一撃。ナギサのしなやかな腕から放たれたそれによりカオルは大きくたじろいでしまう。それが戦いの始まりだった。
ナギサの息をつく暇もないほどの猛攻。無印忍術など培ってきた技術を込めた攻撃を防ぎながらもカオルは必死に呼びかける。
「ナギサ!俺だ!父さんだ!!わからないのか!!!」
その声を聴いても攻撃の手を緩めぬナギサに対し、カオルは言葉による解決をあきらめ、一度ナギサを無力化し連れ帰ることに決めた。そうして戦闘は激化していく。
戦い始めると意外なことにカオルは優勢であった。カオルがナギサの手の内をある程度把握しているのに対して、記憶に制限がかかっているのか、カオルの攻撃に対するナギサの対処が甘かったのである。それによってカオルが戦いの流れをつかんでいた。
だが状況は一刻を境に一転する。
ナギサが呪印を展開したのだ。白い肌がひび割れるようにひかれていく呪いの模様。カオルから見たそれはいくつもの蛇のように見え、顔をひどくしかめたのだった。
呪印の開放によって戦いの主導権はナギサの手に移る。驚くべきことだが、上忍であるカオルの戦闘力をナギサのそれは上回っていた。それほどまでに呪印、そして力を扱う者の戦闘センスが高かったのである。
特筆すべきはそれだけではない。致命傷にはならないまでもいくつもの手傷を負わせているのに、傷を負ったそばから治る再生能力。それらの要素がカオルを追い詰める。
そうして追い詰められたカオルは奥の手を出さざるを得なかった。昔、模擬戦をした時のように。
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目の前にいる忍の排除。大蛇丸から命じられているその内容は、ナギサにとってそこまで困難なものではないように感じられた。確かに敵対している者の戦闘能力は高い。しかしながら、呪印さえ開放してしまえばその戦闘力も脅威にはならない。そう考えるナギサ。
実際に呪印を状態1までもっていくと明らかな力の差が表れた。決着がつくのも時間の問題だろう。
高度な体術に水遁を混ぜ合わせた戦闘スタイル。それによる濁流のような猛攻を受けきれず、敵に明らかな隙が生じる。それを見逃すことなくチャクラを込めた拳を放つナギサ。戦いは決したかのように思えた。
しかし次の瞬間ダメージを受けていたのはナギサのほうであった。自身の身に起きたことを遅れて理解する。拳が当たる寸前、敵の右手首を中心に強烈な風が起こり、その勢いのままナギサは吹き飛ばされたのである。
土煙の中から現れたのは先の忍。加えて男を取り囲むように浮遊している蛇。いや翼や角を持つそれは龍と呼びべきかもしれない。龍からは異様な気配を感じた。大蛇丸の気配にも似たものをナギサの体は敏感に感じ取り、警戒を強め、その身を構える。
「今回は模擬戦というわけではないようようだが・・・どういうつもりじゃカオルよ」
その声には威圧が込められており、その所作一つ一つがナギサの警戒心を高めさせた。
「殺し合い、したいわけじゃあないんですがね。どうにも息子が強すぎまして」
敵である忍も口寄せ下であろう龍に、敬意を払っているのが感じられる。
「確かにいろいろ混ざったようだのう。なかなか手こずりそうじゃな。どれ、久しぶりにあれをやるか」
その言葉を聞いた敵の忍の表情は、少し驚きの色を見せた後、覚悟を決めたものへと変わった。
「やりますか・・・
人龍一体」