ナギサ忍法帖〜求めるは平穏〜   作:檸檬ソーダ

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第三話 ナギサの仮説

  第二のステージ、性質変化の修行には少し用意するものがある。

 

  まず自分の部屋を出て、父さんの書斎に潜り込む。ちなみに父さんは任務、母さんは買い物で今家を空けていて、我が家には僕一人しかいない。そして無数の本棚の一角、忍術の書が集中しているところを物色する。

 

「 火遁忍術中級、土遁忍術中級、イチャイチャパラダ…なんだこれ!?? あ、あった水遁忍術初級!!」

 

  父さんの意外な趣味を見つけたことは置いといて、お目当てのものを見つけた僕は、書斎を抜け、リビングへ入り、ベランダから庭へ出た。

 

  我が家の庭はそこそこの広さがあり、おまけに隅には大きめの植木があった。僕の背丈をゆうに超える大きさである。

 

  そうして庭に出た僕は巻物を広げ、一つの忍術に狙いを定める。

 

  水遁・水手裏剣の術。

 

 手のひらで水でできた手裏剣を生成、投げつける術である。

 

  修行にこの術を選んだのには二つの理由がある。一つは、術の習得難易度が低いこと、そしてもう一つは水を扱うことで、周囲への被害が小さいことである。

  特に後者は重要である、家の敷地内で火遁などを使おうもんなら、速攻でボヤ騒ぎだ。父さんの基本性質が水ってのもあるけどね。

 

  巻物を読み取り、必要な印を覚える。

  その後、術の発動に十分足りるであろうチャクラを練り込み、印を結んで術を発動させる。

 

 ーー水遁・水手裏剣の術!!ーー

 

  術の発生とともに身体の中のチャクラか動かされる感覚があり、その後手のひらの上に不恰好なからも手裏剣の形をした、チャクラを多分に含んだ水ーーチャクラ水とでもよぼうか。が形成される。

 

  そこまで終えて満足し、一度チャクラを霧散させ、術を中断させる。

 

  これで術の発動に必要なチャクラ量は覚えた。ーーもう一度だ。

 

 

  それから何度かの術の練習を経てより再現度の高い水手裏剣を作ることに成功していた。

 

(これで、第一段階クリア。次は…)

 

  ーー印を使わない水手裏剣の術の発動である。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

  かねてより疑問だったことがある。チャクラの性質変化、形態変化と、印との関係である。

 

  そもそもなぜ忍術などを発動する際、印を結ぶ必要があるのか。確かに印を結ばなければ忍術は発動しないかもしれない。だが風遁・螺旋手裏剣や、原作後半の千鳥などは印を結んで発動していたようには見えない。

 

  そのことが疑問として頭に残っていたのだが、先ほどの水手裏剣で、その解決の糸口が見つかった。そして、これから行う実験ではっきりとする。

 

 ーー水手裏剣の術!!ーー

 

  僕は再度術を発動した。今度は印を結ばずにだ。

 

  印を結んだ時の体内のチャクラの流れを、自らチャクラを動かして再現しようとする。

 

  その結果から言うと、術は不完全ながらも成功した。手のひらにチャクラ水の塊を形成するという形でだ。

 

  その後何度か同じことを繰り返したが、術の結果が大きく変わることはなかった。

 

  このことから、一つの仮説が立てられる。

 

  忍術においての印とは、本来手動で行うはずの形態変化や、状態変化を自動で行うためのものなのではないかと言うことだ。

 

  そのため風遁・螺旋手裏剣などは人力で性質変化を螺旋丸に加え、

 

  物語後半の千鳥などは、その熟練度の高さから印を結ばずに発動することができたのではないか。

 

  だが、物語中には確かに印を結んで発動している術もあった。そのことから察するに、印を結ぶことでより術の完成度を高められるか、省略出来ない印が存在することのどちらか、あるいは両方が考えられる。

 

  これらはあくまで仮定に過ぎないが、この理論が正しいならば、突き詰めると印を結んだ忍術の練習よりも、印を結ばない忍術の練習のほうが、長い目で見れば合理的なのかもしれない。

 

  そう考えたナギサはもうしばらく印を結ばない水手裏剣の練習を続けた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

  結論から言ってしまうと、印を使わずともある程度形には出来た。

 

  もう少し難航するかとも思ったが、案外、この身体にはこっちの才能もあるのかもしれない。

 

  だが、印を結ぶのと結ばないのではやはり、術の完成度に大きな違いが出た。

 

  その証拠に、印を結ばない水手裏剣を庭の隅の植木に放ったところあまり大きな傷はつけられなかった。

 

  しかし、印を結んだ水手裏剣では、植木の表面を大きくえぐるにまで至った。

 

  これは術の熟練度も関係してるのかもしれないし、この辺りが印を結ばない限界なのかもしれない。現時点でそこまで判断することはできなかった。

 

「もうしばらくしたら母さんも帰ってくるだろうし、性質変化の修行はこの辺りにしておこう」

 

 そうして帰ってきた母さんに練習台にして痛めつけた植木が見つかり、こっ酷く叱られたことは内緒である。

 

 

 




また前書きに書いてました…

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