提督一家と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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ちょっと下ネタ多いです。ご了承ください。


ダメなものはダメ

 

 6月となり、泊地でも徐々に夏の顔を覗かせる。

 しかし艦娘たちのやることは変わらない。それが国民の平和を守ることならば、彼女たちはひたむきに任務に訓練にと精を出す。

 

 まだ梅雨入り前で晴れとなった本日の午後は、気温が30℃近くになった。

 しかし子どものあがのにとっては気温なんて何のその。子どもというのは遊べればそんなことは気にしないのだ。

 

「ばったさん、まてまて〜!」

 

 中庭ではあがの(この時3歳)がトノサマバッタを追いかけている。

 育児時間も終わり、提督と阿賀野、そして矢矧はあがのを仲間たちに預けて執務室へと戻った。能代と酒匂は遠征任務中。

 あがのも執務室に入れるが、あがのは外で遊びたいとのことで高雄や他の面々に預けていった形。

 

 ただ鎮守府の場合、親がすぐ側にいる状態ので子どもとしては家の庭で姉たちと遊んでいる感覚に近いだろう。

 なのであがのは今日も元気いっぱい。今日は衣笠みたいにサイドテールで、結んでるリボンはお気に入りの赤と白のストライプ模様のシュシュだ。

 

「ばったさんばったさんばったさんばったさん!」

 

 頑張ってバッタを追いかけるあがのだが、まだバッタの動きに対応出来ずに捕まえるのが困難な様子。しかし当の本人は追いかけていること自体が楽しいようで、捕まえられないからといって悔しがっていない。

 

「子どもって元気だなぁ」

「子どもだもん。それに子どもなら嗚呼じゃなきゃ♪」

 

 高雄と共に今回あがのの面倒を見ているのは古鷹と加古の古鷹型姉妹。加古は昼寝から目を覚ましたばかりなので、今回はちゃんとそのお役目を果たせそうだ。

 そんな加古のつぶやきに古鷹が言葉を返すと、高雄も「元気なのが一番よね」と優しげに目を細めてあがのを見つめた。

 

「あたしは一緒にお昼寝するのが一番だよ。疲れないし、あがのは軽くて温かいから毛布代わりにちょうどいいし」

「それはそれでどうなの……」

「でもあがのちゃん、加古のお腹にペタ〜って乗るの好きみたいなんですよね……」

 

 高雄のツッコミに古鷹が苦笑いで返すと、高雄は「あがのったら……」とこぼす。

 そんな話をしていると、

 

「私の娘が今日も元気に遊んでるな〜。いいことだ」

 

 高雄たちが座るベンチの背後から、武蔵がそんなことを言いながら現れた。その隣には陸奥もいて、陸奥は陸奥で「私の娘が可愛いわぁ」とあがのの天使さにほっこりしている。

 

「武蔵さん、陸奥さんこんにちは。武蔵さんたちもあがのちゃんの面倒を見に?」

 

 古鷹がそう訊ねると、二人は揃って頷いた。

 

「私も陸奥も砲撃訓練が終われば暇だからな。それに母親としては娘の面倒を見るのは当然だろう?」

「そうそう。あがのちゃんは私と提督の大切な娘だもの♪」

 

 決してそうではないがもうすっかり母親面が板に付いた二人。ガチ勢にとってあがのは提督の娘……=自分たちの娘という認識なので、これがガチ勢の共通認識なのだ。

 この逞しさに高雄はもちろんだが、あの大天使古鷹も苦笑い。加古に至っては「あ、あたしは提督とえ、えっちしてないから……♡」などと初心全開で恥じらっている……のに、どこか満更でもない様子。やはり恋する乙女としては、好いた提督と結ばれるのは永遠の夢なのである。

 

「それならこの青葉もあがのちゃんの面倒を見なくてはなりませんね〜♪」

 

 するとそこへ青葉も登場。そしてその後ろからは衣笠がパタパタと走って「待ってよ、青葉〜!」と叫んでいた。

 この二人も武蔵たちと共に砲撃訓練に参加しており、今回のスコア競争で武蔵たち率いる紅組に負けてしまったので機材の片付けをしてきたのだ。

 ただ衣笠に至ってはーー

 

「おい衣笠〜、後ろからオレンジ色が丸見えだぞ〜?」

「え……きゃあっ」

 

 ーー急いでいたのもあったのか、スカートが捲れ上がってしまっていてオレンジ色の可愛らしいモノがこんにちはしていた。

 

「んもぉ〜、今日はついてないなぁ」

 

 加古に指摘され、衣笠はぼやくようにしながらスカートを直す。

 

「さすがガッサーですねぇ。第六戦隊のセクシー担当なだけのことはあります」

 

 青葉の言葉に衣笠はすかさず「そんな担当になったことないっ」と返すが、

 

「でも衣笠っておっちょこちょいだから、よくブラちらとかパンちらしてるよね」

 

 と古鷹に言われてしまった。

 これには衣笠も微かに頬を赤らめて、「好きでそうなってるんじゃないもん」と頬を膨らませた。

 その仕草に見ていた者みんなが『かわいい……』と思ったのは仕方ないことだろう。

 

 このままなら雑談や談笑といった形で平和に終わったが、

 

「この前は提督とふざけあって胸揉まれてたしな♪」

 

 加古の発言により場が凍りついた。

 それはそうだろう。ここには武蔵・陸奥・青葉という提督に揉まれたくても揉まれないガチ勢がいるのだから。

 

「衣笠〜、この青葉の妹だからっておいたが過ぎませんか〜?」

「狙ったのか? 狙ったんだな?」

「私だってまだ揉まれたことないのに!」

 

 3人にガシッと肩を捕まれて凄まれる衣笠。それはライオンに囲まれた野ウサギのようで、すかさず高雄と古鷹が止めに入って事なきを得た。

 

「あ、あれは事故だったの……くすぐり合ってたら、その……むにょんってされただけで……提督だって凄く謝ってくれたし、私だってあれ以来適度にくすぐり返してるもん」

 

 高雄たちの背中に身を隠しながら衣笠はそう言うが、高雄や古鷹からすれば『それでもまだくすぐり合ってるの?』と内心ツッコミを入れられる始末。衣笠は無邪気で提督のことは兄みたいに慕っているからこそ出来るスキンシップであり、提督もそんな衣笠のことを背の大きな妹みたいに可愛がっているから成り立っている関係なのだ。

 しかしガチ勢3人からすればそれは羨まけしからん関係この上ない。そもそもガチ勢が提督に対して邪な心を隠し切れていないのが問題なのだが……。

 

「衣笠ちゃんが羨ましいわ」

「妹が羨ましいです」

 

 陸奥も青葉も事故でいいので揉まれたいし、あわよくば妊娠したいと常々思っている。

 それは武蔵も一緒で、その証拠に「どうして衣笠は良くて私はダメなんだ……」とかなりショックを受けている様子だ。

 

「なぁ、ケモ耳(ヘア)って人気だよな?」

 

 そんな武蔵の問いに衣笠や高雄たちは困惑しながらも『うん』と頷いた。

 

「褐色肌も何気に好きな人いるよな? 提督も好きだし」

『うんうん』

「巨乳はもちろん鉄板だよな?」

『う、うん』

 

 それはどうだろうと衣笠たちは思ったが、ターゲットが提督なら阿賀野への溺愛振りに頷く他なかった。

 すると武蔵はその場に両膝を突き、

 

「なのに提督は私のことを嫁にしてくれなかった!」

 

 などと悲壮感たっぷりに叫び、自身の体を自身の両手で抱きしめる。

 

「誰か温かいスープを! コーンポタージュを武蔵に!」

「クルトン増し増しで!」

 

 こういう時こそ無駄に連携が抜群のガチ勢。陸奥が武蔵のことを優しく抱きしめ、青葉も武蔵を優しく抱擁。

 そんなガチ勢たちの行動に、

 

「何してんだよ、お前ら」

 

 提督が困惑しながら現れた。提督は自分のやるべきことが思いの外早く済んだので、あがのの元へとやってきたのだ。

 それなのに武蔵たちがこの有様だったので、提督としては困惑せざるを得ない。

 

「え〜っと、提督のせい、みたいな?」

「え、俺なんかしちまったのか?」

「提督は気にしなくていいですよ。この子たちがちょっと提督LOVEを拗らせてるだけですから」

 

 高雄の言葉に提督は「あ、そう?」と曇ない笑顔を返した。ガチ勢たちの想いの拗らせ方は尋常ではないので、提督としては気にしない方針なのだ。

 

「あがの〜」

 

 なので提督は3人をよそに娘へ声をかける。

 するとあがのはより一層眩い笑顔になり、父親の腹に突撃した。

 

「おとうさ〜ん!」

「うぐっ……あがの〜、お父さん嬉しいけど、もうちょっと優しく抱きついてほしいなぁ」

「は〜いっ!」

 

 返事はするものの、あがのは父親のお腹に顔を埋めてグリグリと擦りつけている。可愛いは正義……なので提督は娘の愛らしさに胸がキュンキュンしていた。

 もちろん、

 

「あがのちゃんかわいい〜♡」と古鷹

「あれは溺愛しちゃうよね♪」と衣笠

「あれ気持ちいいんだよなぁ」と加古

「相変わらずお父さん子ね♪」と高雄

「娘と夫(自称)が尊い……」と武蔵

「これだけで生きていけるわ」と陸奥

「シャッターを押す指が止まりません」と青葉

 

 みんながみんな、その父娘の光景に胸を打たれている。

 

「にしても汗びっちょりだな。ほらタオルで拭いてやるからそのままでいろ」

「は〜いっ」

「何してたんだ?」

「ばったさんおいかけてた!」

「へぇ、捕まえたのか?」

「ううん」

「そっか。次は捕まえられるといいな」

「うん!」

 

 なんの変哲もない父娘の会話。しかしこの当たり前が平和の証なのだ。

 

「麦茶持ってきたから高雄の横にお座りして飲むといい」

「ありがと〜!」

 

 ちゃんとお礼が言えるのはいい子の証。しかもちゃんと父親に言われた通り、あがのは赤い水筒を受け取って高雄の隣にお座りした。

 

「んきゅ、んきゅ……」

 

 コクコクと可愛らしい音を立てて喉を鳴らすあがの。それを見ている面々はやはりその可愛らしさに浄化されている。当然、青葉はカメラのシャッター速度が更に上がっていた。

 

「ぷはぁ……おいしい〜♪」

「良かったわね」

「うん!」

 

 喉も潤い、遊び再開……とはなったものの、あがのは今度は何で遊ぼうか悩んだ。

 でもそこは子ども。遊びのスペシャリストだ。すぐに次の遊びを思いついた。

 

「あみだくじやる〜!」

『あみだくじ?』

 

 あがのの言葉に提督も含め、大人全員が小首を傾げる。

 あみだくじはあみだくじでみんな分かるが、それが遊びなのか大人たちにとっては疑問だったのだ。

 しかし大人たちの疑問をよそにあがのは高雄の太ももに指をやった。正確には高雄の太ももに走っているガーターベルトである。

 

「?」

「ちゃ〜ん、ちゃちゃちゃちゃちゃ〜ちゃ〜♪」

 

 困惑する高雄をよそにあがのは高雄のガーターベルトを指でなぞっていく。しかもそのお口では喜歌劇「天国と地獄」序曲を歌って。

 しかしあみだくじとは言い難いガーターベルトくじはすぐに終わりを迎えた。

 

「あたり〜!」

「お、おめでとう……」

「じゃあ、ここをぱっちん♪」

 

 あがのがガーターベルトの留め具を外してしまった。

 これにはその場にいた全員が度肝を抜かれ、外された高雄も目を丸くする。

 

「つぎこっち〜♪」

「ちょ、待ってあがの!」

「え〜?」

「外しちゃダメよ。ママのストッキングが下がっちゃうでしょう?」

「え〜、でもおかあさんがおとうさんにこうされてよろこんでたよ〜?」

 

 おかあさんはみっつはずされるとおとうさんにあしひらくの〜♪……などと暴露された提督は「ふざけてたとこ、娘に見られてた……」と両手で己の顔を隠した。

 当然、みんなはそんな提督に注目したが『あの夫婦ならそれくらいしてるだろう』と大抵が呆れた視線。とある3人は『何故私たちにも同じことをしない?』というなんとも言えない同じことを提督に求め、望む視線だった。

 

「あがの〜、あみだくじはやめないか?」

「え〜、おとうさん、おかあさんとよくしてるのに〜」

「そ、それはだなぁ〜」

「あ、ならかこおねえちゃんのでやる〜!」

 

 思わぬところで標的変更。しかし加古は「まあ別にいいぞ?」と了承した。

 ただあがのがあみだくじとして選んだ場所が、

 

「ちゃ〜、ちゃちゃちゃちゃちゃ〜ちゃ〜♪」

「ひぅっ、あ、あがの……そこ、ダメぇっ♡」

 

 加古が巻いている黒包帯の部分だった。腕ならまだ良かったが、スタート地点が腰からで、加古してはくすぐったいやら、スカートを捲られて続けられるわであられもないことに。

 当然提督はヤバイと思った瞬間に目を逸らした。

 

「こらこら、あがの! そこはダメよ!」

「加古お姉ちゃんが泣いちゃうよ?」

 

 すかさず高雄と衣笠が止めさせると、加古は古鷹の背中に隠れて「もうお嫁に行けない」と涙ぐんだ。何しろスカートを捲れられるわ、パンツももろ見せさせられるわと散々な目にあったから。

 

「かこおねえちゃん、ごめんね?」

「……もうしない?」

「しないっ」

「なら許す。今度一緒にお昼寝してね?」

「うん!」

 

 ただそこは子ども。ちゃんと謝れば許されるし、仲直りのハグもされる。

 その後はみんなで別の遊びとして、鎮守府の裏にある丘で昆虫観察をしに向かったーー。




時間があって、ふと浮かんだので衝動的に書いてアップしました!

子どもだから許されることってありますよね?って感じで!

読んで頂き本当にありがとうございました♪
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