季節は冬。寒さが身に沁みるが、夜空には降るような星々が煌めき、空を彩っている。
そんな空の下、提督は妻と娘、そして義妹たちとプライベートな時間を過ごしていた。
「いやぁ、やっぱ冬は鍋だよなぁ」
「締めのおじやも良かったよね♪」
「おいしかったー!」
準備は夫婦がしたので、片付けは能代たちがやってくれている。
なので夫婦は食後のお茶をこたつで飲み、あがの(この頃4歳)はデザートにみかんを提督の手から食べさせてもらっている。
当然、提督の左隣には妻阿賀野が侍り、あぐらをかく足には娘あがのが鎮座している状態だ。
今日は執務も通常通りで定時に終わり、たまにはこうして晩御飯をということで今に至る。
加えて今日は能代たちがお泊まりするということで、あがののテンションはうなぎ上り。いつもならあと少ししたらお風呂に入って歯を磨いて眠りに就くが、今回ばかりは少し夜更かしをする予定だ。
「おねえちゃんたちがもどってきたらトト□みるー!」
「そうだねー♪」
あがのはスタジオジ〇リがお気に入りで、中でもそれが大好き。
因みに提督が監督したスタジオヒブリも好きだが、矢矧がそれを見せることに大反対しているので、今回はトト□ということになった。
ーーーーーー
『めぇぇぇぇぇいっ!』
「めぇぇぇぇぇいっ!」
本編のとあるシーン。あがのはそこがお気に入りなのか、同じセリフを叫んでいる。しかも夜ということでちょっとトーンを下げているお利口ぶり。これだけで叔馬鹿の矢矧は悶絶している。
「やっとネコバスの登場ね」
「フカフカであたしも乗ってみたいっぴゃ♪」
「阿賀野は遠慮しちゃうかなぁ。獣臭そうだし……」
「俺も同じく」
子どもは子どもで楽しんでいるが、大人も大人でそれなりに楽しんでいる様子。これが名作の凄いところだ。
するとあがのが「ねぇねぇ」と誰かに話かけた。
阿賀野が最初に反応して「ん、どうしたの?」と返すと、
「トト□ってなんさい?」
まさかの質問がくる。
みんなはそれにどう答えたものかと悩み出す。
しかし文明の機器を駆使した提督がスマホでちゃっちゃと調べ上げた。
「大型が1302歳。中型が679歳。小型が109歳だとよ」
「そうなんだー! すごーい!」
「大型とか中型とか型で呼ばないでくださいよ、提督……」
「せめて大きい、中くらい、子どもって言ってよぉ」
説明して能代と酒匂に注意を受けた提督。なので提督は「おぉ、すまん」と素直に謝った。
そんなことを話していると本編は終わり、お風呂の時間となる。
「今夜はお姉ちゃんたちが来てるし、お姉ちゃんたちと入ってくる?」
「おねえちゃんたちとはいるー!」
母親の問いにあがのはその場で元気いっぱいに答えると、早速矢矧に抱きかかえられた。
「責任を持って私がキレイにするわ!」
「程々にな程々に。頭も洗って、風呂上がりには洗面台に置いてあるベビーローション塗ってやってくれ」
「任せて!」
使命感に燃える矢矧。
その一方で、
「あがの〜、お姉ちゃんたちにお歌聞かせてあげてね♪」
「いっぱいうたうー!」
母娘はそんなことを話し、皆を送り出すのだった。
残された夫婦はというとー
「2人っきりだね♡」
「だなー」
「戻ってくるまでイチャラブ出来るねー♡」
「だなー」
「なんかつれなーい♡」
「照れ隠しですー」
ーこのように恋人時代に早戻りして、節度あるイチャラブ時間を満喫するのだった。
ーーーーーー
本館内に設置されている風呂は能代たちが同時に浸かれる程で意外と広い。
提督の怪我以降、提督のことを考えた家具妖精さんたちが広めにしたからだ。
しかも何故か防音対策もバッチリなのが粋である。
「はぁい、あがのぉ、おめめ押さえて〜♡」
「はーい!」
ばしゃ〜っと髪を流し、甲斐甲斐しくお世話する矢矧。そしてそれを嬉しそうにされているあがの。
傍から見れば歳の離れた姉妹が微笑ましくしているように見えるが、矢矧の顔がデレッデレに蕩けきっているので能代たちから見ればある意味で怖い光景だ。
それからみんなで体を洗い、湯船に浸かる。
いつもならあがのお気に入りのビニール製シャチさん(20センチ程)の玩具で遊ぶが、今日は違う。
何故なら今からあがのリサイタルが幕を開けるからだ。
「じゃあ、おうたうたってあげるねー☆」
「わぁ、何を歌ってくれるのかしら?」
「楽しみだっぴゃ♪」
「A・GA・NO! A・GA・NO!」
既に一人だけ熱狂的ファンがいるが、あがのはそんなのお構いなしに矢矧に抱えられた状態で歌い始める。
「トット□〜♪ トット□〜♪」
最初はさっきまで見ていたのもあってか『となりのトト□』であった。
子ども特有の愛らしい歌声に能代も酒匂も手拍子して聞き入るが、時折入る叔馬鹿の合いの手が狂気的過ぎて台無しである。
しかしそんなこと中、
「すてきなしあわせが〜♪
『!!!!?』
なんとも言えない歌詞間違いが、能代と酒匂を襲った。
語呂は合っている。しかしその間違いのせいで人の幸福を妬んでいるような歌詞になってしまい、じわじわと両者に笑いのビックウェーブが到来してきた。
なのに叔馬鹿は気にせずあがのコールなのだから、カオスとしか言いようがない。矢矧にとっては歌詞なんてどうでもよく、あがのが自分のために歌っていることが大切なのだ。
一方で能代と酒匂は笑いを堪えるのに必死である。笑ったらあがのが傷ついてしまうかもしれないからだ。
しかしーー
「だめ……あっはっはっ!」
「あたしも……きゃははは!」
ーーダメだった。何度も頭の中であのフレーズがリピート再生さるのだから、堪えることなど不可能だった。
「えへへ〜、よかった♪」
一方、笑われたことを喜んでくれたと思っているあがの。ある意味でいい誤算だった。
「じゃあ〜、つぎはね〜……」
そして続く歌をあがのは模索する。
するとひらめいたかのようにー
「ゆーえすえー♪ ゆーえすえー♪」
ーまさかの歌のチョイスをしてきた。
そう、カモンベビーホニャララ(曲名は伏せる)である。
明石の酒保では店内で有線放送が流れているため、こうした巷で人気の曲もあがのは耳にしている。他にも色々と知っているはずだが、あがのが選んだのはこれだった。
4歳児が歌うには難しい曲だろうが、あがのは一生懸命になって歌っている。
そんな姪の頑張りを3人は揃って見守った(矢矧は先程と同じ)が……
「らーめん、つけめん、あふりかー♪」
……驚愕の歌詞間違いが能代と酒匂に襲いかかってきた。
二人は考えた。ラーメン、つけ麺までいけば昔に流行ったイケメンというフレーズが出てくる。
なのにアフリカ……アメリカはどこへ? そもそもアフリカのラーメンとつけ麺の宣伝みたいになってしまっている。
なのに……
「さーもん、たべにー、いこうかー♪」
……次はとても惜しいことに。
これではまるでただサーモンを食べに誘っているという話になってしまうではないか。
あがのは一生懸命歌っているが、うろ覚えとノリで歌っているので間違いに気づいていない。
ただ矢矧だけが激しく狂喜乱舞して合いの手を入れているが……能代と酒匂はこのカオス空間に腹筋を崩壊させられるのであった。
それから提督と阿賀野がお風呂から戻ってきた4人を見た時、やりきった顔の娘と矢矧……そして腹を抱えた能代と酒匂を見て笑うしかなかったというーー。
ということで、短めですが今回は終わります。
そして今年の本作の更新はこれで終わりになります。
元旦にはちょっと特別な回を考えていますので、お楽しみに♪
読んで頂き本当にありがとうございました!
早いですが、良い年末を!