IS〈インフィニット・ストラトス〉 剥奪人形の選ぶ道   作:エヴァンジル

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第四話 二人の転入生は新たな火種

「おれに専用機ですか~?」

 波乱の代表戦から数日後。体調も回復した響は何事もなかったような日常が戻ってきた中で十蔵の元へ呼び出されていた。もちろん千冬と楯無も同席していた。

「ええ、そうですよ。君は訓練機とは言え正体不明のISを撃退した四人の内の一人ですからね、そろそろ専用機の準備をと考えているんですよ」

「あれは一夏達が頑張ってくれてたからだよ十蔵じい、それに基本的におれは逃げ回ってた様なものだしそれに無人機を壊したのだって偶然火花がオイルに飛び火してくれたからだし……」

 あくまで『葵』で射撃を行おうとしていた腕を切り上げた結果、爆発したに過ぎない。あの時の映像も残っているので見直せば誰でも自分が破壊したのではない事がわかる。

「学園長は君が代表候補生二人と世界最強の弟が手こずった所属不明機を破壊した……って事にしたいの」

「……?」

「君は学園長とは知り合いとはいえあくまで君のおじいさんの知り合い、それだと至上二人目の男性操縦者を保護するには少しばかり後ろ盾としては弱いの」

「しかし、皇が国家が選び出した代表候補生でも撃退できなかったISを退けたとなれば勝手が変わってくる」

 代表候補生の実力は各国家のIS企業に属する操縦者よりも優れている、軍による対人戦術に射撃訓練、戦術理論の研修を受けているため企業スパイなどの捕縛・撃退も特別任務として請け負う事がある。そんな代表候補生二人が手こずり最強の称号『ブリュンヒルデ』をもつ千冬の弟で世界の注目の的である一夏よりも上の実力を持つ……それだけ響には彼自身が考えている以上に箔がつくのだ。

「その事実があればお前を狙う者達も迂闊に手出しできなくなる、何せお前は私の弟よりも強くたった数回の操縦訓練で代表候補生に匹敵するだけの実力を身につけるほどの天才。そこに専用機が加われば――」

「君の安全はより磐石なものになるってことだよ、響君」

 楯無は自前の扇子をバッと広げながら年上とは思えなイタズラ心たっぷりの笑みを浮かべる、そして手に持っている扇子には『事実無根』と字が書かれていた。

(あの扇子、どうやって字を変えてるんだろ。おれも欲しいな~)

 響は楯無の扇子に眼を奪われたがすぐに頭を振り話に戻る。

「おれの安全より家族の安全が盤石になれば良いんだけど~?」

 この学園にいる時点で自分の安全は概ね確保されていると言っていい、ならば自分の安全よりも家族を優先して護衛してもらいたとうのが本音だった。

「だから響君には専用機が必要なんですよ? 君が専用機持ちになれば確実に代表候補生クラスかそれ以上の力を身につけた事になりますからそうなると狙いは自然と君の家族に向かうはずです」

「駄目じゃないか!!」

「落ち着いて、落ち着いて」

 楯無は頭を抱えて叫び声を上げた響を窘める。

「狙いが君からそれる事で君に回していた分の戦力もご家族の護衛戦力として回せます、その中には暗部である更識家の優秀な人材もいますから今以上の安全性を約束できると思います」

「そ、そうなんですか~?」

 十蔵の『暗部』という言葉に寒気を感じた響だったが両親と妹の安全がより保証されるのなら自分がどうこう言う事はできない。。

「お前が専用機を持てばお前自身も身を守る術が増える事でもある、どちらに護衛戦力をさくにしてもさっき言ったようにお前が専用機を持つ事で私達も動きやすくなるという事だ。わかったか?」

「はい、そう言う事なら遠慮無く~」

「話がまとまって何よりですよ、それで専用機の方向性はどうしたいですか?」

「タイプってこと?」

「そうだ、打鉄は訓練機だ。元々は支援機として製造されて物だが近接武器と射撃武器の両方を積んでいた、どちらが動きやすかったかで決めても良い。だが、お前は私や一夏の様に近接タイプの方が向いていると思うが……」

 無人機との戦闘を思い出してみても射撃武器は使わなかった響、理由としては単純に射撃訓練を一度もしていない。しかし、たった数回でISを思うように動かせていたもの事実。一歩間違えれば死んでいたかもしれないような戦場に迷うことなく飛び込む思い切りの良さと不完全とは言え瞬時加速をやってのけた確かな技量……どちらも近接戦闘には必須の技能である。

「もし気が進まないなら試しに射撃訓練してみるのも一つの手よ? 響君は器用そうだしそれに冷静な判断力もある、射撃タイプの方が向いてるかもしれないし」

 射撃による後方支援からの的確な指示ができればそれだけで充分な戦力である、たった数秒で戦況が変わってしまう死地で置かれた現状で何ができるのかを考える事のできる冷静さと手持ちの武装と実戦経験の有無を考えての選択……何より攻めるべき時と退くべき時をわかっている。

「う~ん……おれも織斑先生の言う通り近接の方が向いてるかもしれないって思いますけど射撃もしてみてから考えてみても良いですか~? 今の俺に何ができて何ができないのか、ハッキリさせないと後々大変そうですし」

「かまわん、実際に専用機に手を付けるのは少し先だ。更識の言ったように射撃特性があるのであればそちらを選ぶのも間違いではない、戦い方は人ぞれぞれだ」

「わかりました、考えておきます」

「では、専用機についてはこちらで話を進めておきますから響君は暇なときにでもISで射撃訓練をしておいてください。その結果次第で専用機の方向性を決めますので」

「ありがとう、十蔵じいさま~」

「いえいえい、コレもお仕事であり私の個人の私的理理由も入っていますから」

 今は他界した友人の孫でもある響は自分にとっても孫のようなもの、そんな響が困っているなら手助けするのは当然の事だ。もちろん、学園長という立場もあるので何でもかんでもというわけには行かないが公平に見て必要な事であれば援助は惜しまない。

「それじゃ、響君は教室に戻っても構わないですよ。朝早くからすみませんでしたね」

「ううん、他の誰でもない自分の事だから。こっちが感謝しなきゃいけないんだから十蔵じいさまももう少し厳しくしても良いと思うよ~」

「そうですか? まあ、本来ならそうあのでしょうが君を見てるとついつい手助けしたくなってしまうのです……年寄りのお節介と思って受け取っておいてください」

 響は手助けしてくれる十蔵の負担を考えての発言をしたがあまり対応が変わりそうにないので苦笑混じりにお礼を言おうとした時、学園長室のドアがノックされる。

 ドアの向こうから学園の教師の一人である職員の声が聞こえてきた。

「失礼します、今フランス、ドイツ両国の転入生の二人を連れてきました」

「おや? もうそんな時間ですか、入ってきてもらって結構ですよ」

「はい、では中にどうぞ。お話は学園長直々に伝えるとの事でしたので」

「はい、わかりました」

「……了解した」

 ドアの向こうから教師の指示に従い二人の転入生が部屋の中に入ってきた。

(転入生か~……あれ?)

 響は学園長室に入ってきた転入生達を見て違和感を感じた。

 一人は手入れの行き届いたブロンドの髪を束ね自分と同じ男子の制服を身に纏ったフランス人。

(何で女の子が男子の制服着てるんだろう~?)

 もう一人は自分の白い髪に近い輝くような銀髪で、腰近くまで長く下ろしているロングストレートヘアー。綺麗だが整えている感じはなく、ただ伸ばしっ放しと言う印象。そして一番気になるのが左目を覆っている眼帯。それは医療用の白い眼帯ではなく、古い戦争映画に出てくる軍人がしているような黒眼帯。

(こっちの子は……もしかして軍属?)

 どちらもつっこみどころが満載な転入生二人に首を傾げる響。

 そんな響に気づいたのかブロンドの髪を靡かせる少女が響に歩み寄り可愛らしい笑顔を浮かべて近寄ってきた。

「君が皇響君だね、初めまして。僕はフランス代表候補生のシャルル・デュノア、よろしくね」

「僕? ……ってことは男……おれと同じ?」

「そうだよ、それがどうかしたの?」

「ううん、何でもないよ~!!」

(あぶなかったあああああああああああ!)

 響はシャルルの事を女の子と勘違いしていたため男だとわかった時、少しだけ惚けてしまった。

(これが中性的な顔立ちってやつなのかな? 女の子にしか見えないけど言ったら失礼だった……よかった~、女の子だよねって言わなくて)

 自分もそうだがこういった特徴がある場合、多くは外見を気にしている人達が多い。とくにシャルルのように中性的な顔立ちであまり背が高くない自分よりも低く華奢な体つき、下手をしなくても女の子に見えてしまうのだがその事を気にしていたらせっかく二人目の男友達を失ってしまうかもしれない。

 胸の内を何とか隠し通せた事に安堵のため息をもらす響、シャルルに内心を悟られてしまう前に話を続けた。

「よろしく、デュノアさん。おれは皇響、響でいいよ~」

「うん、それじゃ僕のことはシャルルでいいから」

「わかった……それでそっちの君はなんて名前なの~?」

 響はシャルルでしてしまった見た目による先入観に捕らわれないようにもう一人の少女ににこやかに話しかける。

「……馴れ馴れしいやつだな、貴様は」

「えっ?」

「馴れ馴れしいと言ったのだ、何だそのしまりのない顔は? 仮にも男なのだろう、もう少しその緩んだ顔を引き締めたらどうだ!」

「……ご、ごめんなさぃ」

「フンッ」

 響は眼帯の少女の有無も言わせないような態度に萎縮してしまい特に何かしたわけでもないのに謝ってしまった、例えるならその姿は人懐っこい小型動物がじゃれつこうとして拒否されブルブルと震えている様に思えた。

 そんな響を気の毒に思ったのか千冬はため息をこぼし眼帯の少女の頭を軽くこづいた。

「ボーデヴィッヒ、自己紹介くらいしろ。少なくとも教師である私と学園長がいる前で見せる態度ではないぞ」

「申し訳ありませんでした、教官!」

「私はもう教官ではない、……もういい。お前は私が教室に案内するまで廊下で待機していろ」

「はい」

 千冬にボーデヴィッヒと呼ばれた少女は響に見せた態度とは正反対な従順な姿を見せた、軍人のように敬礼をしてから学園長室を出ていく後ろ姿を見送った響はどこか疲れきった表情を浮かべていた。

「大丈夫ですか、響君?」

「……世の中には怖い人がいるんだね~、同じ年だと思うけど」

「あいつの名はラウラ・ボーデヴィッヒ、私がドイツにいた頃に軍のIS訓練に携わっていた時の教え子だ。昔から人を寄せ付けない態度を取るやつでな……あまり気にするな」

「はあ……」

 響は困ったような表情を浮かべながら頬を掻く。

「でも、織斑先生って軍隊にもいたことがあったんですね。俺としてはそっちの方が驚きました~」

「……何、ドイツに借りを作ってしまったときの話だ」

 千冬は鋭い眼光を更に強めた、今の話は彼女にとってあまり知られたい事ではなかったのだろう。響は見た事のない千冬の表情に戸惑いながらも触れてはいけない事だと理解し話を逸らした。

「そ、それよりもう戻るよ~。そろそろ朝のHRが始まっちゃうし」

「そうでしたね、織斑先生も構いませんか?」

「はい、デュノア達を山田先生と一緒に連れて行かなければなりませんので私はもう少し此処で待ちます。皇、お前はもう行って良い。あとボーデヴィッヒに中にはいるように伝えてくれ」

「……はい」

「響、その……元気出してね」

「ありがと~、シャルル」

 とぼとぼと背中を丸めて出入り口のドアに向かう自分を励ましてくれたシャルルに零を良いながら響は廊下に出た、そしてすぐ近くに立っていたラウラに中にはいるよう千冬が行っていた事を手早く伝え逃げるようにその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 異様な威圧感から解放された響は教室に到着した途端自分の席に突っ伏した。

 普段から睡魔に負けて机に倒れ込むことがあるためその様子に驚く女子はいなかったが何かがいつもと違う事を察した一夏が響に話しかける。

「どうしたんだ、朝からそんなに疲れて……訓練でもしてきたのか?」

「違うよ~、ちょっと……怖い人に会って」

「怖い人……この学園に千冬姉以外にそんな人いたか?」

「……うん、まあ」

 響はラウラの直球過ぎる罵声を思い出し身震いする、十五年間生きてきたがあれほど嫌悪されたのは初めての事だった。一夏には怖いと言ったが恐怖心よりも拒絶された態度を取られた事の方がショックだった。

(何か気に障るような事でもしたのかな~、でも初対面だし……転入生ってことだから慣れない環境に緊張してたとか?)

 緊張と様子は見られなかったがもしかしたら表情に出ていないだけで気疲れしていたのかもしれないと響は結論することにした。

「それより嬉しいお知らせだよ、一夏~」

「ん? 何か良い事でもあったのか」

「うん! なんと今日はおれ達以外のだ――」

「はーい、皆さん席についてください。HRを始めますよー」

 響は三人目の男子生徒であるシャルルの事を一夏に伝えようとしたがそれよりも早く真耶が教室に姿を見せる。

 その後ろから千冬も入ってくる。

「今日は転入生を紹介します、それではどうぞ入ってきてください」

 真耶の声を合図に教室の扉が開かれ転校生が二人教室内に足を踏み入れる。

「えええええええええええええええええええ!!」

(そりゃ、驚くよね~)

 クラス中の女子が驚いた、一夏も驚きを隠せていないようで酸欠した金魚のように口を動かす顔を響に見せる。何故ならその理由は――

「はじめまして。シャルル・デュノアです」

 転校生がの一人が男だったからだ。

 

 

 

「えっと、シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れ事が多いかもしれませんがどうかよろしくお願いします」

「お、男……」

 誰かが呟くように言う。

「はい、僕と同じ境遇の方が二人居ると聞いて本国より転入を……」

 その丁寧な口調にクラスが静まりかえる。だが静まりかえった理由はそれだけではなく容姿を説明すると、ブロンズの髪にさらに見た目は女の子でも通りそうな美形。

(……改めてみても、どうしてこんなに違うのかな)

 響は小さくため息をもらした。

 隣にいる一夏は身長も高く体つきもしっかりしている、顔つきも同じ男から見てもかなり整っている方だと言える容姿なのだ。

 そんな二人に比べ響はその子供のような見た目と仕草から中学生扱いだったり血が繋がってもいないのに『弟』的扱いを受けている。

(おれより小さいけど子供っぽくはないよな~)

 三人揃っても自分が一番年下にしか見えない事実に肩を落とす響だった。しかし、その直後に殺気を感じとった響。隣にいる一夏も気づいたらしく二人は一斉に耳を塞ぐ。

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 止めどなく沸き上がる歓声にシャルルが顔を隠らせる、真耶は耳を塞いで泣きそうになってる。そして同じく千冬も耳を塞ぎ疲れ切った表情を浮かべていた。

「今度はブロンド!」

「しかも今回は守ってあげたい系! 皇君の癒し動物系と織斑君の天然系も良いけどこれはキタ!!」

「こういうのもいい!! しかも三人目!! お母さん私をここに入れてありがとう!!」

「今年一杯書くわよ! 皇×デュも織×デュも皇×織も織×皇もデュ×皇もデュ×織も書くわ!」

(あれえぇぇ!? 人から癒し系動物に格下げになってるー! っていうか最後の人何言ってるのかなぁー!!)

「ええい静かにしろ! 次、ボーデヴィッヒ、自己紹介しろ」

「はっ、教官」

「何度も言わせるな私は教官ではない。ここでは先生だ」

「わかりました。……ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 もう一人の転校生は男子ではなく女子。その出で立ちはあまり男子と余り変わらないが髪が長いぶんシャルルよりもはっきりと異性だという事がわかる。だが、それよりも気になるのは赤色の右眼、その色とは対照に冷めている雰囲気を漂わせているのは教室でも変わらなかった。

「……………………」

「…………以上ですか?」

「以上だ」

 空気にいたたまれなくなった真耶ができる限りの笑顔でラウラに話しかけたが、帰ってきたのは無慈悲な即答だった。

(……シャルルはともかく、ボーデヴィッヒさんは気むずかしそうだな)

 響はここに来て一夏関係で困る事はなさそうだと思ったがすぐにその思いは覆される事になった。

「! 貴様が――」

(ん――!?)

 ラウラの声から怒気を感じた響、そのラウラが一夏の前に立ち左手を振り上げる姿に咄嗟に手を挙げる。

 

 ガシッ!

 

「初対面の相手にいきなり何する気だ?」

「離せ、貴様に用はない!」

「君になくてもおれにはあるんだよ、……今、一夏をひっぱたく気だった~?」

 響の言葉に一夏も状況を飲み込んだらしく椅子から立ち上がり身構える。

「おれの見た限りだと一夏は何もしてない、何で叩こうと――」

「小動物に用は無いと言っている!!」

「しょっ!?」

 ラウラの罵声に思わず崩れ落ちる響、もやは人から格下げされた事実に挫けそうになっていたところに追い打ちをかけられたのだ。

「チッ……」

 ラウラは崩れ落ちた響に冷たい眼を向けたあと自分の席に座った。

 一夏は落ち込んでいる響に励ましの言葉を掛ける。

「き……気にすんなって、お前に動物っぽいところなんてないんだからさ」

 正直、そのフォローの仕方はどうなのかという視線がクラスの女子達が向けるがそんな事に気づく一夏ではない。

 当の本人である響も「そんなフォローはいらない」と言う余裕もないらしく、涙でべしょべしょになった顔を上げる。

「ありがど~、いぢが~…………」

「「「「「はぅっ!!」」」」」

 恥ずかしげもなく泣いている響の表情にクラスの大半が胸を打たれた、それは転校してきたシャルルも同じようで「か、可愛い……」と声を溢していた。

「あー……、ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グランドに集合、二組との合同でISの模擬戦を行う、では解散!」

 千冬は堅さと癒しが入り交じる微妙な空気を払拭する為声を上げ生徒達に移動を促す。響も一夏の肩を借りながらゆっくりと立ち上がった。未だに涙目ではあるが……。

「おい、織斑に皇、デュノアの面倒を見てやれ」

「わかったよ」

「わがりまじだ~」

 響達は教室を出て行く千冬達を見送ると同時に自己紹介もなしにシャルルの手を一夏と一緒に掴む。

「ごめんな、デュノア」

「え!?」

「教室はすぐに女子が着替えを始めるんだ~、自己紹介は改めてからってことで」

「あ、う、うん」

「よし、行くか響!」

「お~!」

「え、うぇ!?」

 シャルルの手を握り一気に走り出す二人。何故ならすでに教室の外に恐ろしい敵が集まってきていたからだ。

「転校生発見!」

「皇君達と手つないでる!!」

『何だって!?』

「者ども、であえ、であえ!!」

(……なんか、こういうのも慣れてきたな~)

 この異常な状況になれるのもどうかと思うが、後ろから転入生を見ようと追いかけてくる女子生徒多数。入学当初は自分達もやられた事を思い出す。

「織斑君の黒髪に皇君の白髪も良いけど、金髪っていうもの!」

「しかも瞳はエメラルド!」

「三人の絡みをみれるなんて……ああ!」

 相変わらずの反応に背筋に寒気が走る響、だが、シャルルはこの状況を飲み込めていないようだった。

「な、なに? 何でみんな騒いでるの?」

「そんなの決まってるじゃないか~」

「男でISを動かせるのが俺と響とデュノアの三人しかいないからだと思うけどな?」

「あっ! ああ、うん。そうだね」

「とりあえず、逃げ切らなきゃならないんだけど」

 響は前に向き直り表情を青ざめさせた。

 前方にはアリーナへの道をふさぐ女子集団がいた、このまま無理に突っ切るのも難しい人数だった。

「響……アレ、やるか?」

「それしか、無いかな~」

「アレって?」

 アレがなんなのかわかっている響と一夏に対してシャルルは何もわからず困惑の表情を浮かべる。

「今から女子達の上を飛び越えるよ! ごめんね、シャルル!」

「ふえ!?」

 響はシャルルの返事を待たずに抱きかかえる、その姿はいわゆる『お姫様抱っこ』と言うやつだった。男が男にお姫様抱っことか文句を言いたいが今はそんな事を言っている場合ではなかった。

「一夏、頼んだ~!」

「任せろ!!」

 一夏は響達の姿を隠すように前方に躍り出る。

「よっと!!」

 響は前に出た一夏の背を蹴り天井ぎりぎりまで飛び上がり、前方にいた女子軍団をかわす。

「「「「「なにいぃぃ! 織斑君を踏み台にしただとぉ!!」」」」」

 どこかで聞いた事があるセリフを叫ぶ女子一同を尻目に響は見事に着地をこなす、そしてそんな響達に気を取られている間に一夏がその隙を突いて集団の中を突っ切り響と合流を果たす。

「それじゃ!!」

「逃げるよ~!!」

 華麗な連係プレイを見せた響と一夏はそのまま走り去るのだった。

 

 

 

 

 響達三人は何とか逃げ切り更衣室に到着した。

「ここまで。くれば……だいじょーぶ……」

「助かったよ、二人とも」

「お、おう。えっと……?」

 一夏は息を切らしながらもシャルルに名前を聞き返す。響はすでに学園長室で自己紹介を済ませているので息を整える事に専念する。

「シャルルでいいよ」

「おう、俺のことは一夏って呼んでくれ」

「わかった。よろしくね一夏」

 簡単な自己紹介になってしまったが無事に互いの呼び名を決める事ができ一安心する響達だったがそうゆっくりとしていられなかった。

「二人とも! 授業もうそろそろ始まりそ~!」

「げっ!?」

 そう言って慌てて一夏が服を脱ぎ始める。

「わあっ!」

「「?」」

 響も上着を脱ごうとシャツに手をかけるのだがその途中、シャルルの慌てた声が聞こえた。

「どうしたの、シャルル? 忘れ物でもしたの~?」

「だったら急がなきゃな、千ふ……担任の先生は時間に厳しいからな」

「あ、う、うん。着替えるよ、着替えるけど……あっち向いててね?」

「安心して良いよ~、おれはそっちの趣味はないから」

「何で『達』じゃないいんだよ、響!!」

「冗談冗談~、それより本当に着替えないとまず――」

「な、何かな!?」

 響と一夏が一瞬だけ視線を外した瞬間にシャルルはISスーツに着替え終わっていた。

「着替えるの早っ!」

「……? ……??」

 あまりの着替え速度に一夏は思わず声を張り上げるが響はその反対に神妙な顔つきでシャルルを見つめていた。

「ど、どうしたの? 響、早く着替えないと遅れちゃうよ」

「あ、そうだね~。俺も着替えなきゃ」

 響は小首を傾げながらも着替えを再開した。

 響はシャツのボタンを外し終わったばかりで、一夏は下をはき終えていたが上がまだだった。

「それにしてもシャルルは着替えるの早いね~」

「わっ!」

 響は苦笑いを浮かべシャツを脱ぐとまたシャルルが声をあげる。

「今度はどうしたの、シャルル?」

「響……その、……身体……」

 シャルルは手で口元を隠し悲痛な表情を浮かべる、シャルルの眼に映る響の肉体は普段から鍛えている為意外と引き締まった筋肉質な体つきだった。

 しかし、シャルルが指摘したのは均整の取れた肉体美ではなく身体に刻まれた無数の傷痕だった。

「ああ、これ~? 小さい頃に事故に巻き込まれて付いた傷、らしいよ?」

「らしいって何だよ?」

「その時の事故って結構酷かったみたいではっきり覚えてないんだよね~。だからトラウマとかにもならずにすんでるから気にしなくても良いよ~」

「そ、それなら良かった……あれ? よかったの……かな?」

「まあ、気になるとは思うけどね~」

「響……それじゃ逆に気にするって」

「そうか……ってまずい! もう時間がない!!」

「俺はシャルルと先に行くからな」

 着替え終わっていた一夏はシャルルの手を握り更衣室の扉を開け放つ。

「では、さらばだ!」

「えっ? 置いていっていいの?」

「ちょっと待って!! おいてかないでぇ~!!」

 その後一人だけ遅れた響は千冬の出席簿アタックをたらふく食らうのだった。

 

 

 ――実習――

 

 今現在、響達の上空ではセシリア・鈴コンビ対真耶の戦闘演習が行われていた。

 数的には二対一ではあったが――

「「きゃああああ!?」」

 結果はセシリア・鈴コンビの負けだった。真耶も代表候補生だったらしく教員としても訓練を続けていたらしくその実力はセシリア達を圧倒するほどの実力、一部始終を見ていた響でもコンビプレーができていない二人では負ける事はわかっていた。

「これが我がIS学園の教員の実力だ。わかったか? 以後は敬意を持って接するように」

 その言葉にクラス全員が頷く、人は見かけによらないという代表例が目の前にいるのではそうするしかなかった。

「さて、これから専用機組を中心に実習を行う。番号順に織村、皇、デュノア、オルコット、ボーデヴィッヒ、凰を中心に行え!」

 そしてクラスが7つに分かれる。

 響のグループは自分が持っているISと同じ打鉄を選んできていた。基本的に乗る事自体初めてな女子ばかりなので乗り方を簡単に教える、そして次に歩き方を指導し最後に停止の仕方と解除という手順。

 響は一夏に授業で習うISの基礎知識を教えて事もあってスムーズに授業内容を消化していくがその時女子達の黄色い声が聞こえた。

 そこを見ると一夏が箒をお姫様抱っこして立ったままで待機状態になっているISにのせていた。

(しゃがまずに降りたのか、最初は良くある事だけど……よかったね~、篠ノ之さん)

「「「「「…………」」」」」

 響は無言の圧力を感じたが授業の進行を優先知るためあえて無視する事にした。

「………………」

 その無言の圧力の中に鋭い刃を思わせる覇気が混じっていた。ラウラが鋭くにらみつけている事に気づく響。

(……ボーデヴィッヒさん、朝のこと根に持ってるのかな~……眼を合わせないようにしないと)

 響は敵意をむき出しにするラウラから視線を外し大きくため息を付き授業に集中する事にした。

 

 

 

「つーかーれーたー……」

 響は屋上に設置されている芝生に倒れ込んだ。

 IS操縦の説明を請け負った女子達とラウラの絶え間ない圧力に心身ともに疲れ切っていた。

「大丈夫、響?」

 疲れた様子を見せる響を気遣うシャルル、その優しさが心に染みる。

「だいじょーぶー……、それより……」

 響は疲労した身体に鞭を打ってゆっくりと起き上がる。

「うん、本当に僕達が同席して良かったのかな?」

 響の疲れが一層増す中シャルルが小声で話しかける、どうやら一夏の三角関係に気まずさを感じたらしい。

「大丈夫……とは言えないけど今から食堂に行ったら質問攻めを受けてお昼ごはん食べれないと思うな~」

 シャルルの事を考えれば今日くらいは女子達からのあの異様な質問攻めはさけてやりたい。その点を考えれば一夏がシャルルを誘ったのはベストな選択とも言える。

「ん、そうだね。やっぱり此処にいようかな」

 シャルルも恐怖心の方が打ちかったのか決心がついたようで、屋上でお昼を取る事にした。

 ちなみにそれぞれのメニューは一夏が箒、鈴、セシリアの作ったお弁当、響とシャルルは購買のパンなのだがシャルルは眼下に広がるパンの量に口元を抑える。

「これ全部――」

「食べるよ、けど……俺がご飯を食べようとするとみんな決まって聞いてくるよね、なんで~?」

「あたし達はもう聞かないわよ」

「そうですわ、もう知っていますし」

 シャルルの手元にあるパンは二個、そして紙パックの野菜ジュースが一本。

 響の前にあるのはパンの山、野菜ジュースは三ダース……圧倒的質量の差がそこにはあった。

「その身体のどこに入るのかな……」

「どこって……胃だよ~?」

「そういう意味じゃないぞ、響」

 ごく当たり前な回答なのだがそれだけでは説明がつかない、パーティーの時でもそうだったが明らかに身体の質量を超える量なのだ。

「まあ、いいや~。いただきまーす」

「それじゃ、僕も」

「俺も」

「わたくし達もいただくとしましょうか」

「そうね」

「そうだな」

 授業の事や最近の学園生活について話ながら響達が食事を楽しんでいると一夏がある事に気付いた。

「あれ? 箒、なんでそっちに唐揚げがないんだ?」

「! こ、これは、だな。ええと……」

(……なんだろ~?)

 何事かと思って響はパンを片手に2人のお弁当を覗いてみると中身は和風なメニューで、一夏の言う通り箒のお弁当には唐揚げが無い。この問いかけに箒は視線を泳がせ始めた。

(う~ん、反応からして早めに食べた感じじゃないし、自信作だから入れたのかもしれないな~)

「……うまく出来たのがそれだけなのだから仕方ないだろう……」

「え?」

 箒の気まずそうな呟きを聞き返す一夏。

「わ、私はダイエット中なのだ!だから、1品減らしたのだ。文句があるか?」

「文句は無いが、別に太ってないだろ?」

「あ~、男ってなんでダイエット=太っているの構図なのかしらね」

「全くですわ。まさかとは思いますけど、お2人もそういう考えで?」

 一見気遣いが感じられた一夏の発言が女性陣の気に障ったのか響とシャルルにも飛び火する。

「うんと、ダイエットは本来体調管理を刺す言葉だはずだから~……やせすぎてる人が太る為にご飯を食べるのもダイエットみたいだし、自分で納得する結果を求めれば良いんじゃない?」

「綺麗になるための努力だし、僕は良いと思うよ。まぁ、やり過ぎには気を付けてほしいな」

(……シャルルの答え方、なんか格好いい~)

 自分も一夏もシャルルのような発言ができれば反感を買う事がないのだがそういった気の利いた事は言えない二人だった。

「……一夏、何してるの~?」

「ん? いやな、ダイエットって言うけど必要ないように見え――」

 響の言った事を聞いていなかったのか論点が変わっていなかった。

「ど、どこを見ている!どこを!!」

「どこって……、体だろ」

「なに堂々と女子の胸を見てんのよ! ア・ン・タ・は!!」

「ぐあっ!?」

 鈴の叫び声と一夏の悲鳴が屋上に響く、容赦ない張り手が一夏の頭部に炸裂したらしい。

「一夏さんには紳士として不足しているモノがあまりに多いようですわね」

(それも含めて好きなんだろうに……篠ノ之さんもそうだけどこの二人も素直じゃないな~)

 響は眼を瞑りしみじみと野菜ジュースのストローを加える。

「響、どうしたの? なにか考え事?」

「ん~、一夏達を見てると平和だな~と思って」

「……なんとなく意味が分かったから聞かないでおくよ」 

 響はシャルルの言葉に安心感を覚える、一夏の鈍感っぷりに一人で悩まなくてもすむのだと思うとシャルルは心強い味方だった。

 一連の騒動も放っているうちに収拾がつき、響達は昼食を再開する事になった。

「おぉ! この唐揚げうまい!」

「そ、そうか? 本当にそう思うか?」

「あぁ。これって結構仕込みに時間かかってないか? ええと、混ぜてるのはショウガと醤油と…、んぐんぐ。なんだろうな。絶対食べた事のある味なんだけど」

「おろしニンニクだ。それとあらかじめコショウを少しだけ混ぜてある。隠し味には大根おろしが適量だな」

「へぇ! それはいいな。今度俺もやってみよう」

 一個数秒でパンを頬張っていく響の耳に楽しそうな一夏の声と嬉しそうな箒の声が届く。

(三人が持ってきた料理の中じゃ一番受けてる……よかったよかった~)

 立場としては平等に鈴もセシリアも援護するべきなのかもしれないが響としては学園で最初に仲良くなった箒を応援していた。もちろん理由はそれだけではないがそれを口にしてしまえば他の二人が激怒するのは目に見えていた。

(一夏は背が高くてイケメンだし頼りがいもあるにはある、篠ノ之さんはちょっと怖いけど美人さんだし……二人が並んでると絵になってるんだよね~)

 鈴とセシリアでは兄妹か雇われている執事に見えてしまい恋人とは違った印象を受けるのだ、そのなかで箒は幼なじみでありクラスも一緒で部屋も一緒……一緒にいる事が自然な雰囲気をかもし出しているのだ。

(まあ、誰を選ぶかは一夏しだいだけど~)

 響はパンを飲み物のように粗食しながらそんな事を考えていた。

「にしても本当にうまいな。ほら、箒も食べてみろよ」

「な、なに!?」

「ほら、食ってみろって」

「い、いや……、その、だな……」

 響はしどろもどろになった箒の声に眼を向ける、するとそこには箸に挟まれた唐揚げを箒の口元に差し出す一夏の姿があった。

 そう、いわゆる『はい、あ~ん』と言うヤツだ。

「い、一夏。さすがにそれは、その、なんと言うか……」

「良いから、ほら!」

 嬉し恥ずかしハプニングではあったが箒に悪いと思いながらも無視を決め込む響。成り行きとは言え2人っきりになるのを邪魔してしまった事に違いはない。こういったフラグイベントは知らない顔をして置く事の方が良い場合もある。

「あ、あ~ん(パクッ。もぐもぐ……)い、いいものだな……」

「だろ? うまいよな、この唐揚げ」

「そうではないが、うむ……いいものだ」

 そんな二人の様子を見てシャルルが今気づいたようだ。

「あ、これってもしかして日本ではカップルがするっていう『はい、あーん』ってやつ? 仲睦まじいね」

「シャルル、こういうのは暖かい目でそっと見守ってやるもんなんだよ~」

「そうなの?」

「そうなんだぞ~」

 響とシャルルが笑みが溢れる光景に花を咲かせていると案の定リンとセシリアも『はい、あ~ん』に名乗りを上げる。しかし、最初に『あ~ん』をしてもらったのが嬉しかったのか箒は特に反対する様子を見せなかった。

(うんうん、この調子でいけば篠ノ之さんがトップだね。頑張れ~)

 響は一夏達に聞こえないように呟くのだった。

「ねぇ、響」

「うん?」

 そんな時、シャルルが小さく笑いながら声をかけてくる。

「なに~、シャルル?」

「口の周り、汚れてるよ」

 すでに食事を終えていたシャルルは制服のポケットからハンカチを取り出し響の口元を拭う。

「むぅ~?」

「ほら、動かないで」

「ありがと~」

「ううん、気にしないで」

 そんな二人の光景を見守る一夏達も笑い声を上げる。

「ほんと子供っぽいよな、響は!」

「まあ、あれくらいなら問題はないと思うが……」

「響らしいっていえばらしいけどね」

「見ていて微笑ましいですわね!」

「むぅ、気づかなかったんだから仕方ないじゃないか!」

 響はむすっとした表情を浮かべて再びパンを頬張り食事を再開するのだった。

「まあ、そんな事よりシャルル」

「なに、響?」

「部屋割はどうなるの~? 一応はおれの部屋が開いてるけど……」

 まさか自分達以外にこんなにも早くISを操縦できる男子が転入してくるとは思っていなかったため部屋割りの事は何も考えていなかった、響としては同じ部屋でも構わないのだが相も変わらず狙われ比率が高いのではそうも行かないのが現状。

 しかし、千冬からは何も指示が来ない。

 ここで勝手に部屋割りを決めて良いものかと響は何個目かわからないパンを最早飲み物の様に口に入れ続ける。

「織斑先生からは響と相部屋だって言われたよ」

「なんで? 一夏もいるのに……」

「一夏はもう相部屋だし、それに部屋割りを決めるにしても手間がかかるからって……あとは外国の専用機持ちが同室なら色々と好都合だって言ってたよ」

「ふーん、そうなのか~」

 響は外国の専用機持ちという説明で納得がいった。

 自分を狙っているのが日本企業の誰かであれば対処しにくい輩もいるが同室にフランス人の例外操縦者がいれば自然と外交関係も考えなくてはならないだろう。ましてやIS世界シェア第3位のデュノア社の子息ならなおさら下手な動きはできない。

 傷一つ付けよう物なら外交問題どころかなし崩しに戦争になる可能性も無くはない。シャルルが自分と同じ部屋になる事でそう言った脅しを周囲に知らせ情報を流せば少なくとも手荒なまねはできなくなる……と考えているのかもしれない。

 響は自分のお粗末な考えに肩をすくめながらもシャルルと握手をする。

「とりあえず今日から同じ男子としてよろしく~」

「うん! よろしく、響」

 こうして響はルームメイトであるシャルルに唐変木である一夏から受ける負担軽減を期待するのだった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあルームメイトとして、改めてよろしく~」

「うん。よろしくね」

 シャルルの荷物整理や夕食などを一段落させ、部屋でゆっくりする事に。響は食後に一日の疲れを癒すためにお茶やお菓子を用意してシャルルの許へ戻った。

「ほい。シャルルの分だよ~」

「ありがとう。……ん? これって、日本のお茶?」

「そうだよ。コーヒーや紅茶は今インスタントのヤツしかなかったし、せっかく日本に来たんだから日本的なもののほうが良いかと思ったんだけど~……」

「インスタントでも僕は構わなかったんだけど、そういう事ならいただくよ」

 シャルルはフゥフゥと少し冷まして湯呑みに口を付ける。

(口に合えばいいんだけど……)

 響は妙な緊張感を抱きシャルルの感想を待った。

「……うん。紅茶とはずいぶん違うんだね。不思議な感じ。でもおいしいよ」

「そっか~、それなら今度は抹茶でも飲んでみる?」

 シャルルの感想に一安心する響。シャルルの眼にも嘘は感じられない。お世辞を言っているような雰囲気でもないので、本当にそう思ってくれているようだ。

 同じヨーロッパ地域出身のセシリアは味よりも色が苦手みたいで日本茶はあまり飲まないため心配だったが取り越し苦労ですんだようだ。

「抹茶ってあの畳の上で飲むヤツだよね? 特別な技能がいるって聞いた事があるけど、響は淹れれるの?」

「あ~、おれはできないけど駅前に抹茶カフェって言うのがあって、コーヒー感覚で抹茶が飲めるんだよ~」

「ふぅん、そうなんだ。じゃあ今度誘ってよ。一度飲んでみたかったんだ」

「わかった~、ついでに街を案内するよ。一夏達も誘ってみんなで行くっていうのはどうかな~?」

「本当!? もちろんいいよ。嬉しいなぁ。ありがとう、響」

「ど、どういたしまして……」

 シャルルの笑みに思わず口ごもる響。

 何故ならシャルルの微笑みは優しげで暖かい、所謂『家庭的な笑み』なのだ。響はこの笑みが好きであったし、心休めるモノだった。

 それを久しぶりに見る事ができて嬉しい反面、響の心の中に重いモノが鎮座する。

 

 

 こんなにも優しく……

 

 こんなにも暖かく……

 

 そんな笑みを見せてくれるシャルルにある人物達の面影が重なる。

 

(……父さん達どうしてるかな。連絡とか取りたいけど電話とかして大丈夫なのかな~?)

「大丈夫? 響、具合でも悪いの?」

「! いや、何でもない。ちょっと駅までの道を思い出してたんだ~」

 響は慌てて笑顔を浮かべ何事もなかったように話を続ける。だが、シャルルは何か思うような事があったのか話題を変えて話し始めた。

「そういえば響はいつも一夏達と一緒に放課後にISの特訓しているって聞いたけど、そうなの?」

「うん、おれも訓練機とは言え専用機を持ってるし」

「ねぇ、僕も加わっていいかな? 何かお礼がしたいし、専用機もあるから少しくらいは役に立てると思うんだ」

「ほんと? 助かるよ。それじゃ明日からお願いするよ~」

「うん、任せて」

 このまま響達は夜遅くまで話し込み、消灯時間いっぱい親睦を深めた。

 

 

 

 

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが…」

 シャルルとラウラんが転入してきて5日、彼等にとって日本で初めて過ごす土曜日だ。IS学園は土曜日の午前に理論学習を取り込んでいて、午後から自由時間に入る。

 そうは言っても土曜日はアリーナが全開放されるため自発的に実習を行う生徒もいる。響達もそんな生徒達の一員だった。

 ちなみに今は響と一夏、それにシャルルの組み合わせでお互いの苦手部分の改善について話し合っている。なお、箒と鈴は話しているフリをしながら一夏を睨んでいる最中だった。時折『ふん、私のアドバイスをちゃんと聞かないからだ』とか『あんなに分かりやすく教えてやったのに、なによ』とか聞こえて来て、その度に『2人の教え方が感覚的すぎるからだよ』と言いたかったけど何度も言葉を飲み込んで我慢する響。

「はぁ……、ほんとに眠い」

 しかし、そんな事よりも昨晩遅くまで話していたせいか響の瞼は閉じたり開いたりしており今にも就寝してしまいそうな雰囲気が漂っていた。)

「ねぇ響、ちょっと来てもらっていい?」

「んぁ~、わかった~」

 シャルルの呼びかけにゆったりとした動きで対応する、動く事はできているので寝落ちする事はないがそれでも足下がおぼつかない響。

「どしたの~?」

「さっき一夏と話してて聞いたんだけど、2人のISって後付武装(イコライザ)がないんだって?」

「おれの場合は訓練機だからいじれないってだけだけど一夏は攻撃特化型……単一能力にさいてるISだからな~」

「そうみたいだね」

 言葉通り、唯一仕様(ワンオフ)の特殊能力(アビリティー)という意味で各ISが操縦者と最高状態になった時に自然発生する能力の事である。

「たしか普通は第二形態(セカンド・シフト)から発現するんだけど出ない事の方が多くて、俺のISが第一形態でソレが使えるのは例外的な事、であってるよな?」

「正解~」

「そういえば一夏の唯一仕様(ワンオフ)、『零落白夜』って織斑先生の『暮桜』が使っていたISの能力と同じだよね?」

「まぁ、姉弟だからとか、そう言う事じゃないの?」

「ううん、姉弟だからってだけじゃ理由にならないと思う。さっきも言ったけど、ISと操縦者の相性が重要だから、いくら再現しようとしても意図的に出来るモノじゃないんだよ」

 響はシャルルの言葉に頷く。シャルルの言う通り、今発覚している唯一仕様でも似た能力はあっても同じ能力はほとんどない。別のISで操縦者が前のISで使われていたコアを使用すれば話は変わって来る可能性は否定できないが。

「でもどうしてそうなるのかは僕にはわからないけど……」

「そっか。でもまぁ、今は考えても仕方ないだろうし、その事は置いておこうぜ」

「あ、うん。それもそうだね。…って響。どうしたの、変な顔して」

「ああ、気にしなくて良いよ……眠いだけだから~」

「そっか、ごめんね。話に付き合わせちゃって」

「ん~」

 響は特に困ったわけではないので生返事で返す。

「とりあえず今度は射撃武器の練習をしてみようか。一夏、はい、これ」

 そういってシャルルはさっきまで使っていた55口径アサルトライフル『ヴェント』を一夏に渡した。

「え? 他のヤツの武器って使えないんじゃないのか?」

「普通はね。でも所有者が使用許諾(アンロック)すれば登録してある人全員が使えるんだよ。――うん、今一夏とISに使用許諾を発行したから、試しに撃ってみて」

「お、おう」

 一夏は見よう見まねに銃を構え、練習用に浮いている的目掛けて引き金をひいた。

 

 

バンッ!!

 

 

「うおっ!?」

「どう? 感想は」

「なんか、アレだな。とりあえず『速い』って言う感想だ」

「この上なくシンプルな感想だな~」

「でもあってはいるよ。一夏の瞬時加速も速いけど、弾丸はその面積が小さい分より速い。だから起動予測さえあっていれば簡単に命中させられるし、外れても牽制になる。一夏は特攻する時に集中しているけど、それでも心のどこかではブレーキがかかるんだよ」

「だから、簡単に間合いが開くし、続けて攻撃されるのか……」

「うん」

 シャルルの的確なアドバイスに物想いにふける一夏。

 響としては教える手間が省ける分楽で良いのだがその光景はどこか奇妙だった。

 そんな事を考えていると後ろからひそひそと3人の声が響のハイパーセンサーをとおして流れてきた。

『だからそうだと私が何回説明したと…!』

『って、それすら分からなかったわけ? はぁ、ホントにバカね』

『わたくしはてっきり分かった上であんな無茶な戦い方をしているモノと思っていましたけど…』

 響は目頭を押さえ苦笑をこぼす。完全に感覚適説明と超理論的すぎる説明では一夏には理解できないのだと伝えたかったがそれはそれで痛い目に遭う事がわかっているのでそうする事もできない。

「それじゃあそのまま撃ち続けて。使っていいから」

「おぅ、サンキュ」

 そのまま一夏が初めての銃の感覚を味わっている内に響はシャルルの傍まで近づく。

「ねえ、シャルルのISってリヴァイブだよね~?」

「うん、そうだよ。それがどうかした?」

「学園に常備されてるのとずいぶん違う気がして~」

 一般のリヴァイブはネイビーカラーが主流で真耶が使っていたのは多少改良していてカラーリングも新緑色だった。

 だが、シャルルのISはオレンジにカラーリングしている以外にも色々手を加えてある。

本来四枚あるはずの翼が二枚になっていたり、アーマー部分がスリムになっていたりと機動性重視のカスタマイズをしている。

 その中で一番の違いは肩部分のアーマー。

 本来付いている四枚の物理シールドがすべて取り外されていて、代わりに左腕がシールドと一体化した装甲になっている。逆に右腕はすっきりとしていて、射撃の邪魔にならないようになっていた。

「僕のは専用機だからかなりいじってあるよ。正式にはこの子の名前は『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』。基本装備(プリセット)をいくつか外して、その上で拡張領域(バススロット)を倍にしてある」

「倍!? 一夏が聞いたら泣いてうらやましがるよ~」

「あはは。分けてあげたいけどこればっかりは無理。だけどそんなカスタム機だから量子変換(インストール)してある装備は二十くらいあるよ」

「……歩く火薬庫?」

「う~ん、間違いじゃないけどあまり言って欲しくないなー」

 シャルルは困ったような表情を浮かべるモノの響の表現はあながち間違っていないのは確かだった。普通なら粒子変換できる武器は五、六個くらいなのだがシャルルのリヴァイブはその四倍の二十なのだ。

 その粋すぎた粒子変換はを可能にするという事はそれだけ情報処理に長けている機体なのだろう。それに加え多くの武器を扱えるのだから、シャルルは高い実力の持ち主なのだと予想できた。

 響がそんな事を考えたりしていると周りがザワザワと騒ぎ始めた。

「ねぇ、ちょっとアレ…」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど…」

(アレは……)

 ザワザワとアリーナ内が騒ぎ始め、響もその注目の的に視線を移した。

そこにいたのはもう1人の転校生、ドイツ代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 転校初日に一夏に手を挙げようとした少女。経緯はどうあれそれ以降、他人と関わった所を一度も見ていない。

 そんな彼女が生徒で溢れているアリーナに漆黒のISを装着して来場して来たのだ。

 ラウラは周りの声や視線を気にする事も無く、ある一点だけを見つめていた。

 その人物は織斑一夏だった。

「おい」

「……なんだよ」

 二人の会話だが開放回線(オープン・チャネル)での通信で行われておりこの場にいる船員に聞こえていた。

(あんなに闘争心をむき出しとは……一夏とも初対面なはずなのに)

 響はいつでも動けるように一夏とラウラの動きを注視する。そんななか響の予感があったったらしくラウラが一夏に宣戦布告としか取れない言葉をなげかける。

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と闘え」

「イヤだ。理由がねぇよ」

「貴様にはなくても私にはある」

(……あの様子だと一夏に心当たりはないみたいだ~。でも、ボーデヴィッヒさんも嘘付いてる感じじゃないし)

 二人が闘うような理由が考えつかず表情が険しくなる響、隣にいたシャルルも原因がわからず響に小声で話しかけてくる。

『ねぇ響、ボーデヴィッヒさんがあそこまで一夏に執着する理由、何か知らない?』

「よくわかんない、二人とも初対面の筈だからけど……それでもボーデヴィッヒさんは一夏の事は知ってるみたいなんだよな~」

 教室でのやり取りを思い出してもても最初に一夏を見た時、ラウラも特別何かするわけでも話しかけるわけでもなかったが一夏が『織斑一夏』だとわかった瞬間にひったこうとしたのだ。

「もしかしたら織斑先生が関係してるのかもしれないけど……こればっかりは聞いてみないとわからないな~」

『そっか、ありがとね』

「お役に立てず申し訳ないです~」

 これは響の憶測であるがそこでラウラはドイツで千冬と出会い、崇拝する人物を見つけたのだろう。そして理由はわからないが彼女は一夏の事を千冬の汚点と決めつけてしまっている可能性が大きい。

「貴様がいなければ教官は棄権などせず大会二連覇の偉業を成し得ただろう事は容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」

 響はラウラの言葉に右手を握りしめ意を決して二人の間に割りこみむ。

「何もそこまで言わなくても良いじゃないか」

「何だ小動物? 貴様には何の関わりもない事だ」

「いや、関係ある。だって一夏は友達だもん、友達を馬鹿にされて黙ってられるわけないだろ。君が一夏に対して良い感情を持っていない事はわかるけどさ、一夏は一夏、先生は先生なんだ。大会の事とか何があったのかも知らないけど……先生にとっては世界大会の決勝より棄権する方が重要だったって事じゃないか」

 何故、世界大会二連覇という偉業を成し遂げるチャンスを捨ててまで棄権したのかはわからない。

 だが、あの織斑千冬がそうしたのならそれは充分意味のある事だったはずだ。

「それなのに君は先生の選んだ選択やその時の思いを否定してる……それは誰かを馬鹿にする事よりずっと酷い事だよ。それわかってる?」

「黙って聞いていればベラベラと――」

「っ!?」

 ラウラは武器も何も構えていない響に右肩上部に装備されているレールガンの照準を合わせる。

「その減らず口、今すぐたたけないようにしてやる!」

 

ドギュウンッ! ガアアアァァァァン!

 

「ぐあっ!?」 

 響はラウラの放ったレールガンを至近距離でくらいフィールドを転げ回る、かなりの威力を備えているらしく打鉄の装甲がはじけ飛ぶ光景とシールドエネルギーが削れる情報がその場にいた一夏やシャルルのハイパーセンサーに映し出された。

「響! このやろおぉぉ!!」

 一夏はシャルルから借りていた『ヴェント』を投げ捨て雪片を展開しその直後、ラウラへと斬りかかる。

「ふ、最初から掛かってくれば良かったのだ」

「くっ!?」

 ラウラは流れるような動作で攻撃に映った一夏の動きを見ても慌てることなく右手を突き出す。

 その瞬間、一夏の動きが急に止まる。

「なん……だ、身体が動かない……」

「なんだ、どうして動けなくなったのかもわからないのか? やはり貴様は教官の汚点でしかない」

「てめぇ……」

「消えろ、織斑一夏――!」

 ラウラは響に向けたレールガンの引き金を引こうとしたがそれよりも早く彼女のハイパーセンサーが後方からの攻撃を察知する。

「一夏から離れろ!!」

「貴様は!」

 背中を向けている相手に攻撃をするのは褒められた事ではなかったが響は躊躇うことなく左手で『葵』を握りしめ横一閃で振り抜く。

「チッ」

 ラウラは響の攻撃を当たる寸前で交わし一夏から飛び退き二人から距離を取る。

「驚いたな、あの距離で攻撃を受けて気を失っていなかったのか」

「気絶したいくらいだよ、打鉄が護ってくれたとは言え右肩が外れた。痛くて泣きそうだ」

 どうやら響はラウラの攻撃を咄嗟に右肩で受けたらしく打鉄の装甲が綺麗に無くなっていた、装甲で受けたぶんシールドを貫通するダメージではなかったようだがそれでも弾丸の衝撃と振動で脱臼したらしい。

 口では痛みに涙を流すと良いながらも響の緋色の瞳に涙の気配はなくむしろいきなり闘いをしかけたラウラに鋭い眼光を向けていた、左手一本で『葵』を構えるその姿に幼さはみじんも感じられず一人の戦士としての姿があった。

「思っていた以上にやるようだな、だが……邪魔をするなら排除する」

「そう簡単に排除されるつもりはないね」

 響とラウラ、二人の間に緊張が走る。どちらかが先に動けばもう闘いは止められないそんな空気が周囲に流れ始めた。

「こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人はずいぶん沸点が低いんだね!」

「シャルル」

 響は声のする方に目をやるとそこには一夏の前でラウラに向けてアサルトライフルを構えるシャルルの姿があった。その後ろには一夏の姿があった、おそらく響と同じように一夏を守ろうとして間に割り込んだのだろう。

「フランスの第二世代型(アンティーク)ごときで私の前に立ちふさがるとはな」

「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代型(ルーキー)よりは動けるだろうからね」

 響達3人の間で静かな睨み合いが始まった。

 シャルルが一瞬気を引いてくれたおかげで落ち着きを取り戻す響ではあったが闘いを避けられる空気ではなかった。

 シャルルとラウラは互いに銃口を向けている、そして剣を握っている自分も動けば戦闘開始となることはわかりきっていた。

(シャルルまで乱入してくるとは思ってなかった……どうしよう)

 ラウラの攻撃に反応して動いただけでも学生として申し分ない実力、対するラウラもドイツで数々の実戦をくぐり抜けた猛者だろう。

 今戦闘になれば確実に自分が一番最初に脱落する事は間違いないが売り言葉に買い言葉、その安い挑発に乗ったのは自分だ。

 それなのにシャルルが闘い傷つく事だけは避けたかった。

(……何とかボーデヴィッヒさんを止めないとシャルルまで怪我しちゃうよ)

 しかし、現状でそれは難しい。

 響とシャルル、そしてラウラ……無言でにらみ合う三人。三人が一斉に動き出したときアリーナに監督をしていた女性教師の声が響く。

『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 スピーカーから響いた声に動きをとめる三人。今更だが教師の存在を思い出す響。

(……助かった)

 響はオープン・チャネルで制御室に音声を流していた事を思い出した、第三者的立ち位置の横やりが入れば否応なく闘いはとまる。教師が入れば尚更だろう。

「……ふん。今日は引こう」

 急な横やりで興が削がれてしまったのか、ラウラもあっさりと戦闘態勢を解除してそのまま去って行った。

(よかった、一夏やシャルルは怪我しなくて)

 響も打鉄を待機状態に戻し身体から力を抜いたが途端に右肩に痛みが走る。

「いたた~……やっぱり外れちゃってるよ」

「響、大丈夫か!?」

「うん、心配ないよ。肩が外れただけだから~」

 心配してくれた一夏に気を使わせないように笑顔でVサインを作る響。

「心配ないよじゃないだろ! 保健室に連れてってやる」

「一人で大丈夫だよ、それより一夏達は訓練続けてていいから~」

「でも、今日はもう訓練って感じじゃなくなったぞ」

「そうだな、今日の訓練はもう終わりにしたらどうだ?」

「そうですわね。閉館時間も近いですし」

「何か釈然としないわね」

 箒達もラウラの行動に納得がいっていないようだったがこのまま気持ちを引き摺っていても良い事はないとわかっているようだった。

「じゃあ、僕が響を保健室に連れてくよ。同じルームメイトだしね」

「だから大丈夫だってば、保健医の先生に骨をはめてもらうだけだし」

「いなかったらどうするの? 痛いのが長引くだけだよ、一応軍で応急処置の方法は習ってるし間接をはめ直す事もできるけど」

「………………」

 響は時間と共に痛みを増していく右肩に左手を添える、さっきまではあまり痛くなかったのだが気持ちが落ち着いた今は痛みに堪えるのはなかなか辛いモノがあった。

「それじゃ、お願いしようかな~」

「それじゃ行こう、脱臼はクセになりやすいからね」

「シャルル、響の事任せたぜ」

「任されたよ」

 響は借りてきた猫のようにシャルルに保健室へと連れて行かれるのだった。

 

 

 




 やっとシャルロットを出すことができました~。
 原作にないシーンを書くのも意外と楽しいかもです。もしかしたらそう言ったオリジナルな展開になるかもですがそれでもよかったらまた読んでみてくださいw
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