一匹狼とヤンデレちゃん   作:Merkabah

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一匹狼とヤンデレちゃん4(妹編)

放課後の時間になり周りのクラスメイトが少し浮かれている様子が見える。 理由は明白で土日休みだからだ。

 

しかし私は昨日アイツ(春華)に散々勉強の指導をされ解放的な気分になるどころか疲労感が勝り机に上体を預け窓から外を眺めていた。

 

二階の為グラウンドは見えないが空は眺められる。

 

私の席は必ずと言っていいほど一番後ろの窓際だ。 サボるには気づかれにくくて有難い。 前の席に座る左右二人も軽く話す程度の関係で気が楽だ。

 

「さ~き~ちゃ~ん」

 

「はぁ…だる」

 

しかし、今日はテスト前の席替えで少し憂鬱になっていた。

 

私の席も前の人も変わらないが一つだけ変わった事がある。 それは隣の……

 

「沙紀ちゃん帰ろうよ~ねぇねぇ」

 

「うるせぇ! アタシは今黄昏てるんだよ、放っておけ!!」

 

「嫌だな~沙紀ちゃんが考え事するなんて~もしかして私の裸想像してたの?」

 

「するかっ!!」

 

隣の席が桃色の妄想するコイツ(春華)になった事により状況が今までとは大きく変わった。

 

(ぜってえコイツとは隣になりたくなかった…)

 

「隣になりたい思いが重なって今叶ったんだよ。 ねっ!」

 

「んなわけあるか!」

 

ウィンクして親指を立てているが隙を見せないため殴ろうにも殴れない。

 

「っち、もう帰る」

 

「意思疎通だね!」

 

「腕にくっつくな変態女!」

 

「昨日はあんなに愛し合ったのに……?」

 

「ばっ、嘘を言うな……はっ!」

 

教室に残っていた人の視線が集まっているのに気づきコイツを腕に絡ませたまま後にした。

 

 

──────────

 

 

「はぁはぁ……くそ変態筋肉女が…重いんだよ!」

 

「もう女の子に傷つく言葉言ったら駄目だよ?」

 

「っでぇ!!?」

 

下駄箱まで引きづられた癖に離れた途端、息をするようにデコピンされたが威力がとんでもなくその場でしゃがみ抑え込む。

 

「うおぉ…ヒビ入ったんじゃねえかこれ……!」

 

「大袈裟だね沙紀ちゃんてば。 私は沙紀ちゃんの限界を知ってるから安心してよ。 所で腫れているかもしれないからキズを舐めてあげる。ペロペロキャンディみたいにじっくり舐めてあげる」

 

「やめろ!」

 

手のひらで頬押し込み何とか阻止し痛みが落ち着いてきた辺りで立ち上がり靴を履き替え校門前まで歩いていると後ろからニコニコした顔でアイツが着いてくる。

 

「今日は勉強しねぇからな」

 

「分かってるよ。 私だって息抜きはしたいもん。 それより沙紀ちゃん」

 

「あ?」

 

前に立ち中腰になり下から顔を覗かれビクッとしたが冷静なフリを保つ。

 

「沙紀ちゃんのお部屋に行きたいな~。 いいよね?」

 

「最初から肯定で聞くな、誰がお前みたいなピンク妄想女入れるかよ」

 

「色んなあだ名が出てくるけど一向に私の名前は呼んでくれないんだね…春華悲しい」

 

「呼んだら私の負けだからな。 あっさり呼ぶわけねぇだろ」

 

「それを含めて沙紀ちゃんのお部屋に今日泊まって夜の営みの時に言わせようか…ふごっ」

 

「だから何で普通の声量でそんな恥ずかしい言葉言えんだよ!?」

 

口を手で塞ぐと手のひらに味わったことない感触を感じ取る。 ヌルヌルした感触…コイツアタシの手のひらを舐めてやがる!

 

「うがぁきもちわりっ!!」

 

平手打ちをあっさり回避され気持ち悪い感触が残る手をハンカチで拭き取る。

 

「ん~これが沙紀ちゃんの汗の味なんだぁ~ペロペロ」

 

舌を何も無い所で上下に動かしながら隣に立ち頬赤くしていた。

 

「今ので余計に距離が開いた。 じゃあな」

 

「ごめん沙紀ちゃん! 軽い冗談だってば!! ペロペロ」

 

「そのキモイ舌の動きやめろ!!」

 

「え? 可愛い?」

 

「…………疲れた。 アタシの負けでいいからどっか行ってくれ。 頼む」

 

「じゃあ名前呼んで?」

 

「脳内ピンク変態筋肉女」

 

「もうっ! 照れ屋さんだね!!」

 

背中に紅葉が出来るんじゃないか程の痛みを味わい借りているマンションに向かって再度歩き出した。

 

──────────

 

マンションのエレベーターに乗り指定の階で降りて歩いていると後ろから着いてくるヤツが背中をつついてくる。

 

「んだよ、言っとくが大きな声出すなよ。 他のやつに迷惑だからな」

 

「そんなの分かってるよー」

 

「ならいいが」

 

「私はー!!沙紀ちゃんの恋人でーす!!!」

 

「ばっっかやろう!!」

 

後頭部目掛けて拳を振りかざすが腕をあっさり掴まれニヤニヤした顔をアタシに向けてくる。

 

「ぼーりょくはんたーい」

 

「無駄口叩かなきゃ手は出さねぇよ」

 

何とか振りほどき舌打ちしアタシの借りている部屋の扉の前に立ち鍵を出そうと上着の右ポケットに手を入れた時横からタックルされ倒れそうになる。

 

「てめぇ! 何しやがる!?」

 

「ここが沙紀ちゃんの部屋ね。 それじゃ…」

 

すっと胸ポケットから鍵を取り出し施錠を解錠しだした。

 

「お邪魔しまーす。 この狭い通路を真っ直ぐ進めばリビングでその途中にあるのは御手洗と沙紀ちゃんの部屋と空き部屋かな?」

 

「………ちょっと待て。 お前どこで鍵を手に入れた」

 

肩を掴み靴を脱ぎ進もうとするコイツを静止させる。

 

くるっと回り身体をこちらに向け「まだわからないの?」と眉を逆八の字にして小馬鹿にしてくる。

 

当然だが、アタシの部屋の鍵を自分以外にも持っているという時点でおかしいのだからすぐに理解出来る訳が無い。 というか、勝手に合鍵を作ってるのがまず犯罪では?

 

「昨日私のメイドの二人に紹介した時に抱き寄せたでしょ? あの時に沙紀ちゃんの制服の右ポケットに鍵の感触がお腹越しに感じたから抜き取り、ユキが鼻血を出してた時ハンカチを渡すついでに包んで渡したのよ。 その後はユキが数時間で合鍵を作ってくれたの」

 

「……………は?」

 

「分からなかった? もう一度言うねお馬鹿沙紀ちゃん。 昨日………「ちげぇよ! 馬鹿もちげぇが、意味が理解出来ねぇんだよアホ、タコ、ピンク変態!!」

 

「小学生みたいな悪口になってるよ沙紀ちゃん」

 

「あのなぁ………!」

 

「玄関で騒ぐのもあれだし上がらせてもらうね~」

 

「あ、おい! ………くそっ何者なんだよアイツらは……!」

 

リビングに入って行った矢先雄叫びが耳に入り頭痛に襲われたがとりあえずアイツがこのマンションの部屋に入ってきたという事は昨日より疲労が溜まるに違いない。

 

開けっ放しになっていた玄関の扉を背を向けたまま閉めようとした時何か挟まったような気がし再度閉めようにも、やはり柔らかいものに引っかかる。

 

視線を向けると色白の指が四本見えた。

 

「うわっ!? だ、誰だてめぇ!」

 

「お、お姉様……痛いです…」

 

今にも風が吹いたらかき消されそうな小さな声が聞こえ扉をゆっくり開けるとそこにはアタシの同じ金色の髪でパーマのかかったボブショートヘアの女が涙目になりながら手を抑えていた。

 

見覚えがあるでは済まされない。 こいつは………私の妹だ!

 

「お前どうしてここにいるんだよ!?」

 

思わず大きな声を出してしまい周辺を見渡し手を取り妹を玄関に引き入れる。

 

距離を置いて赤くなった手を取り「大丈夫か?」と問いかけるとパァっと笑顔になる。

 

「ご心配かけてごめんなさいお姉様。 それと説明が遅れてしまいました…」

 

今着ている制服をウチの高校と同じ物で今年の四月から入学して登校しているのは知っていたがいきなり上級生の奴と話している姿を見られてはコイツ……『紗香(さやか)』が今後居ずらくなると考えて遠ざけていた。

 

「よくアタシのマンションが分かったな?」

 

「その件につきまして……すみません!」

 

突然頭を下げられたが謝られた理由がわからない。

 

「お母様とお父様に聞きましてお姉様のお部屋を教えて頂いたのです。 それと今日からお隣のお部屋をわたくし一人で借りて暮らすことになりました」

 

「……………………」

 

頭上にゲンコツを一発お見舞するとまた涙目になり頭を抑えた。

 

「……自立するために高校に通ったのは分かるが何もアタシに真似なくてもいいだろ」

 

「ごめんなさい……でもお姉様がいなかった一年間とても寂しくて…毎日……その泣いてました……突然わたくしに内緒で家を出て……」

 

「それは…悪かったよ。 アタシは両親の跡を継げないと分かって周りの一般人に憧れてたんだ…だから」

 

言葉が見つからず頭をかくがお互い静かになり時間が流れていく。

 

「あのよ…料理とか洗濯のやり方は学んだのか? 今まで勉学は屋敷で家庭教師が毎日来て教わったんだろ? 完璧とまでいかなくともそれなりにはさ?」

 

「わたくし!」 「うおう!?」

 

ずいっと前進し顔を近づけてきた。

 

「こんびにえんすにあるかっぷらーめんがあにあれば生きていけるといんたーねっとで確認しましたのでバッチリです! お湯を沸かすのは出来ますので!」

 

「お前やっぱり屋敷に帰れ。 後ネット使うな。 家事洗濯学べる講師でも呼んで勉強しろ」

 

「さすがお姉様お厳しい…久しぶりのムチ指導で嬉しくなります」

 

肩を落としため息をこぼしながら両頬を強くつねる。

 

「喜んでないで今後の生活を考えろ。 カップ麺だけ食ってたらただでさえ身体弱いのが悪化するだけだからな」

 

「………」

 

思い詰めた顔をして口元に手を当て始め、数秒後口を開く。

 

「お姉様はお料理出来るのですか?」

 

「ん…まあ人並みには」

 

「無礼承知でお願いがあります。 どうかお料理をわたくしに教えていただけませんか?」

 

「はぁ……ヤダ」

 

「あぅっ!」

 

「………とりあえず暫くはこの部屋に住ませてやるからアタシのやり方を見ておけ。 理解出来たら一人でやってみろ」

 

つくづく甘いなと苦虫を噛み潰したような顔をしつつ妹の頭を撫でる。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

と、その時背筋にナイフが刺さったような感覚に襲われ慌てて振り返るとドアの隙間からアイツが目のハイライトが消えたままじっと覗いていた。

 

目が合うとゆっくりとドアを開けドスンドスンと迫ってくる。

 

紗香も感じとったのかアタシの背中に隠れ震えだす。

 

「さ・き・ちゃ~ん? 私という彼女がいながらさっきからイチャイチャしすぎじゃない?」

 

「コイツはアタシの妹の『紗香』だっ。 入学したばかりな上世間も知らない箱入り娘だからあまり威圧をかけるなっ!」

 

と伝えるといつもの顔に戻りアタシ以外の人と接する時の態度に変わる。

 

「そ、そうだったの?! ごめんね紗香ちゃん……私は沙紀ちゃんの恋人兼未来の奥さんの『春華』って言うんだよろしくね」

 

隠れていた紗香は恐る恐る私から離れ差し出された手を取るか取らないか戸惑っている。

 

言い忘れていたが紗香には一つ欠点がある。 それは……

 

「うっうっ………」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「汗いっぱいかいて顔真っ青だけど大丈夫!? ねぇ沙紀ちゃん!」

 

「袋持ってくるから耐えろよ」

 

すぐさまリビングにある台所の陰からスーパーで買った中サイズのビニール袋を広げ玄関に戻り紗香の前に差し出してすぐに。

 

「おええーー!!」

 

「えっ……」

 

アタシは背中をさすりながら混乱している奴に説明する。

 

「紗香は……家族以外のやつと会話しようとすると極度の緊張でたまに吐いちまうんだ」

 

「ごごごめんなざい……春華さん……わるぎはないんでず…うっ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「無理して喋るな、落ち着くまでコイツは逃げねぇよ。 アタシは今すぐ追い出したいけどな」

 

 

「(中々癖のある妹さんね…流石沙紀ちゃんと同じ血が流れる姉妹…)」

 

 

~つづく~




紗香イメージ

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