IS〈インフィニット・ストラトス〉 剥奪人形の選ぶ道 作:エヴァンジル
――『織斑千冬・一夏』 教員室。
「「「「「………………」」」」」
学園同伴者兼責任者でもある千冬の部屋でいつもの面々である箒達は無言で正座をしていていた。
そんな彼女達の目の前には子の部屋の支配者と言うべき存在である千冬が何処か呆れたような表情を浮かべている。
「おいおい、葬式か通夜か? いつもの馬鹿騒ぎはどうした」
「い、いえ。なんと言えばいいのか……」
「ええっと……ですね」
「ちふ……織斑先生とこうして話すのは初めてですし…………」
箒、シャルロット、鈴は互いに目配りをしてどう説明したらいいのか迷っていた。
確かに普段から面と向き合って話す機会自体が少なかった事もあるがこうしていつもの面々の中に千冬を交え完全個室で話し合う事など今まで一度もなかったのだ。
しかも、一夏ラヴァーズである箒達からしてみれば姉でもある彼女を前にしてしまえば緊張するのも無理はない。
「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう、篠ノ之何が良い?」
「は、はい!?」
まさか自分を名指しされるとは思っていなかった箒はビクッと肩を振るわせる、突然の事で返事を返すのが精一杯で言葉を返せず困っていた。
そんな箒を見た千冬だったが特に気を悪くした様子はない。箒が迷っている間に千冬は旅館に備え付けられている冷蔵庫の中から清涼飲料水を五人分手に取り何の気無しに全員に手渡していく。
「ほら、ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、それに紅茶だ。飲みたいのが他にあったなら勝手に交換しろ」
「「「「「は、はあ」」」」」
全員が千冬の言葉に声を洩らすも、順番に箒、シャルロット、鈴、ラウラ、セシリアと受け取った全員が満足する物を受け取ったので交換会が開かれる事はなかった。
「い、いただきます」
五人を代表してまず最初に箒がラムネに口を付ける。それを見ていたシャルロット達も恐る恐ると言った様子で手にした飲みのもに口を付け一口分だけ喉に流し込む。
「飲んだな?」
千冬は箒達がジュースを飲んだ事を確認すると珍しくイタズラめいた笑みを浮かべる。
「は、はい?」
「飲みましたけど……」
「まさか何か入ってたんですか!?」
「そんなわけがあるか。何ちょっとした口封じだ」
千冬も自分の分の飲み物を取ろうと冷蔵庫を開ける。
彼女が手にしたのは星のマークがきらりと光る缶ビールだった。
プシュッ! と、景気の良い音を立てて飛沫と泡が飛び出す。飲み口から溢れそうな泡を艶やかな唇で受け止めそのまま中身を喉を鳴らしながら飲んでいく千冬。
「「「「「………………」」」」」
全員が唖然としている中で千冬は瞬く間に缶ビールを飲み干し上機嫌に折りたたまれた布団に寄りかかる。
「ふむ。いつもなら一夏に何か一品作らせたいところだが……そうもいかんな」
いつもの規則と規律に厳しく全面厳戒態勢の『織斑先生』というイメージと今の千冬が一致せず、女子全員がまたしてもぽかんとしていてた。
ラウラに至ってはより衝撃が大きかったらしく何度も眼帯をしていない紅い右眼をこすっては瞼をパチパチとしていている。
「なんだその顔は? 私が潤滑油を飲むような物体だと思っていたのか?」
「い、いえ! そういうわけでは……」
「ないんですけど……」
「でも、その今は仕事中じゃあ……」
箒達は気まずそうに千冬が手に持つ缶ビールを見つめる。
ラウラも同じように見つめるが言葉出てこずその代わりにコーヒーをまた一口だけ飲む。
「堅い事を言うな。それに口止め料はもう払ったぞ?」
そう言って笑った千冬の視線の先には箒達が手にするジュースが合った。
箒達も今の言葉でやっと奢られたジュースの真の意味を理解する。
「さて、前座はこのくらいにして肝心の話に映るか」
千冬はからになった缶を苦もなく握りつぶしゴミ箱へと投げ捨てる、それと同時に二本目のビールをラウラに取ってもらい栓をあける。
「お前等、あいつ等の何処が良いんだ?」
千冬はあいつ等、と名前は出さなかったもののこの場にいる全員が誰の事かを分かっていた。
――勿論、一夏と響しかいない。
「わ、私は別に……以前よりも兼の腕が落ちている事が不満なだけです」
と、ラムネを傾ける箒。
「あたしは、腐れ縁なだけだし……」
スポーツドリンクの飲み口をなぞりながらもごもごと言う鈴。
「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりして欲しいだけですわ」
何処かツンとした態度で答えるセシリア。
「そうか、ではそう一夏に伝えておこう」
あまりに自然にそんな発言をした千冬に箒達は驚き一斉に詰め寄った。
「「「言わなくて良いです!!」」」
「はっはっはっ!」
慌てふためく箒達の様子がおかしかったのか千冬は笑い声を上げながら缶ビールを傾ける。
「で、お前はどうなんだ?」
さっきから一言も発していないラウラに声をかける千冬。
「つ、強い所でしょうか……」
「いや弱いだろ」
にべもない。
実の弟だからと言う事を差し引いてもあまりに直球過ぎるたのか千冬の言葉に珍しくくってかかるラウラ。
「つ、強いです。少なくとも私よりは……」
「そうかねぇ……まあ、強いかは別にしてだ。あいつは役に立つ。家事や料理もできるしマッサージだってうまい。そうだろ、オルコット?」
何気なく話を振られたセシリアは顔を赤くして俯いてしまうが千冬の言葉を固定するように頷いて見せた。
「というわけで、付き合える女は得だぞ。どうだ、欲しいか?」
「「「「く、くれるんですか!?」」」」
「やるか、馬鹿め」
「え~っ……」
ほんの一瞬だけ期待させるような言葉に胸を躍らせた箒達だったが千冬はそんな少女達の淡い期待を躊躇いなく降りに掛かる。
「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする? 良い機会だ、自分を磨けよ。ガキ共?」
千冬はいつの間にか三本目となっていた缶ビールを口にする。
「今度はお前だぞデュノア」
「は、はい!?」
今まで空気のように事の成り行きを見守っていたシャルロットだったがやはり一夏と箒達の話が出たのなら必然的に響の話も出る事になる……つまり千冬の本命は響とシャルロットの原罪の状況である。
「お前は何処に惚れたんだ?」
「ぼ、僕は……優しいところ、です……」
シャルロットは小さな声でぽつりと呟いた、声の大きさとは裏腹にそこには真摯な響があった。
「そうは言ってもあいつは誰にでも優しいぞ? それこそ家の弟以上にな」
「そ、そうですね。そこがちょっと悔しいかなぁ」
響の美点としてこれ以上にない特徴であり紛れもなくシャルロットはその優しさに救われた。だが、その優しさが特別な相手だけではない事が複雑でもある。
シャルロットは頬を朱くしながらも不満を隠しきれない表情で熱くなった頬を手で仰いだ、その様子が羨ましいのか悔しいのか箒達は押し黙ってじーっとシャルロットを見つめた。
「まあ、そこも問題ではあるが一番の問題はあいつ等が誰を選ぶかという事なんだが……知りたくはないか?」
「「「「「!」」」」」
「必ずしも良い結果にならないのが世の中の道理だがそれが次の道標になるのは間違いない……例えお前達の誰かでなくともあいつ等がどういった女を理想にしているのかが分かるだけでも他の奴等よりも有利になると思うが、どうする?」
「「「「「………………」」」」」
シャルロット達は互いに顔を見合わせるも全員が千冬の言葉にどう答えるのかが分かっていた。
「「「「「ぜひ、お願いします!!」」」」」
「よし、その意気だ! そろそろ一夏の奴が風呂から上がるだろう。皇も呼んでくるように言っておいた……お前達は襖を閉めて隠れていろ。後は私がやる」
一見十代少女達の為を思っての行動に思えたが実際には姉として一夏がちゃんと彼女を作れるのかという事を心配しての事だった、響に至っては純粋な興味である。
その証拠に千冬の表情は実に楽しそうで嬉しそうだった。
「あれ~? 織斑先生だけですね~」
荷物整理を終わらせ一夏と一緒に千冬がいる教員室に遊びに来た響は部屋の中を見渡しいるはずの少女達がいない事に首を傾げる。
「ほんとだな、箒達はどうしたんだ千冬姉?」
「あいつ等は用事があるとかで帰って行った、他の女子と遊ぶ約束をしていたようだぞ」
「そうですか~。でも、シャル達には悪いけど一夏と気兼ねなく話せるから丁度良かったかも~」
「そうだな、響の場合は女子に遊ばれて遊ぶどころじゃなかったしな」
「おれも泳ぎたかったけど水着を忘れちゃったから、ああなったのは必然だったんだよ~」
今思い出しても恥ずかしさとある種の恐怖が蘇る。
他の男からしてみれば「何て羨ましいやつ!」と言われるような状況ではあったが同世代の女の子と付き合った事がない自分からしてみれば刺激が強すぎた、よく鼻血をださずかつ気絶しなかった自分を褒めたい。
響はどこか虚ろげな瞳で乾いた笑い声を上げる、その様子に少しやり過ぎたかと千冬が頭を下げる。
「あの時はすまなかったな……皇の予想外の姿に私も自制心が緩んでしまったよ」
「確かに、男の俺でも癒されるなって思ったからな」
「織斑先生はともかく一夏は人前でその事言わないでよ……じゃないとどうなるかわかるでしょ~」
「ああ、風呂の一件で懲りてる。そこは心配しないでくれ」
一歩間違えれば危うい捉え方をされる一夏の発言に響は眉を寄せる、ここにいたのが千冬だけで助かったのは確かだった。
「まあ、いつまでも立ってないで座れ。一夏、皇の分の飲み物も取ってやれ」
「おう、響は……何本飲む?」
「聞き方おかしいよね? 普通何が良いって聞くところでしょ~」
「そうなんだけどな……でも、一本以上何味でも飲むだろ」
「………………そうだね~」
一夏が言っている事に間違いがないため響は頬を膨らませながらも返事を返す。
「とりあえず入っているもの全部出して飲ませてやれ、代金は私が払っておく」
「ありがとうございま~す、織斑先生!」
「どうせ経費で落とす、合宿中の備蓄食材に関しても心配しなくて良い。食事は取れるときに取っておくのが肝心だぞ」
「わかりました~」
響は冷蔵庫からジュースを手渡してくる一夏からジュースを受け取る、その量は言うまでもなく冷蔵庫の中に入っていた総量(アルコール系は除く)である。
「ところで、お前達は学園の生活にはもう慣れたか?」
「はい~、最初はどうなるか心配でしたけど今はちゃんと男子で相部屋ですからだいぶ楽になりました~」
「俺もだ、別に箒と一緒なのが嫌ってわけじゃねえけどやっぱり女の子と一緒だとおちつかないからな」
「ほう……箒は女として意識していたのか? 子供だと思っていたがちゃんと色気づいていたか」
「あ、当たり前だろ! 普通に考えても箒じゃなくても緊張するっての!」
(あー、ここに篠ノ之さんがいなくてよかった~)
……ガタッ!
「ん?」
「何か音がしたような~?」
「気のせいだ、話を続けるぞ」
千冬は音がしたと思われる襖を二人から隠すように寄りかかる。
「箒じゃなくてもと言ったがそれはオルコット達でも同じという事か?」
「ああ、セシリアは時間に厳しそうだし鈴は話に夢中になって寝させてくれなさそうだしラウラは勝手に人のベッドに入ってきそうで怖いし。唯一安心なのはシャルロットくらいだろ、あいつはちゃんとしてるからな」
(シャル以外はどこか信用してないんだ~……となると、本命はシャルなのかな~?)
ガタガタガタガタッ!!
「まただ」
「風じゃない? もしかして天気悪くなってるのかも、海辺の旅館だし~」
「そうだな」
「あー、ごほんごほんっ! 皇の言う通り風だろうがもう少し大人しくしていて欲しい物だな」
「はは、ほんとだな」
「……?」
奇妙な物音に現実主義な千冬らしからぬ言葉、普通ならここで襖の向こうに何かがあるのではと考えそうな物だが一夏は全く気づかない。
響も首を傾げ不思議がるだけだった、これが千冬ではなく箒達が相手だったら響にばれていたのは言うまでもない。
「……で、一夏の本命はデュノアと言う事で良いのか?」
「何でそうなるんだよ!」
千冬は一夏に話題を振りつつ横目で響の様子をみる。しかし、肝心の響に動揺した様子はない。
「じゃあ、一夏は誰が本命なの~?」
「響までからかわないでくれよ……確かに、みんな可愛いと思うけど何て言うかそう言うのはわかんねぇよ」
「なんだ? あまり不用心に気を振りまくと後々面倒な事になるぞ」
「だから違うって!」
話の内容が思春期の男子としては気恥ずかしい恋話であるため一夏も珍しく頬を朱く染め緊張の色を見せる。
しかし、その様子から箒達を可愛い思っていても今だ本命を決められていない事がわかる。
「千冬姉も普段からこんな話しないのに何で今こんな事になってるんだよ」
「馬鹿め、こういうときでもない限り聞けんだろう、学園でこんな話をしよう物なら騒ぎになる。それに本命がいるならいるでびしっと想いを告げておけ、そうすれば私の心配も減るんだからな」
「ぐっ……」
(やっぱり織斑先生もお姉さんなんだね~、一夏も一夏で頭が上がらないみたいだし……おれも同じようなものだけど)
響は織斑姉弟のやりとりを見ながら義妹の瑓の事を思い出す。
年は離れていて自分が兄であるのだが何かある度に彼女に負けてしまうのだ。
何も喧嘩をしているわけではないが……いわゆる女の涙に弱いタイプなのだ。
(一夏みたいに偉大なお姉さんに挑んで負けてるのとは違うから比べる事でもないけど……やっぱり良いよね~)
たった数ヶ月ではあるが家族の元を離れ今までしてきた兄妹の会話も自由にできない。
そこは電話をすれば良いだけなのだがなにぶん学生の身、携帯電話の料金を払ってもらっている以上無駄遣いはできない。
「俺の事より響の方が気になるだろ! 千冬姉だってそうだよな?」
「おれの事~?」
「そうだな、一夏の方は好きな奴ができたらすぐボロをだすだろうが皇はうまく隠しきるだろうし気になる奴がいるなら今ここで吐け」
「普通に教えても良いですけどそんな子が居ないですからね~」
「………………」
「……響の場合振りとかじゃないって分かるから凄いよな」
「そ~?」
響は出されたジュースの栓を開け次々飲み干していく。
嬉し恥ずかしの話をしていてもぶれる事のない姿に何とも言えない説得力がある。
「ほ、本当にいないのか? お前も少し前まではデュノアと同室だっただろう」
「あ~、シャルと一緒だったときは本当に緊張しました~。あんな可愛い子と同じ部屋で暮らせたなんて貴重な体験ですよね~、ドキドキしました~」
「何だ、ちゃんと異性として意識してるじゃないか」
「そりゃそうですよ~。シャルだって女の子なんですから、おれじゃなくてもドキドキすると思いますよ~?」
自分の場合、会ったときから女の子ではないかと疑っていたが一夏の様に男だと思いこんでいたら更に衝撃的だったに違いない。
そうでなくてもシャルロットが女の子であると確定したときは気絶したのだ、今思えば事故とはいえ裸を見て気絶とは何とも失礼なような気がする。
「確かにな、俺だって響みたいな状況になれば同じだったかも」
「でしょ~、だから織斑先生が期待してるような展開はないですよ~」
「そ、そうか……それは残念だな」
千冬は引き攣った笑みを浮かべ何故か背後にある襖が気になっているようだった。
「しかしだ、まったく友達のままというわけでもないだろう」
「どういう事ですか~?」
「異性として意識していたなら特別な感情を抱いてもおかしくないだろう?」
「それはそうですけど……う~ん、誰かを好きになった事がないから良くわからないんですよね~」
「どういう事だよ、響?」
響が誰も好きになった事がないという爆弾発言に一夏は眼を丸くする。
何故なら響の発言は要するに初恋すらした事がないと同義なのだから。
「ほら、おれって今日女子のみんなに弄ばれたでしょ~」
「その言い方はどうかと思うぞ」
「おれとしてはそうなの! で、その時もシャルや篠ノ之さん達に抱きつかれてドキドキした。でもそれって好きだからドキドキしたとは違うでしょ~」
あくまで露出が多くなった女子の面々に抱きつかれ恥ずかしくなったと言う事に過ぎない。仮に一夏が同じような状況になっても相手の事を好き嫌い関係なく心臓は高まるはずだ。
「そりゃそうだな……で、それがどうかしたのか?」
「お前は喋るな、皇続けろ」
「はい~。えっと、例え話にシャルを出すのは悪いかもですけどシャルを基準に話させてもらいますね~」
「構わん、むしろ好都――うぅん!」
千冬は漏れそうになった本音を咳払いで隠す。
「シャルはすっごく可愛いです、だからシャルと居れば嬉しいし手とか握ったり腕を組んできたしてドキドキしました」
響は腕を組みシャルロットとのスキンシップを思い出す。
学園生活の中でおそらくシャルロットが一番自分と触れ合っていた異性である事は間違いはない。
相部屋という同じ空間で過ごし、大浴場での事件沙汰になってもおかしくないような状況にこの臨海学校の買い物で起きた試着室密室お着替えでも心臓が破裂しそうな場面に置かれた事もある。
「そんな相手に触られたりすれば緊張もするし嬉しいとも思います……だけどそれだと『可愛いシャル』が好きなのか、この世界でたった一人しかいない『シャルロット』って女の子が好きなのか……どっちなのかわかんなくて~」
シャルロットは間違いなく響が出会ってきた中でも指折りの美少女、しかもダントツで接しやすい異性。
しかも人当たりの良い立ち振る舞いに何気ない所まで届く気配り、周りの人を気遣う事のできる優しさを持っている、そんな彼女が魅力的でないわけがない。
しかし、だからこそ響は迷ってしまう。そんな彼女の良いところが好きなのか、それとも彼女自身が好きなのか。
「まあ、以上の点を踏まえておれがシャルをそう言った眼で見てるのかどうかおれにもわからないです~。もし仮におれがシャルの事を好きになってシャルがおれの事が好きだったとして付き合う事にでもなったらその……結婚とか、ちゃんと働けるようにならないと……子供とかも……」
「「………………」」
「それにシャルはありのままの自分に戻れたばかりです、彼女の辛さを全部分かってあげる事はできないですけど何かあったら助けるって約束しました……だから今は好きとか嫌いとかっていうよりもシャルを助けたい、助けてあげたいって気持ちの方が大きいです」
響はシャルロットが女である事を開かした日に事を思い出しながら待機状態である『打鉄・天魔』に触れる。
「シャルは優しいから辛くても悲しくても無意識のうちに我慢しちゃう子ですから、危ない目に遭ってもきっと自分だけで何とかしようって頑張って頑張って頑張りすぎちゃう思うから……」
この前の臨海学校の買い物で些細な誤解が遭ったとは言え起きた問題を自分に何の相談もすることなく解決しようとした、それは自分を危険から遠ざけようとしたのかもしれないが同時に彼女が危険の中に身をさらしているのだ。
「シャルが危ない目に遭ったら、おれが変わりに闘います、相手がどんなに多くてもどんなに強くても絶対に逃げません。シャルを、シャルロットを護るために」
その言葉に嘘偽りはない。
ラウラと闘った時と同じ、いやそれ以上の覚悟を込めて響はシャルロットと交わした約束を果たそうとしている。
相手は世界に名高い有名企業であるデュノア社、その他にも国際IS機関が絡んでくるかもしれない。それが分かっていても響の緋色の瞳に恐れも迷いもなかった。
そんな響の言葉に千冬と一夏は呆気にとられて言葉を失う。
二人の目の前に居るのはまだ十五年しか生きていない小さな少年、しかし白銀のチョーカーに手を添え真っ直ぐな瞳を自分達に向ける彼の姿は秘められた闘志の中に確かな決意が見て取れる一人の男としての姿だった。
「助けるって約束しました、だから……あっ」
響は知らず知らずのうちに高ぶった感情と自分が言った事に気づき頬を朱く染める。
「あ、あはは~! 何言ってるんでしょうねおれは~! 専用機持ちの中で一番弱いのにシャルを助けるって、むしろ助けられてばっかりなのに~!」
無言で自分を見つめる千冬と一夏の視線が痛い、凄く痛い。何ともお門違いな事を言った自分に呆れているのかもしれない。
(も~! いくら専用機持ちになったからって気が大きくなりすぎてた~! この前、織斑先生にこてんぱんにされたばかりなのに……何言っちゃってるのかなおれ~)
響は何とも気まずい雰囲気にあたふたと視線を部屋の中で彷徨わせる。
すると響の眼に映ったのはあともう少しで消灯時間になる事を示す壁掛けのアナログ時計だった。
「あー! もう消灯時間になりますね~!? 道理で眠いとおもった~、おれもう寝ますね! ジュースありがとうございました~!!」
気まずさと恥ずかしさに負けて響は脱兎の如く千冬達の前から走り去り、まだ起きているはずの真耶がいる部屋へと全力疾走したのだった。
――シャルロットサイド
『あれ~? 織斑先生だけですね~』
『ほんとだな、箒達はどうしたんだ千冬姉?』
襖で隔てた部屋の向こうから響と一夏の声がシャルロット達の耳の届く。
(ほ、ほんとに響達が来ちゃったよ!?)
(あ、当たり前だろう! 千冬さんが呼ぶように一夏に言っておいたのだから!!)
(だからと言ってこの状況は危険すぎませんこと!?)
身体の小さい女子とは言え五人も集まれば主室と隔てられた広緑に詰め込まれるように隠れればさすがに狭いようでシャルロット達は互いに身体を寄せ合い身を隠していた。
(ちょっとあんた達声がでかいわよ! 気づかれちゃうでしょうが!!)
(教官が要してくれたせっかくのチャンスを無駄にはできん、息を殺せ身動きをするな!)
(わ、わかっている!)
箒も鈴とラウラの言葉に自分達の置かれている状況を再認識し気を引き締め息を潜める。すると早速千冬が本題を切り出す。
『ところで、お前達は学園の生活にはもう慣れたか?』
『はい~、最初はどうなるか心配でしたけど今はちゃんと男子で相部屋ですからだいぶ楽になりました~』
(あぁ……やっぱり気を遣ってくれてたんだね、響ごめんねぇ)
早速聞こえてきたのは響の正直すぎる言葉だった、シャルロットはうっすらと涙をにじませ小さく手を合わせる。
その一方で箒のテンションを跳ね上げる一夏の言葉が聞こえてきた。
『俺もだ、別に箒と一緒なのが嫌ってわけじゃねえけどやっぱり女の子と一緒だとおちつかないからな』
(おお! 一夏のやつめ普段は気のない振りをしておいて内心では私を意識していたか! この勝負悪いがもらったぞ!!)
(なにいってんのよ! まだ勝負は分からないわよ!!)
(そうですわ!)
(これからだぞ!!)
一夏の言葉に浮き立つ箒に抗議する鈴達。その言葉を確かにするかのように一夏が言葉を続ける。
『あ、当たり前だろ! 普通に考えても箒じゃなくても緊張するっての!』
(一夏貴様ああぁぁぁ!!)
天国から地獄へ落とされたような心境に箒は思わず襖を開けようとしたが他の四人が咄嗟に襖を開けないよう固定する。
『ん?』
『何か音がしたような~?』
『気のせいだ、話を続けるぞ』
襖の裏の裏にいるシャルロット達から気を逸らす千冬。
シャルロットも気づかれないようにと何とか箒を宥める。
(箒、落ち着いて!)
(ふふ、ほら見なさいよ。あんたじゃなくても一夏は緊張するの、あんただけが特別じゃないっての)
(まだわたくしにもチャンスはありますわ!!)
(私には分かっていたぞ! そして勝者はこの私だ!!)
鈴達もまだチャンスがあると浮き足立つがそこにトドメとも言える千冬と一夏の会話が彼女達の耳にも届く。
『箒じゃなくてもと言ったがそれはオルコット達でも同じという事か?』
『ああ、セシリアは時間に厳しそうだし鈴は話に夢中になって寝させてくれなさそうだしラウラは勝手に人のベッドに入ってきそうで怖いし。唯一安心なのはシャルロットくらいだろ、あいつはちゃんとしてるからな』
(この馬鹿一夏あぁぁ!!)
(紳士としての振る舞いがなっていませんわ!!)
(嫁と閨を共にするのがそんなに悪い事か!!)
今度はシャルロットと箒が襖を押さえつつ鈴達を落ち着かせる。それでも連続的に襖を揺らしてしまう。
『まただ』
『風じゃない? もしかして天気悪くなってるのかも、海辺の旅館だし~』
『そうだな』
『あー、ごほんごほんっ! 皇の言う通り風だろうがもう少し大人しくしていて欲しい物だな』
(((((すみませーん!)))))
いくら千冬でもこれ以上は誤魔化しきれない。
その事に気づいた五人は今までの血気盛んな行動を控え三人の会話に集中するも内容としては実りのない物になってしまった。
……が、
『ほ、本当にいないのか? お前も少し前まではデュノアと同室だっただろう』
『あ~、シャルと一緒だったときは本当に緊張しました~。あんな可愛い子と同じ部屋で暮らせたなんて貴重な体験ですよね~、ドキドキしました~』
『何だ、ちゃんと異性として意識してるじゃないか』
(いつのまにか響の話になってる、しかも僕と相部屋だったの嫌がってなかったんだね!)
(……良かったな、シャルロット)
(あたし達は凄惨たる結果だったけど……)
(皇さんはも男の子ですわね!)
(く、何て羨ま――何でもない)
箒達は広緑にぎゅうぎゅう詰めになりながらもシャルロットに羨望の眼差しを向ける。
想っている相手から女だと意識されているというのはそれだけで乙女心に響くものらしい。
そうこしている内に話は更に進む。
『それはそうですけど……う~ん、誰かを好きになった事がないから良くわからないんですよね~』
『どういう事だよ、響?』
響が誰も好きになった事がないという爆弾発言に一夏は眼を丸くする中、それを隠れて聞いていたシャルロット達も息を呑む。
(響、女の子を好きになった事がないって……どういう事かな?)
(わからない、だがこれは今皇には意中の相手が居ないという事でもある)
(願ってもないチャンスじゃない?)
(そのようですわね……ですが)
(おい、皇がまだ喋っているぞ)
ラウラの一言にシャルロット達は響の話を聞き逃さないよう慌てて襖に耳を当てる。
『ほら、おれって今日女子のみんなに弄ばれたでしょ~』
『その言い方はどうかと思うぞ』
『おれとしてはそうなの! で、その時もシャルや篠ノ之さん達に抱きつかれてドキドキした。でもこれって好きだからドキドキしたとは違うでしょ~』
(確かに、そうだよね)
響の言っている事は尤もだとシャルロットは小さく頷く、学園のISスーツもなかなか露出が多く響はあまり自分達を見て話さない。
そして更に露出が増える水着なら尚更だ、現に抱きぐるみとなっていた響は眼前に迫る自分達を見ないように懸命にぷるぷると震えながら目を瞑っていた。
……それがまた、可愛かったとは言えない。
『――喋るな、皇続けろ』
『はい~。えっと、例え話にシャルを出すのは悪いかもですけどシャルを基準に話させてもらいますね~』
(えっ? えっ!? 僕うぅぅ!!)
いくら例え話とは言え響が自分を選んでくれた事にシャルロットは声を上げそうになったが何とか歓喜の声を飲み込む。
『構わん、むしろ好都――うぅん!』
千冬も漏れそうになった本音を咳払いで隠した事が分かる。
『シャルはすっごく可愛いです、だからシャルと居れば嬉しいし手とか握ったり腕を組んできたしてドキドキしました』
その言葉にシャルロットの頬が朱く染まり、口元が綻ぶ。
響の相手を褒める時の言葉に嘘はない、時折猟奇的と思えるほどストレートなほどだ。
(でも、織斑先生とか一夏が居るのにそんなに可愛いって言われると逆に恥ずかしくなっちゃうよぉ!)
シャルロットは赤くなった顔を隠すように両手で顔を覆う。
箒達もシャルロットの喜ぶ姿をみてまるで自分の事のように握り拳を作ってみせる。
しかし、ここで響の声に戸惑いが混じった。
『そんな相手に触られたりすれば緊張もするし嬉しいとも思います……だけどそれだと『可愛いシャル』が好きなのか、この世界でたった一人しかいない『シャルロット』って女の子が好きなのか……どっちなのかわかんなくて~』
(………………)
(確かに、皇からしてみればそうなのかもしれないな)
(あいつって見た目子供だけど心も純粋だからねー)
(でも、ここまでちゃんと考えてくださっているなんて紳士ですわ)
(まあ、考え方が堅い……と言えなくもないが間違いではないしな)
響の真剣みが感じられる言葉に箒達の意見が分かれたがあながち間違っていない。
何故なら今の響はシャルロットを恋人として『好き』か『嫌い』かを答えられていないからだ、十代の乙女に限らず少年にしても異性を好きになるというのは死活問題と言っていい。
それこそ優柔不断と言われても仕方がない。
だが、シャルロットをちゃんと異性として想って居るのかどうかという問題に対して面と向かって一生懸命に考えている事だけは確かだった。
『まあ、以上の点を踏まえておれがシャルをそう言った眼で見てるのかどうかおれにもわからないです~。それにもし仮におれがシャルの事を好きになってシャルがおれの事が好きだったとして付き合う事にでもなったらその……結婚とか、ちゃんと働けるようにならないと……子供とかも……』
(((((結婚!? 子供!!)))))
いきなりの方向転換にシャルロット達はしんみりとした雰囲気を一転させかぶりつくように襖に耳を押しつける。
(何故今の流れでこんな話になった?)
(っていうか、付き合う付き合わないから飛躍しすぎじゃない!)
(ですが必然的に避けては通れない話ですわ!!)
(となればここで勝負が決するかもしれんぞ! シャルロット、皇の言葉を聞き逃すな!)
(う、うん! わ、わかってるよぉ!!)
シャルロット達は次の言葉を待つ。
そして響の口から語られた彼の心の内に言葉を失う。
『――シャルはありのままの自分に戻れたばかりです、今のおれじゃ彼女の辛さを全部分かってあげる事はできないですけど何かあったら助けるって約束しました……』
(これは?)
(シャルロットが女ってばらしたときの事話してるんじゃないの?)
(う、うん。そうだけどどうして今こんな話を――)
『だから今は好きとか嫌いとかっていうよりもシャルを助けたい、助けてあげたいって気持ちの方が大きいです』
響は自分が女である事を開かした日の事を思い出しその時どう思ったのか、そして今どう考えているのかを声と言葉に変えていく。
シャルロットは浮き足立っていた心が落ち着きを取り戻し温かい何かに包まれていく感覚に包み込まれる。
『シャルは優しいから辛くても悲しくても無意識のうちに我慢しちゃう子ですから、危ない目に遭ってもきっと自分だけで何とかしようって頑張って頑張って頑張りすぎちゃうと思うから……』
この前の臨海学校の買い物で些細な誤解が遭ったとは言え起きた問題、その事を面と向かって自分に何か言う事はなかった。しかし、自分が響に何の相談もすることなく解決しようとした事を気に病んでいた事が分かった。
シャルロットが響を危険から遠ざけようとしたの誰がどう考えても正しい判断だった、それでも響はシャルロット一人に問題を抱えさせた事を悔いている。
『シャルが危ない目に遭ったら、おれが変わりに闘います、相手がどれだけ多くてもどんなに強くても絶対に逃げません。シャルを、シャルロットを護るために』
(っ!)
そして何よりシャルロットを一人の女の子として護りたいという想いを千冬達に告げる。
その言葉にシャルロットは眼を見開き両手で口元を覆う。
(響は、僕の事……そんなに真剣に考えてくれてたんだね)
女である事を開かしたときも、大浴場で本当の自分を取り戻したときも、自分の中ではある程度問題は解決していた……それでもデュノア社から、父から何かしろの手段を持って秘密裏に連れ戻されるのではないかと考えなかった日はない。
それこそ眠れない日もあった。
そしてそれは響も同じだったのだと初めて知った。
自分はいつ来るかも分からない別れと終わりに怯えていた、なのに響は相手は世界に名を知らしめる有名企業であるデュノア社、その他にも国際IS機関が敵になるかもしれないというのに闘うと、逃げないと言ってくれた。
(……ひび、き……響……っ……)
(……シャルロット、もう少しだけ我慢できるか?)
(ぅん、……ごめ……んね、箒)
箒は襖から耳を離し涙を流すシャルロットを優しく抱きしめる。
鈴達も響の決意とそんな彼の優しさに涙するシャルロットの姿に眼を潤ませる。
『助けるって約束しました、だから……あっ』
自分の見えないところでシャルロットが泣いているなど露知らず響は何かに気づいたのか間の抜けた声を上げる。
『あ、あはは~! 何言ってるんでしょうねおれは~! 専用機持ちの中で一番弱いのにシャルを助けるって、むしろ助けられてばっかりなのに~!』
(そんな事ない、そんな事ない、よ! 助けられてるのは僕の方なのに、響は弱くなんかないのに……)
隠れていなかったら今すぐにでも彼の胸に飛び込みたい、そんな衝動を必死で押さえるシャルロットだったがそれよりも早く響がわざとらしさしかない声を上げる。
『あー! もう消灯時間になりますね~!? 道理で眠いとおもった~、おれもう寝ますね! ジュースありがとうございました~!!』
それを最後に響と一夏に知られることなく二人の少年の心内を知る事ができたシャルロット達だった。
響が部屋を出て行ってから数分、呆気にとられていた一夏は千冬に話しかける。
「千冬姉……響の奴ってもしかして」
「もしかしなくてもそうだろうな、ただ『自覚』していないだけの話だ」
響はシャルロットを護りたいと言った、それは常日頃から仲間を家族を護りたいと言っていた響が初めて特定の人物の名前を口にしたからだ。
本人は約束したからと言っていたがあそこまでの決意を表す姿と言葉はそれだけでは出せない事を千冬だけではなく一夏も知っていたからだ。
「まあ、皇は仮の話だと言っていたが結婚の事まで考えるような事はお前達の年ではそうないだろう。本気で惚れていない限りは」
「あ、ああ。聞いてびっくりしたぜ、結婚とか子供とか言い出すから……それに、あんな真剣な響はそう見れるもんじゃないしな」
「お前もうかうかしていられないぞ、ああいう奴程自分の気持ちに気づいた途端に力を付ける、自分のためにではなく想う相手の為に」
「分かってる、俺だって男だ。響に負けないよう強くなってみせるさ……恋愛の方はいまいち無理そうだけど」
「我が弟ながら情けない」
千冬は苦笑いを浮かべる一夏の頭を軽くこづくだけでそれ以上は何も言わなかった。
「さて、今日はもうお開きだな。一夏、冷蔵庫の中に何本か飲み物を補充しておけ、今の時間だと連絡するより直接行って貰ってきた方がいいだろう。消灯時間までまだ時間がある、急がなくても良いぞ」
「おう、わかった」
一夏は念のためなのか時計とブレスレットの時間を合わせてから旅館の受付へと向かった、千冬は一夏の気配が遠ざかるのを確認してから閉じた襖の後ろに隠れていたシャルロット達に声をかける。
「……もう出てきて良いぞ、お前達」
千冬の声にシャルロット達は返事を返す事はなかった。
……いや、できなかったといった方が正しかった。
「……ぅ、っ……ん…………」
シャルロットは溢れ出てくる涙を懸命に拭う。
浴衣の袖で涙を拭き取っても治まる気配はないがそれは哀しみではなく喜びから来る物だと分かっていた。箒達はそんな彼女の肩や背中に手を添えて襖の裏から姿をみせた。
「……デュノア、喜んでいる最中すまないがお前に言っておく事がある。別に無理に喋らなくて言い、只聞くだけ聞いていけ」
「……っ、は……い」
シャルロットは涙に濡れた顔を上げる。
「あいつはお前と同じでまだ子供だ、子供だがお前を護ろうとする姿は私が知る中で男共の中で一番の男だ。お前が危険にさらされればいの一番で駆けつけ自分が傷つく事もいとわないだろう」
「………………」
「だからこそ忘れるな、お前を護ろうとしているのは皇だけではない事を」
千冬はシャルロットの傍に立つ箒達と視線を交わす。
「篠ノ之達もお前を大切な仲間だと思っている、もちろんこの私も生徒であるお前や一夏達を命を掛けて護るつもりだ」
「あり……ありがとう、ございます!」
「礼はいらん、だがその代わりと入っては何だがデュノア。お前が皇を護ってやれ、あいつは無理はしなくても無茶はする。ボーデヴィッヒの時もそうだったが見ていて肝を冷やす場面が多々ある……篠ノ之達も一夏を護るついででも良い、何かあったときは助けてやってくれ」
「わかりました、任せておいてください」
「まっ、手の掛かる弟ができたと思えばなんと」
「このわたくしがサポートをするのですから何事もうまくいってくれなければ困りますわ」
「うむ、シャルロットの嫁は責任持って監視します」
「みんな……」
箒達はシャルロットの手を握りしめ女同士の友情を確かめ合う。
好きになった相手は違っても誰かを想い恋いこがれるという点に置いては何も変わらないのだから。
「よし、お前達の結束が一段と固まったところで各自に部屋に戻れ。一夏が帰ってきたら私も消灯時の見回りに出なければならんからな」
「「「「「はい、今日はありがとうございました!」」」」」
「うむ、ではな。明日の訓練に備え疲れを残さないように」
千冬はまだ泣きやまないシャルロットと箒達を見送り一夏の帰りを待つ。
そんな中、千冬は自分以外誰もいない部屋で小さく笑い声を洩らす。
「まったく、手間の掛かるガキ共だ……だがこの日常があいつ等を強く育てる事は間違いない」
空になった缶ビールをゴミ箱へと投げ入れ千冬は広緑の窓へ近づき美しい輝きを見せる星空を見上げる。
「……次の世代はちゃんと成長している、この世界もこうして生きてみればそう悪くないものだな」
誰に言ったわけでもなく千冬は独り言のように言葉を紡ぐ。
その姿はIS学園の教師でも操縦者でもないたった一人の女性としての姿。星空を見上げる彼女の横顔は思わず見とれてしまいそうになる小さな、それでいて幸せそうな笑みが浮かんでいた。
今回もやはり遅れてしまいましたw
何とか響君の恋模様を描けたとは思います、今回の話を読んでニヤッとしていただければ幸いです。
次回はついに束博士を出すことができます、彼女も響君に関わっている重要人物のお一人なのでいい人で行くか悪い人でいくか悩みどころですが彼女らしさをなくさないようかけたらいいなと思う今日この頃ですm(_ _)m
感想評価などいただけたら嬉しいです~