提督一家と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

17 / 20
短めです、ごめんなさい。


ぬこ化

 

 その日、鎮守府に衝撃が走った。

 

「あがの! あがのしっかりしてっ!」

「早くドックに!」

「あがの、すぐ運んでやるからな!」

 

 あがのが不慮の事故にあったのだ。

 

 ―――――――――

 

「明石、あがのは……」

「ハッキリ言ってくれ」

 

 夫婦はドックにて明石の言葉を待つ。

 加えて夫婦の後ろには能代と矢矧、酒匂も一緒で、叔母たちも心配そうに明石の言葉を待っている。

 

「…………端的に申しまして、深刻な状況です」

 

 その言葉に提督はギリッと歯を食いしばり、阿賀野たちは揃って手で顔を覆った。

 何故なら―――

 

 

 

 

 

「みゃう♪」

 

 

 

 

 

 ―――あがのが猫になってしまって可愛過ぎたからだ。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 事の発端は、あがのが妖精たちのおやつを自分のだと思って食べてしまったことだ。

 あがのはちゃんとごめんなさいをしたのだが、食べ物の恨みは恐ろしく、妖精たちはそんなあがのに罰を与えた。

 

 それが猫にしてしまうことである。

 

 猫にしてしまうと言っても、姿形はそのままで尻尾と猫耳を生やして言葉を猫にしただけ。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 一緒に謝りに行った酒匂があがのを抱えて執務室に戻り、今に至る。

 何が深刻な状況なのかと言えば―――

 

『かわいい……♡』

 

 ―――猫耳あがのが想像を絶するくらい愛らしいのだ。

 当然、あがのLOVEの矢矧はあがのの鳴き声を聞いた途端に鼻血を出したまま気絶し、ドック妖精たちに集中治療室(矢矧専用)へと搬送された。

 

「これ戻るのか?」

「戻りますよ。二次創作によくあるご都合主義設定ですから」

「は?」

「いえ、上(作者)からそう言えって言われた気がしただけで、なんでもないです。とにかく、妖精さんたちの気が済めば元通りになりますし、後遺症も何も心配ご無用ですよ」

「そうか……なら俺は早くそうなるようにプリンでも作るわ」

「そうしてください。あ、あがのちゃんの容態は問題ありませんが、猫にされてますので猫特有の行動をするかと思います。そこにはご注意を」

「分かった」

 

 ―――

 

 それから提督は幸い今日の執務も終わっていたので、早速食堂の厨房で妖精たちにあげるプリン作りを開始。

 今回あがのが間違えて食べてしまったのは工廠妖精たちの40人分(普通の人間では大きなプリン1個分)であるため、そう時間は掛からない。

 

「あがの、今度からはちゃんと確認して食べなきゃダメだからね?」

「みゃあ!」

 

 母親の言うことにお返事するあがの。

 しかし―――

 

「はぁぁぁ、可愛い過ぎるんだけど」

「ホントだねぇ、いつも可愛いけど猫耳があるから余計に可愛い……」

 

 ―――第一叔母様と第三叔母様のハートを鷲掴みにして離さない。

 当然、母である阿賀野も娘の可愛さに胸キュン。

 

 そうしているとカランカランと食堂のドアベルが鳴り響く。

 

「こんにちは」

「ぱんぱかぱーん♪」

 

 入ってきたのは高雄と愛宕。

 

「こんにちは〜」

「どうも、お疲れ様です」

「こんにちはだっぴゃ♪」

 

 阿賀野たちが高雄たちに挨拶し、

 

「みゃあ♪」

 

 あがのも可愛くご挨拶。

 

「あら、今日は天使さんじゃなくて猫さんなの?」

 

 愛宕があがのの顎をくすぐりながら訊ねると、阿賀野が苦笑いで経緯を説明した。

 

 ―――

 

「……という訳なの」

「ああ、そういうことね……」

「妖精さんたちもこれくらいで勘弁してくれたから良かったよぉ」

「確かにそうね。本格的に猫の姿にされてたら、私たちでも迷い猫だと思っちゃうから」

「でも本当に可愛いわぁ♪ ねぇ、阿賀野ちゃん、私にも抱っこさせて?」

 

 愛宕のお願いに阿賀野が快く娘を手渡す。

 するとあがのは嬉しそうに鳴き―――

 

「みゃうみゃうみゃう♪」

「あらあらあら?」

 

 ―――愛宕の大きな二つの愛宕山を両手で揉み始めた。

 

「あがのちゃん、おっぱい欲しいの?」

「もう2歳なのに、どうしたのあがの?」

 

 愛宕と阿賀野の言葉は聞こえてはいるだろうが、あがのは両手を止めようとしない。

 すると高雄が何かを思いつき、口を開く。

 

「猫だから思考も猫寄りになってるとか?」

 

 高雄の推理にみんなはなんとなく納得した。

 何しろあがのは両手を猫の手みたいにして、猫が毛布や飼い主の太ももをふみふみするように、愛宕の愛宕山を押しているからだ。しない猫もいるにはいるがあがのが猫になればする猫なのだろう。

 

「でも、これはこれで可愛いわ♪ ちょっと痛い時もあるけど……」

「あがの、愛宕お姉ちゃん痛いって」

「みゃあ……」

 

 多分ごめんなさいと言ったのだろう。でも本能なのか止められないと言ったところ。

 

「んっ、あっ……何これ、凄い……っ♡」

 

 絶妙な力加減につい艶めかしい吐息を漏らす愛宕。

 このままでは危ないと高雄が愛宕からあがのを引き離すと、今度は高雄の高雄山が標的になった。

 

「……確かにこれは……っ……流石は提督の娘さんってところかしら?」

「高雄さん、その話詳しく」

「あ、ち、違うのよ阿賀野ちゃん? あの時は阿賀野ちゃんはまだ着任してないし、そもそも阿賀野ちゃんが考えてるようなことじゃなくて、事故で……」

「ふーん……事故でも慎太郎さんに触られて嬉しかったんだ?」

「それは……」

「……(ジト〜ッ)……」

「……はい、気持ち良かったです」

「そっかぁ、まあ仕方ないよねぇ」

「ごめんなさい」

「ううん、ちょっと悔しいから意地悪しちゃっただけ♪」

「勘弁して」

「ごめんなさぁい♪」

 

 修羅場突入は何とか回避したが、相変わらずあがのは高雄の高雄山をふみふみ中。

 

「猫がこうやってふみふみするのってどうしてなの?」

「確かお腹空いたアピールと甘えてる時、あとは寝たい時って猫の漫画で読んだ記憶があるわね」

 

 酒匂の疑問に能代が答えた瞬間、あがのが大きなあくびをした。どうやらお眠の時間らしい。

 

「ふふふ、おやつを食べてからまだお昼寝してなかったもんね。あがの、今日は特別にママが抱っこしててくれるって」

「みゃあ?」

「ええ、いいわよ。おやすみなさい、あがの」

 

 こうしてあがのはお母さんとママに見守れながら、ゆっくりと微睡みにその身を預けるのだった。

 

 ―――――――――

 

「よし、プリン完成したぜ。相変わらずいい出来だ♪」

「お疲れ様です、提督」

「お疲れ様です♪」

「間宮と伊良湖も手伝ってくれてありがとな。速吸、悪いがおやつを食いそびれちまった妖精たちを呼んでくれ」

「分かりました!」

 

 速吸が早速妖精たちを呼ぶと、妖精たちは一瞬の内に集合し、提督お手製のプリンアラモードを食べ、満足してあがのの猫化を解除した。

 因みに猫化したあがのをほんの一瞬しか堪能出来なかった矢矧が、能代と酒匂にめそめそと愚痴をこぼしたのはまた別のお話―――。




読んで頂き本当にありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。