提督一家と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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どうも!
また艦これの二次創作小説を書きたくなって、この作品を書きました!

これまでと違って本当にネタが浮かんだ時にだけ更新する予定ですが、楽しんでもらえるように頑張ります!

あがののセリフは子どもらしくほぼひらがなを使ってますので、読みにくいかもしれませんがご了承ください。


血は争えませんなぁ

 

 とある日の午前中。

 

「……うーん……」

 

 阿賀野はひとり、鎮守府本館内の簡易厨房で悩んでいた。

 これから阿賀野は娘『あがの』のために3時のおやつを作ろうとしているのだ。

 食堂に連れて行けば間宮たちの美味しい甘味を味わえるが、阿賀野としては母親として出来るだけ自分の手であがのへ料理を振る舞って、おふくろの味を覚えさせてやりたい。

 だから今日もこうして厨房にきたのだが、材料を漁っている内に戸棚から見るからに古いホールトマトの缶詰を発見し、その処分に頭を悩ませているのだ。

 

(消費期限のところ擦り減ってて読めなくなっちゃってる……)

 

 戸棚の奥へ奥へと追いやられていた缶詰はシールやら何やらのすべてが擦り減り、缶の外見もかなり傷んでいる。

 

(イタリア艦の人たちのためにいっぱい買い込んだ時期があったけど、その時に使わないで今まで残っちゃったんだろうなぁ)

 

 イタリアから艦娘が来て早5年以上。いくら缶詰といっても5年以上は危ない。こうなってしまってはもう仕方がないので、阿賀野は取り敢えずその缶詰を開けてみることにした。

 

 カパッ

 

(匂いは平気そう……?)

 

 しかし不安要素がある以上、捨てるのが賢明だ。

 

(でも勿体無いし、一応味も確認しとこ)

 

 すると阿賀野は計量スプーンにホールトマトを少量掬い、口に含む。

 

「……っ!? ペッ、ペッ……ダメだぁ。完璧にいたんじゃってるぅ」

 

 確かに腐ってしまった味。確認もした阿賀野は今度こそ躊躇うことなくホールトマトを生ゴミ用のネットに流し込んだ。食べられなくてごめんなさいと謝りながら……。

 

「あっ……床にちょっとこぼしちゃってる。拭かなきゃ」

 

 床にこぼれ落ちてしまったホールトマトの汁を阿賀野はクッキングペーパーでキレイに拭き取る。

 

 するとそこへーー

 

「おかあさーん?」

 

 ーーあがのがやってきた。

 

 最近のあがのは舌もちゃんとまわるようになってきたので、言葉もはっきりとしてきている。因みに今日は矢矧と同じポニーテール姿だ(赤地に白の水玉模様のシュシュ)。

 

「あがの? どうしたの?」

「あのねー、やはぎおねえちゃんがね、おとうさんのことさがしにいっちゃったからね、こっちにきたの」

「そっかぁ。じゃあ、お母さんと一緒にお料理しよっか♪」

「うんっ♪」

 

 あがのは笑顔で頷くと、トテトテと母の元へと向かう。

 しかし、

 

「? おかあさん……おくちのところとゆかのところあかーい。どうしたの?」

 

 母のちょっとした異変に小首を傾げた。

 

「え……あぁ、これ? これは……なんでもないよ?」

(どうしよう……こぼしちゃって拭いてるところ見られちゃった)

 

 阿賀野としてはこんな間抜けなところを娘に見られたことが恥ずかしい。仲間ならばいつものおっちょこちょいで済むが、阿賀野のとしては娘の前では出来る限り完璧な母親でいたいのだ。

 

「おかあさん……」

(どうしてちでてるの? どこかわるいのかな?)

 

 一方、あがのは母の体を心配している。子どもとはいえ、ここは鎮守府。常日頃から両親や艦娘たちが何をしているのか子どもなりに理解しているからこそ、あがのは母が何かの病に掛かっているのではと心配なのだ。

 

「だいじょうぶ、おかあさん?」

「う、うん、気にしないでいいよー」

「はやくおとうさんとやはぎおねえちゃんたちにしらせなきゃ!」

「え、待って! どうして!?」

 

 ホールトマトを床にこぼしたくらいで報告されるなんてたまったものではない。提督なら笑って許してくれた上に『相変わらず可愛いなぁ』なんて言ってくれるが、矢矧に知られてはますます姉としての威厳が薄れてしまう。

 

「だ、だって……」

「お母さんは大丈夫だから。ね?」

「わ、わかった……ないしょにするぅ」

 

 そうは言っても内緒にしなくてはいけないほどのことを自分は見てしまった。あがのは母がみんなに心配をかけないように気丈に振る舞っているのだと思い、懸命に涙をこらえる。

 

「で、でもねおかあさん」

「?」

「びょういんはちゃんといかなきゃだめだよ?」

「? 明石さんにちゃんと毎日(あがののことは)相談に乗ってもらってるよ?」

「まいにち!?」

 

 あがのはそれが衝撃だった。毎日自分の知らないところで母が病と闘っていたなんて知らなかったから。

 

 しかし忘れないでほしい、このやり取りはただこの母娘が勘違いしているだけである。

 

「あ、あとどれくらいなの?」

「?」

(ホールトマトのことかな? もしかして食べたかったとか?)

 

「ん〜、ごめんね。もうダメだから」

「えぇ!!!!?」

「どんなに言ってもダメなものはダメだよ?」

「そ、そんな……あきらめちゃだめだよ! おとうさんもやはぎおねえちゃんものしろおねえちゃんもさかわおねえちゃんもみんなまいにちがんばってるのに!」

「??? また買えばいいでしょ?」

「かえるものなの!!!!?」

(そういえば、まえにぞーきいしょく?とかおかねいっぱいあつめたらできるっててれび(ドキュメンタリー番組)でみた!)

 

 母娘は共に大混乱中。そもそも阿賀野が素直にこぼしてしまったと言えば済んだ話が、このような状況を招いてしまった。

 

「おかあさん、ひとりでつらかったんだね」

(もうだめ……なんだ……)

「? お母さんは大丈夫だよ?」

(そんなにホールトマト食べたかったのかなぁ? あとで明石さんのところで買ってこなきゃ)

 

「あがの、もっとおかあさんといっしょにいたかった……」

「? ずっと一緒でしょう? 何言ってるの?」

 

(おかあさん……そうだよね。おかあさんがおほしさまになっても、あがののこころのなかにおかあさんはずっといてくれるもんね!)

 

 子ども故のピュアな思いやりとは凄まじいものである。

 

「でもあがのあきらめない! おかあさんがもう()をださないほうほうをみつけるから!」

「え……?」

(血? 方法を見つける?)

 

 ここで阿賀野はやっと娘との会話がズレていることに気がつき、

 

「なるほど!」

 

 これまでの合点がいった。

 

「あ、あがの、あれはねーー」

「ーーとにかくたかおママにきいてくる!」

 

 しかし行動派の娘はもう走り去ってしまった。

 

「ど……」

(どうしようぅぅぅぅぅっ!)

 

 ーーーーーー

 

 それから数分後のこと。

 

「阿賀野ちゃんっ!?」

 

 高雄が血相を変えて簡易厨房へと走り込んできた。因みにあがのは話題が話題なので取り敢えず提督のところへ連れ戻した(提督にはまだ阿賀野の病状?は伝えてない)。

 

「あがのから聞いたわよ! どうして今まで黙ってーー」

「ーーうわーん、高雄さーん! 助けてー!」

「へ?」

 

 〜かくかくしかじか〜

 

「貴女って人は……」

「えぇ、阿賀野が怒られるのぉ!?」

 

 阿賀野からちゃんとした理由を聞いた高雄。しかしそのなんとも間の抜けた理由に高雄は思わず深いため息と共に、こめかみに微かな頭痛が……。

 

「元を正せば、貴女があがのへちゃんと話をしなかったのが原因じゃない」

「そ、それは……そうだけどぉ……」

「と・も・か・く! ちゃんと誤解を解きなさい!」

「りょ、了解しました……」

 

 こうして阿賀野は重い足取りで娘の元へと向かうのだった。

 

 ーーーーーー

 

(あぁ、母親としての威厳が〜)

 

 ひとり廊下を歩く阿賀野。今は後悔の念が押し寄せているが、自業自得だ。

 するとそこへ、

 

「あ、おかあさんおかあさん!」

「あ、あがの……」

 

 娘がぴょこぴょこと跳ねるように走り寄ってきた。辺りを見る限り一人の様子。

 阿賀野は誤解を解くチャンスと見て話をしようとしたが、

 

「どうしたの?」

「あのねあのね、おかあさんはなにかほしいものある?」

 

 いついつもの癖であがのの話を優先してしまった。

 

「ほしいもの?」

「うん! ほしいもの!」

「……うーん……」

 

(あがのが悪いってことじゃないけど、最近慎太郎さんとイチャイチャ出来てないからーー)

 

「ーー時間、かな?」

「おかあぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁん!」

「ひゃっ、あ、あがの?」

「そうだよね……おかあさん、あがのやおとうさんとはなれたくないもんね……」

「あ"」

 

 しまった……と阿賀野は思った。しかしもう遅い。

 

「あがのね、まだこどもだからね、どうすればいいかわからないの」

「あ、あの、話を……」

「でもね! ぜったいにおかあさんがいきててよかったっておもえるプレゼントさがしてくるから!」

「………………」

「だからもうちょっとまってて!」

「…………うん」

 

 ーーーーーー

 

「ということで話せませんでした……」

「そ、そうなの……」

 

 阿賀野は自分の不甲斐なさに打ちひしがれていた。

 高雄は中庭のベンチに呼び出されて阿賀野から経緯を聞いたが、なんとも言えない。

 

「あんなキラキラした我が子に残酷なこと阿賀野には言えないよ! 元はと言えば阿賀野のせいなんだけど!」

「自分で言っちゃうのね……」

(まあでも確かに難しいかもしれないわね)

 

「なら、私が伝えてきてあげましょうか?」

「え、でも……」

「あの子は貴女や提督と同じで何事にも真っ直ぐ過ぎるからね。そんな貴女たちに振り回されてきた私の方が話が切り出しやすいかもだから」

「高雄さん……」

「それに一応私だってあの子のママなんだから♪」

「はい……お願いします」

 

 こうして今度は高雄があがのの元へ説明をしに向かった。

 

 

 

 

 

 だがーー

 

「…………言えませんでした」

「なんでぇぇぇぇぇっ!?」

 

 ーー高雄も真実を言えずにむざむざ帰ってきてしまったのだ。

 

「あんなに母親のために一生懸命な娘に本当のことなんて言えないわよ……」

「でも、このままでも良くないよね……」

「し、仕方ないわね。ここは二人で説明しに行きましょう!」

「そ、そうだね!」

 

 己らを鼓舞して立ち上がる二人だが、

 

「あ、おかあさん! ママー!」

『うぐっ!?』

 

 あがのの声を聞いて硬直してしまう。

 

「そ、そんなに息を切らせて走ってきて、どうしたのあがの〜?」

「はやくおかあさんにあいたくてはしってきたの!」

 

 純真な娘の言葉に阿賀野の胸はキューンと高鳴る。その隣では高雄も『なにこの可愛い生き物……』と浄化されかけていた。

 そうしていると、

 

「あがの〜、急に走るなよ〜……転んだら痛い痛いになるぞ〜?」

 

 提督もあとからのそのそとやってきた。

 

「あれ、提督さん?」

「提督、執務の方は?」

「いや、まだ途中なんだがあがのがどうしてもってんで、矢矧や天龍たちに簡単なの頼んできたんだ」

『なるほど……』

 

 大人はそれで話は終わったが、本題はここから。二人はなんとか娘がしている誤解を解かなくてはいけないのだ。

 

「あのね、あがのいっぱいかんがえたの! それでねそれでね、いっぱいおはなしすればいいかなって!」

「お話?」

「うん! ずっといっしょにいればさみしくないでしょ? だからこれからずっとおはなしすれば、そのときまでさみしくないとおもったの!」

「あがの……」

 

 あぁ、我が娘はなんといい子に成長し、なんと天使なのだろう……阿賀野も高雄もあがのの心優しい気持ちに浄化されてしまった。

 

「…………話が読めねぇんだが?」

 

 しかし提督の言葉に二人はハッと我に返る。

 

「あのね、おとうさん。おかあさんねーー」

「ちょ、ちょっと待ってあがの!」

「そ、そうよ! ちょっとあっちで話しましょ! 提督、少々お待ちを!」

「え、お、おう……」

 

 ーー

 

「あがのごめんね。さっきの赤いのは血じゃなくて、お母さんが床にトマトのお汁をこぼしちゃったの」

「……びょうきじゃないの?」

「えぇ、そうよ。あがののお母さんはこれからもずっとあがのと一緒にいられるわ」

 

 やっと誤解が解けた瞬間だ。

 しかしあがのの目からは大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。

 

「あ、あがの!? 本当にごめんね!」

「も、もう心配しなくていいのよ!?」

「ちがうの……」

『え?』

「あがの、ひどいってないてるんじゃないの。おかあさんがびょうきじゃなくてうれしいの……ひっく」

「あがの……」

「おかあさん、しなないから、うれしいのっ……うぅ、うわぁぁぁんっ」

 

 とうとう大声で泣き始めたあがの。阿賀野と高雄はそんな娘を優しく抱きしめ、何度も何度も『ごめんね』と謝り、自分たちももらい泣きしてしまうのだった。

 そんな中、

 

「………………俺は蚊帳の外?」

 

 提督は最後まで意味が分からずに、ただ呆然とベンチで妻や娘や高雄の帰りを待つのだった。

 

 後、ちゃんとした経緯を阿賀野から聞いた提督は腹を抱えて笑い、それに怒った阿賀野から罰として『キス1時間の刑』を執行されたという(当然、矢矧からは提督のみがハリセンを食らった)ーー。




こんな感じのお話をたまにあげていきます!

読んで頂き本当にありがとうございました!
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