でも全員生存が書けたのでOKです
誤字報告ありがとうございました!
ゴブリン。背丈、力、姿勢は人間並みの単体では最も弱いとされる怪物の一種。群れで行動し、人を脅かし、村を襲い、女をさらうなどの被害をもたらすモンスターの屑。
そのゴブリンの退治に現在、冒険者としてギルドに加入したばかりの女神官は参加していた。
「あ、あのこのまま入っても大丈夫でしょうか?やっぱりもう少し準備してからの方が」
初めての依頼ということもありゴブリンの巣を前にしり込みしてしまう女神官。それに対して他のメンバー、青年剣士、女武闘家、女魔法使いは余裕というよりは油断全開であった。
女魔法使いは呆れた声を青年戦士は女神官に励ましの言葉をそれぞれおくる。
「は?ここまで来て何よ……」
「そんなこと言っても薬買う金もないしさ。そのために君に声を掛けたんだぜ?万が一怪我をしたら癒しの奇跡を頼むよ!まあ、ゴブリン相手なら問題ないだろうけどさ!」
どう聞いてもフラグとしか思えないような言葉。
これから死にに行きますと言ってるようなものだった。それに付け加えて女冒険者が軽い準備運動の代わりの演武をする。
「もしこの馬鹿が切り損ねてもあたしが蹴り飛ばしてあげるから!大丈夫!」
この女武闘家が何を根拠に大丈夫と言っているのか分からなかった。
ただ、女魔法使いに関しては「賢者の学院」と呼ばれる魔法教育機関を卒業しているため実力はあるということを説明される。しかしそれでも女神官の不安は残る。あまりにもパーティ全体が落ち着きがないということ、それと嫌な予感がするということである。
結局、パーティに押される形で洞窟の中に入っていく。中はじめじめとして気持ちが悪いうえ天井も低く息苦しささえ感じる。
女神は祈りながら進んでいくがそれが逆に、前線として前を進む青年剣士と女武闘家との距離を開けることになってしまった。
そのことに苛立ちを感じた女魔法使いは不満の声をあげる。
「ほら遅れてる。もう少し早く歩いてよ。隊列を乱さないで!」
「あ、はい。ごめんなさい……」
そこで女神官はあることに気付く。一本道で後ろには誰もいなかったはずがだが、後ろから声がかすかに聞こえてきたのだ。
「……なによ、何か文句でもあるの?」
「い、いえ、あの……後ろから声が聞こえたような」
「……あのね!私たちは入り口から一本道を真っすぐに進んできたのよ?後ろに一体だれがいるっていうのよ!」
――――――そう言い放ち後ろを向いた女魔法使いのもとにゴブリンが一斉に走りくる!
「ゴブリン!?ひっい……!」
女魔法使いは思わず低い悲鳴を漏らす。だが生き残るためには怯えてばかりもいられない。襲い来るゴブリンに対して必死に呪文を唱え迎撃に出る!
「サジタ・インフラマラエ・ラディウス!」
手から火球が放たれ一匹のゴブリンに風穴を開けた。一匹仕留めたことに対して思わず笑みが出る。だが一匹が限界であった。次の詠唱に移ろうとしたところで勢いに乗ったゴブリンに体当たりをくらいそのまま組み伏せられる。そしてそのまま持っていた杖を奪われてしまう。
「……うっ……!!、杖を返せ!その杖は!お前たちが触って良いものじゃない!!」
女魔法使いにとって杖は学院を卒業した証であり、自らの誇りであった。それを薄汚いゴブリンに触れるどころか奪われるのは我慢ならなかったのである。
しかし、ゴブリンは無情にも杖を折る。
「ああ……ああああ!!!!このおおおおお!!」
必死に仰向けになりながら暴れるがゴブリンにとっては所詮無意味な抵抗であった。
女神官も持っていた錫杖で女魔法使いから必死にゴブリンを追い払おうとする。
「彼女から離れなさい!やめなさい!!」
だがその抵抗が逆にゴブリンを刺激してしまう!ゴブリンは持っていた短剣で女魔法使いの腹を突く!
「あッ!!!……あ……うっ」
腹部から止めどなく血が溢れてくる。女魔法使いは痛みと恐怖に完全に戦意を喪失してしまっていた。
「うぉおおおおっ!」
叫び声を聞いた青年剣士が群がっていたゴブリンに切りかかる。その間に女神官は必死に詠唱を唱え、倒れている女魔法使いを奇跡の力で治そうとする。
青年剣士は怒っていた。自らの不甲斐なさとこの依頼は楽勝だと楽観視していた自分自身に。
だがそれが逆に戦列を乱すことになる。
怒りに任せて振っているため、女武闘家が前線に出る妨げとなってしまったのだ。
「剣を振り回さないで!!一緒に戦えない!」
「くっ!お前は二人を守っていてくれ!こいつらはみんな俺が倒してやる」
一見順調に見える攻撃も、焦りは致命的なミスを生んでしまう。死に物狂いのゴブリンの攻撃が青年の足のナイフを刺すことに成功する。
「なっ!そんな!」
地面に倒れた青年にゴブリンが降りかかる。
「やめなさい!」
倒れ伏す青年を助けるように今度は女武闘家が戦いを始める。だが戦況は絶望的であった。機動力をそがれた青年剣士に、一向に動けない女魔法使い、そして戦えるのは非戦闘員の女神官に武闘家の自分だけ。
青年剣士は必死に残った三人へ逃げるよう促す。
「逃げるんだ!三人だけでも!」
「出来るわけないでしょ!ここでゴブリンを蹴散らしてあんたも一緒に帰るんだから!」
武闘家は自らの力を振り絞り襲い来るゴブリンたちをなぎ倒していく。
(いける!殲滅とはいかなくても撤退するくらいなら!)
そう思って蹴り上げた脚は何者かに掴まれる。
姿を見せたそれは巨大なゴブリンであった。掴まれた足をそのままに壁にたたきつけられるように投げ飛ばされる。激痛と明確な骨折が全身を駆け巡った。
「……!!が……ぐ……え………っ」
そしてそのままうつ伏せになるように動けなくなる。その隙にゴブリンは女武闘家の服を剥いでいく。羞恥と悲しみ、そして絶望に気丈な女武闘家の目からは涙が零れ落ちていた。
何もできない女神官はたった数分でこの惨劇に変化してしまったことに後悔する。
もっと自分が注意を払っていれば。
もっと自分が強ければ。
だがいくら後悔しても遅かった。倒れた三人の仲間。もはや逃げる気力もない。
だから必死に叫ぶ
「お、お願いします!誰でもいい………誰か、誰か助けてください!!」
あきらめとも取れるその叫びは普通であれば誰にも届かない!
このゴブリンの巣の洞窟でいくら叫ぼうとも誰も助けてはくれない!
『あの男』以外には!!
「オォン!アォン!」
洞窟の中を獣の叫びとも取れる咆哮がこだまする!
好き勝手暴れていたゴブリンたちも、絶望していたパーティの四人も、その空間にいた全員が固まる。
そして暗闇の奥から人影が現れる。
「おっ大丈夫か?大丈夫か?」
身長はおよそ170cm程だろうか。鍛え抜かれた体に色黒い肌。顔つきは素朴ながら目は非常に鋭く、まるで研ぎ澄まされた日本刀のようであった。だがそれ以上に目を見張るのはその格好である。何と灰色のブリーフ、もとい、伸縮性のあるボクサー型のスッパツに近い感じの下着ひとつであったのだ
女神官も一瞬、戸惑いを見せたもののすぐに助けを求める。
「お願いします!死にかけてる仲間がいるんです!報酬は、あとからいくらでも払いますから、どうか、どうか助けてください!」
女神官の願いを聞き届けた野獣先輩はそっと優しくうなずき、たった一言だけ言葉を発する。
「しょうがねえなぁ…ほらいくどー(やれやれ系主人公先輩)」
そう言った瞬間、ゴブリンに飛びかかる野獣先輩。そして放たれた拳がゴブリンに触れた瞬間、そこには血飛沫と肉の塊が出来ていた。
女武闘家はその一撃を見た瞬間、思わず震えてしまう。これまで自分はそれなりに武道を学んできたつもりが野獣先輩の技は自分のそれが遊びであるかのように思えてしまった。
「爆砕かけますね」
そう宣言した後の野獣の攻撃はまるで小型爆弾に匹敵する威力であった。
ゴブリンをまるで魚を捌くようにどんどんと始末していく。それほどまでに野獣という男は強かった。例えるならオラウータンとスローロリスぐらいの差がある。
女神官はまるで夢を見ているようであった。
(すごい……。これが本当の冒険者……)
そして数秒後には巨大ゴブリンを残すまでになった。
野獣先輩の拳や体には血の一滴すらも付着していない。
そして残った巨大ゴブリンに挑発するように話しかける。
「いいよ!来いよ!」
「HURGGGGG!!!」
自身の体格と体重を生かした全力のタックルを野獣に向けてお見舞いする。
そのタックルに対して野獣は余裕の表情で構える。
「ンアッー!」
そして野獣の見事な正拳突きが決まった瞬間全てが終わっていた
野獣は構えをとくと何もなかったかのように背伸びをする。
「ぬわああああああん疲れたもおおおおおおおん」「チカレタ…」
女神官は慌てて野獣の側に駆け寄る。
「あの、大丈夫ですか!?怪我とかは!」
「(傷一つ)ないです」
「す、すごい!あ、そうでした!実は治癒しても治らない仲間がいるんです、何かわかりませんか!?」
そのことを聞いた野獣は再び真剣な顔つきに戻る
「ん、おかのした」
そう言うと野獣は急いで倒れている女魔法使いの元へ向かう。
「すっげえ(顔色が)白くなってる。はっきりわかんだね」
その後は女神官は女武闘家と青年剣士を治療する。幸いにも二人は治療が上手くいったのかすぐにも動けるようになっていた。
三人は女武闘家の体調を調べている野獣の元へ向かう。
「どうなんですか!?治りますか?」
一番の仲間思いである青年剣士は野獣に焦りながらも野獣に問いかける。
真剣な顔つきの野獣はその質問に答えない。国立大学医学部主席兼薬学や医学のプロフェッショナルである野獣には現在の状況は楽観できないものであることがわかるのだ。
野獣はブリーフから日本刀を取り出し、治療したはずの女魔法使いの腹に小さな傷をつける
「何するんだ!それじゃあ余計に悪化する!」
「そうよ!せっかく治したのに!」
「暴れんな!暴れんなよ……(毒とか)溜まってんなぁオイ!」
「なるほど!毒に侵された部分の肉を抉るんですね!なんて冷静で的確な判断!」
思わず納得する女神官。非難の声をあげた二人もその理由に感心する。
そして次に野獣は抉った傷口をがっつりしゃぶりつく。
「ハァ…ハァ…チュパ!キュッ!キシュン!キシュ!(傷口を吸う音)」
野獣のフ〇ラテクニックは血液に溶け込んでしまった毒すらも丁寧に吸いとることが出来るのだ!
「遠野、気持ちいいか?気持ちいいだろ?」
「……遠野って誰ですか?」
そして最後に持っていた薬を女魔法使いに飲ませると幾分か顔色が良くなってきていた。これも野獣先輩の判断と処置が的確であったから助かったのだ。
意識を取り戻した女魔法使いは野獣に感謝の言葉を述べる
「あ、ありがとう……あなたが来なければ私は………………」
「(解毒されて)気持ちいいかぁ?」
「ええ、かなり良くなってきたわ……悪いけど……もう少し……寝させて……もらうわね……」
そう言い残し気を失う女魔法使い。
全員が無事に助かったことを確認した野獣は立ち上がる。
女神官は意を決して提案する。まだ戦いは終わっていない!
「まだ奥の方には捕まった人がいるはずです!お願いします!もう一度力を貸してください!」
「助けに行きますねぇ!」
二人の戦いは続く!