目覚めると、見知らぬ天井が眼前に広がっていた。
ーー知らない天井だ
そう言おうとして気づく、言葉をうまく発音できないことに。
さらに身体動かそうとしても思うように動かせない。そのことに少し動揺するが、しばらくしてある考えにたどり着く。
(転生、したってことか?)
少し身をよじれば視界の端に赤子の腕のようなものが見える、そのことが先ほどの考えに確信を持たせた。
そしてかつて少年だったものは先ほど見た夢について思い出す。
(さっきのじいさんは別の世界へ転生させるとか言ってたが…一体全体どんな世界だ?剣と魔法の世界、SFものもありだな。危険が多いとも言ってたし、考えられるのはそこらへんかな)
そうして期待に胸を膨らませている間にある人物が自身に近づいてきていることに気がつく。
「あら、ナギサったら起きてたのね。お腹でも空いたかしら」
その人物は、長い黒髪を後ろで束ね、明らかに主婦然とした格好の若く綺麗な女性だった。
(ナギサ?僕に向かって言ってるのか?見るからに普通の主婦って感じだけど、もしかしてーー僕の母親?)
赤子のーーナギサの予想は的中していた。彼女こそ赤子の母親ーーやなぎカオリその人だったのである。
(この人が僕の母親?ずいぶんきれいな人だな、これは今世の顔面偏差値は期待できるんじゃないか?)
などと、ナギサは少し安直とも言えることを考えていると、ナギサ、そしてその母親であるカオリ以外のもう一人の人物がそばにいることに気づく。
「相変わらずナギサはかわいいなぁ。そう思うだろカオリ」
そうカオリに話しかけるのは、筋肉質で、少し癖のありそうなーーこれまた黒い髪の毛を短く切り揃えた、一人の男性であった。
(流れからして父親か?いや、それよりも…!)
ナギサの視線はその男性の服装、そしておでこのあたりに釘付けになる。
少し青みがかった服に、若葉のような色のベストーー胸元に複数のポーチが付いたものを着ているその男性の額には…
(木の葉の…額当て?)
漫画NARUTOに登場する木の葉隠れの里、その木の葉の忍びが着用する額当てが巻かれていたのである。
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(まさかNARUTOの世界に転生するとはなぁ…)
ナギサはその事実を受け止めた。そして混乱する頭で自分が置かれている状況を確認する。
(とりあえず、木の葉の里に生まれることができたのは運が良かったとしか言えない。霧隠れなんかに生まれなくてほんとによかった。
それに両親ーーやなぎカオルとカオリ夫婦の仲睦まじい様子を見るに、家庭環境も悪くはなさそうだ。それと…)
ナギサは自身の身体に意識を、特に下腹部のあたりに集中させ、そして安堵した。
(よかった、ついてた…!!)
性別が男であることを確認したのである。
( いやね、ナギサ、ナギサって言われるじゃん?そしたら女かもとか考えるでしょ普通。女の子っぽい名前だし。
前世も男だったし性別が変わってなくて安心したよ。赤ちゃんの身体じゃ見て確認するってわけにもいかないしね)
そしてナギサはこれからのことについて考える。
( せっかく転生したんだし、今すぐに転生特典ついて試してみたかったけどこの身体じゃなぁ。チャクラとかについても色々試して見たかったのに…
しょうがない、しばらくは食っちゃ寝して過ごすとしますか)
転生したナギサは思いのほか前向きであった。前世での性格が嘘のように。ナギサ自身もそのことに気がついていた。
(体が変わって性格も変わったか?まあでも、悪いことではないかな)
そうやって考えるうちに、身体にかかる疲労感に気がつく。転生したこと、そしてそれがNARUTOの世界だということが、彼の精神に負荷をかけていたのだろう。
(…もう一眠りするか)
そうして、ナギサは再び眠りにつくのであった。
やなぎナギサ爆誕!!
次話は少し時間がとびます。